プリントネット<7805> 旺盛な需要増に応えるための生産能力の拡大と知名度向上が今後の鍵を握る

2018/10/30

高品質を売りに印刷作業の工程に特化して成長してきた印刷通信販売会社
旺盛な需要増に応えるための生産能力の拡大と知名度向上が今後の鍵を握る

業種: その他製品
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 印刷作業工程に特化した印刷通信販売会社
プリントネット(以下、同社)は、印刷通信販売(以下、印刷通販)会社で、05年10月に「プリントネット」という印刷通販サイトの運営を開始した。更に、18年4月に「プリントプロ」というサイトを開設しており、現在は2サイトを運営している。

同社の最大の特徴としては、多段階にわたる印刷工程において、印刷作業部分に特化している点が挙げられる。

従来の印刷業者は、顧客からの注文依頼により企画提案や打ち合わせを繰り返し、デザイン制作や校正・修正を経てデータを完成(校了)させ、そのデータをもとに実際の印刷作業に入ることが多い。同社は、注文依頼からデータ完成までの営業・データ作成工程を行わず、機械で実際に印刷を行う印刷作業工程に特化している。具体的には、顧客からネット経由で注文を受け付け、顧客から校了済みのデータを受け取り、確認作業を行った後に印刷作業を行い、出来上がった印刷物を発送する(図表1)。

印刷工程の前半である営業・データ作成工程は、人による作業、または人と人の間のコミュニケーションが多く発生し、労働集約的な工程となる。一方、後半の印刷作業工程は、適切な稼働率の設備をどれだけ持つかという資本集約的な工程である。同社は資本集約的な工程に特化して成長してきたと言えよう。

◆ 印刷業者等のパートナー・業務受託先の顧客が多い
同社の顧客は、(1)印刷物を実際に必要とするエンドユーザー、(2)印刷業者やデザイン業者等のパートナー・業務受託先の2種類に大別されるが、同社の特徴のひとつとして、(2)の割合が多いことが挙げられる。(2)の場合はすべてではないが、発送代行サービス注として受託することが多い。全体の売上高に占める発送代行サービスの割合は、15/10期62.3%、16/10期66.5%、17/10期71.0%と上昇を続けている。

なお、ラクスル(4384東証マザーズ)とは、12年に業務提携して以来、協業関係にあり、パートナー企業の1社である。複数あるパートナー企業の中でもラクスルの存在感は大きく、同社の全売上高に占めるラクスル向けの売上高は、17/10期で28.7%、18/10期第3四半期累計期間で31.8%となっている。

◆ 品質の高さが差別化要因
低価格志向が強い印刷通販の業界にあって、同社はこれまで価格競争には追随してこなかった。実際、同社によると、「プリントネット」での注文価格は、他社に比べて2割ほど高めとのことである。その分、差別化のポイントとして、品質の高さを磨き続けてきた。

品質の高さを担保する一つの要因に、注文主から完成したデータを受け取る際の応対品質の高さが挙げられる。顧客からの電話が必ずつながるようにすることから始め、約30名のオペレーターを配したコールセンターを鹿児島の本店で自社運営している。

また、12年には業界でいち早く「Japan color標準印刷認証」を取得するなど、印刷物そのものの高品質性への追求にも余念がない。

◆ 低価格志向の顧客への対応のために「プリントプロ」を開設
競合他社がターゲットとする低価格志向の顧客に対応するため、18年4月に「プリントプロ」のサービスを開始した。「プリントネット」での印刷品質を維持したまま、応対サービスを簡素化することで低価格を実現したサービスとなっている。

◆ 生産体制
印刷作業の大半は自社で行っており、鹿児島県姶良市に九州工場、山梨県上野原市に東京西第1工場と東京西第2工場を自社工場として稼働している。また、18年9月には賃借の工場として、埼玉工場(埼玉県比企郡)への投資が完了し、稼働が開始した。

今回の上場により調達する約12億円は、19/10期に建設を予定している関東工場(仮称)の設備投資資金に充当する予定であり、既存の工場での生産能力増強とともに、今後の需要増に備える予定である。

◆ プリントネットの強み
同社の特色及び強みとして、(1)印刷工程のうち、実際の印刷作業の工程に特化している点、(2)注文時及び完成データ受取時の応対品質の高さ、(3)印刷物の高い製品品質が挙げられる。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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