True Data<4416> データ取得対象の拡大と他データとの掛け合わせによる用途開拓で成長を目指す

2021/12/17

小売業のID-POSデータを活用したマーケティング支援サービスをSaaS形態で提供
データ取得対象の拡大と他データとの掛け合わせによる用途開拓で成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト: 鎌田 良彦

◆ 小売業のID-POSデータを活用したマーケティング支援サービスを提供
True Data(以下、同社)は、スーパーマーケットやドラッグストアのポイントカード会員の顧客IDと購買データを結び付けたID-POS注1データを活用して、小売業者と消費財メーカーにデータマーケティング支援のための分析ツールを主にSaaS注2形態で提供している。

ID-POSデータを使えば、性別や年代等の購買者の属性と購買商品の双方の軸での分析が可能になる。また、リピート率や他の製品から乗り換えた消費者の比率を示すスイッチング率等の分析もできる。

同社は、データマーケティング事業の単一セグメントであるが、主要サービスのショッピングスキャンとイーグルアイ及びその他の売上高を開示している(図表1)。

◆ ショッピングスキャン
ショッピングスキャンは、スーパーマーケットやドラッグストア等の小売業者からID-POSデータを取得し、小売業者に自社データに基づくマーケティング分析の機能を提供するSaaS形態のサービスである。同社は分析ツールの利用料を小売業者から得る。小売業者は、データ分析のツールをアウトソーシングしている形になる。

また、小売業者がショッピングスキャン上で自社のID-POSデータとそれに基づく各種分析を消費財メーカーに開示して、消費財メーカーから利用料を得る機能も搭載している。この場合、同社と小売業者は、消費財メーカーからの利用料をシェアする。

消費財メーカーでは、当該小売業者の営業担当者等が、データ分析に基づいて商品提案を行う等の目的で利用する。

利用料金は200万円/年から約4,000万円/年と幅広い。200万円/年は小売業者が社内分析用途に用いる場合の最低金額である。一方、小売業者が消費財メーカーから得る開示データ利用料を、同社と一定割合でシェアする場合に、同社が受け取る対価は最大4,000万円/年程度となっている。

◆ イーグルアイ
イーグルアイは、消費財メーカー向けに、ID-POSデータに基づく消費者の購買行動を詳細に分析できるツールを提供するSaaS形態のサービスである。

分析対象となるID-POSデータは、ショッピングスキャンで得た個別小売業者のデータを、小売業者から二次利用の許諾を得て、商品分類を揃える、販売した個別小売業者等を開示しない等のデータ精製を行った上で、全国ベースでの標準化された商品購買データとして消費財メーカーに提供している。この精製されたデータに基づくマーケティングのための分析機能をイーグルアイとして提供している。

イーグルアイの21/3期末の契約社数は116社で、19/3期末の83社から年率20%近いペースで増加している(図表2)。年間利用料は500万円程度となっている。消費財メーカーでは、マーケティング担当者等が主に利用し、全国や地域別の販売動向の分析や商品開発、顧客のターゲティング等、ショッピングスキャンの利用とは異なる目的で利用されている。

同社のビジネスモデルは、小売業者から大量のID-POSデータを取得し、それを標準化されたデータとして統合し、消費財メーカーのマーケティングのための分析ツールとして提供しているところに特徴がある。

◆ その他
その他には、ドルフィンアイ、POS分析クラウドのSaaS形態のサービス、KURASHI 360やその他の個別対応案件の売上高が含まれる。

1) ドルフィンアイ
ドルフィンアイは、ユーザーが知りたい商品カテゴリーや地域を選択するだけで、消費者の購買情報が表示されるツールで、イーグルアイの簡易版として、導入商品の位置づけになっている。顧客は、消費財メーカー、小売業者、教育機関、メディア等幅広い。

2) POS分析クラウド
POS分析クラウドは、消費財メーカー等の企業が、POSデータやID-POSデータを分析する際に必要な、データ精製、蓄積、管理、分析等の機能一式をクラウド上で提供するサービスである。

3) KURASHI 360
KURASHI 360は同社が保有するID-POSデータに、消費者行動に関わる他のビッグデータや政府・自治体が提供するデータ等を掛け合わせて、「暮らしに関わる地域毎のマーケティングデータ」として提供するサービスである。案件ごとの個別対応となっている。

同社では、ショッピングスキャン、イーグルアイ、ドルフィンアイ、POS分析クラウドの4つのSaaS形態サービスの売上高をストック型売上とし、重要な経営指標に位置付けている。ストック型売上比率は、20/3期の71.5%から21/3期には77.9%に上昇している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。