ブラジルの金融政策(8月)~今後の金融政策と為替相場展望
- 政策金利は2.0%に引き下げられました。インフレ率が目標を大きく下回り、さらに緩和を強化しました。
- 生活維持のための給付措置が切れる年明け後の行方が懸念され、追加緩和の可能性もあります。
- 為替相場は、景気が回復に転じたのは追い風も、低金利長期化観測、コロナの感染拡大が足かせです。
インフレ目標達成へ緩和強化
ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、8月4-5日のCopom※で、政策金利であるSELIC金利◇を2.25%から2%へ引き下げました(全会一致)。9会合連続の利下げです。コロナ禍による景気後退で、インフレ率が大幅に低下し、景気刺激を通じてインフレ目標を達成すべく、緩和をさらに強化しました。
6月のCPIは、エネルギーの下げ止まりで総合が前年同月比+2.1%とやや上昇したものの、幅広い品目で鈍化し、コアは同+1.6%と5月からさらに低下しました。景気後退による需要の低迷が影響していることは明らかです。中銀は、これまでの緩和効果で今後は景気かが回復し、2021年以降は上昇に向かうことを想定していますが、現在実施されている、生活維持のための各種給付措置は年内までなので、年明け後の景気動向が懸念されます。中銀は金融緩和の余地は狭まってきたとしていますが、状況次第では追加利下げの可能性が残ります。
※Copom(Comitê de Política Monetária):金融政策委員会 ◇SELIC(Sistema Especial de Liquidação e Custódi):決済・預託特別システム
コロナが不透明要素
ブラジルレアル(以下、レアル)相場は、景気が回復に転じてきたことが好感され、7月は一時強含みの局面もありましたが、足元は上値の重い展開となっています。追加緩和観測に加え、その後も低金利が長期化するとの観測が強まっているためです。
また、新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かう気配がないことも、レアルの上値が重い一因になっていると思われます。ブラジルは全国的なロックダウン(都市封鎖)をしておらず(サンパウロなど大都市で一時実施していた)、累積のPCR検査陽性者数、死亡者数共に米国に次ぐ世界第2位です。新型コロナウイルスに対する政府の姿勢に対して、内外からのイメージも芳しくありません。感染収束で世界に出遅れると、その分景気回復の足かせになるとの見方もあり、レアルは当面、景気とコロナの感染状況とを両にらみで、方向感のない展開になると見込まれます。
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