スペイン総選挙の結果について~EU体制への影響は?

2019/05/07 <>
  1. スペイン総選挙は中道左派の社会労働党が勝利し、ほかの左派政党との連携を模索する流れです。
  2. 右派政党の台頭が注目されていますが、議席は多くなく、政治リスクを高めることはないと見られます。
  3. EU議会選挙では中道の勝利が予想され、EU体制を揺るがす政治状況の変化はないと見込まれます

政権の形はまだ不透明

4月28日、スペインで総選挙が実施されました。少数与党(前回選挙85議席)の社会労働党(中道左派)が、19年予算を否決され、議会を解散していました。

下院の選挙結果は社会労働党が勝利し、前回選挙比+38議席の123議席を獲得しました。社会福祉の充実を主張したことが支持されましたが、過半数(176議席)には届きませんでした。今後、急進左派でEU(欧州連合)懐疑派のポデモス(英語で”We Can”の意)との連立を図りますが、それでも届かず、現在、左派系地域政党との連携を模索しています。カタルーニャ州の独立志向が強い政党もあり、連携に向けた交渉の行方は現時点では不透明です。

一方、右派政党では、EU懐疑派で移民に厳しい政策を掲げるVOX(ラテン語の「声」の意)が、24議席と下院で初めて議席を獲得しました。ただし、政治リスクを高めるほどの議席数ではないと思われます。前政権を担った国民党(中道右派)は、議席を半分以下に減らす歴史的な敗北を喫し、穏健派カタルーニャ地域政党のシウダダノス(「市民たち」の意)は大幅に議席を増やしました。

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右派台頭の流れもEU体制を揺るがすほどではない

今年は3月3日にエストニア、4月14日にフィンランドで総選挙が実施され、いずれも右派政党が躍進しました。スペインでも同様の流れが続いたことになります。ただし、いずれも政権は獲得できておらず、欧州の政治環境を大きく変えるには至っていません。

次の政治イベントは5月23~26日に実施されるEU議会選挙です。4月中旬に実施された世論調査によると、左派、中道、右派の議席ウエイトは、それぞれ34%、42%、24%と予想されています。14年の前回選挙と比べると、それぞれ-5ポイント、+3ポイント、+2ポイントと、左派の一人負けと右派の躍進が予想されていますが、中道が最も優位であることには変わりありません。全体的には右傾化が進むものの、EU体制が揺らぐような政治状況の変化は起きないと見込まれます。

年内では、さらに周辺国7ヵ国で総選挙や大統領選挙が控えていますが、大きな政治イベントを通過することになり、英国のEU離脱問題以外の政治リスクはひとまず落ち着くと考えます。

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