FRB議長と米利上げへの意識

2015/05/29

今週の国内株市場は日経平均が27日(水)の取引終了時点で9連騰を見せるなど、先週からの上昇基調が続いています。こうした株価上昇の後押し材料のひとつが、足元で進行している為替市場の「ドル高・円安」傾向です。5月に入ってからは1ドル=120円を挟んでのもみ合いがずっと続いていたのですが、27日には一時124円台に乗せるなど、ここ数日間のうちに円安が急ピッチで進行しました。

為替市場がにわかに動き出したのは、イエレン米FRB議長の発言がきっかけのようです。イエレン議長は先週末(22日(金))に、米ロードアイランド州の商工会議所で講演したのですが、マーケットの関心事である景気と利上げについて、「最近までの米景気減速は一時的な要因によるもの」、「(景気回復が想定通りであれば」年内のいずれかのタイミングで利上げ」という認識を示したことで、利上げ観測を織り込む格好でドルが買われました。実際に利上げに踏み切るタイミングは景気次第でもあるため依然として不透明ですが、「条件が整い次第、利上げをしたい」というイエレン議長の本音も垣間見せた印象です。

また、イエレン議長絡みで別のところからも利上げ観測が高まっています。それは8月に行われるジャクソンホール会議にイエレン議長が出席しない見通しというものです。ジャクソンホール会議とは、カンザスシティー連銀主催で毎年開催される、経済シンポジウムのことです。各国から中銀総裁やエコノミストなどの要人が参加する割と大きなイベントです。

実は、バーナンキ前FRB議長も2013年の同イベントを欠席しています。当時は「いつ量的緩和の縮小を始めるのか?」が注目されていたため、会議での発言がマーケットに余計な混乱を招きたくないという配慮があったのかもしれません。結局、量的緩和の縮小が始まったのは翌2014年1月からでした(縮小の決定自体は12月の会合でした)。

今回も「いつ利上げを始めるのか?」が注目されており、イエレン議長も前議長の例に倣った可能性があります。とすると、利上げの決定は先程も紹介した年内のいずれかのタイミングということを前提にすれば、遅くとも12月までには行われることになり、さらに、足元の景気認識が強気の姿勢であるため、早ければ9月にも決定されるという観測がマーケットでは高まっていると考えられます。ちなみに、今回のジャクソンホール会議のテーマは「インフレと金融政策」のようです。

 

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