丸全昭和運輸(9068) 増収増益 中期経営計画に期待

2023/07/20
 

岡田 廣次 社長

丸全昭和運輸株式会社(9068)

 

 

会社情報

市場

東証プライム市場

業種

陸運業(倉庫・運輸関連業)

代表取締役社長

岡田 廣次

所在地

神奈川県横浜市中区南仲通2-15

決算月

3月末日

HP

https://www.maruzenshowa.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,960円

20,612,844株

81,626百万円

8.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

100.00円

2.5%

493.03円

8.0倍

5,628.39円

0.7倍

*株価7/10終値。23年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

116,967

7,502

8,315

5,937

298.97

65.00

2020年3月(実)

122,801

8,877

9,477

8,030

396.23

70.00

2021年3月(実)

121,136

9,851

10,490

6,748

332.73

75.00

2022年3月(実)

136,850

11,820

12,567

8,579

423.02

85.00

2023年3月(実)

140,861

12,692

13,781

8,931

440.37

100.00

2024年3月(予)

154,000

14,500

15,500

10,000

493.03

100.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2018年10月1日付で5:1の株式併合を実施。EPS、DPSは遡及して調整。
*当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。22/3期のDPSには記念配当5.00円を含む。

 

丸全昭和運輸株式会社の2023年3月期決算概要などをお伝えします。

目次

 

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:長期ビジョン及び第8次中期経営計画と進捗>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23/3期の売上高は前期比2.9%増の1,408億円。営業利益は同7.4%増の126億円。増収効果に加え、売上総利益率も改善して売上総利益は同7.7%増加し販管費の増加を吸収した。営業利益率は同0.4ポイント上昇した。前期比増収増益も、会社予想を若干下回った。期末配当は、当初予想42.50円/株から10円/株増配し52.50円/株とした。年間では前期比15.00円/株増配の100.00円/株。 
  • 24/3期は売上高が前期比9.3%増の1,540億円、営業利益は同14.2%増の145億円の予想。第8次中期経営計画2年目だが、3PL事業の拡大とともに、「成長ターゲット」では農業関連分野の売上の拡大、「事業競争力の強化」では業界別物流プラットフォームの構築、「企業基盤の強化」では、DXの推進等による人材の育成等、各施策を実行し、目標売上・利益の達成を図る。配当は100.00円/株(うち上期末50.00円/株)を予定。予想配当性向は20.3%。 
  • 23/3期は貨物取扱量の停滞、トラック燃料価格の上昇、ドライバー不足などがある中、10期連続の経常増益を達成、24/3期も利益率を改善させながらの増収増益を見込む。PBRは1倍を大きく割り込み、同業他社との比較でも低位にとどまっていることを会社側も強く認識している。PERについても10倍割れ低位にとどまり、中期経営計画の達成と認知度向上によるバリュエーションの修正に期待したい。 

1.会社概要

陸・海・空の複合一貫輸送に取り組む総合物流企業。現場の「知恵と実績」を活かしたソリューションの提供、「プラスα」のオペレーション、国内外に広がる物流ネットワーク、物流と情報を繋ぐITシステム等が強み。顧客の大半が上場企業という顧客基盤をベースに着実な収益拡大を継続。ロジスティクスを包括的に受託し、全体最適化を実現する「MARUZEN 3PL services」の拡大に注力。減配は一度もなく、前期まで9期連続の増配を実施。

 

【1-1 沿革】

1931年8月17日 創業者中村全宏(なかむら まさひろ)氏が「丸全昭和運輸株式会社」を創立し、京浜工業地帯の鉄鋼、化学メーカーなど、素材産業の顧客を中心に、工場資材、原料、製品の荷造りなど構内作業や運搬を開始した。
また、設立と同時に、中村氏の名前である全宏の「全」の字を「○」で囲んだ店のマークも作られた。
「○」には「永遠」に続く企業であってほしいという願い、「全」には「一度踏み出した道だ、何があってもこの業を全うしよう」という固い決意が込められている。
店名としては最初、「昭和組」も候補に挙がったが、創業当時は昭和6年と、昭和時代も始まったばかりで、店名に「昭和」をつける企業が多かったことから、「昭和」の上に創業者中村全宏氏の「全」をとった「丸全」をつけた。
創業時から単なるトラック輸送だけではなく、上記の構内作業、通関など様々な業務を一括して請け負う「複合一貫輸送」を特徴として顧客企業のニーズを取り込んでいった。
第二次世界大戦後の復興、高度成長の波にも乗り企業規模は急速に拡大、1963年には東証一部に上場した。
国内ネットワークを拡大するのと並行し1971年には国際航空貨物取扱業務に進出。1974年には「MARUZEN OF AMERICA,INC.」(ロサンゼルス)、「丸全昭和(香港)有限公司」を設立するなど、海外ネットワークの拡大も積極的に推進する。
2004年には現在の同社を特徴づける3PL事業システムが本格的に稼働を開始。その後も、M&Aも活用して国内外のネットワーク拡充を進めている。
2022年4月、市場再編に伴い東証プライム市場に移行した。

 

【1-2 経営理念】

以下の社是、経営理念を掲げている。

 

社是  

(同社WEBSITEより)

 

仕事への熱い思い入れと、それをやり遂げる不断の努力が如何に大切であるかということを意味している。
創業者中村全宏の精神であり、今も全社員に受け継がれている。

 

経営理念 物流の分野に於て、お客様第一主義をモットーに、高品質なサービスの提供をします経営基盤の安定と拡大を通じて、株主の期待に応え、広く社会に貢献します社員の福祉向上と人材育成に努め、働き甲斐のある職場をつくります事業運営に当たっては、企業の倫理、社会規範を遵守します

 

1991年、物流新時代を自社が切り拓き、物流の発展に貢献するための道標を示したものとして発表された。

 

ブランド

スローガン

物流は、愛だ。

 

2021年、創立90周年を記念してブランドスローガンを掲げた。「愛を持って物流と向き合う姿勢がどこよりも強い会社でありたい。」という思いが込められている。

【1-3 市場環境】

国土交通省が発表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(2022年9月)によれば、国内貨物輸送量は、ほぼ横ばいで推移していたが、2020年度は大幅に減少した。2021年度は回復したものの、2019年以前の水準には届かない。尚、国際貨物輸送量については、2013年以降は減少傾向にあり2020年に減少、2021年は回復したものの、2019年の水準には届いていない。

 

2020年以降、コロナ禍による世界的な生産及び物流の縮小があった後、感染拡大沈静化に伴う中国生産の急回復、米国での巣ごもり需要の急拡大、半導体不足・部材不足などの複合要因によるコンテナ不足・物流遅延といった物流能力の回復遅れが顕在化している。
運送業者にとっては荷主の計画通りの運送が困難な状況も発生。荷主にとっても運賃高騰や在庫積み増しなどコスト増を余儀なくされているケースも増加している。

(国土交通省資料「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」2022年9月より)

 

また構造的な人手不足も運輸業界にとっては大きな課題となっている。物流分野における労働力不足が近年顕在化しており、トラックドライバーが不足していると感じている企業は増加傾向。年齢構成は全産業平均より若年層と高齢層の割合が低く、中年層の割合が高いほか、労働時間も全産業平均より約2割長い。関連企業はIT活用を含めた様々な施策による効率化に取り組んでいるほか、運送費用の値上げを試みている。

(国土交通省資料「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」2022年9月より)

 

(主なベンチマーク企業)

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

9062

NIPPON EXPRESS HD

2,450,000

-6.4

105,000

-32.5

4.3%

15.5

737,749

10.1

1.0

9065

山九

568,000

-1.9

37,000

-3.1

6.5%

9.7

302,737

11.7

1.1

9068

丸全昭和運輸

154,000

9.3

14,500

14.2

9.4%

8.1

78,844

7.8

0.7

9069

センコーGHD

790,000

13.5

29,000

13.6

3.7%

10.0

147,017

8.4

0.9

※売上高、営業利益は今期会社側予想、単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。時価総額は6月5日終値×6月5日時点直近の短信記載の発行済株式数。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は6月5日終値ベース。単位は倍。

 

PBR1倍割れで、PERも一桁。一層の認知度向上および成長戦略の明確化が必要であろう。

 

【1-4 事業内容】

(概要)
3PLサービスや海・陸・空一体の複合一貫輸送によるロジスティクスをグローバルに展開している。
また、工場や大学の移転、プラント輸出等の各種大型機器の解体から、移設・組立・据付まで一貫して行う機工関連業務、精密機器輸送や危険品輸送等、専門知識と高い技術力を伴う高品質な物流サービスを提供している。

 

(主要顧客)
創業時より素材産業の顧客企業が多いが、近年では新規開拓により顧客の業種はより幅広いモノとなっている。
主な顧客及びグループは以下の通り。
レゾナック、ダイヘン、富士フイルム、三菱商事、ライオン、旭ファイバーグラス、ニチアス、三井化学、ニデックなど。

 

顧客別売上高ベスト10で総売上の約3割、ベスト50で同約6割、ベスト100で同約7割を占め、ほとんどが上場企業またはそのグループ会社となっており、優良な顧客基盤を有している。

 

(主な物流サービス)
◎3PLサービス
調達・生産・販売・回収に係わるロジスティクスを包括的に受託し、ロジスティクスの全体最適化を実現している。

 

*3PLとは?
サードパーティー・ロジスティクスの略。企業の抱えるさまざまな業務の内、物流部門を第三者企業に委託する業務形態を指す。
効率的な物流ルートの構築は企業にとって極めて重要な課題であるが、企業が自前でトラックなどの交通手段、荷物を保管しておく倉庫、必要な人的資源やソフトウェアなどを全て揃えるのは大きな手間と資金がかかる。
そこで、そうした物流業務を丸ごと専門に扱っている外部業者にアウトソーシングし、企業は自社の貴重な経済資源を中核業務に集中させるほうが様々なメリットを得ることができるため、3PLの活用が急速に拡大してきた。

 

3PL導入のメリットとしては、本業集中による商品やサービスの品質向上、在庫最適化を通じた業務の効率化やキャッシュ・フローの改善などが挙げられる。
例えば、最重要課題となる「単価」と「物量」で構成される物流コストの削減においては、物流部門は物流の管理・運営機能を担っている為、コントロールできるのは「単価」の低減に限られ、それも一定の基準に達すると限界がくる。それに対し、物量はコントロール不可能であり、生産計画・納入条件など「生産部門」、「営業部門」の制約によって決まる。
従って、物流コストの削減は物流部門だけでなく「生産部門」、「営業部門」が三位一体となり全体を最適化するSCM(サプライチェーンマネジメント)の実現が不可欠となるわけだが、同社の提供する「MARUZEN 3PL service」では、顧客と共同で経営戦略に沿った物流の全体設計を策定し、従来の物流業者としての立場を超えて、実物流業務、オペレーション管理にとどまらず、SCM全体を見据えた企画・調整機能も提供しており、この点が大きな特徴である。
また、顧客が求める物流の全体設計と共にPDCAサイクルを回し、継続的な改善活動を提案しながら、共同で更なる物流の効率化を追求している。

 

この「MARUZEN 3PL services」の効果的な運用を可能にしているのが自社開発した3PL情報システム「MLPシステム」である。
「MLPシステム」は、全てのロジスティクスプロセスを一元的に管理し、顧客の大切な貨物情報をWeb上でリアルタイムに公開するなど「物流の見える化」を可能としている。
同社では物流改善活動の第一歩は「物流の見える化」の推進であると考えているが、その為の効率的な運用と物流データの蓄積・分析を支える物流システムの構築には多大なコストが必要であり、同システムを利用することにより、顧客企業は新たなシステム投資費用を最小限に抑えることが可能である。

 

(同社HPより)

 

3PLにおける同社のもう一つの違い・特徴は、同社が「アセット型3PL」であるという点である。
「アセット型3PL」とは文字通り自社で倉庫や輸送手段、物流拠点などを所有しているプレーヤーであり、これに対し自社ではそれらを所有しておらず、輸送業者や倉庫業者と提携して荷主企業のニーズに対応していく業者を「ノンアセット型3PL」と呼ぶ。

 

高品質なサービスを追求する同社は倉庫など施設を原則的に自社で保有していることに加え、トラックのドライバーの安全教育、構内作業の標準化等にも力を入れているため、顧客からの厚い信頼を得ている。
また自社施設であるため顧客に対しきめ細かいデータの提供も可能で、前述のPDCAサイクルをより効果的に回すことができる点も、同社の3PLサービスが顧客に評価される要因となっている。

 

今後は、以上の3PLサービスを更に発展させた独自のLLPサービス「MALoS(Maruzen Advanced Logistics Solution、丸全版先進的物流ソリューション)」を展開していく。

 

◎グローバル物流
国内拠点と世界33か所の拠点網および海外パートナーとの連携により、顧客企業の海外進出、生産拠点の移設などの海外展開をサポートしている。また海外物流システムで現地での物流プロセスを可視化し、海外拠点間の物流効率化、サプライチェーンの効率化を実現している。

 

◎トラック輸送
コンピューター、医療機器、各種検査装置などの精密機械から建設機械・建設資材などの重量物や危険物等の化学品、また事務所や個人引越等の一般貨物まで幅広く対応。専門スタッフが安心できるきめ細やかなサービスを提供している。
鉄道、内航海運、航空輸送による一貫した最適な物流プランを提案している。

 

◎港湾サービス
海上輸送の窓口の港湾において、高いセキュリティ、コンプライアンス体制を背景に、輸出入貨物の通関、輸出梱包など迅速なサービスを提供している。
◎鉄道輸送
幹線輸送の鉄道部分を担うJR貨物と全国の集荷・配達の鉄道貨物利用運送事業者と連携し、荷物を戸口から戸口へ届ける複合一貫輸送サービスを行っている。

 

◎保管・流通加工
全国各地に配置している倉庫・物流センターで、貨物の入出庫から保管(在庫管理)、流通加工などの情報システムを駆使してシームレスに行っている。
MLPシステムが入出庫・保管状況などの情報を一元管理。検品、ラベル貼り、小分け、半製品の組立など、ニーズに合わせた流通加工を行うほか、物流センターやSP倉庫の効率的な運用に関する様々な提案を行い、庫内作業の最適化を実現している。

 

◎構内作業
顧客の有する工場・倉庫内で梱包や流通加工、横持輸送、本船積みを伴う出荷作業等、ニーズに合わせた構内作業を行っている。
構内作業のスペシャリストがお客様の工場・倉庫内物流の最適化を実現している。
作業進捗、在庫状況などの情報管理を徹底し、お客様の要望に応えている。
作業に応じた荷役機械をご用意し、無理・無駄のない構内作業を提案している。

 

(事業セグメント)
報告セグメントは「物流事業」、「構内作業及び機械荷役事業」の2つ。この他、報告セグメントに含まれない事業として建設業、警備業、不動産業、保険代理業、自動車整備業等のサービスを提供している。

 

 

セグメント名

サービスの種類

物流事業 *貨物自動車運送事業

*利用運送事業(貨物自動車・鉄道・外航海運・内航海運・航空)

*港湾運送事業(一般港湾運送・港湾荷役(船内、沿岸)・艀運送)

*倉庫業

*通関業

*梱包業

*海上運送事業

*航空運送代理店業

構内作業及び機械荷役事業 工場構内での原料、製品、重量物、精密機械等の移送、組立、充填、構内倉庫への保管、入出荷作業とこれらに附帯する諸作業並びに機械の賃貸

 

貨物自動車運送事業においては自社保有1,000台を含め4,000台のトラックを有している。

 

【1-5 特長と強み】

1931年の創業以来、顧客の製造現場において、顧客と一体となって物流業務を行うことを得意分野としてきた同社の、製品の品質向上、業務の合理化、効率化を追求する挑戦を間近で支えた経験は、アセット型3PL事業者として多様な業界への顧客に対して提供している物流提案や物流サービスの基盤となっている。

 

①現場の「知恵と実績」を活かしたソリューションの提供

顧客の製造現場、流通現場を支えてきた「現場」を知るスタッフを企画担当として配置し、その専門性と物流知識を活かし、データに基づき物流システムの改革、物流現場レベルでの改善提案などを行っている。
リードタイムの短縮、物流コストの圧縮、在庫適正化によるキャッシュフローの増加など、サプライチェーンを最適化することで、顧客の企業価値を最大化する提案を行っている。
現在、石化業界、鉄鋼業界を始め建設機械、日用品、食品、農薬、農産物業界など多岐に亘る顧客と取引しており、それらの経験と実績を基に、顧客の業種・業態に合わせた最適なロジスティクス・ソリューションを提供している。
人手不足、高齢化が進む中、こうした知恵と実績をどのようにして継承し、また新たな知恵を生み出すか、持続可能なものとするかは今後の課題であるが、マニュアル化、標準化、IT化など様々な取り組みを進めている。

 

②「プラスα」のオペレーション
これまでアセット型3PL事業者として、センター内作業、構内作業、流通加工など様々なオペレーションを行ってきた同社のオペレーションの特徴として、通常の物流作業に「プラスα」となる付加価値を顧客に提供していることが挙げられる。
「プラスα」とは、例えば原料の充填や部品のピッキング・梱包など一般的な流通加工に加え、その前後の工程となる、材料の調合、部品の組み立てなど製造工程の一部を代行するサービス。品質はもとより、顧客のニーズに合わせ業務をカスタマイズする力、それを標準化し継続する力は顧客に高く評価されている。

 

③国内外に広がる物流ネットワーク
国内においては、得意先の多種多様なニーズに対応可能な輸送車両。それらを利用した大都市間を結ぶ幹線ネットワーク、大都市をカバーする配送ネットワークなどの輸送ネットワークを全国に展開する物流拠点と共に運用しており、アセット型3PLである同社の強力な事業基盤となっている。
特に大型コンピューター輸送からスタートした精密機械輸送、大型建機輸送からスタートした重量物輸送は多くの顧客に支持されている。

 

海外においては海外現地法人、海外パートナーとの連携により世界のあらゆる地域に貨物を輸送するネットワークを構築している。国内から海外へ、また海外から国内への原材料、部品、完成品の供給に国内外のネットワークを使い、一貫したサービスを提供している。
特に中国を初めとする東南アジアに力を入れており、物流拠点の拡大、車両・荷役機器などハードウエアの装備を推進している。その他、海上輸送での重量物・プラント輸送には、豊富な経験と実績を有し、国内の機工事業と合わせ、国内外で一貫したプラント輸送サービスを提供している。

 

④物流と情報を繋ぐITシステム
これまで培ってきたノウハウを結集し、自社開発したMLPシステム(3PL情報システム)は、全てのロジスティクスプロセスを一元管理しWeb上で公開することで、在庫情報、輸配送情報、KPI(評価指標)情報等、顧客のロジスティクス戦略をサポートするうえで欠かせない情報を提供している。
物流データの蓄積・分析を支える物流システムの構築には、多大なコストがかかるが、同システムの活用により顧客は新たなシステム投資を最小限に抑えることが可能である。

 

⑤優良顧客に支えられた安定した事業基盤
前述のように上場企業またはそのグループ会社からの売上が大半を占めており、優良な顧客に支えられた安定した事業基盤と、それをベースに安定した売上・利益を生み出している点も大きな特徴と強みと言えるだろう。
20/3期まで7期連続で増収増益を達成。残念ながら21/3期は減収となったが、経常利益は10期連続で増益となった。22年3月期は再び増収増益で、24/3期も増収増益予想。経常利益は11期連続増益を見込んでいる。
また配当についても減配は一度もなく、前期まで9期連続の増配を実施している。

 

 

【1-3市場環境】で触れたように、運送業界を取り巻く環境は決して良好ではないが、優良な顧客を多数有する同社は、リーマンショック時には減収を経験したものの、中心顧客となる素材産業の企業に加え、景気の影響を受けにくい消費財・加工品分野の企業など新規顧客開拓を積極的に進めてきた。
今後も「3PLサービス」および「グローバル展開」によって着実な収益拡大を目指している。

 

【1-6 目標とする指標】

(1)財務健全性の確保
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すためには経営基盤を強化することが必要と考え、成長投資とリスクの許容ができる範囲内で自己資本の水準を保持することを基本としており、自己資本比率は、現状では連結ベースで50%以上を考えている。

 

(2)持続的成長と企業価値向上のための投資
内部留保資金は、物流拠点の確保、保管設備の増強ならびに輸送力強化・環境対応のための車両・機械荷役装置、IT、DXへの投資やM&Aによる事業拡大などに活用し、資本の効率向上に努めている。
自己資本利益率(ROE)は連結ベースで7%以上を安定的に達成できる企業体質を目指している。

 

(3)株主還元
配当については、業績と配当性向、自己資本利益率などを総合的に勘案し、長期的に安定した配当を継続することを基本方針としている。
配当性向は、5年間の連結ベースで平均20~30%程度を目途としており、自己株式取得は、財務状況を考慮しつつ市場環境や資本効率等を勘案し、必要に応じて検討する。

 

【1-7 ROE分析】

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

23/3期

ROE(%)

5.9

6.2

6.1

7.1

9.1

7.1

8.3

8.1

 売上高当期純利益率(%)

3.98

4.22

4.25

5.08

6.54

5.57

6.27

6.34

 総資産回転率(回)

0.87

0.88

0.88

0.91

0.90

0.80

0.83

0.81

 レバレッジ(倍)

1.70

1.67

1.62

1.54

1.55

1.59

1.60

1.58

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

23/3期のROEは、前期比若干の低下。構成するそれぞれの指標が概ね横ばいとなり、引き続き目標である7%以上を維持した。今後もマージン改善をベースにしたROEの向上実現に取り組んでいく。
注力している3PLはまだまだ収益性向上の余地が大きいということで、売上の拡大とともに3PLのブラッシュアップに取り組んでいく。

 

2.2023年3月期決算概要

(1)業績動向

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

予想比

売上高

136,850

100.0%

140,861

100.0%

+2.9%

-2.2%

売上総利益

16,588

12.1%

17,874

12.7%

+7.7%

販管費

4,767

3.5%

5,182

3.7%

+8.7%

営業利益

11,820

8.6%

12,692

9.0%

+7.4%

-8.0%

経常利益

12,567

9.2%

13,781

9.8%

+9.7%

-5.0%

当期純利益

8,579

6.3%

8,931

6.3%

+4.1%

-0.8%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。予想比は22年5月公表の業績予想に対する増減。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

*費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

増収増益、予想を下回る
売上高は前期比2.9%増の1,408億円。営業利益は同7.4%増の126億円。増収効果に加え、売上総利益率も改善して売上総利益は同7.7%増加し販管費の増加を吸収した。営業利益率は同0.4ポイント上昇した。
前期比増収増益も、予想を若干下回った。
期末配当は、当初予想42.50円/株から10円/株増配し52.50円/株とした。年間では前期比15.00円/株増配の100.00円/株。

(2)セグメント別動向

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

売上高

         

物流事業

119,167

87.1%

122,753

87.1%

+3.0%

構内作業・機械荷役事業

15,397

11.2%

15,698

11.2%

+1.9%

その他

2,284

1.7%

2,409

1.7%

+5.5%

合計

136,850

100.0%

140,861

100.0%

+2.9%

営業利益

物流事業

10,086

8.5%

10,863

8.8%

+7.7%

構内作業・機械荷役事業

1,301

8.5%

1,369

8.7%

+5.2%

その他

432

18.9%

459

19.1%

+6.2%

合計

11,820

8.6%

12,692

9.0%

+7.4%

*単位:百万円。「構内・機械荷役事業」は、構内作業及び機械荷役事業。営業利益の構成比は営業利益率。

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

<物流事業>
増収増益。
各事業の取り扱い動向は以下の通り。
(貨物自動車運送事業)
微減収
関東地区:住宅資材や建設機械等が増加。日用雑貨や非鉄金属が減少。
中部地区:自動車部品が増加。ステンレス製品が減少。
関西地区:住宅設備機器や電力機器関連が増加。

 

(港湾運送事業)
増収
関東地区:建設機械や鉄鋼原料の輸出入、発電用原料や穀物が増加。青果が減少。
中部地区:自動車部品が増加。

 

(倉庫業)
増収
関東地区:自動車部品や医薬品が増加。
関西地区:電力機器関連や日用雑貨が増加。

 

(鉄道利用運送事業)
増収
住宅資材の取扱いが増加。

 

(物流附帯事業)
増収
外航船収入:化成品や電極関連品が増加し大幅な増収。
荷捌収入:自動車部品が増加し増収。
航空収入:化成品が減少し減収。

 

<構内作業及び機械荷役事業>
増収増益。
構内作業は、ステンレス製品が減少したが、電力機器関連が増加。
機械荷役事業ではクレーン作業が減少。

 

<その他事業>
増収増益。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

22年3月末

23年3月末

増減

 

22年3月末

23年3月末

増減

流動資産

63,012

68,386

+5,374

流動負債

32,515

36,903

+4,388

 現預金

14,150

15,337

+1,187

 仕入債務

13,318

12,835

-483

 売上債権

29,944

28,144

-1,800

 短期借入金

10,507

15,260

+4,753

固定資産

107,906

109,056

+1,150

固定負債

29,889

24,454

-5,435

 有形固定資産

77,197

78,973

+1,776

 長期有利子負債

22,451

16,269

-6,182

  建物及び構築物

34,418

35,943

+1,525

負債合計

62,404

61,358

-1,046

 無形固定資産

2,653

1,953

-700

純資産合計

108,514

116,085

+7,570

 投資その他の資産

28,055

28,129

+74

 利益剰余金

80,380

87,457

+7,077

資産合計

170,919

177,443

+6,524

負債純資産合計

170,919

177,443

+6,524

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

現預金の増加、有形固定資産の取得等で資産合計は前期末比65億円増加の1,774億円となった。
長期借入金の減少などで負債合計は同10億円減少の613億円。
利益剰余金の増加などで純資産合計は同75億円増加の1,160億円。
自己資本比率は前期末より1.9ポイント上昇し64.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/3期

23/3期

増減

営業CF

12,239

16,501

+4,262

投資CF

-11,007

-6,093

+4,914

フリーCF

1,232

10,408

+9,176

財務CF

2,672

-3,605

-6,277

現金同等物残高

30,250

37,237

+6,987

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

売上債権の減少、税金等調整前当期純利益の増加などで、営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2024年3月期業績予想

(1)通期業績予想

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

売上高

140,861

100.0%

154,000

100.0%

+9.3%

営業利益

12,692

9.0%

14,500

9.4%

+14.2%

経常利益

13,781

9.8%

15,500

10.1%

+12.5%

当期純利益

8,931

6.3%

10,000

6.5%

+12.0%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

24/3期は9.3%増収、14.2%営業増益を予想
24/3期は売上高が前期比9.3%増の1,540億円、営業利益は同14.2%増の145億円の予想。
23/3期を初年度とする3か年にわたる第8次中期経営計画の2年目を迎えた。計画2年目の取り組みとしては、3PL事業の拡大とともに、「成長ターゲット」では農業関連分野の売上の拡大、「事業競争力の強化」では新たな業界別物流プラットフォームの構築、「企業基盤の強化」では、DXの推進や研修プログラムの見直しによる人材の育成、ESGデータやTCFDなど非財務情報に関する開示への取り組み等、各施策を実行し、目標売上・利益の達成を図る。
配当は100.00円/株(うち上期末50.00円/株)を予定。予想配当性向は20.3%。

 

(2)事業別見通し

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

売上高

         

物流事業

122,753

87.1%

134,700

87.5%

+9.7%

構内作業・機械荷役事業

15,698

11.2%

16,700

10.8%

+6.4%

その他

2,409

1.7%

2,600

1.7%

+7.9%

合計

140,861

100.0%

154,000

100.0%

+9.3%

営業利益

物流事業

10,863

8.8%

12,430

9.2%

+14.4%

構内作業・機械荷役事業

1,369

8.7%

1,570

9.4%

+14.7%

その他

459

19.1%

500

19.2%

+8.9%

合計

12,692

9.0%

14,500

9.4%

+14.2%

*単位:百万円。「構内・機械荷役事業」は、構内作業及び機械荷役事業。営業利益の構成比は営業利益率。

 

(3)事業環境と同社の対応

コロナ禍から物流事業は回復基調。新規荷主、新規業務案件の獲得も順調に進む。
原油価格高騰などコスト上昇へは価格転嫁で対応できる見通し。

 

   

リスク要因

 

全体

コロナ禍収束によるインバウンド消費の回復や設備投資の増加などにより内需中心に回復基調 コロナの再拡大による経済活動の再停滞や海上輸送の混乱

世界的な物価高の影響

物流事業

食品メーカー向け物流センター本格稼働 発電設備の本格稼働

大型プラント設備案件

下期より3PL案件の獲得

ドライバー不足

同業間の価格競争

原油価格などコストの上昇

構内作業

機械荷役事業

前期同様に推移 特定業界・特定取引先への依存

その他事業

前期同様に推移 事故の発生による信頼の低下

 

 

4.今後の注目点

23/3期は貨物取扱量の停滞、トラック燃料価格の上昇、ドライバー不足などがある中、期初の会社予想は下回ったものの、10期連続の経常増益を達成した。24/3期も利益率を改善させながらの増収増益を見込む。
現在推進中の中期経営計画ではROEの目標を8.0%から8.5%へ改訂。PBRは1倍を大きく割り込み、同業他社との比較でも低位にとどまっていることを会社側も強く認識しており、メディアへのアプローチや施設見学会も行っていく見通し。10期連続増益予想にもかかわらず、PERについても10倍割れ低位にとどまる。中期経営計画の達成と認知度向上によるバリュエーションの修正に期待したい。

 

<参考1:長期ビジョン及び第8次中期経営計画と進捗>

2031年3月に向けた長期ビジョンと2023年3月期を初年度とする3か年の第8次中期経営計画を策定している。

 

(1)長期ビジョン

①目指す姿
目指す姿を、「テクノロジーと現場力で、お客様の未来を創造するロジスティクスパートナー」とし、顧客、社会に貢献する。

 

お客様への貢献 *DXの取り組みを通じて、自社内の省力化を図ると共に、データを蓄積する仕組みを整備し、そのデータを利用した提案で、物流の効率化だけでなく、生産、販売の効率化、高付加価値化をグローバルに提供します。

*物流の共同化、標準化を進める中で、当社独自の現場対応でお客様に貢献します。

社会への貢献 *企業の稼ぐ力のサステナビリティと社会のサステナビリティの両立を目指します。

*株主、取引先、従業員、地域社会などステークホルダーの満足度を高めます。

 

(同社資料より)

 

 

 

 

②基本戦略
長期ビジョンの基本戦略として、以下の4つを掲げている。

 

成長領域への拡大(SDGs をビジネスに) ① カーボンニュートラルに貢献する物流の構築

② 循環型社会に貢献する物流の構築

③ 再生可能エネルギー、新エネルギー分野への参画

DX によるビジネスモデルの変革 ① 労働活用型⇒装置活用型⇒情報活用型への転換

② データを利用した当社独自のLLPの展開

③ 業界別プラットフォーム構築によるエコシステムの実現

グローバル物流の拡大 ① 自社拠点の拡大

② 海外物流企業とのアライアンスの強化

③ グローバル管理体制の強化

経営基盤、事業基盤の変革 ① コーポレートガバナンスの強化(気候変動リスクへの対応等)

② 各社のパフォーマンスを最適化するグループ経営の実現

③ 教育、人事制度、組織変革による現場力の強化

④ 自社拠点の拡充

⑤ 収益構造の転換(情報活用型ビジネスへの転換、コア事業の内製化の推進)

 

(2)第8次中期経営計画

成長ターゲット、事業競争力強化の施策、事業基盤強化の施策、経営目標、投資計画、資本政策を掲げている。

 

①成長ターゲット
今後の成長が予想される業界・分野をターゲットとして、3PL サービスの更なる高度化や、物流プラットフォームによる新サービスの提供により事業拡大を図る。
環境の変化を捉え、自社の強みを活かしていく為に、設備投資やM&Aによる機能強化を実施する。

 

4つの成長ターゲットを設定している。

成長ターゲット1(成長産業) 成長産業と目されるもまだ同社の取り扱いが大きくない分野で、自社の強みを活かせる7業界をターゲットとし、営業の拡大を図る。

*ロボット

*医療機器

*半導体製造装置

*半導体材料

*蓄電池

*電子部品

*産業機械

成長ターゲット2(既存顧客のシェア拡大) 大手既存顧客の中で、成長産業に関わる製品・部材などをターゲットとして、シェア拡大を図る。
成長ターゲット3(差別化分野) 既に提供しているサービスの中で、特に差別化できているサービスを強化し、売上の拡大を図る。

*農産物関連物流サービス

*危険物輸送網

成長ターゲット4(新規事業) SDGs 等、社会的な要請が強く、今後の成長が期待される分野での事業展開を図る。

*新エネルギー

*リバースロジスティクス

 

 

②事業競争力の強化

物流事業 3PL 事業の拡大と高度化 *新規及び既存 3PL 事業の売上拡大

*LLP サービス(MALoS ※)によるコンサルティングの拡大

物流プラットフォームの確立 *デジタルプラットフォームによる共同物流の拡大

*物流パートナーとの関係強化

ロジスティクス事業(※)の拡大 *ロジスティクス事業の売上拡大

*持続的な物流サービスの提供

グローバル物流事業の拡大 *海外現地法人の事業拡大

*海外ネットワークの活用による国内事業の拡大

構内作業及び

機械荷役事業

構内作業における機械化・省人化の推進
その他事業 機工関連業務(メンテナンス等)のサービス範囲の拡大

※MALoS(マロス)
「Maruzen Advanced Logistics Solution、丸全版先進的物流ソリューション」。3PL を発展させた同社独自の LLP サービスの名称として設定した。

 

※ロジスティクス事業
事業セグメント「物流事業」の内、3PL・MALoS・物流プラットフォームに該当しない業務を総称してロジスティクス事業とする。

 

③企業基盤の強化

DXの推進 *次期基幹システムの構築

*物流プラットフォームの構築

*デジタイゼーションの推進

人材の確保と育成 *ダイバーシティの推進

*社員のスキル向上

*グループにおける人事制度の整備

設備投資の強化 *物流事業における環境対応の推進

*物流拠点の拡充

M&A の活用 *国内企業のM&A
グループ組織体制の強化 *グループの戦略策定機能の強化(管理部門)

*管理力・現場力の強化につながるグループ再編

*リスクマネジメント体制の強化

IRの強化 *各種情報開示の充実
SDGsへの取り組み *物流事業と連動した社会貢献の実施

*強靭な物流の実現

 

④経営目標
最近の業績動向を踏まえ、ROE目標を改定

 

⑤投資計画(2022年度~2024年度)

設備投資

250億円

DX投資

100億円

M&A

100億円

中期経営計画期間中の3年間累計で営業CF約500億円を見込んでおり、うち350億円を設備投資+DX投資に充当させる考え(M&Aについては、現預金と外部調達の活用を予定。70億円は既に実行済み、今期は既に100億円が確定している。

 

⑥資本政策

財務健全性の確保 成長投資とリスクの許容ができる範囲内で自己資本の水準を保持することを基本とし、自己資本比率の水準は連結ベースで 50%以上とする。
配当性向 株主還元を重要政策と位置付け、配当については、会社の業績と配当性向、自己資本利益率などを総合的に勘案し、長期液に安定した配当を継続することを基本方針とする。

配当性向は、5年間の連結ベース平均で20~30%程度を目途とする。

 

(主要ポイント)

◎DX推進について

DXのプロジェクトは21年年初から取り組んでおり、全社的なDX推進プロジェクトを行い、さらに注力している。

同社の取り組みは主に3つ。

一つは、15年前に構築した基幹システムの切り替え。

一つは、3PL を発展させた同社独自のLLP(リード・ロジスティックス・プロバイダ)であるMALoS(マロス)および物流プラットフォームの構築。

もう一つはRPAの導入などを含めた一般的な業務の効率化。

 

最も重要なのは、MALoS(マロス)および物流プラットフォームの構築だ。

LLPは、荷主側にたって、物流戦略構築、リードタイムの短縮、在庫圧縮などに取り組む。物流戦略を立てるためには、生産、販売等、荷主から正確な情報を手に入れられるかがカギとなり、LLP成功の重要な要素である。

同社は長年の実績と信頼により顧客から生産から販売、回収まで、物流すべてに関する一貫したデータを預かることができる。このデータを活用して、顧客企業の生産や販売の最適化を支援する。

 

物流プラットフォームの構築は、同社の得意分野(化学、機械など)に絞り込んで、共同配送・共同物流のプラットフォームを構築する。協力会社とともに、共通基盤のシステムづくりに取り組む。

 

・業界ごとに複数荷主が共同活用できる「物流デジタルプラットフォーム」を構築。持続可能なサプライチェーンを提供

・複数荷主の積み合わせによる共同配送、データを共有し、需要予測、物流計画、トレーサビリティ、マッチング等に活かすデータプラットフォームを装備予定

 

 

優良な既存顧客(各業界でトップシェア)に導入し、 業界での標準化を狙う

まず「アグリ関連」、「危険物」業界がターゲット

規模感・将来性に応じて同社がアプローチ可能な他の業界へ横展開

(同社資料より)

 

MALoS(マロス)の推進にあたってはコンサルティングも重要な要素となる。

従来の労働集約型ビジネスから、施設活用型・データ活用型ビジネスへの変革を図る。

 

新エネルギー分野

自動車においてはEV化の流れが加速しているが、トラックにおいてはモーターでは十分な出力を得にくいという課題がある。

そこで、トラックにおいては水素、アンモニアを利用したエネルギーの利用が適していると考えられている。

同社は化学メーカーとの長年の取引関係があるため、これを活用してエネルギーの活用を進める。

 

DXの進捗状況

攻めのDX

 

物流デジタルプラットフォーム

対象とする業界の複数顧客と共同物流の実証実験及び共有するデータの検証を実施中。

今年度中にプラットフォームの稼働を目指す。

 

MALoSサービスの構築

物流コンサルティングサービスの一貫として、物流データを活かせるツールを検討中。

現在コンテンツの一つとして、Co2算出ツールを利用した顧客へのCo2排出量可視化サービスのトライアル実施中。

 

基盤強化のDX

ローコード開発(※)ツールの

活用による業務改善

ローコード開発ツールkintoneを活用したスピーディーなアジャイル開発。

外部連携、情報共有、スマートフォンの活用、Excel業務からの置き換えを推進。

RPA(※)・AI-OCR(※)

活用による業務改善

同社では、89件のRPAロボットが稼働中。月600時間の時間削減効果。

 

車両受付システムの自社開発

トラック入退場時の受付業務の電子化。

待機トラックドライバーの呼び出しをSMS等を用いて行い、トラックドライバーの負担軽減につながっている。

 

※ローコード開発
可能な限りソースコードを書かずにアプリケーションを開発する手段・ツール
※RPA
人がパソコンで行っている事務作業を自動化するソフトウェアロボット技術
AI-OCR
紙帳票への印字や手書き文字を読み取り、テキストデータに変換するAI技術を利用したOCR機能

 

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 9名、うち社外3名
監査役

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年7月10日

 

<基本的な考え方>
1.基本的な考え方
当社は激変する経営環境に対し迅速かつ的確に対応し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現できる体制を確立するため、株主をはじめとするステークホルダーに対し経営の透明性をより高めるとともに、経営理念にも掲げております社会規範の遵守を励行し、コーポレート・ガバナンスの強化と充実に取り組むことが重要な経営課題であると位置づけております。

 

2.基本方針
(1)株主の権利・平等性の確保
当社は、法令に従い株主の権利及び平等性を確保するとともに外国人株主や少数株主に配慮し、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備に努めております。

 

(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現するためコンプライアンスを重視しつつ、株主、顧客、取引先、社会、従業員等の様々なステークホルダーの利益を考慮して適切な協働と良好な関係の維持に努めております。
また、サステナビリティを巡る課題に対しても積極的・能動的に取り組んでまいります。

 

(3)適切な情報開示と透明性の確保
当社は、会社の財務情報及び非財務情報について法令に基づく情報開示を適切に行うとともに、法令に基づく情報開示以外にも株主をはじめとするステークホルダーにとって有用性の高い情報については主体的に提供するよう努めます。

 

(4)取締役会等の責務
当社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促進し、収益力・資本効率等の改善を図るため、1.中期経営計画を策定し企業戦略の方向性を定める。2.内部統制システム、リスク管理・コンプライアンス体制を整備し取締役・経営陣のリスクテイクを支える。3.社外取締役を複数選任することで取締役・経営陣に対する実効性の高い監督体制を構築する。4.取締役会の監督機能の強化によるコーポレート・ガバナンスの充実の観点から、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、業務執行の適法性・妥当性の監査・監督を担うことで、より透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待に、より的確に応えうる体制の構築をする。以上の4点をはじめとする役割・責務を適切に果たすよう努めます。

 

(5)株主との対話
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、株主との建設的な対話を行い経営計画等の内容について明確に説明するとともに、株主からの意見、要望等は取締役会に報告し、経営に反映させるよう努めております。

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>

原則

実施しない理由

(補充原則2-4-1)

人材の多様性確保のための目標

当社は、社内における人材の多様性の推進とともに、全従業員の自律的なキャリア形成を支援し、全ての従業員が個性と能力を十分に発揮して、いきいきと働くことが出来る雇用環境の整備に取り組んでおります。

女性の活躍推進においては、女性管理職の比率を2027年度までに5%以上とする事を目指し、その達成に向けて、女性の多様な部署への配置による活躍できる環境の整備や、ライフイベントも配慮した多様なキャリアパスの構築等を推進中です。

今後、引き続き外国人や中途採用者等の多様な人材の確保に向けて施策を講じ、測定可能な数値目標についても検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

(原則1-4)

政策保有株式の方針、議決権行使

当社は、投資株式を保有目的によって区別しており、専ら株式の価値の変動または株式に係る配当によって利益を受けることとして所有する株式を「純投資目的である株式」また、純投資目的ではなく、取引関係の維持強化を目的とし、政策的に所有する株式のことを「純投資以外の目的である投資株式」としております。

現在、「純投資以外の目的である投資株式」しか保有しておりませんが、そのうち、当社の企業価値を向上させるために中長期的な視点に立ち、今後の当社事業における営業戦略上の取引関係の維持・強化等を勘案し、政策上、保有の妥当性・合理性が認められる株式については保有していく方針です。

保有の継続に関しましては、その顧客である取引企業との業務取引の状況ならびに保有先企業の財政状況を定期的に確認し、取締役会等においてモニタリングを行い、保有の意義が十分でないと判断される銘柄については、縮減を図ってまいります。

今後も引き続き、モニタリングを継続し、政策保有株式の見直しを行ってまいります。

議決権につきましては、発行会社における財務の健全性に悪影響を及ぼす場合、違法行為が発生した場合等における該当議案には反対するなど、発行会社の持続的成長ならびに当社の中長期的な企業価値の向上につながるかどうかを判断基準として、適切に行使してまいります。

(原則3-1)

情報開示の充実

(ⅰ)当社の経営理念、中期経営計画については、当社ホームページに掲載しております。

・経営理念

https://www.maruzenshowa.co.jp/corporate/philosophy/

・中期経営計画

https://www.maruzenshowa.co.jp/ir/management/

(ⅱ)当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針については、コーポレート・ガバナンス報告書の基本的な考え方に記載しております。

(ⅲ)取締役・執行役員の報酬については、取締役会で一任を受けた代表取締役会長が、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等の内容にかかる決定方針、役員報酬規程に基づき(取締役は株主総会で決定された報酬の範囲内)、各取締役・執行役員の職位や職務執行に対する評価、会社業績等を総合的に勘案し、報酬額を決定しております。なお、当社では報酬額の決定にあたり、代表取締役会長に一任する前に、指名・報酬諮問委員会が、取締役、執行役員の報酬決定の方針および手続に関する事項、報酬の内容に関する事項について審議した後、取締役会への答申を行っております。

(ⅳ)取締役・執行役員候補の選任については、適正かつ迅速な意思決定への寄与、コーポレートガバナンス体制の整備、業務執行の監理・監督機能 等、全組織のカバーを可能とするバランスを考慮した中で、総合的に判断して選任しております。監査等委員である取締役候補の選任については、財務・会計に関する相当程度の知見の有無、企業経営に関する経験や知識、当社事業活動に関する知識等のバランスを考慮し、適材適所の視点から人材を選任しております。以上の方針に基づき、代表取締役が内容を検討のうえ、取締役会において決議しております。なお、選任にあたり、指名・報酬諮問委員会が審議の上、取締役会へ答申を行っております。また、解任する場合も代表取締役が内容を検討のうえ、取締役会において説明することを定めております。

(ⅴ)個々の取締役候補者の選解任の理由については、定時株主総会招集通知の株主総会参考書類に記載することとしております。

(補充原則3-1-3)

サステナビリティについての取り組み

当社は、社会のより良い形成と持続可能な発展に貢献し、中長期的な企業価値向上の創出を実現するために、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という3つの観点が非常に重要であるとの認識のもと、中期経営計画を策定し、具体的な取り組みを進めていくこととしております。

当社の現在の取り組みについては、当社ホームページに掲載しております。

https://www.maruzenshowa.co.jp/csr/

なお、当社は、TCFD提言への賛同を表明するとともに、同提言に基づく情報開示をしております。詳細については、当社ホームページに掲載しております。

https://www.maruzenshowa.co.jp/csr/environment/tcfd.html

 

 

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