リニューアブル・ジャパン<9522> 発電所の開発や運営・売電に係る業務の一気通貫での内製化に特徴がある

2022/01/17

太陽光を中心とした再生可能エネルギー発電所の開発・運営・売電事業を展開
発電所の開発や運営・売電に係る業務の一気通貫での内製化に特徴がある

業種: 電気・ガス業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 太陽光発電所の開発事業及び運営・売電事業を主に展開
リニューアブル・ジャパン(以下、同社)グループは、連結子会社21社、持分法適用関連会社4社を中心に構成されている。太陽光発電所を中心とする再生可能エネルギー発電所に関する、(1)開発、(2)EPC(設計/調達/建設)、(3)資金調達・発電所設備(持分含む)の売却、(4)発電、(5)アセットマネジメント(以下、AM)、(6)オペレーション&メンテナンス(以下、O&M)、(7)資産運用、(8)電力小売を一気通貫で手掛けている。

同社グループは、再生可能エネルギー発電所を開発したのち、同社(同社が匿名組合出資を行う合同会社等を含む)で保有し売電収入を得るか、同社がメインスポンサー、東急不動産が共同スポンサーを務める上場インフラファンドである日本再生可能エネルギーインフラ投資法人(9283東証REIT)(以下、上場インフラファンド)や同社が投資家を募り組成する私募ファンド(以下、私募ファンド)等に売却し、売却収入を獲得する。

同社グループが売却した再生可能エネルギー発電所に関して、同社は上場インフラファンドや私募ファンドからAM業務及びO&M業務を受託している。また、同社の子会社であるアールジェイ・インベストメントは上場インフラファンドから資産運用業務を受託している。電力小売は同社子会社のみらい電力が行っている。

同社グループは、再生可能エネルギー事業の単一セグメントだが、売上高・売上総利益は開発事業(フロー型収益)、発電・運営事業(ストック型収益)の2つの事業に区分される(図表1)。発電・運営事業はさらに売電収入等、AM、O&M、子会社に区分される。子会社には日本再生可能エネルギーオペレーター及びみらい電力の数値が含まれる。

21/12 期第3 四半期累計期間における売上構成比は、開発事業18.4%、発電・運営事業81.6%(売電収入等60.5%、AM0.8%、O&M7.6%、子会社12.6%)であり、売上総利益の構成比は、開発事業38.9%、発電・運営事業61.1%(売電収入等45.2%、AM2.2%、O&M10.9%、子会社2.7%)である。

発電所の売却については、発電所設備そのものを売却する場合と匿名組合出資持分を売却する場合がある。発電所設備そのものを売却する場合は発電所売却額が売上高、発電所簿価が原価となり、売上高と売上原価の差額が売上総利益(譲渡益)として計上される。一方で、匿名組合出資持分の売却の場合は売却価格と簿価の差額が売上高となり、売上原価が計上されないため、売上高と売上総利益(譲渡益)が同額となる。売上高は売却方法によって大きく変動するため、同社グループは売上高よりも売上総利益を重視している。

◆ 開発事業
開発事業の売上高は、開発報酬、EPC 報酬、発電所設備(持分を含む)の売却で構成される。同社によると、売上高及び売上総利益の構成比は、発電所設備(持分を含む)の売却が大半を占めるようである。

① 発電
同社は、地権者、地方公共団体、金融機関や機関投資家から再生可能エネルギー発電所候補地に関する情報を得たのち、土地の広さや形状、日射量等様々なデータを確認し、再生可能エネルギー発電所としての適性や電力会社への効率的な接続の可能性などを検証している。

事業性の検討段階では様々なデータに基づき、具体的な収益予想、開発コストの最適化、収益シミュレーション等、候補地に再生可能エネルギー発電所を建設した場合の事業性の分析を行っている。さらに実地調査を行い、開発を妨げる様々なリスクを検証し、事業性に適うと判断したプロジェクトについては、基本計画を立て、関係各省庁、地方公共団体や電力会社等と協議し、必要な許認可の申請を行う。

同社は、発電所用地の獲得から始める物件に加えて、許認可取得済みの物件や造成済みの物件も取得し、開発を行っている。また、運転開始済みの物件も取得している。

21年9月末時点での同社グループの物件開発/物件取得の実績は、発電所数140カ所、パネル出力合計754.3MW(売却済みの発電所を含む)である。同時点での開発物件パイプラインは、14カ所、183.0MW(ネット持分161.0MW)である。商業運転開始時期別のパイプラインの物件数・設備容量(ネット持分)は、21/12期が3物件・25.7MW、22/12期が2物件・57.3MW、23/12期が7物件・26.8MW、24/12期は商業運転開始を予定している物件は無く、25/12期以降が2物件・50.6MWである。

② EPC(設計/調達/建設)
同社は、特定建設業の許可を取得しており、太陽光発電所を中心とした再生可能エネルギー発電所の発電設備の設計(Engineering)、工事部材調達(Procurement)、建設(Construction)を行うEPC事業を展開している。

同社は開発する物件の多くについて、EPCを外注しているが、外部EPC事業者の工事品質の担保やコスト管理・低減の観点から、同社にはEPC業務の専門家が在籍しており、同社自身もEPC業務を手掛け、ノウハウを蓄積している。

21年9月末での同社のEPC事業の実績は、発電所数25カ所、パネル出力合計45.4MWであり、そのうち同社グループ以外の第三者から受託したのは3カ所、1.8MWである。

③ 資金調達・発電所設備(持分含む)の売却
同社は、開発した発電所または発電所の持分を、上場インフラファンドや私募ファンドに売却することで、売却収益を得ている。

同社は開発開始時や他社物件を取得した段階では、売却するか保有するか、また売却するならどこに売却するかは明確には決めておらず、発電所物件の需給状況や金利の状況などを踏まえて判断しているようである。

同社は第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業の登録を受けており、再生可能エネルギー発電所の開発のフェーズ毎のリスクや資金調達マーケットの状況に応じて、自己資金や借入のみならず、投資家を募り私募ファンドの組成等を含む様々な手法によって資金を調達している。

同社は、再生可能エネルギー発電事業を行うための資金調達として、上場インフラファンドや私募ファンドに対して、従来型のプロジェクトファイナンス(ノンリコースローン)や、メザニンファイナンスに加えて、再生可能エネルギープロジェクトボンド注1をスポンサーとしてアレンジし、資本市場から開発資金を調達している。同社は17年から合計10件、863億円のプロジェクトボンドの発行をアレンジしている。

◆ 発電・運営事業
① 発電
同社グループが所有又は上場インフラファンドから貸借している再生可能エネルギー発電所が発電した電力は、主に固定価格買取制度(以下、FIT制度)に基づき、一般送電事業者等へ売電している。

21/12期第3四半期末時点の同社グループが保有する発電所数は47カ所、設備容量は272.5MW(ネット持分:128.2MW)であり、21年7月末時点で上場インフラファンドから貸借している発電所数は55物件、109.2MWである。

同社グループが保有する発電所のネット持分の構成は、太陽光発電所が29カ所・116.3MW、水力発電所が2カ所・10.6MW、小風力発電所が16カ所・0.3MWである。太陽光発電所の設備容量別の構成は、高圧(50MW以上2,000kW未満)が9.0MW、特別高圧(2,000MW以上)が118.2MWである。特別高圧の太陽光発電所を中心とした構成となっている。

同社グループが保有する太陽光発電所について、FIT価格の構成比は設備容量ベースで、40円/kWが40%、36円/kWhが47%、32円/kWhが10%、27円/kWhが2%、12.88円/kWhが1%である。FIT残存年数の構成比は設備容量ベースで、20年が1%、19年が57%、18年が25%、17年が7%、16年が4%、15年が2%、13年が2%、12年が2%である。

②AM
同社は、再生可能エネルギー発電所を自社で直接保有する他、SPC注2にて保有する場合がある。その場合、同社はSPCが保有する再生可能エネルギー発電所の収支管理、レポート作成、その他事務続きなどのAM業務を行っている。同社はSPCのAM業務に加え、同社が組成した私募ファンド及び上場インフラファンドのAM業務も受託している。

21年9月末時点の同社のAM事業の実績は、受託発電所数は124カ所、パネル出力は708.8MWである。

③O&M
同社は、再生可能エネルギー発電所の運転開始後の管理運営等のO&M業務を行っている。O&M業務の内容としては、運転状況の確認や巡視、稼働実績の報告、草刈り、法令で定められた申請・報告等を実施や事故発生時の緊急対応・関係者への連絡などが挙げられる。

21年9月末時点の同社のO&M事業の実績は、受託発電所数149カ所、パネル出力886.8MWである。これらのうち、同社グループ以外からの受託発電所数は28カ所、パネル出力は305.1MWであり、同社グループ以外からの受託の割合は発電所数ベースで18.8%、パネル出力ベースで34.4%である。

④ 投資運用業務
アールジェイ・インベストメントは金融商品取引法上の金融商品取引業者として、上場投資ファンドより投資資産運用業務を受託している。投資資産運用業務の内容としては、上場投資ファンドの資産配分・資本構成の検討・判断、保有資産のモニタリング、投資家へのレポート作成等である。

⑤ 電力小売
みらい電力は小売電気事業として、民間の発電事業者から調達した電力及び一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX)との間で行う市場取引等により調達した電力を、官公庁を中心に学校、工場、ビル、商業施設、商店等に供給している。

◆ 顧客の構成
同社グループの売上高は上場インフラファンドや私募ファンド、小売電力事業者など少数の顧客に集中する傾向がある(図表2)。19/12期及び20/12期においては、上場インフラファンドと私募ファンドへの太陽光発電所の売却がそれぞれ46.2%、53.3%を占めた。21/12期第3四半期累計期間は、新たに運転を開始した大型の太陽光発電所の保有を増やしたため、中部電力(9502東証一部)の子会社で小売電力事業者である中部電力ミライズへの売電収入の売上構成比が高くなっている。

◆ 人員体制・拠点
同社グループの従業員の配置は、開発が約60人、EPCが約25人、O&Mが約120人、プロジェクトファイナンスが約10人、本社コーポレートが約40人である。

同社は再生可能エネルギー発電所のO&M業務や、各地域の自治体や地権者、地域金融機関との関係を強化するために、同社が太陽光発電所を保有する地域を中心に、拠点を配置している。21/12期第3四半期末時点の同社の拠点は、出張所・事務所が13カ所、発電所事務所が14カ所の合計27カ所である。

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