オフィス生産性をいかに高めるか~不動産市場の変化

2022/06/13 <>

・新型コロナの影響によって、この2年で生活の仕方、働き方が大きく変化している。仕事の内容にもよるが、在宅勤務できる人が大幅に増えた。

・一方で、ウクライナ紛争の影響によって、一時的な要素も含めてインフレが加速している。米国の金融政策をリード役に、金利上昇が意図的に進められている。お金の流れが変われば、不動産市況にも変化が出てこよう。

・オミクロン株による新型コロナの第6波はまだ十分な落ち着きをみせていない。次の変異株が広がる懸念もある。一方で、コロナとどう向き合えばよいか、というリスクマネジメントはかなり分かってきた。ポストコロナはまだ先になろうが、ウィズコロナの働き方はどうなるのであろうか。

・コロナ禍の2020年12月に、日本リージャス(TKPグループ)が調査した結果のよると、第3のワークプレイスを用意することが重要であった。当時、首都圏、近畿圏、中部圏のオフィスワーカー5000人にサーベイすると、①テレワークの普及率は53%、サテライトオフィスの導入は22%であった。

・②在宅勤務の生産性が高いと感じた人は34%で、66%はそうでもなかった。③サテライトオフィスの生産性が高いと感じた人は41%で、59%はそうでもなかった。④それでも63%の人がサテライトオフィスを含む勤務形態を望んでいた。

・同じ時期に実施されたパーソル総合研究所の調査では、在宅勤務の生産性がオフィス(職場)より高いという比率は35%、低いという比率が65%であった。コロナ対応の緊急避難的な在宅勤務であったので、職種や企業の準備状況によって差が出たものとみられる。

・コロナ前から在宅勤務の仕組みをもっていた企業はスムーズに対応しており、急に対応を迫られえた企業においては、必要不可欠な業務に絞らざるをえなかった。

・コロナが落ち着くと、出社率が上がっている。そこで働き方に変化が出ているだろうか。従来のままでよいという会社は少ない。新しい働き方へシフトする動きはますます強まるものとみられる。

・何が自分の仕事なのか。仕事が明確に規定されていれば、自立的にジョブをこなすことができる。このジョブ型仕事が明確になっていないと、リモートやサテライトで仕事を効率よくこなすのは難しい。

・反面、人と会うこと、仲間と議論すること、上司と話し合うことで、新しいアイデアやイノベーションを創り出すことができるとすれば、在宅リモートには限界があろう。

・デジタルが当たり前になれば、デジタル本社が機能するかもしれない。本社やオフィスは仕事の実務を行うところではない。オフィスは、人と人とのエンゲージメント(つながり)を確認するところであるという見方も実現してこよう。

・①コミュニケーションやコラボレーションは集まってワイワイガヤガヤやりたい、②OJTや教育は対面でないと肝心なことが伝わらない、③共通の企業文化を身に付けていくには従来のような組織、集団活動が望ましい、という声も有力である。

・ハイブリッドにうまく組み合わせていくのが新しい働き方であろうが、その場合でも、自分の空間、グループで共有する空間、会社全体での空間をきちんと分けていく必要がある。リアルとサイバーの仕切りも求められよう。

・在宅といっても、そこで働くための自分の空間が用意できないと、機密は守れないし、生産性も上がらない。サテライトオフィスでも同様のことが生じよう。

・オフィス市場において、1)空室率の上昇、2)オフィスの規模縮小、3)サテライトオフィスの需要増加という傾向がみられる。一方で、将来を見据えてオフィスを拡張する企業も増えており、グレードの高いオフィスを求めるニーズも強い。

・ホームオフィス(在宅)、サテライトオフィス(レンタルオフィス)、本部オフィス(本社や支社など)において、働く環境がスマートでないと、人は集まらない。

・将来のためのR&D投資や設備投資と同じように、人財を活用するためのオフィス投資は大いに拡大する必要がある。その時問われるのが、人的資本生産性である。オフィスをきれいにしても何の価値も生まないと考えるようなら、それは人的資本生産性が分かっていない経営である。

・生産性が上がるようなオフィスを創っていく必要がある。生産性が上がるような仕事のやり方、仕組みを工夫していく必要がある。これは、かつて日本が得意であった工場でのモノづくりの仕組みづくりに似ている。

・不動産市場をみると、物流施設は好調であり、賃貸住宅は堅調である。オフィス需要はやや低調ながら頑張っている。一方、商業施設やホテルは未だ苦しい状況にあるが、ここからの回復過程でかなり差が出てこよう。

・Eコマースはブームが一巡するとしても、高水準で定着しよう。物流倉庫は今後とも拡張が必要である。オフィスでは、レンタルオフィスのようなフレキシブルオフィスが今後とも大幅に伸びていこう。

・オフィスの移転、都心からの移住といっても、首都圏から出ていくほどではない。商業施設はモノ消費からコト消費への施設へ、次々と変身しつつある。ホテル需要はいずれ海外客が戻ってくれば、活況となろう。

・実物不動産の市況の変化は、リート市場に先行的に表れる。不動産の価値は使用価値によって決まる。利用のコンテンツをいかに高めていくか。生活空間、働く空間、楽しむ空間のインフラとして、それを新しく開発し、小口化して、商品・サービスを提供する市場は大きく成長しよう。

・シェアリングを利用する人はますます多様化しよう。ここにビジネスチャンスが生まれる。新しい不動産テックの企業も次々誕生している。ぜひ新しいオフィスで働きつつ、自らの生産性を上げ、同時に投資対象としての不動産テック企業にも注目していきたい。

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