スマートエイジングビジネスの広がり~エビデンスはいかに

2022/06/07 <>

・SDGsを企業経営にいかに取り込むか。サステナビリティの実現に向けて、ESGの強化が必須となっている。しかし、さまざまなリスクに対応しながら、企業価値を持続的に創出していくことは容易でない。

・人々は健康でやりがいのある生活を求めている。経済的なゆとりも、ある方が望ましい。先をみれば不安ばかりで、高齢者に聞いても老後が心配であるという。もう十分生きたという話は聞いたことがない。

・企業は、提供する商品やサービスを利用する顧客、企業およびそのサプライチェーンで働く従業員、地域社会の人々に対して、どのように貢献するのか。社会的価値や経済的価値の創出の中で、今やどんな幸福を提供するのかも問われている。

・働く人々にとって、労働の対価である賃金は生活の糧である。格差が広がる中で、自らのhappiness(ハッピネス)やwell-being(ウェルビーイング)をどう捉えるのか。慶大の前野隆司教授は、幸せについて興味深い話をした(日経4/11夕刊)。

・幸福と感じる4つの因子を特定している。それをどのように実践するか。1つ目は「やってみよう因子」で、自己実現に向けて主体性の高い人は幸せを感じている。2つ目は「ありがとう因子」で、感謝の気持ちを持って、つながりや思いやりを大事にする人は幸せを感じている。

・3つ目は「なんとかなる因子」で、前向きでポジティブな人は幸せである。そして4つ目は「ありのまま因子」で、自分らしさを持って、他者と比べない人は幸せを感じる度合いが高い。

・確かにそう感じる。企業として人を活かす経営、人に活かされる経営を行うには、その企業で働く幸せを、しっかりと位置付ける必要があろう。

・好きなことをやって報酬がもらえるならば、それに越したことはない。しかし、多くの人々は、がまんしながら労働を提供し、収入を得ていると感じているかもしれない。苦と楽のバランスをいかにとっていくか。人生の生き方そのものであろう。

・人は年を取っていく。しかし、スマートに過ごしたいと誰もが願う。スマートエイジングとは、アンチエイジングではない。加齢、老化、退化は灰色ではない。川島隆太教授(東北大)は、かっこよくスマートに年をとっていくことをスマートエイジングと名付けた。加齢は、老化ではなく、発達であり成長であるという。

・ここをどう科学的に分析していくか。川島教授は、脳の分析を活かすニューロマーケティングを研究している。実際、気持ちよさやわるさを記録して、コミュニケーションの質を定量化する。こころにある気持ちが脳の活動として同期化する。こうした場を作ると一体感が生まれる。

・川島教授が開発した脳トレは、脳の活動を活性化させる。認知、判断、操作と通してさまざまなトレーニングを行う。集中すると脳の機能は低下するが、逆に瞑想するとストレスが減少する。

・例えば、リモートの質、VRにおけるアバターの役割、歯と認知症の関わり、食欲・睡眠との関係など、脳の働きを実証的にみていくことで、ビジネスとの結びつきも分析できるという。

・スマートエイジングとは、加齢(エイジング)の適応力を高めていくことにある。このスマートエイジングをビジネスにしていくには、認知、身体、栄養、社会との関りについて、エビデンス(科学的根拠)を明らかにする必要がある。

・つまり、効果があるということを、再現性をもって実証しないと誰も信用してくれない。人を騙すような商法になりかねないし、効果がなければ人は続けない。逆にいえば、エビデンスをもとに、利用者が続けたくなるような仕組みを構築することが重要である、と東北大学ナレッジキャストの村田裕之常務は強調する。

・スマートエイジングに向けて、脳を活性化するには、例えば、1)何かやったらすぐに答え合わせをして、即時フィードバックする。脳の作動記憶の低下に対して、満点と褒めて強化する。

・2)適切な目標設定をして、まずはできたらうれしい目標、次にやや高めの目標を設定していく。3)同じ悩みを持つ人々との交流を通して、トレーニングや不具合の解消を共有する。4)スマホやPCが苦手な人に対してはTVを使うなど工夫をしていく。

・何らかのトレーニングは、常にその人の状態に合わせる仕組みが必要である。どんなやり方にも、うまく合わない人が2~3割はいる。その人に合うニューロフィードバックのプログラムを作っていくことが重要であると、村田常務は強調する。

・その上で、ストーリーを加えていく。例えば、健康になれるマンションでは、マンションにウェルネス コネクト プログラムがついていて、健康トレーニングが組み込まれている、という具合である。

・カーブスの「30分サーキットトレーニング」の効果も実証研究されている。2020年8月に、カーブスと東北大学加齢医学研究所は共同研究を通して、このサーキットトレーニングを行うことによって、認知機能や活力を即時的に向上させる、というエビデンスを得た。

・また、昨年11月より次のスマートエイジングの共同研究を開始した。①運動、②栄養、③社会性、④認知の4条件について、包括的な研究を進めている。女性だけでなく、メンズカーブスを使って男性も対象にしている。

・今やどの分野でも、エビデンスが求められている。エビデンスベースの成果を活かすビジネスに、大いに注目したい。

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