日通システム<4013> カスタマイズ開発せずに、多様な顧客ニーズに応えるソフトウェアに強み

2020/10/16

中堅企業向けの就業管理システムの企画・開発・販売事業を展開
カスタマイズ開発せずに、多様な顧客ニーズに応えるソフトウェアに強み

業種: 情報・通信業
アナリスト: :阪東広太郎

◆ 主に就業管理システムの企画・開発・販売事業を展開
日通システム(以下、同社)グループは、同社と日通システムベトナム有限 会社(連結子会社)の 2 社で構成されている。同社グループの事業セグメン トは、「Human Resource Management(以下、HRM 事業)」及び「その他」で 構成される。「HRM 事業」は主に就業管理システムを開発し、多様な業種の 企業・団体に提供している。「その他」は主に貸会議室事業で構成される。 19/12 期の売上構成比は、HRM 事業が 99.0%、その他が 1.0%である(図表 1)。

◆ HRM 事業
HRM 事業の事業領域は、主に就業管理と健康管理であり、同社グループ 製品である統合 ERP 注 1 「勤次郎 Enterprise」を、クラウド及びオンプレミスで提供している。HRM 事業は「クラウド事業」及び「オンプレスミス事業」の 2 つ の事業区分で構成され、19/12 期の売上構成比は、クラウド事業 46.4%、オ ンプレミス事業 52.5%である(図表 1)。

(1)クラウド事業
クラウド事業では、統合 ERP「勤次郎 Enterprise」の「勤次郎」、「人事郎」、 「Q 太郎」や「ヘルス×ライフ」などのクラウドサービスを提供している(図表 2)。同社によると、クラウド事業の売上高の約 8 割が就業管理システムの「勤 次郎」シリーズである。

クラウド事業の顧客は、従業員数百人規模の中堅企業が多いようである。顧 客の業種は、製造業、小売・卸売業、医療・福祉、サービス業、建設業、情 報通信業など多岐にわたる。労働集約的で、勤務場所や勤務シフトの種類 が多く、労務管理の手間がかかる業種が多いようである。

同社グループは、10 年 7 月に「勤次郎 Enterprise for SaaS」をリリースし、ク ラウド事業を開始した。オンプレミスと異なり、顧客はサーバーやソフトウェア 等の初期投資が不要なこともあり、中堅中小企業を中心に導入が進み、15 年 12 月から 19 年 12 月にかけて、契約社数と契約ライセンス数は、それぞ れ年率 38.6%、年率 48.2%で増加した(図表 3)。20 年 8 月末時点で、契約 企業・団体数は約 1,200、契約ライセンス数は約 29 万ユーザーライセンスな っている。1 社当たりの利用者数は、中堅や大手企業での導入が進んでい ること等から、14 年 12 月末の 182 人から、20 年 6 月末の 241 人に増加して いる(図表 3)。

同社グループでは、顧客がソフトウェアを導入する際に、顧客企業のシステ ム環境の設定、ソフトウェアのインストール、就業情報端末の設置及び利用 のための講習などのコンサルサポートを提供している。顧客の IT リテラシー などに応じて、就業管理およびシステの専門スタッフが、要件定義のヒアリン グからシステムセットアップ、操作説明、テスト稼働、本番稼働までの各工程 を支援しており、その対価としてコンサル料を受け取り、その後は利用期間 にわたってライセンス料を月次で受け取る。コンサル料は数百万円程度が 多いようである。ライセンス料は契約ライセンス数で決まり、1 ライセンス当た りの月額費用は 300 円程度である。

(2)オンプレミス事業
オンプレミス事業においても、クラウド事業と同じく、「勤次郎」、「人事郎」、 「Q 太郎」や「ヘルス×ライフ」などを提供している。同社によると、オンプレミ ス事業の売上高の約 8 割が就業管理システムの「勤次郎」シリーズである

オンプレミス事業の顧客は、従業員 500 人以上の企業が中心で、顧客の業 種はクラウド事業と同様に多岐にわたる。自社でシステム運用人員やサー バー等を持つため、顧客の規模は大きいようである。20 年 8 月末の契約企 業・団体数は約 3,800、契約ライセンス数は約 112 万ユーザーライセンスで ある。

オンプレミス事業でも、クラウド事業と同様に顧客がシステムを導入する際に、 コンサルサポートを提供しており、コンサル料を受け取っている。導入後は、 全顧客に対してプレミアムサポートとして、ソフトウェア及び就業情報端末に 障害が生じた場合の修理並びに法令の改正変更に対応した最新プログラ ムを提供しており、利用期間にわたってプレミアムサポート料を受け取る。

(3)販売
同社の販売チャネルは、同社による直接販売が約 3 割、販売パートナー経 由が約 7 割となっている。直接販売では、既存顧客からの紹介や、セミナー やウェブプロモーション、ダイレクトメールなどを受けた顧客からの反応に対 応するプル型の営業がほとんどのようである。

販売パートナーは、大塚商会(4768 東証一部)やリコー(7752 東証一部)の 販売子会社であるリコージャパン、富士ゼロックス(東京都港区)、ミロク情報 サービス(9928 東証一部)といった、中堅中小企業への販路を持つ企業が 中心である。特に、大塚商会が「働き方改革」関連商品の販売を強化してい ることもあり、大塚商会向けの販売構成比が高まっており、20/12 期第 2 四半 期累計期間では、33.3%となっている(図表 4)。

顧客企業における窓口は、人事・総務部門がほとんどである。顧客は既に 就業管理システムを導入していて、法令改正への対応や老朽化をきっかけ に、システムの入れ替えを検討するケースが多い。システムの入れ替えに際 して、複数社の製品を比較検討する顧客がほとんどであり、その中で同社 や販売パートナーへ問合せが来るようである。

同社グループは、見積もり等を提示する最終提案にまで進んだ場合、約 8 割 程度の確率で受注できているとのことである。競合するパッケージソフトウェア は同社グループの製品より価格が低いものの、カスタマイズ開発が必要となる ため、同社グループの製品との価格差は小さくなり、同社グループの製品が 機能面と納期や価格のバランスから選ばれているようである。初回の顧客訪 問から受注までの期間は平均すると 6 カ月未満のようである。

◆ その他の事業
その他の事業として、同社グループのオフィスにおけるスペースの有効活用 を目的とした貸会議室事業を行っている。イベント、セミナー、会議・打ち合 わせなど、多目的な用途に応じて利用できるスペースを、設備とともに一定 時間で貸出提供している。貸出対象スペースは、同社の本社・東京本部お よび大阪支店における空き会議室である。

>>続きはこちら(1.25 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。