(3538)株式会社ウイルプラスホールディングス 減収も営業利益は2期連続で過去最高更新
成瀬 隆章社長 |
株式会社ウイルプラスホールディングス(3538) |
企業情報
市場 |
東証プライム市場 |
業種 |
小売業(商業) |
代表取締役社長 |
成瀬 隆章 |
所在地 |
東京都港区芝5-13-15 |
決算月 |
6月 |
HP |
https://www.willplus.co.jp/ |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,109円 |
9,951,200株 |
11,035百万円 |
19.0% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
41.17円 |
3.7% |
183.00円 |
6.1倍 |
923.02円 |
1.2倍 |
*株価は9/22終値。各数値は22年6月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
19年6月(実) |
29,860 |
1,118 |
1,115 |
730 |
78.36 |
13.80 |
20年6月(実) |
35,068 |
1,160 |
1,196 |
802 |
85.32 |
14.00 |
21年6月(実) |
40,776 |
2,290 |
2,301 |
1,533 |
161.47 |
28.26 |
22年6月(実) |
39,696 |
2,366 |
2,377 |
1,550 |
162.84 |
34.90 |
23年6月(予) |
44,363 |
2,687 |
2,686 |
1,750 |
183.00 |
41.17 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。
株式会社ウイルプラスホールディングスの会社概要、中長期戦略、業績動向、成瀬社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中長期戦略
3.成長戦略
4.2022年6月期決算概要
5.2023年6月期業績予想
6.成瀬社長へのインタビュー
7.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど10ブランドを取り扱う輸入車ディーラー4社を連結子会社とする持株会社。顧客満足度の向上に注力し、マルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略による成長を追求している。M&Aにおける事業再生能力に大きなアドバンテージを有する。EV化の進展を始めとした自動車を取り巻く大きな環境変化を好機ととらえ、更なる成長を目指している。
- 社会的課題解決に向けた企業の社会的な存在意義や企業価値向上への取り組みが強く問われている今日、新たに中長期戦略を策定・公表した。「社会的価値向上」と「企業価値向上」の両立、すなわち、社会課題の解決と企業の成長の同時実現を目指す。具体的には、「気候変動問題解決」を「機会」と捉え、「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大を積極的に取り組む。同時に「事業の最大化」を進めながら、「店舗のグリーン化」を実施し、「GHG排出量削減の最大化」を追求し続けることをコミットしている。
- 新たに積極的な株主還元方針を打ち出した。中長期的にROE15%以上を目標とし、「適正資本の維持」及び「株主還元の更なる拡充」を同時に実現していくために、2026年度までに、配当性向を30%まで段階的に引き上げる。2027年年度以降は、引き続き配当性向30%を配当方針としながら、配当の下限はDOE4.5%を目安に、安定的かつ継続的な利益還元の維持・向上に努める。
- 23年6月期の売上高は前期比11.8%増の443億63百万円、営業利益は同13.6%増の26億87百万円の予想。新車販売の回復により2桁の増収増益で、売上高は2期ぶり、営業利益は3期連続で過去最高を更新する見込み。
- 成瀬隆章社長に、ウイルプラスホールディングスの社会的な存在意義、自身のミッション、M&A戦略、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「中期的にも長期的にもお客様に選ばれ、メーカーに選ばれ、社会にも選ばれ、社員が幸せになる企業を作り上げていきたいと考えています。そして、重要なステークホルダーである株主の皆様にもしっかりと利益を還元し貢献して参ります。今回発表した中長期戦略を確実に実行して目標を達成し、社会的価値と企業価値双方の最大化に取り組んで参りますので、是非これからの当社にご期待ください」とのことだ。
- 国内新車登録台数は長期にわたり減少傾向にある。「少子高齢化」や「性能向上による保有期間の長期化」に加え、「若者の自動車離れ」「シェアリングサービスの拡大」などがその背景だ。ただ、輸入車という観点からはリーマンショックをボトムに新車登録台数は増加傾向にあり、決して縮小マーケットではない。同様の理由から、車輌整備も日本全体ではシュリンクを避けられないだろうが、輸入車に関しては成長余力が大きい、特にM&Aによって更なるシェア拡大を進める同社においては安定成長が期待できる事業と位置付けられよう。
- 自動車の排ガスは、環境問題における元凶の一つであるが、「店舗のグリーン化」により自動車販売を通じて環境問題の解決に取り組み、同時に企業価値の向上を目指す同社の各施策の進捗を注目したい。
1.会社概要
JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど10ブランドを取り扱う輸入車ディーラー4社を連結子会社とする持株会社。顧客満足度の向上に注力し、マルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略による成長を追求している。M&Aにおける事業再生能力には大きなアドバンテージを有する。EV化の進展を始めとした自動車を取り巻く大きな環境変化を好機ととらえ、更なる成長を目指している。
【1-1沿革】
1997年1月、福岡県北九州市で代表取締役社長成瀬隆章氏の実父が輸入車販売会社「株式会社さんふらわあシージェイ」を設立。同社は西日本地区で最初のCHRYSLERの正規ディーラーであった。
2004年10月、成瀬社長が同社株式を全株取得し、ウイルプラスグループとしての事業活動を開始した。
成瀬社長はじめとしたスタッフ数名の小規模なディーラーながらCHRYSLER車の販売で全国的にも優秀な成績を上げ高い評価を受けたことで、2005年には東京都大田区にあったCHRYSLER直営店を譲受して東京へ進出。2006年には福岡県久留米市にも店舗を開設。東京、福岡でのドミナント戦略を開始した。
経営資源の最適配置や迅速な経営意思決定によってディーラー買収を機動的に実行することを目指し、2007年10月、株式会社ウイルプラスホールディングスを設立。
持株会社体制の下、積極的を進めて業容を拡大し、2016年3月に東証JASDAQに上場し、2017年9月、東証2部への市場変更を経て、2018年2月、東証1部に指定となった。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場へ移行した。
【1-2 経営理念】
以下のような存在意義、コア・バリューを掲げている。
我々の存在意義(MISSION STATEMENT)
我々は輸入車のある生活を提案し、より多くの皆様と豊かさ・楽しさ・喜びを分かち合い、関わるすべての人々を温かい笑顔に変えていく挑戦を続ける。 |
コア・バリュー
・車を愛し、仲間を愛し、誇りを持って働く。 ・常に挑戦し、自らの限界を打ち破る。 ・チームプレーで大きな結果を出す。 ・必ず期限までに目標にたどり着く。 ・最後まで諦めない、できるまでやる。 ・豊かさ、楽しさ、喜びを提供する。 ・誠実さと感謝の気持ちを忘れない。 |
【1-3 同社を取り巻く環境】
同社を理解するうえで重要なポイントとなる事業環境は以下のとおりである。
同社の成長ドライバーであるM&A戦略に関する事業環境については「2.中長期戦略」を参照。
◎輸入車のシェアアップが続く国内乗用車市場、輸入車の国内保有台数は堅調な伸び
少子高齢化の進行、自動車の性能向上による保有期間の長期化、消費スタイルや嗜好の変化(=いわゆる若年層の「車離れ」)などにより国内自動車市場は縮小傾向にある。
(同社資料より)
そうした中、輸入車の新車登録台数はリーマンショック以降、増加傾向にあり、国内輸入車市場は拡大が続いている。国内乗用車市場(軽自動車を除く)における輸入車シェアは9%台で推移しており、国内保有台数の6年平均成長率(2021年時点)は乗用車(軽自動車含む)が0.35%であるのに対し、輸入車(乗用車)は3.54%と堅調に増加している。
(同社資料より)
輸入車メーカーは、ハイブリッド車、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、ディーゼルなど多様な環境対応技術や、ユニークで優れたデザインなど、魅力ある製品を多数投入している。
また、国産メーカーが縮小する市場の中でミニバンやワゴンなど人気車種に開発・販売を集中させラインアップに偏りが出てしまっている一方で、輸入車メーカーは価格、サイズ、車種・タイプにおいて幅広いラインアップを提供していることが、多様性やより魅力的な自動車を求めるユーザーの支持を勝ち得てきたものと見られる。また、販売ネットワークの整備や拡充など日本における積極的な投資もシェアアップに繋がっている。
◎同業他社比較
コード |
社名 |
売上高 |
増収率 |
営業利益 |
増益率 |
営業利益率 |
ROE |
時価総額 |
PER |
PBR |
3184 |
ICDAHLD |
28,100 |
-1.2 |
1,173 |
-23.9 |
4.2% |
13.9 |
5,166 |
6.6 |
0.7 |
3538 |
ウイルプラスHLD |
44,363 |
+11.8 |
2,687 |
+13.6 |
6.1% |
19.0 |
11,035 |
6.1 |
1.2 |
7593 |
VTHLD |
253,000 |
+6.3 |
11,000 |
+7.9 |
4.3% |
25.5 |
59,451 |
8.8 |
1.1 |
8291 |
日産東京販売HLD |
140,000 |
+1.2 |
4,500 |
+2.1 |
3.2% |
4.6 |
18,657 |
8.4 |
0.4 |
9856 |
ケーユーHLD |
125,000 |
-4.7 |
7,800 |
-6.0 |
6.2% |
11.4 |
51,406 |
7.4 |
0.7 |
*単位:百万円、%、倍。売上高、営業利益は今期会社側予想。ROEは前期実績。時価総額は直近の四半期末株式数×2022年9月22日終値。PER(予)、PBR(実)は2022年9月22日終値ベース。
2桁の増収増益率予想は同社のみ。M&Aにおける事業再生能力の高さや配当性向を30%まで引き上げ、利益成長を上回る配当成長を目指す積極的な株主還元方針についての市場の評価が進めばvaluationの水準も異なったものとなるであろう。
【1-4 事業内容】
◎概況
持株会社である(株)ウイルプラスホールディングスの下、連結子会社4社において輸入車の新車及び中古車の販売、車輌整備、損害保険の代理店業務などを展開している。取扱ブランド数は10ブランド。取扱うブランドごとにインポーター(日本国内で輸入車を取り扱う業者)と正規ディーラー契約を締結している。
(同社資料より)
◎品目(業務内容)
新車及び中古車の販売のほか、車輌整備、損害保険販売なども手掛けている。
(同社資料より)
品目 |
内容 |
|
新車 | 各社が正規ディーラーとして、各インポーターから仕入れたブランドの全ての新車を販売している。 | |
中古車 | 各ブランドの高年式低走行の認定中古車を中心に販売している。商品の仕入は、新車販売時の下取、買取、オートオークションにより行っている。 | |
業販 | 下取した他社ブランドの中古車をオートオークションで販売している。また、他社ディーラーからの依頼を受け、当社グループ内で保有している新車・中古車を販売することがある。 | |
車輌整備 | 販売した車輌を中心に整備、修理や車検を主なサービスとしている。一部店舗を除き、ショールームと併設する形でサービス工場を設置している。 | |
その他 | 損害保険会社の代理店として自賠責保険や任意保険等の販売を行っている。インポーターからの新車販売等に係るインセンティブ収入も含まれる。 |
新車販売が事業の柱ではあるが、中古車販売にも注力していることに加え、車輌整備、自動車保険販売など自動車購入後に顧客が必要とするサービスを提供して顧客との関係性を強化することを重視している。
車輌整備に関しては販売後、メンテナンスパッケージを提供することで整備入庫を確実に確保している。保険販売に関しては、保険商品についてのきめ細かい情報提供などが評価され業界平均を上回る加入率・高い継続率を実現している。
このように、「販売台数増=フロー型収益の拡大」が、「車輌整備件数増、保険加入件数増」というストック型収益の拡大に結び付いている。
◎店舗数
2022年6月末の店舗数は、福岡15店舗、東京・神奈川15店舗、山口2店舗、宮城1店舗、福島1店舗の計34店舗。
【1-5 特長・強み・競争優位性】
(1)M&Aにおける事業再生能力
「時間を買う」という観点から現在多くの企業が成長戦略の柱として掲げるM&A戦略であるが、M&Aを成功させるには、「優良な案件の発掘」、「適切な価格での実行」が重要であることは論を待たないが、より重要なのが想定した通りのシナジー効果を生み出すためのM&A後のプロセス「PMI(Post Merger Integration)」であると言われている。
M&Aを行っても、統合阻害要因等に対する事前検証の不足や企業文化の違いをマネジメントできず失敗に終わるケースは枚挙に暇がない。
そうした中、投資家が注目すべきは同社の「事業再生能力」であろう。
2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで9件のM&Aを実施してきたが、買収時には、赤字もしくは極めて低収益であったが、全ての案件で黒字化を達成している。
「顧客満足度向上の追求」を始めとした理念の共有、「チャレンジを最大限に尊重する」といった評価軸の明確化がM&A成功の要諦で、これを実行すれば会社は確実に大きく変えることができると同社では考えており、自社の事業再生能力には大きな自信を持っている。
(2)輸入車の正規ディーラーをメインとする唯一の上場企業
輸入車の正規ディーラーであっても、中古車販売がメインである企業が多い中、同社は新車販売をメインとしている唯一の上場企業である。
輸入車の新車登録台数はリーマンショック以降、増加傾向にあり、国内輸入車市場は拡大が続いている。国内乗用車市場(軽自動車を除く)における輸入車シェアは9%台で推移しており、国内保有台数の6年平均成長率(2021年時点)は乗用車(軽自動車含む)が0.35%であるのに対し、輸入車(乗用車)は3.54%と堅調に増加している。
市場自体が成長する中で、M&A戦略によりシェアの拡大を進めることで、収益の一段の拡大が期待される。
2.中長期戦略
社会的課題解決に向けた企業の社会的な存在意義や企業価値向上への取り組みが強く問われている今日、同社で基本となる成長戦略(マルチブランド戦略・ドミナント戦略・M&A戦略)をベースに、新たに中長期戦略を策定・公表した。
【2-1 ウイルプラスグループ方針】
「社会的価値向上」と「企業価値向上」の両立、すなわち、社会課題の解決と企業の成長の同時実現を目指す。
社会的価値向上とは、「国内自動車産業における脱炭素社会の実現」である。
具体的には輸入車正規ディーラーのありたい姿として、以下の3つを掲げている。
☆ | 気候変動問題解決のリーディングカンパニー:GHG(温室効果ガス)排出量削減) |
☆ | ブランドメーカーから選ばれるディーラー:M&A加速、店舗エリア、ブランドの拡大 |
☆ | お客様から信頼されるディーラー:店舗収益性、店舗再生力強化 |
「気候変動問題解決」を「機会」と捉え、「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大を積極的に取り組む。同時に「事業の最大化」を進めながら、「店舗のグリーン化」を実施し、「GHG排出量削減の最大化」を追求し続けることをコミットしている。
【2-2 目標】
気候変動問題解決のリーディングカンパニーを目指す同社は以下のような、GHG排出削減目標を掲げている。
2030年度 Scope1+Scope2のGHG排出量を2021年度比較で、50%削減する。
*社用車(試乗車含む)の低炭素自動車比率 2030年度 80%以上
*再生可能エネルギー導入率目標 2025年度 全店舗導入
【2-3 同社グループの取り組み】
社会課題の解決と企業の成長の同時実現に向けた取り組みは以下のとおりである。
(1)店舗グリーン化による脱炭素社会実現への貢献
ブランドメーカーは、自身のサプライチェーンを含めたGHG排出削減を進める中で、正規ディーラーの店舗オペレーションにおけるGHG排出量の正確な把握及び削減目標の設定、そのための具体的な取り組み(デモカーのEV比率、再生可能エネルギー導入率、廃棄物のリサイクル率)を求めてきている。
同社では上記の削減目標設定に加え、店舗エリアにおけるEV普及促進に対応した設備投資などを実施し、輸入車ディーラーとして、いち早く店舗のグリーン化を推進し、店舗エリアの脱炭素化、国内自動車産業の脱炭素化に貢献していく考えで、2022年6月期末まで以下のような実績を示している。
(同社資料より)
(2)M&Aの推進による「社会的価値向上」「企業価値向上」
新たなエリアへの進出、新たなブランドの獲得、既存ブランドのシェア拡大をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。飽和状態にある国内自動車市場においては、顧客獲得、早期の投資回収、収益確保という観点からM&Aが最も適切かつ優先すべき戦略であると考えている。
①M&A推進に関する事業環境
同社の調査によれば、2021年末現在日本全国で、輸入車ディーラー679社が事業を行っており、新車販売拠点は合計1,555拠点。1事業会社あたり平均2.3店舗を運営しており、全体の約9割が3店舗以下を運営する中小企業である。
また、日本の中小企業に共通の課題である後継者難に悩んでいるディーラーも多数存在する。
(同社資料より)
こうした輸入車ディーラーにとって、自動車の「CASE」、そのうち、「Electric(電気自動車)」と「Connected(コネクテッド)」への対応は今後の重要な経営課題となっている。
「CASE」はConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもの。従来の「クルマ」の概念を大きく変え、それぞれの領域において、新たな需要・市場を創出している。
◎環境意識の高まりとEV化の進展
地球温暖化に対する危機意識の高まりを受け、温暖化ガス排出削減、脱炭素社会実現へ向けた取り組みが急速に進展している。
自動車の排出ガス削減はその最も大きなテーマの一つであり、各国は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた規制を打ち出しており、自動車メーカーは生き残りをかけ、従来のガソリン車、ディーゼルエンジン車からEV(電気自動車)への転換を進めている。
特に元より環境意識の高い欧州を拠点とするメーカーは極めて積極的にEV化に取り組んでいる。
同時に、前述のように、ブランドメーカーは自社のサプライチェーン全体の排出量の把握及び削減への取り組みにコミットする必要があるため、ディーラーに対し、現在の排出量の把握に加え、EVの仕入れ拡大、急速充電機の導入など気候変動問題への適切な設備投資や対応、排出削減目標の開示などを強く求めるようになっている。
しかし資金面、人材面などの制約から十分な対応が難しいディーラーも多く、こうした要求に適切に対応できるディーラーへの集約・再編がブランドメーカー主導によって進むのではないかという観測も浮上している。
(同社資料より)
◎Connected(コネクテッド)化、EV化に伴う車輌整備の複雑化
Connected(コネクテッド)とは、クルマに通信機を搭載し、常に外部との情報を交換することを指す。クルマの状態や道路状況、クルマ同士やクルマとインフラの情報交換など、さまざまなデータを収集分析してサービスに活用する。
Connected(コネクテッド)化によりクルマはスマートフォンのようなデバイスとなり、利便性が急速に向上するが、一方で故障や車検などの際の整備作業も一段と複雑化する。
加えて前述のEV化も車輛整備に大きな影響を与える。EVの普及に伴い、高電圧バッテリーや発電機の故障が増え、車輛整備においては高電圧システムを取り扱う必要があり、安全性強化に向け、設備投資に加え、高電圧に関する特別教育なども不可欠である。このようにConnected(コネクテッド)化及びEV化によりハード・ソフト両面における投資が追加的に発生するため、輸入車の整備業務は投資余力が十分な正規ディーラーや大手資本に集約されていくものと見られる。
②M&Aに対する同社の方針
EV化とコネクテッド化への対応が輸入車ディーラーにとって急務となる中、同社では、ブランドメーカーから選ばれる店舗作りを進め差別化を図るとともに、対応が困難なディーラーをM&Aすることで、新エリアや新ブランドを獲得して自社の成長・企業価値向上を図り、また店舗グリーン化を通じて社会課題の解決に貢献する考えだ。
加えて、店舗のグリーン化、当該エリアの脱炭素化にとどまらず、店舗などの資産・資源の再利用、人的資本の再教育、業務フローのDX化による生産性の向上など、既存の各種社会資本の活性化にも繋げていく。
輸入車ディーラーの後継者難という課題と共に、今後、気候変動問題への対応一層重視される中、同社の重要戦略であるM&Aも加速することが予想される。
(3)ストック型ビジネスによる安定成長基盤の強化
【1-2 同社を取り巻く環境】で触れたように、国内保有台数は乗用車(軽自動車含む)がほぼ横ばいであるのに対し、輸入車(乗用車)は堅調に増大している。また、経済状況の変化・環境意識の高まりなどから自動車の平均使用年数は増加傾向にあり、必然的にメンテナンスの重要性が増している。加えて「CASE」の進展により、整備作業は一段と複雑化し、輸入車の整備業務は正規ディーラーに集約されていくと予想されている。
こうしたことから同社では車輌整備事業の収益機会は今後ますます拡大すると考えており、メンテナンスパッケージや新車延長保証を付加することで整備入庫率の向上を図り、同事業の基盤強化を図る。
また、毎期2桁で伸長している保険手数料収入に関しても、スタッフの保険に関する知識のブラッシュアップを継続して顧客満足度の更なる向上を目指しており、保険販売と車輌整備のストック型ビジネスの安定成長基盤の一段の強化に取り組んで行く。
(同社資料より)
【2-4 中長期株主還元戦略】
上場来連続で増配を行ってきた同社は、新たに以下のような方針を打ち出した。
☆ | 中長期的にROE15%以上を目標とする(前期19.0%)。 |
☆ | 「適正資本の維持」及び「株主還元の更なる拡充」を同時に実現していくために、2026年度までに、配当性向を30%まで段階的に引き上げる。 |
☆ | 2027年度以降は、引き続き配当性向30%を配当方針としながら、配当の下限はDOE4.5%を目安に、安定的かつ継続的な利益還元の維持・向上に努める。 |
2022年6月期の配当は予想通り34.90円/株を維持し、配当性向は21.4%まで引き上げ、2期連続で利益成長を上回る配当成長を達成した。
今期2023年6月期は配当性向を更に22.5%まで引き上げ、配当予想を41.14円/株としている。
株主資本コストを大きく上回るROEを実現し、配当性向を段階的に引き上げ、今後4年間は利益成長を上回る配当成長を目指しており、極めて積極的な利益成長方針と株主還元姿勢を打ち出している。
(ROE分析)
16/6期 |
17/6期 |
18/6期 |
19/6期 |
20/6期 |
21/6期 |
22/6期 |
|
ROE (%) |
16.8 |
19.4 |
18.2 |
14.3 |
13.9 |
22.5 |
19.0 |
売上高当期純利益率(%) |
2.34 |
3.16 |
3.16 |
2.44 |
2.29 |
3.76 |
5.05 |
総資産回転率(回) |
2.84 |
2.73 |
2.49 |
2.30 |
2.24 |
2.43 |
1.72 |
レバレッジ(倍) |
2.54 |
2.25 |
2.31 |
2.54 |
2.71 |
2.46 |
2.18 |
総資産回転率、レバレッジは低下傾向の一方、収益性の改善によりROEは上昇傾向にある。
3.成長戦略
同社の成長を支えていくのが「マルチブランド戦略」、「ドミナント戦略」、「M&A戦略」の3戦略である。
(同社資料より)
【3-1 マルチブランド戦略:収益の拡大と販売サイクルの平準化】
特定のブランドに依存することなく複数のブランドを取り扱うことによりブランド間の新型モデル投入時期の差異による販売サイクルの影響の平準化を図っている。
現在10ブランドを扱っているが、M&A戦略も合わせてブランド数の拡大も目指している。
(同社資料より)
【3-2 ドミナント戦略:同一商圏のシェア向上と利益の最大化】
人口100万人規模の都市とその周辺都市を特定地域と位置付けて集中的な出店を進め、同一商圏にて集客を図ることによる市場シェアの向上、店舗間の効率的な人員配置による生産性の向上、利益の最大化を図っている。
現在は輸入車(乗用車)の新車登録台数および保有台数で国内上位の東京、神奈川、福岡が中心だが、M&A戦略によるエリアの拡大も目指している。
【3-3 M&A戦略:スピードアップ】
新たなエリアへの進出、新たなブランドの獲得、既存ブランドのシェア拡大をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。
2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで9件のM&Aを実施してきた。M&Aによりまとまった店舗、商圏、新ブランドを獲得したのち、周辺に新店を出店して商圏を補完し更なる業容の拡大を進めている。
Mercedes-Benz、VW、Audiなど同社がターゲットとしているブランドは10以上あり、M&Aを通じた新ブランド獲得による成長余地は大きい。
案件の発掘は、同社から先方への直接アプローチ、先方から同社への直接の連絡のほか、インポーターからの紹介、金融機関やM&A仲介会社からの紹介など。
社内で今後の成長性やシナジーを中心に検討したのち、同社の投資回収基準に沿った案件のみデューデリジェンスを実施し、交渉を進めていく。
4.2022年6月期決算概要
【4-1業績概要】
21/6期 |
構成比 |
22/6期 |
構成比 |
前期比 |
期初予想比 |
修正予想比 |
|
売上高 |
40,776 |
100.0% |
39,696 |
100.0% |
-2.6% |
-3.3% |
-3.3% |
売上総利益 |
8,255 |
20.2% |
8,441 |
21.3% |
+2.3% |
– |
– |
販管費 |
5,965 |
14.6% |
6,075 |
15.3% |
+1.8% |
– |
– |
営業利益 |
2,290 |
5.6% |
2,366 |
6.0% |
+3.3% |
+10.1% |
-3.7% |
経常利益 |
2,301 |
5.6% |
2,377 |
6.0% |
+3.3% |
+11.5% |
-3.4% |
当期純利益 |
1,533 |
3.8% |
1,550 |
3.9% |
+1.1% |
+11.9% |
-3.6% |
*単位:百万円。22年6月期より収益認識会計基準を適用。修正予想比は22年5月公表の業績予想に対する比率。
減収も、営業利益は2期連続で過去最高を更新
売上高は前期比2.6%減の396億96百万円。収益認識会計基準適用前の従来基準で算定した場合の売上高は同1.4%増の413億45百万円。
新車は半導体不足や物流の混乱などで入荷は不安定な状況が続き減収となったが、これまでの実績に基づいたインポーターとの関係性を活かし、商品確保に注力した。
一方で、不安定な新車供給の影響から需要の強い中古車は、下取り強化等で商品確保に努め、順調に販売が進んだ。
ストック型ビジネスである車輌整備・保険等は、店舗数の増加や継続取引の蓄積により堅調に推移した。
営業利益は同3.3%増の23億66百万円。
高額車輌の売上構成が上昇したことに加え、適正価格での販売など利益率改善に向けた取り組みが寄与し、業容拡大に伴う諸経費の増加を吸収した。利益率の高いストック型ビジネスの伸長も寄与し、営業利益率は同0.4ポイント上昇し過去最高の6.0%となった。EBITDAマージンも同0.5ポイント上昇の9.0%と過去最高を更新した。
期初予想は上回ったが、22年5月公表の修正予想を下回った。世界規模での半導体不足による自動車生産の想定以上の遅れに加え、物流の混乱による商品供給の遅れなどにより、納車が予想以上に遅延し、新車売上高が未達となったことが主要因。
現時点では商品供給の遅れは徐々に解消に向かっている。
【4-2 商品品目別動向】
21/6期 |
構成比 |
22/6期 |
構成比 |
前期比 |
前期比2 |
|
新車 |
20,477 |
50.2% |
19,576 |
49.3% |
-4.4% |
-2.5% |
中古車 |
10,238 |
25.1% |
11,009 |
27.1% |
+7.5% |
+9.5% |
業販 |
3,662 |
9.0% |
3,605 |
9.1% |
-1.6% |
-1.6% |
車輛小計 |
34,378 |
84.3% |
34,190 |
86.1% |
-0.5% |
+1.2% |
車輛整備 |
4,709 |
11.5% |
5,058 |
12.7% |
+7.4% |
+7.4% |
その他 |
1,688 |
4.1% |
446 |
1.1% |
-73.6% |
-10.9% |
合計 |
40,776 |
100.0% |
39,696 |
100.0% |
-2.6% |
+1.4% |
*単位:百万円。22年6月期より収益認識会計基準を適用。前期比2は適用前の前期比、インベストメントブリッジ計算の参考値。
*新車販売
マルチブランド戦略の強みを活かし、安定した新車供給のあるモデルや高額車両を中心に適正価格での販売を進めるなど、新車供給の停滞の影響を最小限にとどめる取り組みを行った。
*中古車
新車供給の停滞の影響により需要が高まり、中古車相場は上昇傾向となった。同社では、中古車販売を新車販売同様に重点戦略と位置付けているが、これまで以上に下取り率を高める取り組みを強化し、商品確保に努め、順調に利益を伸ばした。
*ストック型ビジネス
店舗数が増加したことに加え、継続取引の顧客の蓄積が進み堅調に推移した。損害保険代理店事業においては保険募集人の品質向上を目的とした研修を実施するなど、グループ全体での取り組みにより、保険手数料収入は前期比8.9%増加の2億89百万円となった。
【4-4 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
21年6月末 |
22年6月末 |
増減 |
21年6月末 |
22年6月末 |
増減 |
||
流動資産 |
9,488 |
11,374 |
+1,886 |
流動負債 |
8,510 |
8,254 |
-255 |
現預金 |
3,376 |
5,538 |
+2,161 |
仕入債務 |
1,958 |
1,793 |
-165 |
たな卸資産 |
5,141 |
4,882 |
-259 |
短期借入金 |
3,428 |
3,549 |
+121 |
固定資産 |
7,483 |
7,255 |
-228 |
固定負債 |
930 |
1,545 |
+614 |
有形固定資産 |
6,389 |
6,274 |
-115 |
長期借入金 |
466 |
1,066 |
+600 |
建物及び構築物 |
3,759 |
3,664 |
-95 |
負債合計 |
9,441 |
9,800 |
+359 |
無形固定資産 |
259 |
174 |
-85 |
純資産 |
7,530 |
8,829 |
+1,298 |
投資その他の資産 |
834 |
806 |
-27 |
利益剰余金 |
6,286 |
7,566 |
+1,279 |
資産合計 |
16,972 |
18,630 |
+1,657 |
負債純資産合計 |
16,972 |
18,630 |
+1,657 |
*単位:百万円。
新車供給が不安定なことや、中古車市場の活況によりたな卸資産が減少した一方、現預金の増加で資産合計は前期末比16億57百万円増加の186億30百万円。
借入金の増加などで負債合計は同3億59百万円増加の98億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同12億98百万円増加し88億29百万円。
自己資本比率は前期末から3.0ポイント上昇し47.4%となった。
◎CF
21/6期 |
22/6期 |
増減 |
|
営業CF |
2,890 |
1,910 |
-980 |
投資CF |
-676 |
-217 |
+458 |
フリーCF |
2,214 |
1,692 |
-521 |
財務CF |
-1,359 |
469 |
+1,829 |
現金・現金同等物 |
3,376 |
5,538 |
+2,161 |
営業CF、フリーCFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。
【4-5 トピックス】
(1)ニューモデルのローンチ
新車の供給不安定は残るものの、将来的なストック型ビジネスへの展開を見据え、引き続きニューモデルを中心とした新車受注活動に注力した。
2022年6月期については、取扱いブランドからは以下の3モデルなどを新たにローンチした。
(同社資料より)
(2)再生可能エネルギーへの切り替え
サステナビリティへの取り組みに注力している同社は、前述のとおり店舗の使用電力を順次再生可能エネルギーに切り替えていく。2022年6月期は九州エリア・中国エリアの既存17店舗の電力を再生可能エネルギーへ切り替えた。
5.2023年6月期業績予想
【5-1 業績予想】
22/6期 |
構成比 |
23/6期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
39,696 |
100.0% |
44,363 |
100.0% |
+11.8% |
営業利益 |
2,366 |
6.0% |
2,687 |
6.1% |
+13.6% |
経常利益 |
2,377 |
6.0% |
2,686 |
6.1% |
+13.0% |
当期純利益 |
1,550 |
3.9% |
1,750 |
3.9% |
+12.9% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
2桁の増収増益、売上高・営業利益とも過去最高更新へ
売上高は前期比11.8%増の443億63百万円、営業利益は同13.6%増の26億87百万円の予想。
新車販売の回復により2桁の増収増益で、売上高は2期ぶり、営業利益は3期連続で過去最高を更新する見込み。
(新車販売)
需要は引き続き強く、受注活動は堅調と予想。売上高は、半導体不足など一部懸念材料があるものの、下半期(23年1月~6月)から大きな回復を見込み、適正価格での販売により、粗利も大きな伸びを予想している。
(中古車販売)
中古車相場の上昇、新車の供給の停滞により、引き続き収益環境は良好なものの、商品確保は厳しい状況であると見ており、モメンタムは低下、通期ベースでは、売上、利益ともに、微減を見込んでいる。
(ストック型ビジネス)
車輌整備・損害保険代理店事業は引き続き、堅調な利益・粗利の伸びを見込んでいる。
【5-2 今期の取り組み】
◎店舗への積極投資の実施
顧客満足度向上によるリピーターの増加、収益の向上を目指し、今期も店舗への積極投資を実施する。
既存店舗においては、最新のCIに準拠し、ブランド毎の様々なリテール体験を提供するほか、最新の設備等による高品質なサービスを提供する。また、店舗によっては今後、視認性、利便性に長けた好立地への移転も進め、経営効率の向上にもつなげる。
商圏の拡大、既存エリアの補完、既存ブランドの業容拡大に向け新規店舗のオープンも進める。
22年8月には最新のCIに準拠した「ジープ大田」を新たにオープンした。
6.成瀬社長へのインタビュー
成瀬隆章社長に、ウイルプラスホールディングスの社会的な存在意義、自身のミッション、M&A戦略、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
Q:今回の決算発表に合わせて「中長期戦略」を打ち出されました。まず、御社の社会的な存在意義、御社の目指す姿などについてお聞かせください。
当社は2016年の上場以来、お客様満足度の最大化や売上・利益の拡大に注力してきました。当社の社会的な存在意義、社会的価値という観点からは、これまでは例えば安定した雇用を創出するということが当社の社会的価値の一つと捉えていましたが、
ここ数年における急激な事業環境の変化の中で、企業として気候変動問題を含め、より幅広く社会的な課題解決に取り組む必要があるということを強く意識するようになりました。
そこで、社会的価値と企業価値双方の向上を目指し、全てのステークホルダーとの信頼関係構築に繋げるための具体的な取り組みについて議論、検討を続け、今回「中長期戦略」として発表したという次第です。
「気候変動問題解決」を「機会」と捉え、当社の重要な成長戦略であり圧倒的な強みを有する「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、積極的に事業拡大に取り組みます。
同時に「事業の最大化」を進めながら、「店舗のグリーン化」を実施し、「GHG排出量削減の最大化」を追求し続けます。
また、当社は上場来連続で増配を行ってきたのですが、より積極的な株主還元方針をコミットすることといたしました。
中長期的にROE15%以上を目標としつつ、「適正資本の維持」及び「株主還元の更なる拡充」を同時に実現していくために、2026年度までに、配当性向を30%まで段階的に引き上げます。
2027年度以降は、引き続き配当性向30%を配当方針としながら、配当の下限はDOE4.5%を目安に、安定的かつ継続的な利益還元の維持・向上に努めます。
こうした方針の下、積極的な投資を実施して利益を拡大させながら、利益成長を上回る配当成長を目指します。
社会的価値と企業価値の両立、積極的な株主還元、この2つを実現することが私のミッションであると認識しています。
Q:今お話に出ました「M&A戦略」について伺いたいと思います。まずターゲットは極めて豊富だということですね。
現在日本全国には、当社取り扱い10ブランドで、約300社、約700拠点、まだ取り扱いのないブランドで約400社、約900拠点
の輸入車ディーラーがありますが、当社ではこの全社について売上規模、資本関係、後継者の有無を把握しています。
このリストを基に、当社からのお声がけのほか、インポーターや金融機関、仲介会社経由、オーナーからの持ち込みなど、様々ルートで案件成約を進めていきます。買収価格も当社が考える適正価格でオファーが可能なケースがほとんどです。
当社は基本的にはドミナント戦略を採用していますが、仮に飛び地であってもその後、1件、2件成約できればドミナントとなりますので、現在は日本全国を対象に種まきを続けています。
このように、M&Aのソーシング先は極めて豊富です。
Q:御社のM&A戦略を加速化させる事業環境についてお聞かせください。
全国には約700社に上るディーラーが存在しますが、多くはそれぞれの地元で2~3店舗を運営をしています。
また、「後継者難」に悩まれている企業が大変多いのが現状です。
従業員の雇用を守りつつ事業を承継してくれるという点で、上場企業である当社の信用力は大変大きなアドバンテージとなっています。
また、自動車を取り巻く環境の大きな変化も、当社のM&A戦略推進にとって大きな追い風です。
まず一つは「気候変動問題」です。
ブランドメーカーは、EV化を急速に進めています。EV化が進むとブランドメーカーは急速充電機の設置などインフラの整備をディーラーに求めます。また車輛整備業務については、電機の知識を含めた新たな整備技術が必要となリますので、ディーラーは十分な資金や人材を確保しないとブランドメーカーの要求に対応できないということになります。
また、ブランドメーカーは自社のGHG排出量の把握および脱炭素に向けた削減目標を公表・コミットする必要があり、サプライチェーンであるディーラーにも同様の情報を求めますが、収益性や資本、後継者等の問題を抱えているディーラーにとっては、対応が困難な場合もあります。
これに対し当社は「店舗のグリーン化」を既に開始していますし、上場企業として気候変動についての開示、排出削減目標設定も行っています。
ブランドメーカーとしても、対応能力のあるディーラーに集約したいという動機が今後ますます強まるのではないかと見ています。
二つ目は自動車の「CASE」進展です。
EV化、コネクテッド化に伴い、自動車は従来の機械ではなく、まさに電子部品の塊、電子デバイスとなっていくといっても過言ではありません。この点においても、車輛整備業務には十分な知識や技術が求められますから、対応できないディーラーも数多く出てくるものと見ています。
以上のように、当社の「M&A戦略」は、豊富な案件をベースに、成約を加速化させる事業環境を追い風に、今後の当社の成長を大きく牽引するものと考えています。
Q:これまでの買収先すべてで黒字化や収益の大幅改善を果たすなど、M&A後の事業再生能力は御社の大きな強みだと認識しています。
過去に実施したM&A後の事業再生で培った経験を蓄積し、PMIのための処方箋作りのノウハウが構築できています。この処方箋の正確性が、再現性の高さに繋がっていると考えています。
例えば、多くのディーラーは、当社が強みとしているストック型ビジネスを手掛けていなかったり、脆弱だったりしますので、ここを強化するだけでも収益性は大きく向上させることができます。また業販(オークションなど卸売販売)も自社では手間がかかるために中古車専業業者に丸投げするなど、せっかくの事業機会を逃しているケースも多く、こうした点も含め買収先を分析し、人材やノウハウなどエッセンスを注入して事業再生を行っています。
Q:前期は半導体不足や世界的な物流の混乱などで御社も新車販売では苦労されましたが、業界平均を上回る納車を実現しました。その背景、要因についてお話しください。
市場全体の平均値を上回るこれまでの販売実績、顧客満足度、ブランドメーカーとの丁寧なコミュニケーション等により、結果として、僅かではありますが、業界平均を上回る配車をいただくことができました。
ただそうは言っても前期は厳しい状況でした。半導体不足はかなり解消に方向にあるので、期中には一定程度の明るさは見えてくると考えており、そこは売上・利益の積み上げに繋がるのではないかと見ています。
Q:車輌整備事業を今後の成長事業と位置付けています。その背景をお話しください。
先ほど申し上げたように、M&Aの進展により当社の拠点数が拡大する点が一つです。加えてEV化、コネクテッド化により車輌整備業務自体が複雑・高度化することにより、いわゆる街の整備工場や量販店では対応が困難になり、正規ディーラーの重要性が高まると考えています。
こうしたことから、車輌整備の際にこれまでは他社にマイカーを持ち込んでいたお客様が、当社に持ち込んでいただけるようになると見ています。
またコネクテッド化に関しては、お客様の車輌の状態やメンテナンスの時期等を把握し、適切なサービスを提供することでお客様満足度の向上にもつながると考えています。
Q:ストック型収益のもう一つの事業、保険販売も着実に拡大しています。いわゆる保険付保率が高い背景なども含めお教えください。
保険販売の拡大の最大の要因は、社員に対する徹底的な教育です。営業研修の中で保険は必須の重要なパートと位置付けており、このために十分な投資(金額、時間)を行うことが差別化に繋がっていると考えています。
自動車保険の仕組みや内容は毎年のように変更されますから、しっかりとアップデートし、お客様の現状分析や、「こうした方がよりメリットを得られます」といったアドバイスを即時かつ的確に提供できるような研修を行っています。
ここがしっかりと対応できるかできないかでお客様からの信頼感、満足度は大きく異なります。その重要性から私も必ず毎回研修には参加しています。
自動車保険業界はプロ代理店が7~8割のシェアを有し、ディーラーは3割程度という状況です。
当社は着実に保険販売を伸ばしていますが、獲得できるプロ代理店のシェアはまだまだ大きいので、教育への投資をこれからも積極的に行いさらにシェアを拡大していきます。
Q:ありがとうございます。それでは最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします。
中期的にも長期的にもお客様に選ばれ、メーカーに選ばれ、社会にも選ばれ、社員が幸せになる企業を作り上げていきたいと考えています。
そして、重要なステークホルダーである株主の皆様にもしっかりと利益を還元し貢献して参ります。
今回発表した中長期戦略を確実に実行して目標を達成し、社会的価値と企業価値双方の最大化に取り組んで参りますので、是非これからの当社にご期待ください。
7.今後の注目点
「市場環境」でも触れたように、国内新車登録台数は長期にわたり減少傾向にある。「少子高齢化」や「性能向上による保有期間の長期化」に加え、「若者の自動車離れ」「シェアリングサービスの拡大」などがその背景だ。ただ、輸入車という観点からはリーマンショックをボトムに新車登録台数は増加傾向にあり、決して縮小マーケットではない。
同様の理由から、車輌整備も日本全体ではシュリンクを避けられないだろうが、輸入車に関しては成長余力が大きい、特にM&Aによって更なるシェア拡大を進める同社においては安定成長が期待できる事業と位置付けられよう。
自動車の排ガスは、環境問題における元凶の一つであるが、「店舗のグリーン化」により自動車販売を通じて環境問題の解決に取り組み、同時に企業価値の向上を目指す同社の各施策の進捗を注目したい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 10名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名) |
監査等委員 | 5名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年9月29日
<基本的な考え方>
当社におけるコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方は、企業価値の最大化を図るにあたり、社会のめまぐるしい変化に対応し、効率的かつ、法令等を遵守する健全な経営体制を構築することであります。そのために、各ステークホルダーと関係強化及び経営統治機能の更なる充実を図ることにより、透明性のある経営を確保するとともに、適正かつ迅速なディスクロージャーに努めてまいります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
■補充原則3-1③・補充原則4-2②【サステナビリティを巡る課題】
当社は、企業活動を通じて持続可能な社会の実現・企業価値向上に向けて、当社グループ全体のサステナビリティへの取組と主体的なリスクマネジメント基盤を強化するとともに、成長戦略推進による業容拡大や自動車産業を取り巻くEV化等の技術革新への対応、DX化の推進を重点的に図るため、サステナビリティ基本方針を制定し、サステナビリティ委員会並びにリスクマネジメント委員会を設置しております。これらの委員会を中心とした具体的な取組み事項につきましては、決算説明資料等で開示しております。 (https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01236/078770bd/f7ea/4bc2/872b/e27b99a6bb7b/140120220824523428.pdf)
また、気候変動問題への取組につきましてはCDPを通じて開示しております。
中長期的企業価値の向上にむけた人的資本や知的財産についての投資につきましては、経営執行会等にて審議中であり、今後取締役会にて基本的方針を策定するとともに、開示してまいります。
■補充原則2-4①【中核人材の登用等における多様性の確保】
<多様性の確保についての考え方>
当社では、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、長く働き続けられる環境の提供を目指しており、人材の登用等においては性別・国際性・中途採用か否かに関わらず能力・実績により登用することを基本方針としております。
<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標>
中核人材の多様性の確保についての測定可能な目標は設定しておりませんが、中期的な企業価値の向上に向けた人材戦略とともに目標設定についても検討してまいります。
<多様性の確保の状況>
女性従業員の割合・・2022年6月期 18.2%
専門職の外国人の雇用・・2022年6月期 雇用率 0.71%
中途入社者の管理職割合・・2022年6月末現在 93.2%
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
■原則1-4 【政策保有株式】
(1)政策保有株式に関する方針
当社は政策保有株式を保有しておりません。取引先との資本提携、協業のために関係維持・強化が必要であり、中長期的な観点からビジネス上のメリットがリスクや資本コストに見合っていると判断した場合以外は、政策保有株式は保有しない方針であります。
(2)政策保有株式にかかる検証の内容及び政策保有株式にかかる議決権行使の基準
政策保有株式を保有することが適切であると判断した場合には、継続保有の合理性の検証方法並びに当該政策保有株式の議決権行使の具体的な基準を策定いたします。
■原則5-1【株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針】
当社は、株主や機関投資家との積極的かつ建設的な対話(面談)を通じ、経営方針や成長戦略を明確に説明し、理解を深めていただくことが、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると考えております。
株主や機関投資家との対話は、経営戦略本部IR室を窓口とし、代表取締役、IR担当者が合理的な範囲で訪問、来社、電話等により行っております。個別面談以外にも、多くの投資家と直接対話できる機会を設けるべく、代表者自らが説明を行う投資家、アナリスト向け決算説明会や個人投資家向け説明会を開催し、当社、投資家双方の理解促進の場として活用しております。さらに、説明会の模様を動画配信若しくは資料をホームページに掲載するなどし、広く情報発信を行っております。
対話に際しては、未公表の重要情報につきまして漏洩等が発生しないよう、十分に留意のうえ、臨んでおります。