中国人民元の国際化

2015/06/19

今週の国内株市場は、米国のFOMCやユーロ圏財務相会合、日銀の金融政策決定会合などの注目イベントが控えていたこともあり、軟調な動きが目立っています。

そんな中、18日(木)付の日本経済新聞の1面トップに、国内初の人民元建ての債券が発行されるとの記事が掲載されました。人民元建て債券の発行は2011年の日中首脳会談において、「是非やりましょう」ということになっていたのですが、その後の尖閣諸島情勢などによる日中関係の悪化によって、実現に至るまでかなりの時間がかかりました。

中国当局は現在、人民元の国際化に向けて改革に乗り出している最中です。今回のように、中国国外の金融機関による人民元建て債券の一段の発行を認めているのもその取り組みのひとつですし、投資ファンドが銀行間債券市場への参入することを解禁する方針も示しています。また、国際通貨基金(IMF)に対しては、人民元の特別引き出し権(SDR)の採用を求めたり、外国の中央銀行に対しては、外貨準備に人民元を組み入れるよう促す意向も示しています。

こうした取り組みが効を奏してか、近年、貿易における人民元決済が増加傾向です。とりわけ、中国が資源を輸入している中東や中南米や豪州などの人民元決済比率が高まっていて、中南米や中東で5割以上、豪州でも2割以上まで引き上がっています。

人民元決済の比率を高めている各国は手にした人民元の運用先を「さてどうするか?」ということになります。また、主要欧州諸国の多くがAIIB(アジアインフラ開発銀行)に参加を表明したこともあり、多くの国々で人民元での決済が増加していくと思われます。それに伴い、人民元建ての投資商品のニーズも高まることになりますので、今回のような事例は今後も増えてきそうです。

人民元の国際化は中国にとって多くのメリットがあります。例えば、資源の輸入代金を人民元で支払えば通貨安で輸入コストが増えることも避けられますし、人民元を手にした各国が運用先として国債など、人民元建ての投資商品を買ってくれることになり、資金調達が容易になるなどです。

これまでの中国は、高成長を遂げてきたという魅力があったため、今までは黙っていても海外から資金が流入してきましたが、最近は景気減速懸念や地方政府の債務問題などが不安材料となり、これまでのような資金調達が難しくなっていく可能性があります。特に最近の中国当局の取り組みが急ピッチな印象ですので、人民元の国際化はこうした事態に対処するための取り組みと考えることができます。

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