リスク「オン」と「オフ」の境目
G20財務相・中銀総裁会合を終えて迎えた今週の日経平均は戻りを試す展開となり、17,000円台回復もうかがう展開となっています。昨年12月から始まった下落トレンドは2月半ばに15,000円割れとなった後、2週間以上も16,000円水準を挟んだもみ合いが続いていましたし、売りの勢いが一服し、リスク「オフ」ムードが後退していると考えることができそうですが、それがイコールとしてリスク「オン」になったのかは冷静に判断する必要がありそうです。
先週末に開かれたG20会合で発表された共同声明のポイントは、「世界経済の見通しが下方修正されるリスクがある」ことと、「足元の市場の動向は実体経済を反映していない」現状を踏まえ、経済と市場の安定のために、「個別および集団的に、金融、財政、構造上のあらゆる政策手段を講じる」という3点が挙げられます。
具体的に何かが決まったわけでもないほか、先日決定した日銀のマイナス金利導入に関しても、通貨安競争を助長する恐れがあるとして一部から声が挙がった模様です(黒田日銀総裁は否定していますが)。来週に欧州でECB理事会、再来週に日銀金融政策決定会合や米FOMCが控えていますが、特にECB理事会と日銀金融政策決定会合について、安易に通貨安につながる政策導入への牽制と見ることもできるため、金融政策会合に対する期待値は下がったと言えます。実際に、ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は、「為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に、事前に通知することで合意した」ことを表明しています。
その一方で、G20会合後に中国が人民元の基準値を切り下げたほか、預金準備率の引き下げを実施するなど、各国の足並みは揃っていません。もっとも、中国については景気減速が懸念される中、今週末から開幕する全人代(全国人民代表大会)で、何らかの財政出動や構造改革などを決定し、「今回の人民元安政策は総合的な経済対策の一環」としてバランスをとっているというスタンスなのかもしれません。日本国内でも夏場の参院選を前に財政出動による経済政策の観測が一部で高まっています。
少なくとも、今回のG20会合を受けて、これまでのような円安を見込む動きは取りにくく、逆に円高を試しやすくなった可能性があります。また、米国に目を向けても、最近までの経済減速に対する過度な懸念は後退していますが、大統領選の中で政治リスクが高まるかもしれません。今週のいわゆる「スーパーチューズデイ」では民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏が一歩リードする結果となりましたが、両者ともにTPPに対して否定的ですし、トランプ氏に至っては言動が支持されている面があり、政策に焦点があたる頃に状況がどうなるのかが不透明です。
今週の国内株式市場の戻りは久々に強さが感じられ、昨年末からの下落トレンドはひとまず終了したと見て良いと思いますが、相場環境からは「本格的なリスクオンに転じた」とはまだ言い切れません。3月に国内外で予定されている多くのイベントをこなしながら、株価の落ち着きどころを探る展開がメインシナリオとして想定されそうです。
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