網屋<4258> 高度なログ管理製品と通信インフラネットワークの設計・構築を提供

2021/12/29

“データ”と“通信”を守るセキュリティソリューションプロバイダー
高度なログ管理製品と通信インフラネットワークの設計・構築を提供

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 通信とデータを守るセキュリティソリューションプロバイダー
網屋(以下、同社)は、“重要データの記録”に着目し、AIテクノロジーを使ったログ注1管理製品「ALog(エーログ)シリーズ」を開発・販売する「データセキュリティ事業」とICT注2通信インフラネットワークの設計・構築をクラウド上から遠隔で行う「Network All Cloud(ネットワーク オール クラウド)」サービスなどを提供する「ネットワークセキュリティ事業」を行っている。

20/12期の売上高の45.4%がデータセキュリティ事業、54.6%がネットワークセキュリティ事業によるものである。ネットワークセキュリティ事業の売上構成比は近年上昇傾向にある(図表1)。利益についても、調整額が大きい点には注意が必要であるが、ネットワークセキュリティ事業の利益構成比は、利益率が改善していることも加わり、上昇傾向にある。

◆ データセキュリティ事業
データセキュリティ事業ではあらゆるログを管理できるソフトウェア「ALogシリーズ」を開発・販売している。ラインナップとしてファイルサーバアクセスログ管理「ALog ConVerter(エーログ コンバータ)」と統合ログ管理「ALog EVA(エーログ エヴァ)」がある。

「ログ管理」は監視ビデオやドライブレコーダーと同じように事件後の追跡素材や証拠資料として重要な役割を果たす。社内関係者のデータ持ち出しの監視、外部からのサイバー攻撃検知、テレワーク下の労務管理など企業活動のあらゆる局面でログが利用可能である。

データセキュリティ事業ではソフトウェアライセンス、導入作業、ソフトウェアの保守について対価を受け取っている。導入時にライセンス費・年間保守費・導入作業費を受け取り(フロー売上)、次年度からはストック売上と位置付けられるソフトウェア保守料を受け取っている。20/12期のデータセキュリティ事業の売上高に占めるストック売上の比率は56%であった。

データセキュリティ事業で扱うソフトウェアはITベンダーなどのサーバに付帯するセキュリティソフトウェアであるため、ITベンダーやSIer、ディストリビューターなどが主な販売代理店となる。20/12期では、販売代理店を経由した間接販売がデータセキュリティ事業の売上高の約97%を占めている。

(1)ALog ConVerter
ALog ConVerterは情報漏洩など内部不正の抑止のために利用されるログ管理製品である。重要なデータが格納されている大規模なファイルサーバやストレージサーバの操作を記録するもので、PC全台の監視を必要としないため導入が容易で低価格化を実現している。

他社製品の多くは大量かつ複雑なログをそのまま記録保管するだけだが、同社のALog ConVerterは、複雑なログを分かり易く見える化する解析処理技術を有しており、有事の際の即時検知を可能にしている。

(2)ALog EVA
ALog ConVerterがファイルサーバのログ管理に特化しているのに対して、ALog EVAはファイルサーバを始めストレージ、データベース、ミドルウェアなどのあらゆるネットワーク機器のログを広範囲に管理できる統合ログと呼ばれるカテゴリーの製品である。ログの整理、意味付け、活用方法を展開したテンプレートを標準提供しており、サイバー攻撃検知やテレワーク下での勤怠管理などをログから簡単に行うことが出来る。

◆ ネットワークセキュリティ事業
ネットワークセキュリティ事業では主に企業のLAN/WAN注3などのICT通信インフラネットワークを設計・構築している。オフィスのサーバ・ネットワーク構築、拠点間をつなぐ暗号接続、テレワーク用のリモートツールなどクラウドネットワークに関するテクノロジーをサービスプロバイダーとして提供している。

客先に出向いて設計・構築・工事を行う「ネットワークインテグレーション」のモデルで提供するものと顧客企業のインフラ環境をクラウドから運用代行するSaaS注4モデル「Network All Cloud」での提供がある。

ネットワークセキュリティ事業は機器の販売代金やネットワーク設計・構築・工事代金などの初期費用をフロー売上として認識し、その機器を使ったクラウドネットワークシステムの使用料をストック売上として毎年受け取っている。20/12期のネットワークセキュリティ事業のストック売上比率は54%であった。

同事業の販売ルートは直接販売とOEMを含む間接販売があるが、直接販売比率は約58%となっている。

(1)ネットワークインテグレーション
同社が創業時から行っている事業で、個別のニーズに合わせて企業LAN/WANネットワークを提供している。病院関連の実績が多く、院内LANの設計ノウハウを多く保有している。急速に拡大する事業ではないが、同社の技術力を支える上で重要な役割を果たしている。

(2)Network All Cloud
ICTネットワークの構築・運用をクラウド上から遠隔で行い、現場に人を派遣することなく運用できるサービスである。企業ネットワークに必要なVPN注5、ルータ注6、ファイアウォール注7、スイッチ、無線LANアクセスポイント注8などを同社がクラウド上から遠隔運用する仕組みである。

顧客企業はWeb画面から状態を確認するだけで、ネットワークの運用が可能となる。また、設備費や人件費や設計費などが削減でき、定額のクラウドサービスであるため顧客企業にとっても導入のハードルが低い。20/12期末のNetwork All Cloudの累計契約社数は2,455社となり前期末の1,409社から大幅に増加した。

Network All CloudにはクラウドVPNサービス「Verona(ヴェローナ)」、クラウド無線LANサービス「Hypersonix(ハイパーソニックス)」、クラウド情報システム支援サービス「Running Supporter(ランニングサポーター)」といったラインアップがある。

1)Verona
クラウド上からインターネットVPNサービスを設計構築・運用するサービスである。拠点間VPNやソフトウェアVPN用に利用され、テレワーク業務で必要となる企業と自宅の間の遠隔秘匿通信にも適している。従来のVPNサービスではエンジニアが現地に訪問しマニュアルでVPN機器の設定を行っていたが、Veronaは設定情報の配布、初期構築やその後の運用やアップデートもクラウド上から一括で実施できる。このため、顧客企業への負荷を大幅に削減できる。高度のセキュリティを持つことから、20/12期にはテレワークの急激な普及を受けてVeronaの導入社数は前期比約84%増となった。

2)Hypersonix
無線LANをクラウド上から設計構築・運用するサービスで、オフィスや店舗、工場、教育機関や医療機関など多拠点環境下にあるWiFiを快適安全に運用する。一般的な無線LANクラウドサービス事業者は自社の機器だけを取り扱う場合が多く、柔軟性や拡張性に欠けるといった難点があるが、同社のサービスはメーカーを問わず適した機器を選択・利用することが可能である。

3)Running Supporter
顧客企業の情報システム業務全般を代行・支援するサービスである。人材を派遣せず低コストで顧客企業の情報システム担当の代理業務を行っている。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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