Kudan<4425> 18年3月期に投入の「KudanSLAM」のライセンス収入が今後の収益を牽引

2019/01/04

英国に研究開発拠点を持つ人工知覚技術のリーディングカンパニー
18年3月期に投入の「KudanSLAM」のライセンス収入が今後の収益を牽引

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 人工知覚の研究開発とライセンス提供を行う企業
Kudan(以下、同社)は、人工知覚(Artificial Perception)と呼ばれる、コンピュータやロボットに付与される視覚を司るアルゴリズム及び組込要素技術の研究開発とライセンス提供を行う企業である。

人工知能(以下、AI)が人間の脳に該当するなら、人工知覚(以下、AP)は人間の眼に当たる。人間の体の場合、眼で得られた視覚情報が脳に送られ、脳がそれをもとに適切な判断を下し、必要に応じて眼に指示を出す。脳と眼の連携があってはじめて人間の体にとって必要な機能が実現できるのと同じように、AIとAPも相互に連動してはじめて、機械の自律的な行動や機能が実現される。

APは、空間把握や立体感覚の処理を行う複数の空間認識技術の組み合わせによって実現される。これらの要素技術のうち、代表的なものがSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)と呼ばれる、3Dで空間認識をするソフトウェア技術である。

◆ 「機械の眼」を実現する「KudanSLAM」
SLAMはカメラ画像やセンサー情報を用いて、現実空間をリアルタイムで分析し、3D地図の作成や自己位置推定を行うことを可能にする。

SLAMで必要なのは、現実空間の奥行きを把握する技術である。人間の眼が左右の視差で物体までの距離を把握していることから、専用のデバイス(ハードウェア)を用いてSLAMを実現しようというアプローチがこれまで多く見られてきた。

それに対し、18/3期に上市された「KudanSLAM」 は同社の完全独自開発のアルゴリズム注1であり、最大の特徴は、ハードウェアに依存しないために汎用性を一気に高めたことである。そのため、低価格のハードウェアやセンサー、周辺機器との統合や組み込みに柔軟に対応できるものに仕上がっている。

◆ 「KudanSLAM」の収益構造
「KudanSLAM」に関して同社が得られる収益は、(1)顧客企業にソフトウェアを提供開始した際に発生するライセンス料、(2)顧客企業のソフトウェアやハードウェアに組み込む際の実装に関するサービスへの対価の2種類である。

また、ライセンスにも2種類あり、(1)顧客企業が研究開発目的で利用する開発ライセンス、(2)研究開発後に顧客企業の製品を市場投入する際に利用する販売ライセンスがある。契約締結後にアルゴリズムが引き渡された時を起点にライセンス収益の認識が開始されるが、案件ごとに、引き渡し時に一時に全額を認識するか、契約期間にわたって認識するかが取り決められる。

◆ 「KudanSLAM」前はアプリ開発企業向けARエンジン提供が中心
なお、「KudanSLAM」が世に出る前の17/3期までは、同社の収益は、アプリケーション開発企業等向けAR注2エンジン「Kudan AR SDK」のライセンス提供によるものが中心だった。しかし、「KudanSLAM」の本格展開に向けて経営資源が「KudanSLAM」に向けられることから、戦略的に販売は縮小されている。

◆ 少数精鋭の運営体制
同社は、本社は東京にあるものの、技術部門は英国のブリストルに置かれており、実質的な拠点は英国と言えよう。

連結の従業員数は14名(18年3月末、9月末とも)で、単体の従業員数は4名である(18年3月末)。差の10名がブリストルにいる技術部門に携わっている技術者である。なお、技術部門の人員の70%が博士号を保有しており、少数精鋭での体制となっている。

◆ Kudanの強み
同社の特色及び強みとして、(1)基盤技術に注力するポジショニング構築、(2)業界の各層のプレイヤーと連携した市場開拓を通じての、業界横断的な技術知見の蓄積、(3)技術者を中心とした少数精鋭の体制、(4)優良企業からなる顧客層の4点が挙げられよう。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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