中国全人代が開幕
先週の土曜日(3月5日)から中国で全人代(全国人民代表大会)が開幕しました。全人代については、「日本の国会に相当し、年1回開催され、中国の法律上で最高権力機関」という説明がなされるように、重要な位置付けっぽいことが分かります。また、全人代の開幕日に首相が行う演説においては、今年の経済成長率目標や経済政策の方針が表明され、注目度が高いイベントとされています。さらに、今年(2016年)は2020年までの新5カ年計画が始まる年ですし、より一層注目を集めています。
では、実際に開幕の演壇に立った李克強首相の口からどんな内容が飛び出したのでしょうか?まず、2016年の経済成長率目標は「6.5~7%」のレンジが掲げられました。また、その他については、「過剰生産の解消(供給サイドの改革)」や「国営企業改革と民間企業の参入障壁の緩和」、「交通網を中心としたインフラ投資」、「技術革新を進める」「都市化や環境対策の推進」、「反腐敗運動の継続」などがキーワードとして挙がりました。
実は、これらに挙げられた内容は昨年11月に開催された「5中全会」や12月の中央経済工作会議で公表されたものとほぼ同じになっています。以前も、中国が取り組むべき課題として、「三去(生産過剰・生産コスト過剰・不動産在庫過剰の改善)」、「一降(金融システムの安定化)」、「一補(競争力の強化や成長分野の拡大)」という政策スローガンを紹介しましたが、やはり今回の全人代での講演内容とあまり変わっていません。
5中全会を正確に言うと、「(第18期)中国共産党中央委員会第5回全体会議」となりますが、要は中国共産党のお偉いさんが集まる会議です。また、中央経済工作会議とは、共産党の中央委員と政府(国務院)が経済政策について話し合う会議です。中国は共産党による一党独裁政権のため、政治プロセスとしては、共産党による政策方針や決定事項が国の最高機関である全人代を経て、正式に決定されるという流れになっています。そのため、全人代は共産党の決定を国として承認しているだけの面が強く、実は全人代は注目度が高い割に、目新しいものが出てくることはあまり多くありません。
目新しいものがないとはいえ、中国が取り組もうとしている課題と、世界が中国に対して懸念している課題とのあいだに認識のズレがないことを全人代の開幕演説で確認できましたので、十分に意義があったと言えます。今後は政策実行力と進捗具合を確認していくという見方を固めることができるからです。また、政策に対して今のところ海外からのネガティブな反応も少なく、理解を得られたとするならば、多少の人民元安を容認してもらえることにもつながります。
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