unerry<5034> 消費者向けターゲティング広告、スマートシティでのデータ活用で成長を目指す
スマートフォンの位置情報によるリアル行動データプラットフォームを運営
消費者向けターゲティング広告、スマートシティでのデータ活用で成長を目指す
業種: 情報・通信業
アナリスト: 鎌田 良彦
◆ スマートフォン位置情報によるリアル行動データプラットフォームを運営
unerry(以下、同社)は、スマートフォンの位置データを集積したリアル行動データプラットフォームのBeacon Bank®を運営し、蓄積したリアル行動ビッグデータを分析・活用することで、小売事業者のマーケティングやスマートシティの街づくり等に必要なサービス等を提供している。
位置データは、同社のプログラムが組み込まれた、約120 種類のスマートフォンアプリでGPS やビーコンにより取得する。それらのデータを同社独自開発のAI で解析して、ユーザーの行動特性や属性、嗜好等を推計し、リアル行動ビッグデータとして活用している。
ビーコンデータは、小売事業者の店舗や商業施設等に設置されたビーコンが発すBLE(Bluetooth Low Energy)を使った無線電波をスマートフォンのアプリが検知し、位置と時間の情報等を同社のサーバーに送信することで取得している。GPS が屋外での位置情報を取得するのに対し、ビーコンでは屋内の各売り場、商品棚単位での位置情報を取得することができる。
同社は、各事業者が個別に設置したビーコンを同社が運営する行動データプラットフォームのBeacon Bank®に登録することで、各事業者の自社アプリ以外に同社のプログラムが組み込まれたアプリのユーザーの位置情報を取得することを可能にするビーコンネットワークを形成している。Beacon Bank®には210万個のビーコンが登録されている。同社のプログラムを組み込んだアプリは、210万個のビーコンによる位置情報データを利用できる。
同社は、スマートフォンのアプリが受信できるビーコンの数を限定しない技術で特許を取得しており、この技術によりBeacon Bank®に登録された多くのビーコンを利用してデータを取得することができる。
同社が取得するデータは、位置情報や広告ID注1等で、アプリのユーザーから事前にデータ取得と利用についての同意を得たもので、ユーザー個人を特定しない情報のみを取扱っている。情報取得のためには、スマートフォンで位置情報の利用とBluetoothの利用がオンになっている必要がある。
同社のプログラムが搭載されたアプリのID数は1.1億に達する。1台のスマートフォンに複数のアプリがインストールされている場合が普通だが、重複を除いた端末ベースでは、法人契約等も含み7,000~8,000万台になると同社では推定している。月間のログ数は300億個以上に達する。
同社は、①分析・可視化サービス、②行動変容サービス、③One to Oneサービスの3つのサービスを提供している(図表1)。
◆ 分析・可視化サービス
分析・可視化サービスでは、取得した位置情報ビッグデータを同社が独自開発したAI群で解析することにより、ユーザーのプロファイリング(どのような場所に行く傾向があるか)、移動状況(徒歩・自動車・電車等の移動手段)、行動予測によるリコメンド(ある場所に行った人が次に行く可能性が高い場所はどこか)等を推計し、小売事業者、商業施設運営事業者、消費財メーカーや自治体等へニーズに応じた行動分析レポートを提供している。
提供サービスの一つである「ショッパーみえーる」は、全国4.5万店(22年5月末)での来店者のリアル行動データをAIで推定することで、商圏の把握、競合店舗とのシェア比較、来店客の新規・リピーターの割合や属性、細かな行動嗜好等を可視化するツールで、小売事業者のマーケティング施策の意思決定等に活用されている。同サービスはSaaS注2として提供されており、店舗数等に応じた月額課金(15~95万円)となっている。
◆ 行動変容サービス(Beacon Bank AD)
行動変容サービスでは、小売事業者や消費財メーカー等に対し、リアル行動ビッグデータのAI解析により、来店可能性が高い顧客群と商圏を発見し、当該顧客群を中心にFacebookやInstagram等のSNSやYouTube、アプリを通じたプッシュ通知等で広告を配信することで、消費者の行動変容を促す広告サービスを提供している。
強みは、配信した広告に対して、店頭設置のビーコン等を活用することや事業者が保有する購買データとマッチングすることで、来店数・来棚数や購買数といった効果が測定できることで、その結果に基づいてより効果の高い広告につなげるPDCAサイクル注3を実現できる点にある。
同サービスの収益は、デジタルチラシの配信料(月額100~1,500万円)の他、新規出店や特売セール等のイベントに応じてスポットで受け取る配信料がある。
◆ One to Oneサービス(Beacon Bank 1 to 1)
One to Oneサービスは、主に小売事業者や商業施設運営事業者等に、オリジナルアプリの開発や、CDP注4(統合マーケティング基盤)の構築により、一人一人へパーソナル体験を届けるシステムソリューションを提供している。
同サービスでは、同社のリアル行動ビッグデータを始めとした各種データソースと小売事業者等が保有するデータ等をGoogleクラウド上のCDPに集約し、リアル行動、リアル購買、ネット行動、ネット購買のデータを統合・分析し、AIで意味づけすることで、個々の顧客が必要としている情報を最適なタイミングと最適な媒体(インターネット上の広告表示、アプリを通じたプッシュ通知、デジタルサイネージ等)を通じて提供する。
同サービスの収益は、システム・アプリの構築や、構築後の運用・保守からの収入である(月額100~1,500万円)。