グロービング(277A)人数の拡大による売上高の拡大というビジネスモデルからの脱却を目指す

2024/12/04

クライアントの内部に入り込むJoint Initiative型コンサルティングサービスに注力
人数の拡大による売上高の拡大というビジネスモデルからの脱却を目指す

業種:サービス業
アナリスト:髙木伸行

◆ コンサルティングサービスを提供
グロービング(以下、同社)は、クライアント企業に実際に入り込み、一緒に汗をかいて、成果を出していくJoint Initiative型コンサルティングサービス(以下、JI型コンサルティング)と従来型コンサルティングサービスを提供している。コンサルティングの分野としては、事業戦略立案、M&A、新規事業立上、グローバル成長戦略立案、デジタル技術を活用した経営・業務変革など、多岐に亘っている。

同社は17年1月に設立されたが、国内でコンサルティングサービスを開始したのは21年3月からとなり、実質的な社歴は浅い。同社グループは同社及び23年10月に子会社化した各種広告・SP・グラフィック・WEB・映像の企画・制作などブランディングやクリエイティブデザインに強みを持つアバランチ、24年1月に設立した上海巨球協英信息技術、24年5月にLaboro.AI(5586東証グロース)とAIトランスフォーメーションの社会実装を目指し設立したX-AI. Labo(同社の出資比率は78.0%)の4社で構成されている。

同社は、コンサルティング事業とSaaS型プロダクトを提供するクラウドプロダクト事業を行っている(図表1)。ただし、クラウドプロダクト事業は開始から日が浅く、売上高の大部分はコンサルティング事業によるものである。また、利益面においてもクラウドプロダクト事業は立ち上げ期にあるため損失を計上している。

◆ コンサルティング事業
同社はコンサルティングサービスを準委任契約に基づき提供している。同社のコンサルティングサービスは、クライアントの経営層が抱える課題を理解し、経営戦略、新規事業立ち上げ、M&A戦略、DX/デジタル戦略の構想策定・実行支援といった経営における上流フェーズの改善に取り組むものが中心である。

また、同社はコンサルタントの人数だけに頼る「人工ビジネス」からの脱却を目指しており、AIを活用することで、人数の増加に単純に比例した事業拡大というビジネスモデルからは一線を画したいとしている。この目標に向けて議事録作成やリサーチ業務の生産性向上を目的としたツールを自社内のAIなどを活用した業務効率化専門チームであるGLB Intelligenceで開発をしている。

主要顧客としては、本田技研工業(7267東証プライム)、MTG(7806東証グロース)、パーソルホールディングス傘下のパーソルクロステクノロジーズ、三井化学(4183東証プライム)などの大手企業が挙げられる(図表2)。24/5期における上位5社に対する売上割合は53.7%、上位10社に対する売上割合は70.3%に達しており、特定の取引先に対する依存度は高い。

(1)Joint Initiative型コンサルティング
JI型コンサルティングは新規事業の創造、不振事業の立て直し、事業ポートフォリオの転換、事業効率化など様々なテーマに取り組むクライアントへプロジェクトの責任者や中核メンバーとして入り込み、人材やノウハウを提供しながらクライアントと一心同体となって課題解決や目標を達成するコンサルティングサービスである。

出向を含めた長期契約の形態となり、継続期間は3年~5年となっている。期間が長いことから、短期間のプロジェクトにありがちなプロジェクト終了から次のプロジェクト開始までに発生するコンサルタントのアイドルタイムを抑制でき、収益面でも安定しているという特徴がある。

JI型コンサルティングのコンサルティング事業の売上高に占める割合は23/5期18.0%、24/5期29.9%、25/5期第1四半期は41.8%と上昇傾向にある。将来的には新規事業の売上増加・コスト削減などのコンサルティングの成果をクライアントとシェアする収益モデルも確立したいとしている。

(2)従来型コンサルティング
事業責任者などの派遣は行わないが、外部視点を持ったインサイダーとしてCxOクラスの伴走者となり、戦略立案・実行やDX・AI活用を支援する従来型コンサルティングサービスも提供している。従来型コンサルティングと同社は呼んでいるものの、単なる顧問型のコンサルティングというよりは、よりJI型コンサルティングに近い内部者的な立場でのコンサルティングサービスを提供している

従来型コンサルティングの継続期間は2、3カ月から2年程度となっている。24/5期についてはコンサルティング事業の売上高の70.1%、25/5期第1四半期では同じく58.2%を占めた。

◆ コンサルティング事業の重要経営指標
中長期的にコンサルティング事業の業績拡大に向けて「コンサルタント人員数」の増加、採用力の強化、顧客単価の向上を実現するための「コンサルタント平均年収」の向上、同社サービスに対する必要性の向上、顧客単価の向上を実現するための「JI売上高比率」の向上、及び社会のAI活用のニーズの高まりを受けた「AI関連売上高」の向上を重視しており、各数値を重要な経営指標としている(図表3)。

AI関連売上高については足元で急拡大しているが、AIトランスフォーメーションの社会実装を目指しLaboro.AIと合弁で設立したX-AI. Laboの貢献によるものである。

◆ クラウドプロダクト事業
コンサルタントの問題解決に向けてのスキルの中には再現性の高い分析手法や思考法が含まれている。こうした分析手法や思考法は、各コンサルティング会社の特長や競争力の源泉を形成しているため、コンサルティングサービスという形態で、極めて高い単価を課して顧客に提供されるのが普通である。

これに反して、同社は、応用範囲が広い思考法や分析手法をクラウドプロダクトに実装しSaaS型プロダクトとして提供することを目指している。通常のコンサルティングサービスの報酬は非常に高額でクライアントにとっては利用しづらいものとなっているが、SaaS形態で提供することで、同社のナレッジを比較的安価に利用することが可能になる。

現在開発中の主なプロダクトとしては、23/5期より開発を開始したセールススイートと24年1月より企画を開始したスペンドインテリジェンススイートが挙げられる。

セールススイートは売上明細データを取り込むだけで、どの顧客を重点的にフォローすべきかを可視化し、アクションプランを提示することにより、売上継続率や営業生産性の向上を目指すものである。23年12月にβ版のリリースを行なった。スペンドインテリジェンススイートは支出の見える化や最適化する手法、AI不正検知や自動発注などによる業務効率化を実現するもので、足元では初期仮説検証を行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。