アイズ(5242) 広告業界向けのメディアレーダーはニッチトップの地位にある

2022/12/26

広告業界特化のマッチングとクチコミマーケティングの両プラットフォームを運用
広告業界向けのメディアレーダーはニッチトップの地位にある

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行

◆  マッチングプラットフォームサービスを展開
アイズ(以下、同社)は「みんなの感動と幸せを追求する」を経営理念とし、「世の中を変革する台風の目になる」をビジョンとしている。社名のアイズはビジョンの台風の「目」に由来している。

同社の主要サービスは、広告業界のプラットフォーム「メディアレーダー」とクチコミマーケティングのプラットフォーム「トラミー」であり、売上高は、メディアレーダー、トラミー、その他に分類される(図表1)。

22/12期第3四半期累計期間の売上構成比はメディアレーダー46.9%、トラミー46.1%、その他7.1%となり、メディアレーダーとトラミーの売上高が拮抗している。メディアレーダーとトラミーの事業内容については後述するが、その他としては、インターネット広告代理販売やメディアレーダーから派生した事業などを行っており、インターネット代理販売がその他の売上の中心である。

メディアレーダー
メディアレーダーは広告・マーケティングサービスの売り手であるマスメディアやマーケティング会社と買い手である広告主・広告代理店をつなぐBtoBプラットフォームである(図表2)。

広告・マーケティングサービスの売り手としては、放送局、出版社、Webメディア、マーケティングサービス会社などが挙げられる(以下、掲載社)。掲載社は、メディアレーダーに広告媒体やマーケティングに関する資料、動画、セミナーを無料で登録できる。登録した資料などが閲覧されると、閲覧者情報がリード注1情報として掲載社に提供されるとともに、課金される成果報酬型のリードジェネレーション注2機能が実装されている。掲載社はリード獲得のためにメディアレーダーを利用している。

広告・マーケティングサービスの買い手である広告主や広告代理店は「会員」として登録し、各種広告・マーケティングサービスの情報収集、比較検討などを目的にメディアレーダーを利用している。

メディアレーダーの事業展開を支えるものは、「広告・マーケティングに関する情報の充実」と「リード提供」である。

「広告・マーケティングに関する情報の充実」に関しては、単に掲載社のサービス内容だけではなく、最新の広告業界の動向やマーケティング手法についての情報を提供することによりプラットフォームの有用性を高めるとともに、来訪者の増加、ひいては会員の獲得につなげることが可能になる。また、会員数の増加が資料のダウンロード、動画視聴、セミナー申込の増加につながり、それらのアクションをとった会員の情報=リード情報が掲載社に提供され、同社にとっては収益の増加につながる。

メディアレーダーに情報を掲載するのには、有料プランと無料プランの2 種類がある。有料プランを選んだ掲載社は毎月の予算の上限を設定して登録し、掲載資料のダウンロードや掲載動画の視聴といった会員のアクションがあると、リアルタイムで通知が届き、その会員の情報が獲得できる。料金はリード単価に応じて、都度請求される。一方、無料プランは掲載した資料の閲覧通知はリアルタイムで届くが、会員の情報は開示されない。

プラットフォームとしてのメディアレーダーの利便性や有用性を高めるために、セミナー集客機能(20 年5 月開始)、同社主催のオンラインセミナーイベント開催(21 年3 月開始)、動画掲載機能(22 年10 月開始)といった登録コンテンツや機能の充実を図ってきた。また、掲載社がメディアレーダー内での露出を営業政策に沿って調整することが可能なリード入札機能(21年3 月開始)や会員の利便性が高まる一括ダウンロード機能(22 年10 月開始)も付加されてきた。

リード入札機能とは、リード単価を上げることにより掲載資料のサイト内掲載順位を上げることができ、閲覧数の増加につなげやすくする機能で、同社が独自開発したものである。競合他社の層が厚く自社の資料が埋没してしまうような場合や売上増を狙うプロモーション時に利用されるようである。

また、一括ダウンロード機能のメリットとしては通常のダウンロードでは興味をひくことができなかったかもしれないが、一括ダウンロードにより幅広く資料を閲覧してもらうことにより、掲載社についての理解がより深まり、商談につながるといった効果があるようである。

同社はメディアレーダーについては、資料ダウンロードの平均リード単価と課金ダウンロード数を重要な経営管理指標としている(図表3)。19/12 期と20/12 期においては、平均リード単価は2,000 円で推移していたが、21 年3月のリード入札機能の導入により、21/12 期には2,151 円へ上昇した。課金ダウンロード数は資料登録件数の増加や会員数の増加に伴い拡大基調にある。これらの経営管理指標の向上に向けては、会員数、資料登録件数が重要となるが、足元の会員数は97 千人、資料登録件数は7,800 件を超えている。

メディアレーダーの売上高は、資料ダウンロードによる「資料リード売上」、同社が登壇企業やスポンサーを集めて開催するセミナーイベントに関するリード提供による収益である「イベントリード売上」、メルマガ配信などの広告枠販売による「個別広告売上」、掲載社が自らセミナー情報を公開しリードを獲得できる機能による売上である「セミナーリード売上」、掲載社が動画を公開しリードを獲得できる機能による売上である「動画リード売上」に分類できる。

22/12期第3四半期累計期間のメディアレーダーの売上構成比は資料リード売上が79.9%、次に比率が高いのがイベントリード売上で12.7%を占め、残りは個別広告売上とセミナーリード売上である。動画リード売上は22年10月から開始されており、第3四半期累計期間の実績には含まれていない。

メディアレーダーは売上原価がかからないことから、収益性の高い事業となっている。

◆ トラミー
トラミーは、SNSを利用しているトラミー会員がクライアントの商品やサービスを利用し、その体験をSNS上でクチコミをシェアすることで、モニター商品やサービスを使わせてもらえるサイトである(図表4)。トラミー会員は商品やサービス、あるいはトラミーポイント注3を謝礼として受け取る。広告主はクチコミを活用した効果的なSNSマーケティングツールとしてトラミーを利用している。

トラミーの会員数は約12万人で20代~40代のママ、主婦、OLといった一般女性が多い(22年7月末時点の女性比率は91%)。そのため、案件はスキンケア、健康食品・サプリメント、日用品、食品などの商材が多い。

トラミーの特色としては動員する会員数が大人数であるということと、一貫して同社が関与するディレクション型であるという点である。

トラミーの主要プランは、「サンプルレビュー注4 会員の利用人数は200名から」、「購入レビュー注5 会員の利用人数は150名から」を基本プランとしており、実施人数や内容は商品やサービス、広告主の意向により調整される。

広告主による発注から納品までのスケジュール作成、参加者の募集、当選者の選定、商品の発送や購入依頼、トラミー会員のクチコミ投稿、会員による投稿URLの申請およびアンケートの回答、投稿URLの審査、クライアントへの成果物の提出、会員への謝礼付与まで一貫して同社のディレクションにより行っている。

トラミーについては、同社は案件数と案件単価を重視しているが、一般ユーザーに大量にクチコミを投稿させるクチコミプロモーションサービスの効果が評価されているようで、案件数は20/12期、21/12期ともに20%を超える成長率を示し、案件単価も着実に上昇している(図表5)。

>>続きはこちら(1MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

このページのトップへ