アララ<4015> 21年8月期はキャッシュレスサービス事業の成長が業績を牽引する見込み

2020/11/24

法人顧客向けにキャッシュレスサービス等の販促ソリューションを提供
21年8月期はキャッシュレスサービス事業の成長が業績を牽引する見込み

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ キャッシュレスサービス等の販促ソリューションを提供
アララ(以下、同社)は、キャッシュレスサービスやメッセージングサービス等の販促ソリューションを提供している。同社が対象とするのは、多数のエンドユーザーを有し、独自のブランドでの展開を図りたい企業が中心となる。また、同社のソリューションはSaaS注1型として提供されるものが大半である。そのため、安定的な収益を獲得できるリカーリングビジネス注2が、20/8期の同社の収益の87.3%を占めている。

同社の事業は、キャッシュレスサービス事業、メッセージングサービス事業、データセキュリティサービス事業、その他の事業(ARサービス)の4つの報告セグメントに分類されている(図表1)。販促ソリューションとしては、キャッシュレスサービス事業とメッセージングサービス事業が中心であり、両事業合わせて全売上高の80%超を占めている。これまで、メッセージングサービス事業が安定的に利益を生み出し、それをキャッシュレスサービス事業に投下してきた結果、キャッシュレスサービス事業は19/8期に黒字化し、20/8期に本格的に利益貢献するようになってきている。

◆ キャッシュレスサービス事業
エンドユーザーが利用するハウス電子マネー注3やポイントの仕組みを、小売や外食等の店舗を運営する顧客企業に提供している。サービス名は「point+plus」であり、電子マネー機能やポイント機能のほか、蓄積された顧客情報をもとにメールを送るメッセージングサービス等の販売促進機能を盛り込んだ統合型販促ソリューションである。

「point+plus」は、クレジットカードや「〇〇Pay」といった決済手段を使うのとは異なり、顧客企業自身が電子マネーの決済事業者となることが最大の特徴である。顧客企業自身が決済事業者になることで、電子サービスマネーにチャージする際のインセンティブの付与や支払時のポイント付与等を顧客企業が自由に設定することができ、エンドユーザーの囲い込みや、リピーター化といった販売促進につなげることができる。

同社の顧客企業の多くが地方スーパーマーケットで、それ以外では、カフェやファーストフード等の外食チェーン運営企業がある。

システム導入時の初期費用等も発生するが、キャッシュレスサービス事業の収益の大半は、サービス利用に対する月額利用料と、ハウス電子マネーの決済金額に応じた決済手数料である。ハウス電子マネーの決済額は、大口顧客の増加により20/8期に入って大きく拡大し、20/8期の決済額は前期比約140%増の2,125億円となった。

◆ メッセージングサービス事業
主に販売促進の目的で、大人数に対して一度に電子メールを配信するサービスを提供する事業である。以下の3つの用途別パーツで構成されており、パーツ単体でも、必要とするパーツを組み合わせてでも利用できる点が特徴である。

(1) 基幹システム等と自動連携したメール配信機能「repica auto-mail」
(2) 効果測定まで行うメールマーケティング機能「repica editor」
(3) メールの遅延解消や配信エラー率を低減してメール配信を行う機能「repica sender」

キャッシュレスサービス事業とは異なり、顧客企業の業種は、運輸、金融、情報通信や地方自治体等、多岐にわたっている。

キャッシュレスサービス事業と同様、システム導入時の初期費用等も発生するが、収益の大半はリカーリングビジネスによるものである。SaaS型として提供する場合は重複を除いたメールアドレス数に応じた月額固定のサービス利用料が、オンプレミス注4型で提供する場合は年間ライセンス料が同社の収益となる。

◆ データセキュリティサービス事業
顧客企業が保有する個人情報の管理を、顧客企業自身で適切に行えるようにするためのサービス「P-Pointer File Security」を提供する。13年10月にKLaB(3656東証一部)より事業譲受した事業である。

金融、情報通信、サービス業等の個人情報を多く取り扱う業種の事業者が顧客企業となる。メッセージングサービス事業の顧客との重複は少ないものと推察される。

収益は、オンプレミス型の年間ライセンス料によるリカーリング売上のみとなっている。

◆ その他の事業(ARサービス)
その他の事業として、AR注5に関連するサービスを展開している。スマートフォンARアプリ「ARAPPLI」のサービス提供と、facebookやInstagramで動作するカメラエフェクト「Spark AR」のコンテンツ制作の受託開発を行っている。

◆ 販売経路は代理店経由が多い
販売経路は代理店経由が多い。20/8期のキャッシュレスサービス事業の販路別売上構成比は、代理店等が75%、直販が25%となっている。代理店経由が多いのは、同社の人員の49%がサービス企画開発人員で占められるエンジニア中心の会社であるためである。また、メッセージングサービス事業やデータセキュリティサービス事業においても代理店経由での販売が中心である。

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