マーキュリーリアルテックイノベーター<5025> 不動産テック企業として中古マンション事業者向け新サービス開発で成長を目指す

2022/03/01

蓄積した新築分譲マンションの物件情報を新築・中古マンション事業者向けに提供
不動産テック企業として中古マンション事業者向け新サービス開発で成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト: 鎌田 良彦

◆ 蓄積した新築分譲マンションの物件情報をマンション事業者に提供
マーキュリーリアルテックイノベーター(以下、同社)は、「不動産ビッグデータ×Technology」を事業コンセプトに、新築分譲マンションの物件概要情報や販売価格情報、物件パンフレット等を収集・蓄積してデータベース化し、新築マンション事業者や中古マンション仲介事業者等に、マーケティングのための情報として提供している。また、新築分譲マンション販売時に、モデルルームへの集客等を目的としたリスティング広告等のインターネット広告の運用業務等も行っている。

同社は、不動産マーケティングソリューション事業の単一セグメントであるが、「プラットフォーム事業」、「デジタルマーケティング事業」、「その他事業」の3つに分けて売上高を開示している(図表1)。

21/2期の売上高では、プラットフォーム事業が813百万円(売上高構成比64.8%)、デジタルマーケティング事業が310百万円(同24.7%)、その他事業が130百万円(同10.4%)となっており、プラットフォーム事業が主力事業である。

◆ プラットフォーム事業
プラットフォーム事業は、新築マンション事業者向け(新築領域)と中古マンション仲介事業者向け(中古領域)からなる。

新築領域では、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県、栃木県)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)、東海圏(愛知県、岐阜県、三重県)の三大都市圏の物件を対象に、新築分譲マンションのデータを蓄積し月額課金のSaaS注1形態で提供する「マンションサマリ」及びその廉価版サービスである「リアナビ」が主力サービスとなっている。

マンションサマリ及びリアナビについては、20年3月にWeb経由で端末を問わずにデータの取得ができるSaaS型サービスをリリースし、従来のPCにソフトウェアをダウンロードしてデータを取得するクライアントサーバー型サービスからの移行を進めている。SaaS型サービスでは特定の端末に依存しないため、顧客がリモートワーク等で利用することが可能になった。

マンションサマリは、新築マンション事業者が、主にマンション用地購入時に行う市場調査のために利用している。リアナビは、新築分譲マンションの営業担当者が近隣の競合分析や販売戦略立案等のために利用している。

同社がマンションサマリ・リアナビの経営指標としている平均顧客数(各月の顧客数の平均値)、ARR注2(月額課金制サービスの契約額の年間合計額)で見ると、21/2期の平均顧客数は277社、ARRは621百万円となっており、同社の安定収益源となっている。

新築マンション事業者向けには、マンションサマリ、リアナビ以外にも、賃貸物件の賃料相場情報を提供する「賃貸サマリ」、中古マンションの相場情報を提供する「売買サマリ」、国勢調査等のデータをもとに町丁目単位での人口や世帯等の集計ができる「統計サマリ」、分譲マンションのみならず中高層建築の計画情報が閲覧できる「開発サマリ」、土地の仕入れ担当者が候補用地の案件ステータスを管理することができる「用地サマリ」、過去のボーリング調査に基づき環境リスク情報の取得ができる「地質サマリ」を「サマリネット」シリーズとして提供している。

賃貸サマリ、売買サマリについては、アットホーム(東京都大田区)、統計サマリはマップマーケティング(東京都渋谷区)、地質サマリは応用地質(9755 東証一部)からそれぞれデータ提供を受けている。これらのサービスについ ても23/2 期中に順次SaaS 型への移行を行う計画である。

中古領域では、新築マンション販売時の物件概要や間取り図、価格表等のデータを中古マンション仲介業者向けに従量課金制で提供する「データダウンロードサービス」がある。この業務は18 年1 月に、マンションの物件情報提供や不動産会社のホームページ作成等を行うワンノブアカインド(東京都港区)との共同事業として開始した。同社はマンションのデータ提供と新規サービスの開発、ワンノブアカインドはシステムの開発・保守、新規顧客開拓を行い、収益はワンノブアカインドとシェアしている。同社が蓄積してきた新築マンションのデータを活用する事業といえる。

プラットフォーム事業では、このほかに、大手不動産ポータル等に、物件概要情報や相場情報等を提供する「データ提供」を行っている。

◆ デジタルマーケティング事業
デジタルマーケティング事業では、主に新築分譲マンションのモデルルームへの集客を目的に、インターネット広告であるリスティング広告の運用を行っている。その他、分譲マンション・戸建て販売に特化した物件サイトの制作も行っている。

◆ その他事業
その他事業では、「タウンマンションプラス」、システムの受託開発、戸建て住宅向けの外壁塗装のリフォーム等を行っている。

タウンマンションプラスは、同社のマンションデータベースの築年数や物件価格、間取り等の物件特性情報から、世帯属性や生活志向を推定し、プロモーションを行う企業の商品やサービスに合致する世帯を抽出してダイレクトメールを送るサービスである。取り扱う商品やサービスは、住宅だけではなく、学習塾や音楽教室、自動車、金融商品等がある。

システムの受託開発では、サマリネットやリアナビ等の開発・運用実績やデータベース構築ノウハウ等を活かしたシステム開発を行っている。

リフォームはホームセンター内に営業ブースを設けて来店顧客に対して営業を行い、案件受注後は協力会社にリフォーム工事を発注して、同社は主に施工監理を行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。