日本エコシステム<9249> 排水浄化処理剤の販売数量の拡大による成長を目指す

2021/10/19

公営競技の運営・保守及び中部地方で高速道路の点検・保守・工事等を展開
排水浄化処理剤の販売数量の拡大による成長を目指す

業種: サービス業
アナリスト:阪東 広太郎

◆ 公共サービス・交通インフラ・環境の3事業を展開
日本エコシステム(以下、同社)グループは、同社及び連結子会社(日本ベンダーネット、アイスクエア、サテライト一宮、中央警備保障、JESテイコク、ワンズライフ及びぼくんちオジカオート)の計8社で構成されており、公共サービス事業、交通インフラ事業、環境事業を主な事業としている。21/9期第3四半期累計期間における売上構成比は、公共サービス事業50.1%、交通インフラ事業35.6%、環境事業9.1%、その他事業5.2%である(図表1)。

◆ 公共サービス事業
公共サービス事業では、ファシリティ改修事業と公営競技の運営・保守事業を展開している。同社によると、21/9期第3四半期累計期間における売上構成比は、ファシリティ改修事業が約3割、公営競技の運営・保守事業が約7割である。

ファシリティ改修事業は、公営競技におけるトータリゼータシステム注1の設計・製造・販売・機器設置及び、一般事業者も含めた空調衛生設備等のファシリティに関わる事業である。同社によると、21/9期第3四半期累計期間における売上構成比はトータリゼータシステム関連が約2割、空調衛生設備等が約8割である。

同社の子会社である日本ベンダーネットは、日本国内の競輪場・競馬場向け中心に、トータリゼータシステムや場外券売機システム等の設計・製造・販売・機器設置を行っている。顧客は公営競技の施行者である市町村や複数の地方自治体で運営する競輪組合が中心である。5~7年ごとのトータリゼータシステムの交換時期に、公営競技の施行者が入札を執行することが多い。

空調衛生設備等のファシリティに関わる事業として、同社は、愛知県を中心としたオフィスや店舗、工場、病院、学校等の幅広い顧客に対して、空調衛生設備等の販売・工事・保守メンテンナンスを展開している。顧客の獲得経路は、同社の他事業における取引先や、同社従業員からの紹介が大半を占めている。

公営競技の運営・保守事業において、同社グループは公営競技場における、同社が製造・販売・設置したトータリゼータシステムのメンテナンス及び、警備・整備・AIを活用したイベント実施等の運営業務を展開している。

21年2月末時点で、日本ベンダーネットは、4競輪場、1競馬場および、13場外発売所においてトータリゼータシステムのメンテナンス業務を行っている。これらの施設のうち、21年7月末時点で、日本ベンダーネットは、高松競輪場及びボートレースチケットショップオラレ美馬においては、トータリゼータシステムのメンテナンスに加えて、公営競技場や場外発売所の警備・イベント運営等も含めた包括運営サービスを提供している。高松競輪場では、チャリ・ロト(東京都品川区)と日本ベンダーネットの共同事業体が受託している。

トータリゼータシステムのメンテナンスについては、公営競技の施行者である自治体や組合等が毎年入札を実施するが、既に導入している機器を設計・製造・販売・設置をした事業者が選ばれることがほとんどのようである。

同社は、M&Aによって公共サービス事業を立ち上げ、拡大してきた。11年11月にオスカー電子(愛知県一宮市)より、トータリゼータシステムの設計・開発・保守及び、要員派遣、業務用機器販売に関わる事業を譲受し、公営競技に関する事業を開始した。16年1月には公営競技場の場外車券販売場の運営を行うサテライト一宮を、17年3月にはトータリゼータシステムの製造・販売・保守や公営競技場及び場外発売所の運営に関わる包括事業を行う日本ベンダーネットを子会社化した。日本ベンダーネットの株式取得を通じて、日本ベンダーネットの子会社で警備業務の請負、建物の総合管理に関わる業務を手掛ける中央警備保障も子会社化した。

◆ 交通インフラ事業
交通インフラ事業は、エンジニアリング事業とメンテナンス事業から成るが、21/9 期第3 四半期累計期間における売上構成比は、エンジニアリング事業が約4 割、メンテナンス事業が約6 割とのことである。

エンジニアリング事業は、高速道路を中心とした構造物点検、電気通信設備・ETC 保守、交通管制業務及び、道路照明灯保守等の道路エンジニアリングに関わる事業である。

高速道路については、中日本高速道(以下、NEXCO 中日本)グループが運営・管理する高速道路のうち、主に、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、滋賀県、福井県での業務が多い。

道路照明灯の保守に関しては、同社は愛知県の県道に設置されたLED 街路灯の約3 割にあたる約1.3 万本の保守を請け負っている。愛知県が県道にLED 街路灯を導入する際に、同社がLED 街路灯の調達・設置工事を請け負ったのちに、保守を継続的に行っている。

メンテナンス事業としては、NEXCO 中日本グループが運営・管理する高速道路を中心とした維持修繕工事、事故・災害復旧工事、雪氷対策、土木工事、交通規制等の道路メンテナンスに関わる事業を展開している。

21/9 期第3 四半期累計期間において、交通インフラ事業の売上高の約4 分の3 はNEXCO 中日本グループ向けであり、全体の売上高に占めるNEXCO 中日本グループ向けの売上高は26.3%である。

同社は、NEXCO 中日本の運営・管理する高速道路のエンジニアリング・メンテンナンスに関わる業務のために、岐阜市、各務原市、一宮市、浜松市、静岡市の拠点に技術者を中心に人員を配置している。各地域に拠点を置くことで、NEXCO 中日本グループから技術等について相談を受けるなど、関係構築にも寄与しているようである。

交通インフラ事業では、21 年7 月末時点で、従業員73 名、臨時雇用78 名の人員がいるが、大半が現場監督者・技術者である。営業専任者はおらず、現場や技術に精通した技術者が現場業務の中で顧客と関係を構築し、技術提案などを行っているようである。

◆ 環境事業
環境事業では、排水処理事業と産業用太陽光発電事業を展開している。21/9期第3四半期累計期間における売上構成比は、排水処理事業が約2割、産業用太陽光発電事業が約8割である。

排水処理事業において、排水浄化処理促進製剤「マロックス」シリーズの研究開発・製造及び販売業務を行っている。同社の排水浄化処理促進製剤は、既設の排水浄化処理施設において、設備投資をすることなく、既に使用されている薬剤と併用できる点に特徴があるようである。

同社によると、塗料工場や畜産場など様々な業種の企業から問い合わせを受けているが、現時点では設備の老朽化や生産品目の増加等によって、既存の設備・排水浄化剤では汚染物質を除去しきれなくなった食品製造工場からの受注が多いようである。

同社は新たな成長事業を検討する中で、20年5月に、セイネン(岐阜県岐阜市)より、排水浄化処理剤の製造・販売に関する事業を譲受し、排水処理事業に参入した。同社は、研究開発と生産能力の増強に向けて、20年12月に岐阜県羽島市にジオ環境開発研究所を開設し、大学及び民間企業と排水浄化効率を促進させる製剤などの共同研究・共同プロジェクト及び、同社の主力製品である「マロックス」シリーズ製品の製造を開始した。

産業用太陽光発電事業は、産業用太陽光の発電設備の設計・施工・保守業務、および売電に関わる事業である。

同社は、愛知県と岐阜県を中心に、日本全国で産業用太陽光発電の発電設備の設計・施工・保守を手掛けている。顧客は自家消費を目的とした先や、投資リターンを目的とした投資家である。顧客の獲得経路は、既存顧客のリピートや、既存の顧客や取引先からの紹介が大半である。

同社の連結子会社で12年11月に、建設コンサルティング企業のテイコク(岐阜県岐阜市)との合弁企業として設立したJESテイコクは、13年12月に売電を開始した関発電所(岐阜県関市)、19年3月に売電を開始した西秋沢発電所(岐阜県本巣市)の2つの太陽光発電設備を保有している。

◆ その他
その他事業では、ICTソリューション事業と不動産事業を展開している。21/9期第3四半期累計期間における売上構成比は、ICTソリューション事業が約2割、不動産事業が約8割である。

ICTソリューション事業では、システム保守業務、AI技術を活用したICTソリューションの提供を行っている。システム保守業務は同社が納入した販売管理や在庫管理等のシステム及び、他社が納めたシステムの保守業務を請け負っている。顧客の業種は、食品製造業が多く、規模は中小企業から大手企業まで多岐にわたる。AI 技術を活用したICTソリューションとしては、ベイジアンネットワーク注2 を活用した小売業向けのDM 送付先の最適化や 従業員の健康リスク管理等に関するソリューションを展開している。

不動産事業は、愛知県一宮市を中心に、愛知県、岐阜県、三重県における不動産の仲介・売買・賃貸を展開している。取扱い物件の種類は、戸建住宅を中心に、貸事務所、倉庫、マンション等である。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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