GMOコマース(410A)「店舗ごと」の伴走型支援で他社と差別化

2025/10/01

実店舗向けのマーケティング支援を行うGMO インターネットグループ子会社
「店舗ごと」の伴走型支援で他社と差別化

業種:サービス業
アナリスト:吉林拓馬

◆ 小売や飲食の店舗集客や販促活動をワンストップで支援
GMO コマース(以下、同社)は、GMO インターネットグループ(9449東証プライム)の子会社で、実店舗向けのマーケティング支援サービスを展開している。飲食店、ショッピングセンター、家電量販店、アパレル店など幅広いジャンルの店舗を対象に、LINE公式アカウント注1、Instagramなど複数の広告媒体を活用し、集客や販促活動の効率化を支援している。例えば、飲食店では来店客にクーポンや新メニュー情報を自動配信し、再来店を促すことで集客効率を高めている。

同社の事業セグメントはCX注2向上ソリューション事業の単一セグメントであり、提供する主なサービスは、(1)GMO マーケティングDX、(2)GMO マーケティングコネクト、(3)GMO おまかせ広告の3つである。

(1)GMO マーケティングDX
主にLINE公式アカウントやInstagramを活用して実店舗の集客、販促、顧客管理などを包括的に支援するサービスであり、アカウントの開設代行から実際の運用に至るまで一気通貫でサポートしている。サービスは、広告媒体別に、①GMO マーケティングDX LINE公式アカウント、②GMO マーケティングDXInstagramに区分されている。

①GMO マーケティングDX LINE公式アカウント
LINE公式アカウントの開設及びLINEヤフーによる利用基準や運用ポリシーへの適合確認を行う審査対応の代行から、リッチメニュー注3やユーザーへのメッセージの企画・制作・配信、ユーザー獲得施策の実行などをサポートしている。また、ユーザー数、メッセージ開封率、クーポン利用率などのデータを定量的に分析して運用面の改善提案を行い、営業効率の向上を支援している。

加えて、高度なマーケティング施策を実現する「セグメント配信オプション」を追加サービスとして提供している。ユーザーの属性や行動データなどに基づいてセグメントを細分化し、メッセージを一斉配信ではなく、個別に最適化された形で配信することができる。アンケート回答や顧客の反応履歴を活用することで、興味や関心、来店動機に合わせたメッセージやクーポンを出し分けることができるため、顧客エンゲージメントの向上や購買促進を支援すると同時に、配信コストを抑えながら広告効果を高めることが可能となる。

②GMO マーケティングDX Instagram
Instagramアカウントの設定、投稿企画、コンテンツ制作からフォロワー獲得施策の実行までトータルで支援し、潜在顧客への効率的なアプローチをサポートする。また、フォロワー数、投稿に対するユーザー反応率、ダイレクトメッセージの開封率などの詳細なデータを分析し、定期的に改善提案を行う。オプションとして、ダイレクトメッセージ機能を用いた一斉配信サービスやユーザーに対する自動返信機能も整備されている。

(2)GMO マーケティングコネクト
25年2月に提供を開始したサービスであり、LINE公式アカウントやInstagramなど主要SNSや企業公式アプリ、メールなどと連携し、販促効果の向上を図るマーケティングプラットフォームである。

具体的には、アンケートや会員登録時に得られるゼロパーティデータ注4と購買履歴やアプリ利用状況などのファーストパーティデータ注5などから顧客像を多面的に把握した上で、AIを用いてデータ分析し、「購入率の高い商品」や「来店可能性の高い顧客」を自動で特定し、購買可能性の高いユーザー層への訴求やパーソナライズ配信を実行する。

データが蓄積されるたびに分析の精度が段階的に向上していくため、ユーザーごとに最適化された販促を通じてCXを向上させ、売上増に貢献するサービスといえる。

(3)GMO おまかせ広告
GoogleやYahoo!の正規パートナーとしての知見と実績を活かしたWeb広告の出稿及び運用を代行するサービスである。日々の運用チューニング、予算配分の最適化などの業務も代行しており、効率的かつ高い費用対効果の広告展開を支援している。

同サービスの特徴は、①商品トレンドやECモールのイベントなどデータを分析し、成果につながりやすいタイミングに集中的に広告を配分していること、②売上に結びつかない無駄なクリックを除外する仕組みを整備し、費用対効果を高めていること、③店舗の商品データ(価格や在庫など)を毎日自動取得し、常に最新の情報に基づいた広告出稿を行うことで、購入意欲が高いユーザーに効果的にリーチすることができる点にある。

◆ ストック収益が売上高の中心
同社の売上高は課金方式や収益の性質により、ストック収益、トランザクション収益、その他収益の3つに大別される。24/12期の売上高構成比は、ストック収益が68%(1,358百万円)、トランザクション収益が9%(175百万円)、その他収益が23%(449百万円)であった。

最も大きな柱であるストック収益は、GMO マーケティングDXやGMO マーケティングコネクトをはじめとするシステムの月額利用料で構成されている。1年契約の自動更新により継続的に収益が積み上がる仕組みとなっている。

トランザクション収益は、同社サービスを通じて実際に配信されるメッセージやメールなどの件数に応じた従量課金であり、利用が増えるほど売上が伸びる。顧客店舗の利用状況に連動する。

その他収益は、主に広告運用手数料や臨時的なコンサルティング費用、店舗販促システムのカスタマイズ対応や追加分析レポート作成など、顧客の個別ニーズに応じたサービス提供への対価である。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。