実感できるサステナビリティとは~生活者としての3つの側面
・サステナビリティとは何か。分かっているようで、自分の言葉で語って、まわりの人々に本当に理解してもらえるだろうか。MUFJ資産形成研究所による「サステナビリティに関する1万人意識調査」(2022年2月公表)によると、サステナブル投資に関する認知はまだかなり低い。
・この調査によると、1)SDGs/ESGへの認知度は高い、2)企業のサステナブル活動への好感度はかなり高まっているが、まだ十分とはいえない、3)サステナブル投資については、よくわからない人が大半を占める。
・サステナビリティに関する認知度、共感度をWebで1万人にアンケートした。消費者目線、従業員目線、投資家目線で聞いている。サステナビリティをSDGsとESGに結び付けて認知している人はかなり増えている。共感できる人も30代以下や女性で多い。
・消費者として商品やサービスを購入する時、E&S(環境や人権などの社会性)に関して意識の高い企業の方が、価格差が少なければ優先される。そこで働く人々にとって、経営者がサステナビリティに高い意識を有していると、自らの共感も高まるようだ。社員はサステナビリティ活動に積極的になり、働き易さをまわりにもアピールする。
・投資家としてみると、サステナブル投資を実践している人はまだ著しく少ない。サステナブルなE&Sへの貢献や応援を重視するといっても、やはり中長期のリターンへの期待の方が大きいとみられる。
・一方で、サステナブル投資は、①金融機関の販売促進策ではないか、②手数料が高い、③短期的ブームではないか、といった声も出ているという。未経験者にとっては、中長期のリターン、E&Sへの貢献、リスクの抑制に関して、もっと知りたいというニーズが強い。
・企業にとってのサステナビリティとは、まずは持続可能な社会を作るための社会的価値創造に貢献することである。同時に、企業のESG活動をベースに、企業価値創造を推進する。この企業価値には、社会的価値と経済的価値の双方を含んでいる。この共有部分をどこまで広げられるか。ここが問われている。
・社会的価値については、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)が分かり易い。一方で、ウクライナでの戦争が、SDGsに多大な影を投げかけている。直接的には、17項目の1つである「平和と公正をすべての人に」に反するが、広く考えれば、戦争は17項目のすべてを台無しにする。
・国と国との戦争であるから、個別企業の範疇を超えている。その戦争が、全ての枠組みを壊していく。
・本来なら、1)生活者として、生老病死を安寧に過ごしていくこと、2)飢餓、貧困、エネルギー不足、水不足を乗り越え、自然をクリーンに保ち、生物多様性を確保していくこと、3)働き甲斐のある生活社会基盤を創り、仲良く平和と公正に包まれていくこと、を求めている。
・戦争にどう対峙するか。人道支援をベースに、中長期的な平和の確保に向けて戦っていくしかない。日本は平和を守るために、どのように対応するのか。正義のために、どう関わっていくのか。何としても破壊や壊滅の危機を乗り越えていく必要がある。
・企業におけるサステナビリティ戦略は再考が迫られている。グローバル経済の安定が前提ではなくなった。市場経済が成立する範囲が狭まっている。
・エネルギー、希少資源、食料などに多大な影響が出てこよう。さらに、サイバー攻撃によるセキュリティーの確保という点では、直接的な被害も想定され、その防御も喫緊の課題である。
・日本におけるサステナビリティに関する意識は、こうした新たな紛争をまだ十分織り込んでいないとみられる。生活者は、①消費者であり、②働く人々であり、③資産形成を営む投資家でもある。この3つの様態を使い分けていく。
・どの立場においても、1)提供される商品やサービスのバリュー、2)それを創り出す企業のサプライチェーン、3)投資対象とするポートフォリオのパフォーマンス、に目を配っていくことが求められる。紛争に加担していないか。平和や正義を含めてサステナビリティに貢献しているかをみていく必要がある。
・その上で、サステナビリティの価値を判断したい。ESGを重視したサステナビリティ戦略の実行で、企業は中長期的に価値創造を行っていく。顧客の体験価値、従業員の働き方満足度、株主としての投資価値、自然環境の確保が、持続性の源泉である。
・その軸は「共感・協創にあり」という今回の分析は重要な視点であろう。金融機関に求められる役割は、オンラインを活用しながらも、顔が見えるような信頼のネットワーク作りが求められる。これを実践する資産運用会社を選び、大いに利用していきたい。