アイ・ピー・エス<4390> 「OPEN DOOR/IPS イズム」のもとで情報通信商社を標榜した事業創造を目指す
フィリピンに精通した経営知見が「強み」
「OPEN DOOR/IPS イズム」のもとで情報通信商社を標榜した事業創造を目指す
業種: 情報・通信業
アナリスト: 前田吉弘
◆ 「海外通信事業」を稼ぎ頭に5 つの事業セグメントを展開
アイ・ピーエス(以下、同社)は、「海外通信事業」を稼ぎ頭に、「国内通信事
業」、「在留フィリピン人関連事業」、「医療・美容事業」、そして19/3 期より独
立したセグメントとした「フィリピン国内通信事業」の合計5 つの事業セグメン
トを展開している(図表1)。
◆ 海外通信事業
18/3期全社利益の51%を占める「海外通信事業」では、フィリピンを主たる事業地域として、主に同国のケーブルテレビ事業者(以下、CATV事業者)に海底ケーブルを用いた国際データ通信回線を提供し、対価を得ている。
同社が提供するフィリピン・マニラ首都圏地域から相手国までの高速データ通信回線は、フィリピンと香港・シンガポール・米国・日本とを結ぶ国際通信回線(海底ケーブル)の権利を有する通信事業者等からその15年程度のIRU注1を取得、または1-2年程度の期間で賃借し、フィリピンおよび相手国側の陸上部分回線(図表2の①と③)と各々の回線(図表2の②)を接続したものである(図表2)。
同社では、その高速データ通信回線をCATV事業者が取得可能な小口容量(10ギガバイトの回線を1ギガや155メガといった単位)に分割し、IRU契約並びにそれに付随する保守運用契約(O&M)、ないし転貸契約の2種の形態で提供している。この他、回線の保守運用費用として毎年一定額(使用権価額の5%)をCATV事業者に負担してもらっている。
なお、フィリピン領土内では、フィリピン国内区間を含む国際通信回線を合法的に提供するには、フィリピンの通信事業ライセンスを有する通信事業者と提携する必要があり、同社はPhilippine Telegraph & Telephone Corporation(以下、PT&T社)との間で、相互接続の合意を内容とする業務提携契約を締結し、PT&T社のライセンスのもとで事業展開を行っている。
◆ フィリピン国内通信事業
「フィリピン国内通信事業」は、連結子会社であるInfiniVAN, INC.(以下、InfiniVAN社) が中心となり、主にマニラ首都圏地域において法人向けにISP(インターネットサービスプロバイダー)事業を展開している。これまで「海外通信事業」に含まれていたが、規模の拡大が予想され、重要性が高まっているため、19年3月期より独立したセグメントになった。
InfiniVAN社は17年11月10日にNTC(National Telecommunications Committee、国際通信委員会)より通信事業者適格(Certificate of Public Convenience and Necessity、以下、CPCN)の仮免許を、同年11月22日にフィリピン政府より期限付き法人税免除の許可を取得している。
◆ 国内通信事業
18/3期全社売上高の52%を占める「国内通信事業」は、として、日本国内で電話(国内・国際)を中心とした通信サービスを提供するとともに、電話サービスの大口ユーザーでもあるコールセンター事業者向けに、コールセンターシステムを提供している。
同社の国内・国際電話サービスのターゲット顧客は、①在留外国人、②MVNO事業者注2、③コールセンター事業者である。①向けには、本邦から海外向けの国際音声通話サービスと国際電話事業者向けに国内の音声通話サービス、②向けには、エンドユーザーの利用料金を携帯電話会社ではなくMVNO事業者が定めることができるサービス、③向けには、秒単位で課金するサービスなどを提供している。
◆ 在留フィリピン人関連事業
「在留フィリピン人関連事業」は、人材関連事業と顧客開拓・利用促進事業の2つに大別される。
人材関連事業としては、在留フィリピン人を中心とする人材の派遣・紹介を行っている。また、在留フィリピン人向けフリーペーパーの発行、同情報WEBサイトの運営、インターネットを利用したフィリピン地上波放送局との提携コンテンツ配信サービス、企業と在留フィリピン人とのマッチング・イベントの企画・開催などのメディア・イベント企画も同事業で手掛けている。
顧客開拓・利用促進事業は、国際電話会社の代理店として培った在留フィリピン人向け営業ノウハウを活用し、様々な商品・サービスを提供するもの。自社ブランド化粧品の販売、他社商品・サービス(海外送金サービス、携帯電話など)の顧客開拓・利用促進、購入時の支援・紹介等を行っている。
◆ 医療・美容事業
「医療・美容事業」は、品川美容外科クリニックと関連を有するシンガポール法人(I SUPPORT PTE. LTD.)との合弁で、フィリピンに設立したShinagawa Lasik & Aesthetics Center (以下、SLAC)が美容外科・皮膚科、近視矯正手術に特化した2つのクリニックをマニラ首都圏地域で経営している(I SUPPORT PTE. LTD.が医療技術の提供や医師のトレーニングを担当)。