アクティビストの企業価値創造~共有を通して
・アクティビストで著名なロバート・ヘイル氏の話を昨年11月に視聴した。彼はバリューアクト・キャピタルのパートナーで、同社は2000年に創業、現在160億ドルを運用している。日本へは、この5年で4000億円を投資した。
・創業当初は北米の企業に投資し、2006年からは欧州へも展開した。そして、2017年から日本に参入した。日本の魅力は3つあるという。
・1)世界に通用するトップクラスの企業がある。2)日本の社会がもっとリターンを求めている。3)企業をとりまくコミュニティが変化し、コーポレートガバナンスの強化が進んでいる。
・これによって、日本企業とのエンゲージメントが効くようになると判断し、投資のチャンスを見い出した。ヘイル氏は現在、オンリパスとJSRで社外取締役を務めている。
・投資のアプローチとしては、特別なバリューを長期的に作れるかどうかを最も重視する。①コアにスペシャルバリューがあるか、②経営陣がそれを実現できるか、③それを実現する市場はあるか、をみていく。
・難しい点は、1)企業を見分けること、2)そのためによくリサーチして、ユニークな洞察を行うこと、3)その企業をきちんと支援していくこと、にあると強調した。
・バリューアクト・キャピタルは、50社以上の企業に社外取締役を送り、経験を積んできた。既に一定のツールキット(ノウハウ)を有しているので、それをベースにエンゲージメントを行いサポートしていく。
・北米、欧州の企業でやってきたことが、日本でも通用すると感じている。大事なことは経営陣とパートナーを組むことであると語る。
・では、どのようなアドバイスを行うのか。第1に、経営者がマイノリティ株主の声(ボイス)を聴く耳を持つかどうか。あくまでもデータを共有して、友好な関係を築いていく。第2に、経営陣に見えていない価値を、深いリサーチを通して見せていく。その上で経営改革の提案を出し、共有しつつ実行していく。
・投資のタイムホライゾンは、長期的で10年単位である。社外取締役としてボードに入っている会社は、多くの場合5年以上保有している。見切りをつけることもあるが、5年から10年が基本となる。
・JSR、オリンパス、任天堂、セブン&アイHDの4社の長期ポテンシャルに期待して、4000億円を投資している。
・次のターゲットとしては、1)ユニークな価値を提供できそうな会社、2)グローバルな成長ポテンシャルが見込めるような会社、3)ディスラプション(破壊的な変革)を乗り超えられそうな会社、に注目していく。
・プライム市場への市場改革が始まろうとしている。コーポレートガバナンスの改革にも、さらに変化が出ている。社外取締役の役割も変わりつつある。企業変革のカギは、戦略的リーダーシップにある。また、投資の最終判断は、人にフォーカスしていると明言した。
・オリンパスは、グローバルなメディカル機器の企業になりたいと宣言している。竹内社長の変革をサポートしている。JSRはコアビジネスに集中しており、IoT、ライフサイエンスのマテリアルでイノベーションが期待できる。
・任天堂は、キャラクターがディズニーと同じレベルのアセットになっている。セブン&アイは、米国ブランドをベースにグローバルな成長ポテンシャルがある。このような見立てである。
・投資家として、単に投資するだけでなく、もう一歩踏み込んで、企業の価値創出に直接関わっていく。その新しい価値を共有するという真っ当なアクティビストの活動に大いに注目したい。