BTM(5247) 地方と首都圏の機会格差をなくしたいとの想いが事業の出発点

2023/01/12

独自データベースを基に地方人財を活用するDX推進企業
地方と首都圏の機会格差をなくしたいとの想いが事業の出発点

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 地方人財を活用し顧客企業のDX化を推進
BTM(以下、同社)は、11年8月に現代表取締役会長である吉田悟氏によって設立された(当時の社名はビジネストータルマネージメント、17年9月に現社名に変更)。吉田氏と12年1月に入社した現代表取締役社長の田口雅教氏はともに地方出身者であり(吉田氏は北海道、田口氏は岡山県)、首都圏と地方との機会格差をなくしたいとの想いが、現在の事業の出発点となっている。

同社はITを活用することにより、地方にも魅力的な仕事を提供し、人材の流失を防げれば地方の活性化につなげられると考え、地方に拠点を展開してDX推進事業を開始した。同社はDXに関係する人的資源の提供を行う「ITエンジニアリングサービス」とDX推進に向けたコンサルティングや開発成果そのものの提供を行う「DXソリューションサービス」を展開している。

◆ ITエンジニアリングサービス
顧客企業のDX推進、システム開発などにおいて、エンジニアが不足しているときに最適な人材を全国から調達し提供している。同社の提供可能な人材は自社エンジニア、同規模以下の同業他社が中心の外部協力企業に所属するエンジニア、フリーランスになる。自社エンジニアを大きく上回る案件数があることから、外部協力企業のエンジニアが9割以上を占める。顧客企業から人月単価を受け取り売上とし、外注費というかたちで、調達したエンジニアへの対価を支払っている。

顧客企業は特定の取引先や業種に偏っておらず、ベンチャー企業から大企業まで規模も様々である。契約形態は準委任契約注1が多くを占めるが、同社のエンジニアを提供する場合には顧客ニーズに合わせて派遣契約を結ぶ場合もある。

同社は人的資源を確保する際に、外部協力企業に重点を置くのは、フリーランスに比べてエンジニアの母数が遥かに多いことや、開発力やビジネスマナーも含めて一定の品質が担保されていること、フリーランスのように仕事を選んだり、途中で離脱するというリスクが低い点を理由としている。

外部協力企業を中心としたネットワークは22年3月現在で1,500社以上との取引実績があり、同社独自のBTMデータベースには約5,200件の「連絡先アカウント」が蓄積されている。連絡先アカウントとはマッチング情報などを外部協力企業とやり取りする際に日常的に連絡を取る先で、エンジニアそのものではなく、外部協力企業の営業担当者が中心となっている。営業担当者は、リスポンスが早く、新しいエンジニアの情報も押さえているため、効率的なマッチングを行うのに適しているためである。

エンジニアの提供を行う企業は、案件があっても要件を満たすエンジニアがいないときや他の案件で手一杯で受注できない案件があるときには、他社にその案件を紹介し紹介料を受け取るということが一般的である。このため外部協力企業との幅広いネットワークを持つ同社は大量の案件情報も日々得ている。

マッチングについてはいろいろな方法があるが、最もマッチングする確率が高いのが外部協力企業への一斉配信である。同社が入手した案件情報の中から、成約見込みの高い案件を厳選し連絡先アカウントに向けて一斉配信し、それに対する提案の中から最適なエンジニアを選んでいる。このプロセスで重要な役割を果たすのが営業社員となる。

◆ DXソリューションサービス
同社が中心となり、コンサルティングから一気通貫でDX支援を行うのがDXソリューションサービスである。3名~5名程度のチームで対応し受託開発注2に近い形態だが、開発内容が確定していない場合や開発の途中で仕様変更が必要となるケースに対応するため、準委任契約の形態をとる場合が多い。自社エンジニアを活用することから、ITエンジニアリングサービスよりは売上総利益率が高くなる傾向がある。

同社はITインフラ領域からWebアプリケーション領域まで、また、上流工程から下流工程までワンストップでの対応が可能である。ITインフラ領域では、国内で主流となっているAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureの構築に実績がある。様々な案件について、全国に点在する11拠点に在籍するエンジニアによる全国横断型の開発体制で対応している。

◆ 重視する経営指標
同社は経営上の目標達成に向けて重視する指標として、営業人員数、アカウント数、自社エンジニア数を挙げている(図表1)。

同社は外部協力企業から案件とエンジニアの紹介を受けているが営業人員の不足から、相当数が収益化できずにいるため、営業人員の増加を急いでいる。加えて、成約案件数の増加、良質な案件やエンジニア情報の確保に向けては、外部協力企業との接点となる連絡先アカウントのネットワークも重視している。

連絡先アカウントの増加はITエンジニアリングサービスにおけるBTMデータベースの更なる拡大につながり、営業人員の増加と合わせてマッチング数の増加につながる。また、自社エンジニアの増加はITエンジニアリングサービスとDXソリューションサービスの両事業の拡大につながることになる。

この他、同社はITエンジニアリングサービスにおける顧客企業との平均取引継続期間も重視している。顧客企業との平均取引期間は21/3期14.2カ月、22/3期16.4カ月と長期化している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。