FUNDINNO(462A)特定投資家の獲得によるプライマリー領域の収益拡大で成長目指す
スタートアップと投資家を結ぶエクイティプラットフォーム事業を展開
特定投資家の獲得によるプライマリー領域の収益拡大で成長目指す
業種:証券、商品先物取引業
アナリスト:鎌田良彦
◆ スタートアップと投資家を結ぶエクイティプラットフォーム事業を展開
FUNDINNO(以下、同社)グループは、同社と子会社FUNDINNO GROWTHからなり、スタートアップ注1と投資家を結ぶ未上場企業エクイティプラットフォーム事業を展開している。
未上場企業エクイティプラットフォーム事業は、投資家がスタートアップに資金を供給するプライマリー領域、プライマリー領域で資金調達したスタートアップに対する経営支援や成長支援を行うグロース領域、未上場株式を保有する個人や法人に対して売却機会を提供するセカンダリー領域からなる。
24/10期の営業収益内訳は、プライマリー領域が68.0%、グロース領域が30.2%、セカンダリー領域が1.7%であった(図表1)。足元は、プライマリー領域の収益拡大が業績を牽引している。
◆ プライマリー領域
プライマリー領域では、FUNDINNOとFUNDINNO PLUS+の2つのサービスを提供している。
1)FUNDINNO
FUNDINNOは、株式投資型クラウドファンディングサービス注2を提供するプラットフォームである。株式投資型クラウドファンディング制度は15年5月の金融商品取引法の改正で導入され、第一種少額電子募集取扱業務の認可を受けた事業者による審査を受けた未上場企業が、電子取引で公募資金調達を行うことが可能になった。
FUNDINNOでは、①一般投資家が1社に投資できる年間の投資額は、50万円以下、②企業が株式で調達できる年間の調達額は1億円未満、③インターネットを通じた投資勧誘のみが認められ、電話や対面での投資勧誘はできない。
こうしたサービスの特徴から、FUNDINNOでの資金調達は、調達額が小さい、アーリー注3ステージのスタートアップが中心となっている。
同社はFUNDINNOでのスタートアップの資金調達額に対し、初回の調達では20.0%、2回目以降の調達では18.0%の手数料を得ている。
FUNDINNOのサイトでプロジェクト情報の閲覧等ができるユーザー登録者数は足元で約17万人、うち同社の審査を経て口座を開設し、投資が可能となっている投資家数は5万人強となっている。
FUNDINNOで資金調達を行うスタートアップは、ベンチャーキャピタルや銀行、証券会社等による紹介案件が多く、その他は自社のWebサイトやセールス経由となっている。
2)FUNDINNO PLUS+
FUNDINNO PLUS+は、同社が第一種金融商品取引業者として提供する、特定投資家と大型の資金調達を行うスタートアップを繋ぐ資金調達サービスである。
特定投資家とは、金融証券取引法において、金融資産規模や金融商品に対する知識・経験等により、一般投資家に比べリスク管理能力等が高いとみなされる個人及び法人投資家であり、特定投資家向けの金融商品への投資ができる。
22年7月に証券会社を通じ、未上場企業株式や投資信託等を特定投資家向けに発行・流通することを可能にする特定投資家向け銘柄制度(以下、J-Ships)が創設されたこと等を受け、同社は22年11月にFUNDINNOのシステムやプロセスを共通基盤とするFUNDINNO PLUS+の提供を開始した。
FUNDINNO PLUS+を通じた投資では、①特定投資家による投資の上限額はない、②企業が調達できる金額に制限がない、③対面での投資勧誘も認められる等の特徴がある。このため、大型の資金調達を行う、ミドル注3またはレイター注3ステージのスタートアップの利用が中心となっている。同社は資金調達を行ったスタートアップから、作業量に応じて調達額の15%以上に相当する手数料を得ている。
同社の特定投資家は、FUNDINNOの登録投資家経由の個人投資家が多い。特定投資家数は23/10期末337名、24/10期末1,011名、25年7月末1,470名と順調に拡大した。特定投資家の増加によるFUNDINNO PLUS+での資金調達額増加がプライマリー領域の営業収益の拡大を支えている。
◆ グロース領域
グロース領域では、スタートアップの成長をサポートするサービスとして、FUNDOORとFUNDINNO GROWTHの2つのサービスを展開している。
1)FUNDOOR
FUNDOORは、スタートアップの株主管理、経営管理をサポートするSaaS型のサービスである。FUNDOORの主な機能としては、①クラウド上で株主名簿、新株予約権原簿の一元管理を行うことができる「クラウド株主名簿・新株予約権原簿機能」、②株主総会の招集通知送付や委任状回収を電子的に行い、株主総会開催の準備から議事録作成までを自動で完結できる「ペーパーレス株主総会機能」、③取締役会の招集通知作成から議事録作成、電子署名までを自動で完結できる「取締役会機能」、④株主への報告資料作成から配信までをワンストップで行える「IR資料作成・配信機能」等がある。
FUNDOORに加え、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306東証プライム)傘下の三菱UFJ信託銀行と共同でMUFG FUNDOORを開発し、同行の販売網を通じた提供を行っている。主要販売先である三菱UFJ信託銀行向け営業収益は、MUFG FUNDOORの受託開発や、ライセンス許諾料、保守運
用受託料からなり、24/10期の総売上収益に占める割合は25.7%であった(図表2)。
2)FUNDINNO GROWTH
FUNDINNO GROWTHは、スタートアップの人材採用支援サービスであり、子会社のFUNDINNO GROWTHが担当している。人材紹介に加え、採用計画立案、人材紹介会社対応、応募者対応といった採用業務を支援する採用アウトソーシングサービスを提供している。
◆ セカンダリー領域
セカンダリー領域は、スタートアップへ投資した投資家に投資回収機会を提供する領域であり、FUNDINNO MARKETとFUNDINNO MARKETPLUS+の2つのサービスを展開している。
1)FUNDINNO MARKET
FUNDINNO MARKETは株主コミュニティの制度を活用し、FUNDINNOで資金調達を行った企業の中から、同社の審査を経た企業の株式について、オンラインでの売買を可能とするサービスである。株主コミュニティは証券会社が未上場株式の銘柄ごとに設定し、株主コミュニティに参加した投資家に対してのみ投資勧誘を認める制度である。
2)FUNDINNO MARKET PLUS+
FUNDINNO MARKET PLUS+は、創業者の売出やベンチャーキャピタル等のファンド償還に伴う売却等、未上場株式の大口相対取引を行うためのサービスである。25年9月に開始した新サービスである。

