株高だけが際立つ中国株市場
「アフター米雇用統計」となった週末の5月10日(日)に、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が利下げを発表しました。
具体的には、貸出金利と預金金利の基準金利をそれぞれ0.25%引き下げ、1年物で貸出金利が5.10%、預金金利が2.25%となりましたが、引き下げ幅よりも気になるのはそのペースで、昨年11月に約2年4カ月ぶりの利下げを発表して以降、今年の3月、そして今回の5月と利下げの間隔が短くなっています。
中国人民銀行の声明では、「中国経済は比較的大きな下向き圧力に直面しているため、資金調達コストを下げて、実体経済の健全な発展を支援する」と説明しています。事実、今週13日(水)にまとめて発表された中国4月の経済指標(鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資)はすべて市場予想を下回り、足元の中国経済は減速感が強まっています。今回の利下げはこうした冴えない経済指標の結果を見据えて先手を打った可能性もありそうですが、利下げのペースの速さからすると、これまでのところ金融緩和がイマイチ景気浮揚に貢献していない印象です。
その一方で、中国の株式市場は過熱していると言って良いほど好調です。4月末の上海総合指数は2008年2月以来となる4,500台の水準に達し、5月に入ってやや調整色が強まったものの、今回の利下げを受けて再び切り返し、5月13日の終値は4,375でした。昨年11月の利下げ開始前は2,300台の水準でしたから、約半年のあいだに倍近く上昇してきたことになりますが、その期間に発表された経済指標や企業業績の結果は株価の上昇を裏付けるほど力強いものとは言えません。
一般的には、利下げなどの金融緩和によって、資金調達のコストが下がり、設備投資が促され、カネとモノが動き出して経済が活発化するというリクツですが、現在の中国経済が抱えている大きな問題のひとつは、「製造業の生産設備と不動産在庫の二つの「過剰」をどう調整するのか?」ですから、利下げがすぐに設備投資につながるとは考えにくいです。
そのため、さらなる金融緩和の他に、セットとなる景気対策などが期待され、その思惑による買いが中国株市場に流入していると考えられます。政府が掲げている、鉄道などのインフラ投資や省エネ・環境保護などの「七大戦略的新興産業」や、現代版のシルクロードとされる「一帯一路」構想、多くの参加国を集めたAIIB(アジアインフラ投資銀行)などの材料が(ちょうど)良いタイミングで出ていることも買いを誘っていると思われます。
確かに、利下げピッチの速さは、中国当局が景気減速を警戒していることの表れとも言えそうですが、債券市場での相次ぐデフォルト騒ぎや、中小企業の資金繰りなど、中国経済内での「金回り」が悪くなっている報道も増えており、資金繰りを支援する目的の自転車操業的な金融緩和という見方もできるため、株高の演出とは別に、きちんと実体経済の動向をチェックしていく必要がありそうです。
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