株主総会は会社説明会の場

2019/08/13

・SBIホールディングスの株主総会に参加した。5月の株主説明会で北尾社長の話は聴いていたので、わざわざ行くほどではないかとも思った。しかし、どんな総会なのか、一度は見ておきたいと出かけた。印象は、正に驚くべき総会であった。

・総会自体は淡々としたものであった。実際、事業報告は口頭のみで、スライドも使わない。招集通知に書いてある内容を北尾社長が報告した。その後、決議事項3つ(取締役12名選任、補欠監査役1名選任、譲渡制限付株式報酬)についても、簡潔に説明した。

・次に質疑に入ったが、北尾議長は、決議事項の議案3つについての質問は受けるが、それ以外は受けないと明確に釘をさした。どの議案に関するものか、第1号、第2号、第3号議案についてと言ってから、質問内容に入るようにと限定した。総会進行の本来の筋を通した。

・普通は、事業報告に関する質問も受けるので、これを入れると会社全般に関わる質問が、何でもできることになる。いろんな質問ができるので、とんでもない個人的な質問が飛び出したり、何らかの意見表明の場となったり、議論が発散しかねない。それを受け止めながら調整していくのが議長であるが、北尾社長はそれを最初から受けないようにした。

・実際、ビットコインに関する質問が出たが、議長は即座に議案に関係ないと却下し、後程の説明会で詳しく話すとした。一方、譲渡制限付株式報酬とは何かという質問に対しては、管理担当の副社長を指名し、簡明に答えるようにと指示した。

・総会は30分足らずで終わり、その後、株主向け会社説明会(「経営近況説明会」)が始まった。テーマは、1)SBI 20周年の歩み、2)金融の近未来、3)今後の展望であった。全役員が並ぶ中(社外取締役の竹中平蔵氏や久保純子氏も含めて)、北尾社長が1人で2時間半のプレゼンを行った。説明会は10:30~13:00までプレゼンが続き、その後Q&Aとなった。

・SBIは年2回、株主説明会を行っている。春と秋に株主に対して主要都市で行う。東京の2回に参加してみたが、この時も北尾社長が1人で全事業について90分ほど話した。その後質問を受け、これには担当役員が答えた。

・何はともあれ長い。株主に対して、トップ自らここまで丁寧に全事業について詳細な説明する企業はあまりない。機関投資家向けにIRデイを設けて、各事業部のトップが一日かけてプレゼンし、Q&Aを行う大手企業もあるが、それでもトップのプレゼンはせいぜい60分であろう。

・総会後の株主説明会で、20周年記念も含めて150分話した。おかげで、会社のこと、業界のこと、将来に対するトップの思いや戦略がよくわかった。では、何が分かったのか。興味深かったことをいくつか取り上げてみたい。

・SBIは、ソフトバンクの財務管理本部が母体であるが、1999年にソフトバンクが持株会社制をとった時に、中間持株会社としてインターネット金融事業への本格進出を目指した。2005年にソフトバンクから完全独立して、今の会社が本格的にスタートした。孫さんは、自らの本業で勝負しており、先行投資が大赤字の中で、金融事業をかかえることはできなかった。むしろ、自立することが望ましいと判断した。

・創業者となった北尾氏は、金融生態系の形成を目指して、さまざまな金融子会社を急ピッチで作っていった。当時はそんなに手を広げて大丈夫かとも思った。ネット時代を先取りする差別化を武器に、バラバラの事業のコングロマリットではなく、繋がりのあるエコシステムを追求した。エコシステムの基本は、シナジーが大きく働くという点にある。

・2008年9月のリーマンショックを乗り切った後、5つの事業の中身を各々のユニットが輝くように、事業の再編と成長を図った。証券、銀行、生保、損保、決済の5つの事業主体(ペンタゴン経営)の中の事業ユニットを選別しながら、ブリリアントカット(もっとも輝く58面体カット)化を展開した。

・これを2013年に現在の3つの事業本部制とした。金融サービス事業、アセットマネジメント事業、バイオ関連事業である。業績面でのコアは、SBI証券とSBIインベストメントであった。

・事業の自律発展の仕組みは、SBIモデル(価値創造の仕組み)にある。①まず投資(ベンチャーへのPE投資)をして、②その成果をグループ内へ導入し、③そしてグループ全体に拡散させていく。そのリーダーシップと目利きを北尾氏が担ってきたが、次第に人材が育って、組織能力が大きく高まっている。

・次なるエコシステムのターゲットとして、地域金融機関とのコネクティビティとデジタルアセット(暗号資産を含む)においている。北尾氏は、経営トップの心構えをすべてヒト(人材)においており、①信頼、②志、③誠実、④胆識、⑤度量、⑥育成、⑦見抜、⑧組織運営、を実践する。

・先見性は、1)幾(きざし)、2)期(タイミング)、3)機(ツボ)という3つのキにあり、という指摘も興味深い。

・顧客の証券口座数で、2年以内に業界トップの野村證券を抜く。バイオ事業は、今は大赤字であるがまもなく花開く。でも、この事業は北尾氏しか分からないので、これ以上の投資はしないという。こうした見解にも注目したい。

・フィンテックへの投資では、SBIが最も先行しており、新しい金融プラットフォーム作りで、その地位の確立を目指している。SBIネオモバイル証券の立ち上げも画期的である。時価総額1兆円は見えているので、その先に期待したい。

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