タンゴヤ<7126> 直近業績は新型コロナウイルス禍の影響があるが、店舗網拡大は継続
「GINZA Global Style」を中核ブランドにオーダースーツ店舗を展開
直近業績は新型コロナウイルス禍の影響があるが、店舗網拡大は継続
業種: 小売業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 老舗の毛織物卸売商の事業を土台にオーダースーツ店舗を展開
タンゴヤ(以下、同社)は、オーダースーツの企画、販売を行う企業である。 個人事業の期間も含めて戦前より大阪を中心に毛織物卸売商として事業を 行ってきた。09 年に同社のグループ会社が新規事業としてオーダースーツ の「Global Style」ブランドを立ち上げ、12年に同社がその会社を吸収合併し て以降、オーダースーツ店舗の運営が同社の主力事業となった。現在は、 「GINZA Global Style」を中核ブランドとして、27 店舗を運営している。
「Global Style」ブランドが始まった当時、オーダースーツは、各顧客の型紙 を用意する手間をかける、1 着が 20 万円を超える「フルオーダー」、あらかじ め用意された複数の型紙から顧客に合うものを用いてスーツを仕立てる、1 着2万円を下回るような「イージーオーダー」や「パターンオーダー」といった 領域が存在していた。1 着 2 万円超~10 万円台の価格帯のサービスは限ら れており、ここに事業機会を見出したのが「Global Style」であった。
同社の事業は、オーダースーツの販売店舗を運営する事業の単一セグメン トだが、売上高は営業部ごとに分類されている。GS 営業部が全売上高の 9 割以上を占めており、中でも「GINZA Global Style」が全売上高の 7 割超を 占める主力業態となっている(図表 1)。
◆ 業態
GS営業部で提供するオーダースーツは、「高感度で高品質、且つ低価格 から中価格のお買い得感のあるもの」としている。価格帯(税抜価格)として は、1 着当たり 24,000 円から 100,000 円未満と幅広いが、40,000 円を下回る 価格帯は初めてオーダースーツをつくる 20~30 代の人を、40,000 円を超え る価格帯は、他のラグジュアリーブランドや百貨店等でオーダースーツを作 ったことがある人をターゲットとしている。
オンラインサービスを除く GS 営業部の 4 業態は、提供するスーツの質や価 格の違いではなく、接客する店舗のあり方によって分かれている(図表 2)。 主力の「GINZA Global Style」は「プライベートフィッティングルーム」と呼ば れる個室試着室が用意されていることが特徴で、業界初と言われている。ま た、「GINZA Global Style COMFORT」はさらにウェイティングカフェを併設 した店舗であり、顧客体験をより重視した店舗となっている。
「TANGOYA」は「TANGOYA 九州」を事業譲受したことで加わった業態であ る。事業譲受前の事業モデルを踏襲しているため、ターゲットとする顧客が 40~50 代以上が中心である点や、委託先である縫製工場を国内工場に限 定している点で、「GINZA Global Style」とは異なった業態となっている。
取り扱っている商品はメンズオーダースーツが中心だが、レディスオーダー スーツも取り扱っている。レディスはメンズと異なり、既製品が圧倒的に多く、 オーダースーツがほとんど存在してこなかった。言わばこれから開拓されて いく市場と言える。同社ではGS営業部の22店舗のうち、13店舗で取り扱 いがある。
◆ SPAモデル
同社でオーダースーツをつくる際、顧客は、生地やモデル(デザイン)を選 択することとなる。長く服地の卸販売を事業としていたこともあり、生地の取り 扱いを得意としており、顧客は 5,000 種類以上の生地から選ぶことができる。 なお、どの店舗でも選択できる生地は共通である。また、モデル(デザイン)も10 数種類から選ぶことができるが、それらは、縫製工場との協業のもと、 自社企画モデル(デザイン)として開発されている。
生地はイタリアから輸入されるものが多い。顧客からオーダーが入ると、生 地を仕入先から生産委託先の縫製工場に発送するとともに、デザイン等の オーダー情報が縫製工場の生産管理を行う会社に送られ、スーツが製造さ れる。
このように、同社は生産を外部の縫製工場に委託し、企画、販売を自社で 行う、いわゆる SPAモデルを構築している。
◆ 集客と会員制度
「GINZA Global Style」が比較的若い世代の顧客をターゲットとしてきたこと もあり、同社は、早くからネット経由での集客に重点を置いてきた。
一方、オーダースーツは、他のアパレル製品に比べてリピート率が高いという特徴がある。そのため、同社では、会員制度として「GS倶楽部」、「GSアプ リ倶楽部」を設け、来店促進、顧客満足度向上を図っている。21年6月末時 点の会員数は、「GS倶楽部」が143,284 人、「GSアプリ倶楽部」が206,436 人、合計349,720 人となっている(図表 3)。
同社は、20 年 6 月に「GS オンラインオーダーサービス」を開始した。採寸デ ータを保有する会員を対象に、スタイリストによるカウンセリングを通じてオン ラインでオーダー出来るサービスである。同社はこのサービスの拡大に力を 入れていく方針であり、その観点でも、この会員制度の存在は大きい。