QPS研究所(5595)多数の小型SAR衛星打ち上げによる衛星コンステレーションの構築で成長目指す

2023/12/08

開発・製造した小型SAR衛星により地球観測データ・画像を提供
多数の小型SAR衛星打ち上げによる衛星コンステレーションの構築で成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 開発・製造した小型SAR衛星により地球観測データ・画像を提供
QPS研究所(以下、同社)は、重量100kg級の小型SAR注1衛星を開発・製造し、複数の衛星を地上から500km程度の低軌道に打ち上げて衛星コンステレーション注2を構築し、それらの衛星により取得した地球観測データ・画像の提供を行う「地球観測衛星データ事業」を展開している。

同社の衛星は、Space Exploration Technologies(略称Space X)等のロケット打ち上げ事業者のロケットに搭載して打ち上げられ、衛星で取得したデータ・画像は、ノルウェーのKongsberg Satellite Services等のグローバルに地上局を展開している企業を通じて提供される。同社は小型SAR衛星の開発・製造、及び衛星により取得したデータ・画像の販売に特化しており、データ解析等は自社では行っていない。

現在、人工衛星による地球観測データの取得で主流となっているのは、光学衛星である。光学衛星は、地球から反射する太陽光を光学カメラやセンサーにより観測する。カラー画像で画像の視認性が高いという長所があるが、雲のような遮蔽物が入る悪天候時や観測地点に太陽光が届かない夜間には、観測データの取得ができないという制約がある。

これに対しSAR衛星は、衛星から観測地点に対してマイクロ波を照射し、地表で反射したマイクロ波によって対象物の大きさや表面の性質、距離等を測定する。観測地点からの太陽光の反射に頼らないため、悪天候や夜間でも常時地球を観測することができる(図表1)。

一方で、マイクロ波の照射・受信に大量の電力と大きなアンテナを必要とするため、従来は重量1~2t級のSAR衛星が中心で、衛星の小型化と高い解像度の両立は難しかった。

同社の小型SAR衛星は、同社が特許を保有する小型・軽量の展開式パラボラ型アンテナを搭載することで、衛星の小型化と高い解像度の両立を可能としている。従来のSAR衛星の分解能注3が1m程度であったのに対し、23年6月に打ち上げた同社の6号機は分解能46cmを達成している。

同社は19年12月に実証試験機の1号機を、21年1月には同じく実証試験機の2号機を打ち上げた。商用機の3号機及び4号機は、22年10月に打上げのために搭載したイプシロンロケット6号機の失敗により喪失した。5号機は予定していた打ち上げ事業者のVirgin Orbit社が23年4月に経営破綻したため打ち上げが延期されたが、23年6月に商用機の6号機を打ち上げている。現在は2号機と6号機の2機体制で地球観測データ・画像の取得と販売を行っている。

◆ 衛星コンステレーションの構築
同社の小型SAR衛星は低軌道上に投入され、約90分で地球を1周するが、消費電力等の関係で、画像撮影が可能なのはそのうちの2分程度に留まる。このため、28/5期までに28機を打ち上げ、将来的には4つの衛星軌道上に9機ずつ、合計36機の小型SAR衛星を打ち上げて衛星コンステレーションを構築し、地球上のほぼどこでも任意の地点を平均10分以内に観測できる、もしくは特定の地域を平均10分に1回定点観測できる体制を目指している。

◆ 主要販売先
同社の小型SAR衛星2号機は、21年12月から画像データ販売を開始している。販売先は内閣府や防衛省等の官公庁、及び宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)といった公的機関となっている(図表2)。

政府による民間主導の技術開発・支援策である「宇宙開発利用加速化プログラム」の一環として、内閣府から22年度、23年度に「小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」に採択されており、これに関する売上高も計上されている。

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