香陵住販<3495> 賃貸不動産の管理戸数の拡大を中心に長期持続的な利益成長を目指す

2018/09/19

茨城県内を中心に不動産の売買、賃貸、仲介、管理等のサービスを提供
賃貸不動産の管理戸数の拡大を中心に長期持続的な利益成長を目指す

業種: 不動産業
アナリスト: 大間知淳

◆ 仲介と管理を主軸に茨城県と東京都で各種不動産事業を展開
香陵住販(以下、同社)は、本社がある茨城県と東京都において、不動産の売買、仲介、家賃保証等を行う不動産流通事業と、不動産の管理や賃貸、コインパーキングやコインランドリーの運営、太陽光売電、建設工事等を行う不動産管理事業を展開している。

不動産管理事業の売上高は少しずつ増加しているものの、不動産流通事業の成長率がより高いことから、不動産流通事業の売上構成比(外部顧客ベース)は、16/9期の60.4%から18/9期第3四半期累計期間には68.1%へと拡大してきている(図表1)。

不動産流通事業の収益は、仲介事業収益、不動産売上高、その他(建設売上高、保険代理店手数料等)に大別されている。仲介事業は、同社が行う賃貸不動産の仲介業務、売買不動産の仲介業務と、連結子会社であるジャストサービスが実施する賃貸不動産の家賃保証業務に分類されている。

不動産売上高は、仕入不動産商品と自社企画投資用不動産の販売高によって構成される。仕入不動産商品については、主として中古住宅、中古マンション、住宅用地を仕入れた後、リノベーションや土地造成を施し、同社グループの不動産商品として販売している。分譲地の例としては、「クアトロリーフ水戸」(茨城県水戸市、52区画、16年10月販売開始)が挙げられる。

自社企画投資用不動産については、主に年間数棟の賃貸用不動産(マンション、アパート)を自社で企画し、用地取得後、外部のゼネコンにて建設、賃貸入居者を募集した後、当該物件の管理業務を同社が受託することを原則として投資家に販売している。自社企画投資用不動産のブランドとしては、「フォーライフ」、「レーガベーネ」が挙げられる。

茨城県水戸市での自社企画投資用不動産の例としては、鉄筋コンクリート造10階建マンション(テナント2戸・居住用40戸、12年9月完成)や、木造2階建賃貸専用戸建住宅(4棟、15年3月完成)、木造2階建アパート(12戸、18年3月完成)、鉄筋コンクリート造12階建マンション(居住用60戸、18年10月完成予定)が挙げられる。

不動産流通事業の売上高の内訳は開示されていない。経営成績を見るうえで重要な経営指標(KPI)としては、賃貸不動産の仲介件数、売買不動産の仲介件数、不動産の販売件数が開示されている(図表2)。

証券リサーチセンター(以下、当センター)では、不動産流通事業の売上高の変動は不動産売上高の多寡に強く影響される一方、同事業の営業利益の基盤は仲介事業収益にあると推測している。

不動産管理事業の収益は、管理事業収益、賃貸事業収益、太陽光売電事業収益、建設売上高、その他に大別されている。管理事業収益の中心は、マンション、アパート等のオーナーから受託した賃貸不動産の管理料収入である。同社が対象物件のプロパティマネジメント業務(賃料収納、契約更新、保守メンテナンス、入居者管理、解約清算等)を行い、ジャストサービスが一部の保守メンテナンス、修繕工事を実施している。

賃貸事業収益は、同社グループが所有する不動産の賃貸料や、同社グループが所有する不動産または借り上げた不動産にて運営するコインパーキングやコインランドリーの事業収益によって構成される。コインパーキングの例としては、茨城県水戸市のONE’S PARK城南第4駐車場が、コインランドリーの例としては、茨城県水戸市のKORYOランドリー(17年11月オープン)が挙げられる。

太陽光売電事業では、同社が所有する太陽光発電設備「KORYOエコパワー」で売電ビジネスを展開している。18/9期第3四半期末時点で、自社所有地の茨城県水戸市森戸町、同県石岡市大砂、同県水戸市高田町では発電量1~3MWのメガソーラーを、借地の鉾田市大蔵では発電量152kWの小規模発電所を運営している。

建設売上高は、同社とジャストサービスが行う不動産建設工事や土地造成工事に係る売上高である。

その他は、オーナーから借り上げた収益物件をサブリースし、入居者から受領する賃料収入が主な内容である。

不動産管理事業の経営成績に影響を与える経営指標(KPI)としては、賃貸管理戸数(居住用、事業用物件の合計)が開示されている(図表3)。

18/9期第3四半期末において、エリア別賃貸管理戸数では水戸が67.4%を占めている(図表4)。なお、駐車場の管理台数は同時点で6,661台となっている。

同社の拠点は、水戸市が本社と6支店、ひたちなか市が2支店、日立市が2支店、東海村が1支店、つくば市が3支店、東京都が1支社となっている。

◆ フロー型収益とストック型収益を併せ持つビジネスモデル
同社グループは、不動産の売買、仲介を中心とする不動産流通事業と、賃貸不動産の管理を主軸に、不動産賃貸や太陽光売電等も行う不動産管理事業を展開している。不動産流通事業は概ねフロー型ビジネスである一方、不動産管理事業は継続的な収入が得られるストック型ビジネスであり、同社全体としては、フロー型収益とストック型収益を併せ持つビジネスモデルと言えるだろう。

同社が展開する投資用不動産に係るサービスは相互に関係しており、時系列では、1)マンション等の自社企画投資用不動産を投資家(オーナー)に販売する(不動産売上高と売却益を計上)、2)オーナーに代わって入居者を募り、賃貸借契約を仲介する(賃貸仲介収益を計上)、3)オーナーと対象物件の管理委託契約を結び、賃貸管理業務を受託する(管理料収入や更新料収入を契約終了時まで計上)、4)賃借人の退去時に必要に応じてリフォーム等のサービスをオーナーに提供する(修繕工事収入等を計上)という流れで長期間に亘って収益を獲得している。

投資用不動産の販売は、ストック型収益を積み上げるための入り口となっているため、短期的な観点としてだけでなく、長期的な観点からも注視する必要がある。こうした観点からは、投資用不動産の販売もストック型収益に位置付ける見方も採れるだろう。

17/9期連結売上高の98%を占める単体決算の売上原価明細書によって、売上高に対する主要原価項目の比率をみると、不動産流通事業原価が32.3%、不動産管理事業原価が21.3%、合計53.7%となっている(連結の原価率は53.4%であるが、その内訳は開示されていない)。

単体の事業別売上高は開示されていないため、連結の事業別売上高(外部顧客ベース)と単体の事業別原価を用いて、17/9期における事業別の売上総利益率の近似値を試算してみると、不動産流通事業が50.2%、不動産管理事業が42.3%であった。

不動産流通事業の数値が高いのは、不動産の仕入れ原価が計上される不動産売上高に比べ、原価が発生しない仲介手数料の売上総利益に占める比率が高いためと推測される。一方、不動産管理事業については、管理事業収益の売上総利益率は高水準であると見られるものの、賃貸事業や太陽光売電事業で計上している減価償却費やサブリースによる賃借料の負担が原価率を押上げていると考えられる。

一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給与手当等の固定費が中心となっている。

17/9期における連結ベースの事業別営業利益率(売上高は外部顧客ベース)は、不動産流通14.1%、不動産管理24.5%となっており、販管費率では、営業スタッフの人件費等の負担が重いと想定される不動産流通事業が高く、営業コストが軽いと見られる不動産管理事業が低いと推測される。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。