新しい株主総会~リアルのよさをどこに

2020/06/22 <>

・嵐のコンサートはなぜこんなに人気があるのだろう。ファンクラブの会員は300万人近い。年会費が4000円であるから、これで120億円の収入となる。1回約5万人のツアーを年15回は催す。グッズの購入も入れると1人1万円を超えるので、これで75億円。コンサートの後のDVDを100万枚売ると100億円。なんともすごいビジネスである。

・このようなコンサートが現在中止されている。コロナショックが収まった後に、こうしたイベントは復活するであろうか。嵐は今年末で活動を休止するというが、来年まで延びないのだろうか。

・わが家族は嵐のファンであるが、筆者はクラシックコンサートが好きである。なぜ生(ライブ)がいいのか。CDやDVDもよいが、生にはかなわない。同じ演奏でも。その1回だけの本物である。一体となった臨場感の中で感動が生まれ、伝わってくる。観客も参加者であり、一緒に舞台を作り上げている。

・さて、株主総会はどうであろう。2月決算の会社は5月に開かれた。3月決算の会社は6月に株主総会が催される。従来は株主にできるだけ来てほしいと考え、総会の後に株主説明会を行うという企業も多かった。

・今年は全く異なる。コロナショックの影響で、監査が遅れている。大幅な減損で業績が急落している。先行きの見通しも立てられない。そんな企業も多い。

・ましてや、新型コロナウイルスに株主が感染したらたまらない。ということで、総会にはできるだけ来てほしくない。しかし、議決権行使だけはきちんとやってほしいという姿勢である。

・新しい株主総会はどうなるのか。株主の立場に立って、筆者の希望を意見として述べてみたい。まず、株主になっているのであるから、このまま持ち続けるか、持株を増やすか、株主をやめるかの判断を、総会で決めたいと思う。

・そのためには、議決権行使に向け、総会前に十分な説明がほしい。3月決算会社なら、6月の総会までに時間はあるので、決算発表の後の決算説明会とは別に、株主説明会を総会前に開いてほしい。当然、Webでよい。株主だけに語る株主説明会である。

・単なる会社の説明、決算の説明ではない。会社の将来ビジョン、次に作り上げたいビジネスモデル、そのための経営資源の創出や投入、目指すべき企業に向けての戦略とKPIなどを統合的に語ってほしい。

・それをベースに議決権の行使を行う。議決権はネット中心が望ましい。できるならネットで総会に参加して、議案に対してQ&Aを行い、その場で議決に参加できる方式がよい。

・ネットでの議決権行使を誘導するために、それを行ってくれた株主に、何かインセンティブをつけてもよい。賛成票を要求するのではなく、反対票でもかまわない。株主優待のプラスアルファと考えればよい。

・今年の株主総会では、総会に参加しても、できるだけ早く終える進行となろう。もともとお土産のない会社が多いが、株主説明会もない、経営陣との懇談や送迎の挨拶もない。一言でいえば、コロナ予防優先の愛想のない総会となろう。

・緊急事態なので止む無しである。しかし、本来の株主総会からは程遠い。従来の株主総会は、総会当日前に、主要株主からの賛同を得て、議案の可否は分かっていることが大半である。機関投資家には、議案について十分説明し意見交換してある。その機関投資家や企業の有力株主は会場に来ない。

・会場に来るのは、大半が個人投資家である。かつては少数株主でも、総会屋、特定の組織代表、個別の利害をかかえた株主などが会場で騒いだこともあった。今やかなり限定的になっており、そのような緊迫感は少ない。

・機関投資家も個人投資家も、事前に会社の状況を把握して、議決権を行使しているなら、総会当日の行事はかなり形式的なものとなる。もともと、その要素は強かった。こうした総会に参加したいと思う人は少なくなろう。

・それを経営陣はどう思うか。総会において、経営サイドの出席者も全員出る必要はない。株主から質問が出た時に答えられるようになっていればよい。CEOとCFO、監査担当役員が1名いれば十分である。後は、Webで参加していれば対応できる。

・こうした株主総会に行きたいであろうか。例年いくつかの株主総会に参加しているが、今年はWebだけになりそうである。たぶん楽しくないと思う。なぜなら、リアルの臨場感が伝わってこないからである。

・まず、リアルな総会を面白くしてほしい。次にそれにネットで参加してもライブ感が楽しめるようにしてほしい。

・議決権行使は最も重要な決議であり、それは事前投票でほぼ決まってしまう。しかし、会社の実態、将来をもっとよく知りたい。経営陣や社員、顧客をもっと知りたい。ステークホールダーも含めた集いの場として盛り上げるのはいかがであろうか。

・形式張らずに、リアルな株主総会を面白くして、それをネットでも楽しめるようにしてほしい。コロナショック後の新しい株主総会にぜひ期待したい。

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