(7242)KYB株式会社 米国・東南アジア等全地域増収

2023/01/12

 

 

 

大野 雅生

代表取締役社長執行役員

KYB株式会社(7242)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

輸送用機器(製造業)

代表取締役社長執行役員

大野 雅生

所在地

東京都港区浜松町二丁目4番1号世界貿易センタービルディング南館28階

決算月

3月末日

HP

https://www.kyb.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,550円

25,748,431株

91,406百万円

17.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

140.00

3.9%

761.88円

4.7倍

6,296.94円

0.6倍

*株価は11/18終値。各数値は23年3月期上期決算短信より。ROEは22/3期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

税引前利益

当期利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

412,214

-28,496

-29,510

-24,757

-969.18

0.00

2020年3月(実)

381,584

-40,298

-41,419

-61,879

-2,422.53

0.00

2021年3月(実)

328,037

18,297

16,340

17,087

668.95

75.00

2022年3月(実)

388,360

30,001

28,817

22,549

854.96

105.00

2023年3月(予)

442,000

29,700

28,900

20,400

761.88

140.00

*単位:百万円、円。IFRS。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。DPSは普通株式に係る配当。

 

KYBの2023年3月期上期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期上期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:2020中期経営計画>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 23年3月期上期の売上高は前年同期比12.9%増の2,098億円。AC、HCとも増収、地域別には米国や東南アジアが大幅増収となった他、全ての地域で増収。セグメント利益は同0.2%増加。インフレにより固定費が増加するも収益改善策の実施により横ばいを堅持した。円安の影響などで税引前利益14.7%、四半期純利益は11.6%増となった。中間配当は期初の予想から10円/株増額し、70円/株実施する。 
  • 23年3月期予想は、売上高が前期比13.8%増の4,420億円、セグメント利益は同7.2%増の265億円の予想。売上高は期初予想4,100億円から上方修正した。セグメント利益は据え置いたものの、営業利益、税引前利益、当期利益を上方修正した。上期の業績動向及び足元の環境並びに免震・制振用オイルダンパーに関する製品保証引当金の繰入及び取崩を行った影響等によるもの。普通株式に係る期末配当は10.00円/株増額修正し、中間、期末とも70.00円/株の年間140.00円/株(前期比35.00円/株増配)を予定している。予想配当性向は17.5%。A種優先株式に係る中間配当は3,760,274.00円/株を実施、期末3,739,726.00円/株で年間合計7,500,000.00円/株の予定。 
  • 上期は原材料高騰、欧州の景気減速懸念などの懸念材料はあった。しかし、前期からの回復基調を維持、円安も味方にして増収増益を確保した。下期以降も不透明要因はあるものの、通期の売上高や純利益は上方修正。配当も増額修正しており、自信もうかがえる。免制振オイルダンパー適合化もほぼ完了に近い。四半期ごとの進捗に注目していきたい。

1.会社概要

独立系油圧機器国内最大手企業。油圧技術をベースに、「四輪車」、「二輪車」、「建設機械」、「産業車両」、「航空機」、「鉄道」、「特装車両」など幅広い分野で製品や技術を提供している。
四輪車用ショックアブソーバで国内シェア39%、グローバルシェア14%など、多くの製品で高いシェアを有する。

 

【1-1 沿革】

1919年11月に発明家であり創業者である萱場資郎が開設した「萱場発明研究所」がルーツ。
1927年1月に個人経営の萱場製作所を創業し、航空機用油圧緩衝脚、カタパルト等を製作した。
1935年3月に株式会社萱場製作所を創立。
第二次世界大戦終結後、1956年6月に製品の販売・サービスを目的に萱場オートサービス㈱を設立。
1959年10月には東京証券取引所に株式を上場した。
1974年7月、米国にKYB Corporation of Americaを設立し、北米の市販市場へ進出。この後、積極的にアジア、ヨーロッパなど海外市場へ進出する。
1985年10月に商号をカヤバ工業株式会社に変更。
2015年10月にはブランドイメージをより強固にすることを目的に、商号をカヤバ工業株式会社からKYB株式会社に変更。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場に移行した。

 

【1-2 企業理念・経営理念】

◎ロゴ
2015年に商号を「カヤバ工業株式会社」から「KYB株式会社」に変更した意図にあるように、同社ではKYBブランドをグローバルベースでより強固なものとしたいと考えている。
そのため、下記のように「KYB」のロゴにもその意味、想いを込めている。

 

 

(ロゴに込めた意味)
心地よい日差しと植物の伸びやかな成長そして時代の風にしなやかに対応するイメージを表現しています。Bには液圧を象徴するデザインを付加し、斜体文字によりスピード感、先進性、成長性、革新性を表わしています。

 

(カラー)
愛、情熱、熱意等の意味を表わす「赤」。太陽の暖かさ、熱さと生命を育む力強さが時代を切り開くイメージを与えます。一歩先のモノづくりとつながる前進色の赤でもあります。
(同社websiteより)

 

◎KYBブランドステートメント

 

精緻な品質や確かな技術という製品の特性をステートメントで表現している。
一般生活者や取引先へ確かな品質を提供することが、ステークホルダーの「Advantage(優位性)」につながるだけでなく、確かな品質によって社員の一人ひとりが世の中を変えていくことを実感できる、モノづくりの喜びが社員の「Advantage(長所)」ともなるという意味が込められている。

 

 

◎経営理念
人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するKYBグループとして、2018年10月に判明した不適切行為に対する自省から、経営理念、企業行動指針を改定した。

 

(経営理念)

規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。
高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。
優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。
常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先・社会の発展に貢献します。

 

(経営ビジョン)

人財育成 方針や戦略を深く理解し、情熱をもって目標を完遂できる人財を育成する。
技術・商品開発 世界のお客様が感動し、安心し、そして信頼される商品を提供する。
モノづくり お客様が満足する商品をつくる喜びと躍動感に溢れ、同時に現場主義に徹した緊張感ある工場にする。
マネジメント 企業の社会的責任を常に自覚し、効率のよいグループ経営を行う。

 

(企業行動指針)
下記URLを参照
https://www.kyb.co.jp/company/guidelines.html

 

【1-3 同社を取り巻く環境】

(1)市場環境
同社の業績に大きな影響を及ぼすのは、自動車市場と建設機械市場。
同社では2市場の現在及び今後についてそれぞれ以下のように認識している。

 

➀自動車市場
自動車の世界需要は中長期的にはハイブリッド、EV含め増大するものと思われる。新型コロナウイルスの影響を受け一時的に減少した自動車生産台数はその後回復に向かっていたが、半導体不足がボトルネックとなりトヨタ自動車などが国内工場の一部を一時生産停止にするなど、足元回復基調にあるものの事業環境は不透明である。

 

同社は新車用ショックアブソーバ(SA)を、Tier1として自動車メーカーに直接供給しているほか、アフターマーケット向けにも代理店などを通じて部品商、修理工場などに供給している。同社では前者を「OEM」、後者を「市販」と呼んでいる。
アジア、中東などでは日本車の人気が高く、市販市場は同社にとって重要なマーケットである。

 

②建設機械市場
中国、インド市場の鈍化が予想されている中で、新型コロナウイルスの影響も加わり短期的には不透明感があるものの、需要は堅調と見ている。

 

(2)競合状況
①AC事業
国内では、日立Astemo(非上場)などが競合となる。
グローバルでは独・Sachs、米・Tennecoなど。Sachs社は歴史も古く、欧州系自動車メーカーとの関係が深い。

 

市販市場の同社シェアは約2割弱。グローバルではMonroe(Tennecoの市販ブランド)、Sachsなどが競合。
二輪車用ショックアブソーバでは日立Astemo、ステアリングではジェイテクト(6473、東証プライム)、日本精工(6471、東証プライム)等と競っている。

 

②HC事業
同社で最も売り上げ比率が高いパーツであるシリンダでは、中国メーカーなどが力を伸ばしている。
同社が高い技術力を有するコントロールバルブでは、ナブテスコ(6268、東証プライム)など、走行モータではナブテスコ、不二越(6474、東証プライム)などが競合である。また日本の最大手建設機械メーカーは多くのパーツを内製化している。

 

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

5994

ファインシンター

40,000

2.7

200

-54.1

0.5%

1.2%

4,782

47.6

0.3

6268

ナブテスコ

308,000

2.7

21,000

-30.0

6.8%

29.6%

404,354

19.6

1.7

6471

日本精工

980,000

13.3

40,000

49.5

4.1%

2.8%

418,963

14.4

0.6

6473

ジェイテクト

1,700,000

19.0

60,000

41.7

3.5%

3.5%

347,405

13.9

0.6

6474

不二越

250,000

9.1

17,000

15.5

6.8%

8.1%

99,303

8.6

0.7

7212

エフテック

270,000

40.7

2,000

75.0

0.7%

0.5%

9,655

6.4

0.2

7242

KYB

442,000

13.8

26,500

7.2

6.0%

17.1%

91,406

5.2

0.6

※売上高、営業利益は今期会社予想、単位は百万円。ROEは前期実績。時価総額は11月18日終値ベース。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は
11月18日終値ベース 、単位は倍。KYBの営業利益はセグメント利益(売上高から売上原価、販管費を控除して算出)。

 

【1-4 事業内容】

(1)セグメント
報告セグメントは四輪車用・二輪車用油圧緩衝器、パワーステアリング等で構成される「AC事業」、建設機械向けを中心とした産業用油圧機器からなる「HC事業」、航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置等を生産する「航空機器事業」の3つ。特装車両事業、電子機器等を「その他」としている。なお、舞台機構、艦艇機器、免制振装置等を生産する「システム製品」についてはグループ再編に伴い事業管理区分の見直しを行った結果、2022年3月期第2四半期より「HC事業」に含むこととした。

 

2022年3月期実績

 

売上高

構成比

セグメント利益

利益率

AC事業

232,846

60.0%

15,406

6.6%

HC事業

141,572

36.5%

12,348

8.7%

航空機器事業

3,655

0.9%

-3,960

その他

10,286

2.6%

918

8.9%

合計

388,360

100.0%

24,713

6.4%

*単位:百万円

 

①AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業
四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器、その他製品で構成されている。

 

2022年3月期構成比

製品

売上高

構成比

主な製品

四輪車用油圧緩衝器

169,159

72.6%

ショックアブソーバ

二輪車用油圧緩衝器

34,868

15.0%

フロントフォーク、リアクションユニット

四輪車用油圧機器

23,875

10.3%

ベーンポンプ、CVT用ポンプ、EPS

その他製品

4,944

2.1%

ATV用機器、ステイダンパ

合計

232,846

100.0%

(単位:百万円)

 

<主要製品>
◎四輪車
(ショックアブソーバ)
車体の振動を吸収する役割を持つ製品で、スプリングを伴い、車体とタイヤの間に取り付けられている。

 

 

 

(同社HPより)

 

自動車には、乗り心地や操縦安定性を向上させる機構である「サスペンション」が搭載されている。
サスペンションの機能は主に路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車輪、車軸の位置を決め、車輪を路面に対して押さえつける機能の2つがある。
基本的には、車軸の位置決めを行うサスペンションアーム、車重を支えて衝撃を吸収するスプリング、スプリングの振動を減衰するショックアブソーバ(ダンパ-)で構成される。

 

自動車は路面の凸凹からくる衝撃に対しスプリングを縮めることで吸収するが、スプリングの特性上、一旦収縮したスプリングは元の位置に戻ろうと反発する。
特にスプリングの上端にはボディー、下端には重量のあるタイヤやブレーキなどを含むサスペンションがつながっており、スプリングは慣性力により元の位置に戻る以上に伸び、縮みを繰り返してしまう。
この余分な揺れをできるだけ早く抑え、車体を安定させるのがショックアブソーバの役割である。

 

(同社HPより)

 

ショックアブソーバが適切に機能している車両は、

スプリングの無駄な動きを抑え、乗り心地を確保
ブレーキ性能が向上
コーナリングがスムーズ

 

など、快適な運転を実現することができる。

 

スプリングの縮みや伸びの作動を制御し、振動を抑える働きをする力のことを「減衰力」というが、この「減衰力」を作り出すのに大きな役割を果たしているのが、同社が創業以来培い、磨き上げてきた「油圧技術」である。

 

ショックアブソーバ本体筒にはオイルが入っていて、その筒の中をピストンが移動する。
ピストンには穴があけられており、揺れと合わせピストンが移動する時に穴を通過するオイルの抵抗が「減衰力」となる。また、車体の揺れの度合い、速さなどによりピストンが移動するスピードが変化するが、ピストン移動速度が速いほど「減衰力」は大きくなる。これを「減衰力特性」という。

 

(同社HPより)

 

優れた技術に支えられた同社のショックアブソーバは世界中の多くの自動車メーカーに評価され、後述するように高いシェアに繋がっている。また、ショックアブソーバは走行距離や経年により劣化し、その機能が低下するため、通常は初年度登録から5年以上、または走行距離7万km以上で交換が必要と言われている。
この交換需要=市販市場も同社にとっては大きな事業機会となっている。

 

(ステアリング)
自動車の「走る」、「曲がる」、「止まる」という基本機能の一つの「曲がる機能」を分担するのがステアリング装置。

 

(同社HPより)

 

ドライバーが行うハンドルの回転を、油圧式のパワーアシストユニットでサポートし、タイヤを操舵する「油圧式ステアリング(PS)」と、ハンドルの回転を、モータ、コントローラ、トルクセンサ等からなる電動タイプのパワーアシストユニットでサポートし、タイヤを操舵する「電動ステアリング(EPS)」がある。

 

「PS」は、油圧の力により、わずかな操作でのステアリング操作が可能で、危険回避にも素早く対応できるなど安全運転に不可欠な装備。一方、バッテリーを動力源とした「EPS」電動タイプは、自動車のエンジンを動力源とした「PS」に比べ、自動車の燃費を向上させることができる。

 

*高機能EPSアクチュエータ

 

*乗用車向け油圧パワステ用ベーンポンプ

 

 

 

 

◎二輪車
(サスペンション)
路面のコンディションを問わず、車体への突き上げを最小化させ、快適性を追求している。

 

(同社HPより)

 

*リアクッションユニット
車体の姿勢を保ち、路面からの振動、衝撃を吸収することで乗り心地を向上させる。

 

(同社HPより)

 

②HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
産業用油圧機器、その他製品から構成されている。

 

2022年3月期構成比

製品

売上高

構成比

主要製品

産業用油圧機器

128,716

90.9%

シリンダ、バルブ、ポンプ、モータ

システム製品

4,633

3.3%

舞台機構、艦艇機器、免制振装置等

その他油機

8,223

5.8%

鉄道用ダンパー、鉄道用ブレーキ

合計

141,572

100.0%

*単位:百万円

 

<主要製品>
ショベルカーなど建設機械の駆動系機構は、下の図にあるようにコントロールバルブ、ピストンポンプ、走行モータ、旋回モータ、シリンダなどの各パーツで構成されているが、各種アクチュエータ(油圧や電動モータによって,エネルギーを並進または回転運動に変換する駆動装置)を制御し、走行、旋回、アームの屈伸などの動作をスムーズに行うのが、建設機械の「頭脳」であるコントロールバルブ。
同社のコントロールバルブは、お家芸の油圧技術に電気制御を組み合わせることにより高度な制御を可能としている。
また、同社はこれらのパーツを全て製造している数少ないメーカーである。
全てのパーツを自社で製造しているため、建機メーカーに対してシステム提案ができる点が、同社の大きな競争優位性となっている。

 

 

*ショベル用コントロールバルブ

 

*走行用モータ

 

 

*油圧シリンダ

 

 

(同社HPより)

 

③AC事業、HC事業以外のセグメント
2022年3月期

セグメント

売上高

主な製品

航空機器事業

3,655

航空機用離着陸装置・同操舵装置・同制御装置・同緊急装置

その他(特装車両事業及び電子機器等)

10,286

コンクリートミキサ車、粉粒体運搬車、特殊機能車、電子機器

*単位:百万円

 

コンクリートミキサ車は、高い混錬、排出性能を誇り、国内シェアは約80%を占めている。
航空機においては、各種アクチュエータ、軽量化アキュムレータ、ホイールブレーキなど、信頼性の高い製品を提供している。

 

 

 

 

(2)顧客・商流
◎顧客
主要顧客は以下の通り。
このうち、グローバルベースでトヨタ製自動車の約6割には同社のショックアブソーバが搭載されているほか、日産グループで約3割、ホンダで約1割など、高いシェアを誇っている。

 

日系

非日系

AC事業 トヨタ自動車

ヤマハ発動機

日産自動車

ジヤトコ

スズキ

ホンダ

ダイハツ

SUBARU

いすゞ

三菱自動車

日野自動車

ステランティス

ルノー

フォルクスワーゲン

ダイムラー

 

HC事業 日立建機

クボタ

住友建機

コベルコ建機

竹内製作所

ヤンマー建機

コマツフォークリフト

キャタピラー

三一重工

斗山

山河智能

トラスミタール ボンフィグリオリ

 

 

◎商流
前述のように、新車向けOEMと、中古車向け市販という2つの商流でショックアブソーバの供給を行っている。
売上高はOEMの方が大きいものの、自社ブランドで販売をしている市販用製品は収益性も高く、同社としては今後もグローバルに拡大を狙う市場である。

 

同社の市販用ショックアブソーバは現在世界を走行している日米欧自動車の約9割に搭載が可能である。
このカバー率の高さを支えているのが、トヨタをはじめとした大手自動車メーカーとの強固な関係だ。

 

(3)グローバルネットワーク
日本を含む23か国にグループ会社46を有し、強固なグローバルネットワークを構築している。

 

 

グループ会社

日本

1

11

アジア

7

18

欧州

12

7

米州

3

6

合計

23

42

(2022年9月現在)

 

(同社HPより)

 

(4)研究開発
(体制)
日本、欧州の2極に開発拠点を設け、グローバルな最適開発・生産体制を確立している。
日本以外の開発拠点は基本的には、モデル製品の開発、性能向上・低コスト化など商品力向上のための開発を手掛け、長期的視点に立った研究開発は日本において、基盤技術研究所(神奈川県相模原市)、生産技術研究所(岐阜県可児市)2つの技術研究所を中心に取り組んでおり、独創性に優れた先行技術等の研究開発を行っている。
また、工機センター(岐阜県可児市)に生産技術研究所や各工場で培われた生産設備設計のノウハウを集約し、先進性および信頼性の向上を図った設備、治工具の内製化を強化・推進している。
製品の高機能化・システム化については、独自開発のほかに、顧客あるいは関連機器メーカーとの共同研究開発を推進しており、産学交流による先端技術開発にも積極的に取り組んでいる。

 

(R&D費推移)
13年3月期以降、売上高に対するR&D費の水準についての意識を高め、現在は1.5%程度で推移している。
ただ、免震・制振オイルダンパー不適切行為の影響などから足元のR&D費の水準は低下している。より長期的・持続的な成長のためにも再度積極的な投資が必要となろう。

 

 

(注力分野)
性能向上、高機能化・システム化への対応や軽量化・省エネ・環境負荷物質削減などエネルギーや環境問題に配慮した製品開発を進めているが、生産技術力の強化も図っている。
また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成や、標準化されたマネジメントシステムの構築を含めた戦略的なグローバル生産・販売・技術体制の完成を目指している。

 

近年特に力を入れているのが自動運転に関連した製品開発だ。
その一つが、EPS(電子ステアリング)とショックアブソーバの統合技術。ドライバーの技量や判断にかかわりなく、様々な路面状況でも自動的により快適、スムーズな運転を可能にする技術は自動運転車には絶対に不可欠なものと考えている。

 

また、「ステアリング・バイ・ワイヤ」も今後重要性が増大する技術であるとみている。
通常、ステアリング操作はステアリングシャフトを通じステアリングギアボックス、タイヤへと伝達されるのに対し、
「ステアリング・バイ・ワイヤ」は、電子信号によってステアリングの操作を伝達するもの。
タイヤから伝わる振動が少ないので疲れにくく、強い横風が吹き、車体が左右に持っていかれた場合、今までのステアリングであれば運転手が意図してステアリングの操作により復元させなければならなかったが、「ステアリング・バイ・ワイヤ」であれば自動的にアジャストされるなどのメリットがある。それに加え、「ハンドルは右前」である必要がなく、デザイン、機能を含め自動車の在り方を大きく変える可能性に注目が集まっている。
実用化にはまだ課題が残るものの、独創的なEPS技術として更なるブラッシュアップを進めている。

 

【1-5 特長と強み】

◎様々な製品で高いシェア
四輪用ショックアブソーバのOEM供給で国内シェア39%、グローバルシェア14%のほか、建設機械用油圧機器シリンダのグローバルシェア19%、コンクリートミキサ車国内シェア85%など、多くの製品で高いシェアを有している。

 

◎優れたコア技術
この高シェアは、世界最大手の地位をフォルクスワーゲンやGMと競っているトヨタ自動車における社内シェアがグローバルベースで約6割であることが示すように、同社製品に対する顧客の信頼度の高さによるものであり、この信頼のベースは創業時より100年という長い時間の中で培い、磨き上げてきた「油圧」についての優れた技術力に他ならない。
ショックアブソーバや免震・制振用オイルダンパーに代表される「振動制御技術」と、ショベルカーのコントロールバルブや電動パワーステアリングに代表される「パワー制御技術」の2つのコア技術が多くの顧客に高く評価され、様々な場面で広く用いられている。

 

【1-6 ROE分析】

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

ROE (%)

-2.0

9.3

8.8

-15.0

-55.4

18.5

17.1

売上高当期利益率(%)

-0.89

4.09%

3.87

-6.01

-16.22

5.21

5.81

総資産回転率(回)

0.95

0.96

0.99

0.97

0.90

0.78

0.90

レバレッジ(倍)

2.35

2.37

2.30

2.59

3.81

4.53

3.26

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

2.2023年3月期上期決算概要

(1)連結業績概要

 

22/3期 上期

構成比

23/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

185,882

100.0%

209,886

100.0%

+12.9%

売上総利益

38,025

20.5%

41,238

19.6%

+8.4%

販管費

26,358

14.2%

29,545

14.1%

+12.1%

セグメント利益

11,667

6.3%

11,692

5.6%

+0.2%

営業利益

13,797

7.4%

14,826

7.1%

+7.5%

税引前利益

12,674

6.8%

14,535

6.9%

+14.7%

四半期利益

9,502

5.1%

10,604

5.1%

+11.6%

*単位:百万円。セグメント利益は日本基準の営業利益に相当。四半期利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益。

 

 

(同社決算説明資料より)

 

12.9%増収、セグメント利益は微増
売上高は前年同期比12.9%増の2,098億円。コロナ禍からの回復が続きAC、HCとも増収。
売上総利益は同8.4%増加。セグメント利益は同0.2%増加。インフレにより固定費が増加するも収益改善策の実施によりセグメント利益は横ばいを堅持した。円安の影響で営業利益は同7.5%増、金融費用の減少で税前利益は14.7%増、四半期純利益は11.6%増。
23年3月期の中間配当は期初の予想から10円/株増額し、70円/株を実施。
※AC:オートモーティブコンポーネンツ事業  HC:ハイドロリックコンポーネンツ事業

 

 

◎地域別売上動向

地域

21/3期 上期

22/3期 上期

前年同期比

日本

794

825

+3.9%

欧州

326

333

+2.1%

米国

170

248

+45.8%

中国

172

179

+3.9%

東南アジア

135

175

+29.7%

その他

262

340

+29.7%

合計

1,859

2,099

+12.9%

*単位:億円。説明資料より。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

全ての地域で増収。海外売上高比率は前年同期の57.3%から3.4ポイント上昇し60.7%。

 

(2)セグメント別動向

売上高

22/3期 上期

構成比

23/3期 上期

構成比

前年同期比

AC事業

113,475

61.0%

135,746

64.7%

+19.6%

HC事業

65,468

35.2%

66,977

31.9%

+2.3%

航空機器事業

1,910

1.0%

2,546

1.2%

+33.3%

その他

5,029

2.7%

4,617

2.2%

-8.2%

合計

185,882

100.0%

209,886

100.0%

+12.9%

セグメント利益

AC事業

7,248

6.4%

8,374

6.2%

+15.5%

HC事業

5,738

8.8%

3,786

5.7%

-34.0%

航空機器事業

-1,879

-697

その他

526

10.5%

177

3.8%

-66.3%

調整

34

53

+55.9%

合計

11,667

100.0%

11,692

100.0%

+0.2%

*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

(同社決算資料より)

 

AC事業

製品

売上高

構成比

前年同期比

四輪車用緩衝器

99,019

72.9%

+22.3%

二輪車用緩衝器

20,851

15.4%

+32.2%

四輪車用油圧機器

10,739

7.9%

-9.6%

その他製品

5,138

3.8%

+6.3%

合計

135,746

100.0%

+19.6%

*単位:百万円。決算短信より。

 

地域

売上高

構成比

前年同期比

日本

329

24.2%

+12.3%

欧州

292

21.5%

+1.0%

米国

196

14.4%

+49.6%

中国

107

7.9%

+5.9%

東南アジア

154

11.3%

+29.4%

その他

279

20.6%

+39.5%

合計

1,357

100.0%

+19.6%

*単位:億円。説明資料より。

 

四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器はコロナ禍による経済活動の停滞からの回復が続き増収。
地域別には、全ての地域で増加した。

 

HC事業

製品

売上高

構成比

前年同期比

産業用油圧機器

63,879

95.4%

+3.7%

システム製品

1,364

2.0%

-33.8%

その他製品

1,733

2.6%

-3.7%

合計

66,977

100.0%

+2.3%

*単位:百万円。決算短信より。

 

 

地域

売上高

構成比

前年同期比

日本

446

66.6%

-0.4%

欧州

41

6.1%

+10.8%

米国

48

7.2%

+33.3%

中国

72

10.7%

+1.4%

東南アジア

20

3.0%

+33.3%

その他

43

6.4%

-10.4%

合計

670

100.0%

+2.3%

*単位:億円。説明資料より。

 

産業用油圧機器はコロナ禍による経済活動の停滞からの回復が続き増収。
地域別には米国や東南アジアが大幅伸長。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

22年3月末

22年9月末

増減

 

22年3月末

22年9月末

増減

流動資産

240,421

246,302

+5,881

流動負債

198,371

190,337

-8,034

現金等

52,118

42,803

-9,315

営業債務等

81,737

77,145

-4,592

営業債権等

108,823

118,699

+9,876

短期有利子負債

65,815

66,848

+1,033

棚卸資産

66,114

70,261

+4,147

非流動負債

74,902

72,184

-2,718

非流動資産

193,766

197,436

+3,670

長期有利子負債

25,041

23,383

-1,658

有形固定資産

159,803

162,329

+2,526

負債合計

273,273

262,521

-10,752

無形資産

3,549

3,468

-81

資本合計

160,914

181,217

+20,303

その他の金融資産

14,545

14,537

-8

利益剰余金

76,007

84,496

+8,489

資産合計

434,187

443,738

+9,551

負債純資産合計

434,187

443,738

+9,551

*単位:百万円。現金等は現金及び現金同等物。営業債権等は、営業債権及びその他の債権。営業債務等は営業債務及びその他の債務。

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

現金等およびその他の金融資産の減少の一方、営業債権等の増加などで、資産合計は同96億円増加の4,437億円となった。
引当金や営業債務及びその他債務の減少等により、負債合計は同108億円減少の2,625億円。
利益剰余金の増加等で資本合計は同203億円増加し1,812億円となった。この結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末から3.8ポイント上昇し39.1%となった。

 

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/3期 上期

23/3期 上期

増減

営業CF

7,297

3,796

-3,501

投資CF

-5,896

-6,926

-1,030

フリーCF

1,401

-3,130

-4,531

財務CF

-3,044

-9,979

-6,935

現金同等物残高

67,412

42,803

-24,609

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

営業債権及びその他の債権の増加などで営業CFは減少。有形固定資産の取得による支出の増加などで投資CFのマイナス幅は拡大。
短期借入金の減少などで、財務CFのマイナス幅は拡大した。キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

◎免制振オイルダンパー適合化の進捗状況
(概要)
2018年10月、KYBおよび子会社カヤバシステムマシナリー株式会社が製造・販売している免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録の書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準に適合していない、または、顧客の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明した。

 

(対応と進捗)
対象建築物991件のうち、2022年10月末時点で適合化が完了したのは対象建築物の98.2%にあたる973物件。
工事中、工事待ち(工事日程調整中)、工事日程に合わせた生産待機中は合計で12件(1.2%)、行政調整中が3件(0.3%)、適合化に向けた関係者との詳細調整中が3件(0.3%)で、完了が近づいている。

 

3.2023年3月期業績予想

通期業績予想

 

22/3期

構成比

23/3期(予)

構成比

前期比

期初予想

予想比

売上高

388,360

100.0%

442,000

100.0%

+13.8%

410,000

+7.8%

セグメント利益

24,713

6.4%

26,500

6.0%

+7.2%

26,500

0.0%

営業利益

30,001

7.7%

29,700

6.7%

-1.0%

26,500

+12.1%

税引前利益

28,817

7.4%

28,900

6.5%

+0.3%

26,000

+11.2%

当期利益

22,549

5.8%

20,400

4.6%

-9.5%

18,000

+13.3%

*単位:百万円。予想は会社側発表。セグメント利益は日本基準の営業利益に相当。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

 

売上高、営業利益、税引前利益、当期利益を上方修正
売上高は前期比13.8%増の4,420億円、セグメント利益は同7.2%増の265億円の予想。売上高は期初予想4,100億円から上方修正した。セグメント利益は据え置いたものの、営業利益、税引前利益、当期利益を上方修正した。
上期の業績動向及び足元の環境並びに免震・制振用オイルダンパーに関する製品保証引当金の繰入及び取崩を行った影響等によるもの。
普通株式に係る期末配当は10.00円/株増額修正し、中間、期末とも70.00円/株の年間140.00円/株(前期比35.00円/株増配)を予定している。予想配当性向は17.5%。
A種優先株式に係る中間配当は3,760,274.00円/株を実施、期末3,739,726.00円/株で年間合計7,500,000.00円/株の予定。

 

◎セグメント別動向

売上高

22/3期 

23/3期(予) 

前期比

前回予想

AC事業

237,783

282,000

+21.1%

255,700

HC事業

136,636

142,800

+0.9%

139,300

航空機器事業

3,655

6,600

+80.6%

4,700

その他

10,286

10,700

+4.0%

10,300

合計

388,360

442,000

+13.8%

410,000

セグメント利益

       

AC事業

15,979

17,800

+15.5%

16,900

HC事業

11,776

9,500

-23.1%

9,900

航空機器事業

-3,960

-1,200

-1,200

その他

918

400

-56.5%

900

合計

24,713

26,500

+7.2%

26,500

*単位:百万円

 

4.今後の注目点

上期は新型コロナ感染拡大の影響や、原材料高騰、ウクライナ情勢による欧州の景気減速懸念などの懸念材料はあった。しかし、前期からの回復基調を維持、円安も味方にして増収増益を確保した。下期以降も不透明要因はあるものの、同業他社では下方修正も散見される中で通期の売上高や純利益は上方修正。配当も増額修正しており、自信もうかがえる。23年3月期は売上高、セグメント利益とも過去最高を更新する見通し。バリュエーションは極めて低位にとどまっており、株価には見直し余地がありそうだ。
免制振オイルダンパー適合化もほぼ完了に近い。四半期ごとの進捗に注目していきたい。

 

 

<参考1:2020中期経営計画>

新型コロナウイルスの影響など外部環境を踏まえて見直しを行い、期初には「2020中期経営計画」を発表した。
同計画では「規範意識とコンプライアンス遵守を経営の根幹に高収益体質への変革を目指す」ことをテーマとし、「コンプライアンス遵守とガバナンス強化」「収益基盤の安定化(不採算事業・拠点・製品の撤退)」「成長戦略」「ESG経営への進化」を注力項目として掲げている。

 

「コンプライアンス遵守とガバナンス強化」については、「免制振オイルダンパー適合化の進捗状況」で述べた通り。全社挙げて「規範意識の企業風土への定着」を図る。

 

【収益基盤の安定化(不採算事業・拠点・製品の撤退)&成長戦略】

(1)財務目標
2022年度の財務目標として以下を掲げている。

 

2019年度実績

2022年度目標

売上高

3,816

3,780

AC事業

2,321

2,290

HC事業

1,253

1,300

セグメント利益

176

250

セグメント利益率

4.6%

6.6%

自己資本比率

18.1%

34%

*単位:億円

 

売上高は2019年度に及ばないが、セグメント利益および利益率は過去最高を目指す。筋肉質な企業への変身を図る。

 

(2)セグメント利益について
セグメント利益についての収益改善施策及び想定する改善効果は以下の通り。
総額で2019年度の176億円から2022年度の250億円へ74億円の改善を見込んでいる。

 

施策

改善額

施策の概要

生産性向上(製造コストの低減)

+34

革新的モノづくり(自動化レベル向上)/省人化推進等

不採算分野の撤退・縮小

+17

乗用車不採算EPSの国内生産撤退/欧州PS拠点閉鎖等

変動費削減

+10

VA・VE/現調化活動推進等

生産拠点集約・最適生産体制の構築

+7

欧州拠点再編/CVTグローバル最適生産体制構築等

販売拡張活動の推進

+6

電子制御化に伴うミニショベル拡販/市販製品の販売網拡充等

*単位:億円

 

(3)目指す姿
引き続きAC事業、HC事業を、KYBを支える2大コア事業と位置づけ、それぞれの目指す姿を掲げている。

 

①AC事業
2022年度の目指す姿は「既存事業とコア技術深化によるコアサプライヤーとしての地位確立」。
基本戦略として、「深化:収益基盤の安定化」「進化:革新的モノづくり」「新化:高付加価値製品の創出」の3つを挙げている。

 

◎収益基盤の強化
主要拠点集約・再編による生産最適化、原価低減活動、市販事業の構造改革が具体的な取り組み。

 

生産最適化においては、顧客需要地シフトに合わせた最適生産を目指す。
欧州拠点ではPS拠点を閉鎖し、域内SA拠点を西欧中心から東欧中心へ再編する。
EPS生産においては、乗用車における不採算品の国内生産から撤退し、軸足を中国へ移す。
CVTグローバル最適生産体制を構築する。2輪のアジア拠点についても生産再編を通じて余剰生産能力を削減する。

 

◎革新的モノづくり
無人化・省人化を一段と進め、加工費を削減し競争力を強化する。
市販ラインを中心に、内外の各拠点に順次導入する。

 

◎高付加価値製品の創出
ますます強まるEV化・CASE・MaaSへの流れに対応し、独自技術の深化を図る。
技術戦略を「次世代プラットフォーム対応」「コア技術(振動制御・パワー制御技術)の深化、」「油圧技術応用」「電気・電子/システム対応」を技術戦略に据え、静粛性・広い空間・運動性能・低振動・乗り心地といった市場ニーズに対応した高付加価値製品を創り出す。

 

②HC事業
2022年度の目指す姿は「お客様に信頼され世界で採用され続けるHC事業 ~お客様から信頼され、一番最初に声が掛かるメーカーとなる~」。
基本戦略として、「自動化・複合化ニーズへの対応」「原価低減・現調化活動推進」の2つを挙げている。

 

◎ショベルの成長戦略:自動化・複合化ニーズへの対応
ショベルにおいては、デジタル化、ポンプのラインナップ拡充、コントロールバルブの電子制御化を技術戦略としている。
また、ミニショベルにおける重要な技術戦略が、ロードセンシングシステムによるラインナップ拡大と電子制御化である。

 

HC事業において同社が得意とするパワー制御技術を一段とブラッシュアップし、独自技術を基にショベルの心臓となる「ポンプ」と頭脳である「バルブ」を融合させ新しい付加価値を創出。競争優位性を発揮する。
このポンプとバルブの連携・融合を実現する重要な技術が、電子制御化でありロードセンシング化である。
ロードセンシングとは、「Load (負荷)Sensing(感知)」のことで、バルブで感知した負荷をポンプにフィードバックさせ必要な流量/圧力を供給する仕組み。「オペレーターの経験に頼っていた同時もしくは複合操作が容易になる」「各種アタッチメントに対応可能なため工事のみでなく災害救助へも応用可能」「省エネ」「負荷に影響されず電子化や自動化が可能」といったメリットがある。

 

◎原価低減・現調化活動推進
原価低減モデル投入、現地調達活動により市場競争力の向上を図る。

 

(4)ESG経営への深化
現在、以下のような取り組みを進めている。

エネルギー使用量、CO2排出量低減省エネ KYB-YS上田工場に太陽光発電設備を設置した。2020年の発電実績は約70万kw。
産廃量低減 工場及び関係取引先で発生した廃材を内製鋳物材料として活用している。
働きがいのある職場の創出 健康経営を推進しており、健康経営優良法人認定を2年連続して取得した。

 

今後は、CO2排出量を原単位ベースで前年比3%削減するとともに、2025年には再生可能エネルギーの使用構成比を15%まで引き上げるほか、社会の持続的発展に貢献する製品開発を推進する。
また、ESG推進室を設置し、方針と実行の連鎖を強化する(ESG推進室は21年7月に新設)。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 10名、うち社外4名
監査役 5名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日: 2022年10月7日

 

<基本的な考え方>
当社は、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築ならびに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、以下の経営理念および基本方針に基づき、コーポレートガバナンスの強化および充実に取り組むことを基本的な考え方としております。
2020年度からの新中期経営計画では、免震・制振用オイルダンパー他、不適切事象の再発防止、企業風土改革の一環である、規範意識とコンプライアンス遵守を経営の根幹に据えながら、「取り戻そう信頼と誇り」をスローガンに、高収益体質への変革に取り組んでおります。

 

≪経営理念≫
「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」
1.規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。
2.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。
3.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。
4.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します。

 

≪コーポレートガバナンス基本方針≫
1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。
3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。
4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上ならびに収益力および資本
効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。
5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の改善に繋げるなど適切な対応に努める。

 

当社のサスティナビリティについては、経営理念の中に示しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
2022年4月以降適用のプライム市場向けの内容を含めた2021年6月改定後コーポレートガバナンス・コードに基づき記載しています。

原則

実施しない理由

(原則2-4-1 女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等) 当社は実績値としての開示は行っていないものの、女性・中途採用者・外国人の管理職登用については現時点で複数の実績があります。

特に女性管理職の増加については重点的に取組を進めており、幹部候補となる職位の女性従業員の数を増やすとともに、研修制度の充実、くるみん・えるぼしといった公的資格の取得を目標とした活動を行い、女性社員が管理職を目指す意識向上と環境整備を進めています。

当社は国籍、性別に囚われずその能力と成果に応じた人事評価を行うことを基本方針としており、今後の事業拡大及び企業規模の拡大に応じて、実績値の開示についても検討してまいります。

(補充原則3-1-3 サスティナビリティについての取組み等) 【サステナビリティについての取組み】

ESG(環境・社会・ガバナンス)にかかわる当社を取り巻く環境が大きな変化を見せる中、2021年7月に、ESG推進室,2022年1月にCN推進室を新設しカーボンニュートラルをはじめESGに関わる対応を推進しております。さらに2022年3月に、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、ESG分野における中長期的な課題を議論し経営の向上につなげる体制としました。今後はESG経営を方針策定の基盤としていきます。

特に気候変動対応は、当社グループにとって取り組むべき最重要課題の一つであると認識しております。現在、今年度中にTCFDに賛同し、本格的に活動を開始すべく準備を開始しており、TCFD提言に基づいた気候変動にともなうリスクと機会を洗い出し、財務への影響を分析していきます。

【人的資本への投資についての取組み】

当社グループでは、教育の目的を「経営理念の実現に貢献できる人財育成」と定義し、必要な資質とスキルを、新入社員(あるいは中途採用者)から役員までの各階層別教育、昇格者教育などを通じ、eラーニングや通信教育等を活用して実施しています。

【知的財産への投資についての取組み】

当社グループでは研究開発部門と知的財産部門が連携し、技術戦略に基づいた知的財産戦略を推進し、グローバルでの事業競争力確保のため積極的な知的財産の創出と、知的財産権および企業ブランドの適切な保護、活用を行っております。また、当社事業の更なる成長を図るべく、知的財産情報を研究開発に活用し、将来の新たな技術構築を行う活動に取り組んでいます。

知的財産への投資は、企業価値向上のために重要な課題と認識しており、引き続き推進してまいります。

 

サスティナビリティの詳細については、統合報告書をご参照ください。

https://www.kyb.co.jp/company/integrated_report.html

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
2022年4月以降適用のプライム市場向けの内容を含めた2021年6月改定後コーポレートガバナンス・コードに基づき記載しています。

 

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】 (1)政策保有に関する方針

当社は、中長期的な企業価値向上の観点から、事業戦略上や事業運営上の信頼関係や取引関係の維持または強化が見込まれる株式については、成長性や経済合理性を総合的に判断し、必要と認められる政策保有株式を保有しております。個別の政策保有株式については、毎年取締役会において保有の便益が当社資本コストに見合っているか等の観点から保有継続の合理性を検証し、合理性が薄れたと判断した株式については、売却を検討いたします。

 

(2)議決権行使に関する方針

当社は、政策保有株式の議決権行使にあたって、株式発行会社の経営方針や事業戦略を十分に確認した上で、当社の中長期的な企業価値向上に資するかどうかを議案ごとに検討し、判断しております。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】 (1)政策保有に関する方針

当社は、中長期的な企業価値向上の観点から、事業戦略上や事業運営上の信頼関係や取引関係の維持または強化が見込まれる株式については、成長性や経済合理性を総合的に判断し、必要と認められる政策保有株式を保有しております。個別の政策保有株式については、毎年取締役会において保有の便益が当社資本コストに見合っているか等の観点から保有継続の合理性を検証し、合理性が薄れたと判断した株式については、売却を検討いたします。

(2)議決権行使に関する方針

当社は、政策保有株式の議決権行使にあたって、株式発行会社の経営方針や事業戦略を十分に確認した上で、当社の中長期的な企業価値向上に資するかどうかを議案ごとに検討し、判断しております。

 

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