(7046)TDSE株式会社 ストック型ビジネスの新規顧客獲得進む
東垣 直樹 社長 |
TDSE株式会社(7046) |
|
企業情報
市場 |
東証グロース市場 |
業種 |
サービス業 |
代表者 |
東垣 直樹 |
所在地 |
東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー27階 |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数 |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,092円 |
2,200,000株 |
2,402百万円 |
9.0% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
未定 |
– |
60.73円 |
18.0倍 |
830.49円 |
1.3倍 |
*株価は6/27終値。各数値は22年3月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2019年3月(実) |
1,351 |
195 |
212 |
146 |
76.40 |
10.00 |
2020年3月(実) |
1,377 |
126 |
127 |
90 |
44.08 |
10.00 |
2021年3月(実) |
1,323 |
50 |
68 |
190 |
93.11 |
20.00 |
2022年3月(実) |
1,723 |
217 |
219 |
148 |
72.19 |
10.00 |
2023年3月(予) |
2,020 |
220 |
220 |
124 |
60.73 |
未定 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。19年3月期および21年3月期のDPSにはそれぞれ記念配当 5.00円、特別配当10.00円を含む。
TDSE株式会社の会社概要、業績動向、東垣社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.22年3月期決算概要
3.23年3月期業績予想
4.東垣社長へのインタビュー
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 国内最高峰のデータサイエンティスト集団。AI技術を核に、メンバーそれぞれが持つ業界トップクラスの経験・実績と高度な専門スキルにより、クライアント企業の変革をサポートしている。安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティングサービス:フロー型」と、高成長事業の「AI製品等によるサブスクリプションサービス:ストック型」の2つのサービスを提供し、両サービス間のシナジー創出を追求している。「幅広い領域で活かせるAI技術を保有する独自AI製品『scorobo』」「AIビジネスを推進する協業ネットワーク」なども特長・強み。
- 22年3月期は大幅な増収増益、修正予想も上回る売上高は前期比30.2%増の17億23百万円。フロー型ビジネスでは案件の大規模化が進み、ストック型ビジネスではNetbaseの新規顧客獲得が進んだ。営業利益は同330.4%増の2億17百万円。事業強化を目的とした技術社員の増強や非対面での営業推進やデジタル技術等を用いてのマーケティングの強化を行いコストも増加したが、増収効果で吸収し大幅な増益となった。
- 23年3月期の売上高は前期比17.2%増の20億20百万円、営業利益は同0.9%増の2億20百万円の予想。ビジネス領域におけるコンサルティングおよびAIシステム実装のコンサルティングを強化するほか、デジタルマーケティングおよびパートナーネットワークの強化にも取り組む。増収も、人材育成、研究開発への投資に注力するため、利益は前期並みの予想。
- 東垣 直樹社長に、ミッション・ビジョン、自社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「AIやデータの力で『最善の選択ができる環境を創る』『自由な時間とより良い選択肢がある、人々が幸せに暮らせる社会をつくる』ことによって将来に対する不安を打ち消す責務が我々にはあります。簡単なことではないと思っていますが、株主の皆様とご一緒にそうした明るい未来、世界を創造していきたいと考えていますので、是非応援いただきたいと思います」とのことだ。
- 今期の利益は前期並みながらも、売上高は連続して2ケタ成長で、20年3月期、21年3月期と続いた横這いを脱し、伸長が続く。ただ、ドライバーは引き続きフロー(既存)ということとなろうが、「ストック型比率の向上」「NetBase以外のプロダクトの販売拡大」がどの程度進むかを注目していきたい。
1.会社概要
国内最高峰のデータサイエンティスト集団。AI技術を核に、メンバーそれぞれが持つ業界トップクラスの経験・実績と高度な専門スキルにより、クライアント企業の変革をサポートしている。
安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティングサービス:フロー型」と、高成長事業の「AI製品等によるサブスクリプションサービス:ストック型」の2つのサービスを提供し、両サービス間のシナジー創出を追求している。
【1-1沿革】
2013年、企業経営にAIやデータ活用が求められる時代の到来を予見し、ビッグデータ事業を展開するために株式会社テクノスジャパン(東証プライム、3666)がテクノスデータサイエンス・エンジニアリング株式会社(現 TDSE株式会社)を設立。同年には早稲田大学とビッグデータ活用研究に関する産学連携を開始した。
2014年9月、米国NetBase Solutions,Inc.と業務提携し、、グローバル規模のソーシャルデータ分析サービスを開始するため、NetBase社AI製品「Netbase」の取扱いを開始した。
2015年1月に統計アルゴリズムを活用した同社独自のAI製品「scorobo」の販売を開始。
会社設立直後は、AIやデータ活用に関する世間の認知・理解も低かったため顧客企業側の反応も鈍かったが、徐々に海外を中心に多くの事例が情報として伝わるようになると、同社サービスに対する関心が急速に高まり引き合いも増加、売上・利益は順調に拡大していく。同時に同社サービスが高く評価され、2017年9月には株式会社)エヌ・ティ・ティ・データ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が資本参加し、業務提携契約を締結した。
2018年11月にCognigy GmbH社と業務連携し、Cognigy社の対話型AIプラットフォーム「Cognigy」のグローバル販売契約を締結。
同年12月、東証マザーズに上場した。
2021年12月、TDSE株式会社に商号変更。
2022年4月、市場再編に伴い東証グロース市場に移行した。
【1-2 理念】
国内最高峰のデータサイエンティスト集団として、以下のようなミッション・ビジョン・バリューを掲げている。
ミッション (取り組み) |
データに基づいて意思決定を高度化する
私たちは、 「データとテクノロジーによって、勘や経験による属人的な意思決定を高度化し、人々がより効率的に、より最善の選択ができるようにする。」 |
ビジョン (未来) |
データを活用した可能性に溢れた豊かな社会を創る
私たちは、 「データに基づいて、最善の選択肢と仕組みを提供し、非効率が効率化され、人々の自由な時間とより良い選択肢がある、人々が幸せに暮らせる社会をつくる。」 |
バリュー (取り組みにおいて優先すべき価値基準) |
プロフェッショナルの追求 お客様にとって真に価値のあることを追求する。
チームワークと成長 互いの考え方・働き方・生き方を尊重し、常に協力して、自分とチーム全体を成長させる。
変化を楽しむ 同じ仕事はない、世の中は常に変化していく。変化を味方につけ、変化を楽しむ。 |
【1-4 市場環境】
◎DX市場
国内DX市場は2020年度の1.3兆円が2030年度には5.2兆円まで拡大すると推計されている。CAGR(年平均成長率)は14.2%。
幅広い業種で高成長が見込まれる。
(同社資料より)
◎AIビジネス市場
AIビジネス市場も加速度的に拡大している。2019年から2025年にかけ、CAGR12.4%で成長し、2025年の市場規模は約2兆円に達する見込みである。
同社の主力領域である「分析サービス」は、市場規模が小さいが、高度な技術を要するため、引き続き自社の強みを発揮できる領域として注力する。
一方、市場規模が大きく、成長力の高い「プラットフォーム」 ・「構築サービス」領域は、事業拡大に向け一段と注力する考えだ。
(同社資料より)
【1-5 事業内容】
安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティングサービス:フロー型」と、高成長事業の「AI製品等によるサブスクリプションサービス:ストック型」の2つのサービスを提供し、両サービス間のシナジーを創出している。
報告セグメントは、ビッグデータ・AIソリューション事業の単一セグメント。
(1)各サービスの概要
①コンサルティングサービス:フロー型
データ経営を目指す企業向けにAIを中心とした統合型ソリューションサービスを提供している。
企業のデジタルトランスフォーメーションを共に推進していくため、顧客企業が進める事業戦略に沿う形でデータ活用のテーマ抽出→データ分析→AIシステム実装に加え、教育まで一気通貫したコンサルティングサービスを提供している。
DXコンサルティングサービス |
顧客企業がデジタルトランスフォーメーションを推進する際に、DX成熟度およびビジネスゴールの可視化を実施した上で、推進体制および業務設計等の上流のコンサルティング領域からアプローチし、テーマアセスメントによる分析の企画を行う。 デジタル戦略領域に長けたDXコンサルタントを通じて、顧客企業の現状及び問題を整理し、「データ経営方針」「データ経営ロードマップ」「デジタル戦略組立て」「デジタル戦略人材の確保」「解析方針策定」など課題及び対策を明確にし、必要なノウハウを提供している。 |
データ解析コンサルティングサービス |
データサイエンティストが、「DXコンサルティングサービス」により抽出された顧客企業のビジネス課題を把握の上、数理課題に置き換えて分析を実施し、分析結果をフィードバックする。 分析結果等に基づき、ビジネス課題の解決を支援している。 |
データ活用人材教育及び組織組成支援サービス |
顧客企業の様々な業態・要望に合わせ、データサイエンティストや機械学習自動化ツールおよびビジネスインテリジェンスツールを活用するデータ活用人材の候補者を育成するための教育プログラムを提供している。 実務担当者のみならず、決定権限を有する経営者層への教育も行っており、データ分析をビジネスから経営判断への応用に至るまで内製化することを目指す企業向けに組織組成を支援している。 |
トータルAIエンジニアリングサービス |
データエンジニアによる、顧客企業のデータ・AI活用に向けた分析基盤におけるコンサルティング、データ収集・加工およびデータマート構築を支援している。 AIエンジニアによるAIを組み込んだシステム構築・運用/保守サポートも行っている。 |
②サブスクリプションサービス:ストック型
同社独自AI製品「scorobo」シリーズや他社AI製品などの製品販売、または業務特有のAIモジュール(※)を顧客企業に提供し、使用料及び運用保守料を受領するサブスクリプションサービスを展開している。
※AIモジュール
AIシステムを構成するツールで、単体で活用するよりも業務システムやアプリケーション等と組み合わせて利用する。
◎自社AI製品「scorobo」等を活用したサービス
ディープラーニング技術など機械学習等を活用した同社独自のAI製品「scorobo」を提供している。
(同社資料より)
ディープラーニング技術等の 機械学習を活用した AIをモジュール化し、顧客サービスに合わせて AI製品化している。
現在、送電線異常検知に関する「scorobo for 送電線AI異常検知」を複数の電力会社に提供しているほか、非接触センサーを用いた バイタルモニタリングサービス「scorobo Vital」を検証中である。「scorobo Vital」は、遠隔医療、予防医療、ウェルネスに活用できる非接触センサーを活用したバイタルモニタリング サービスで、心拍数、血中酸素飽和度、心拍変動、呼吸数など健康状態を把握する AI モジュールの開発及び技術支援に取り組んでいく。
コンサルティングで蓄積されたAI技術ノウハウを活用し、多くの顧客企業で共通しているビジネス課題に応じた製品およびサービスの充実を図っていく考えである。
◎ 他社AI製品等を活用したサービス
他社AI製品を活用したサービスも展開している。具体的には、SNSソーシャルリスニングツール「Netbase」、ChatBotや音声アシスタント等の対話サービスに対して、自動応答機能を提供する対話型AIプラットフォーム製品「Cognigy」など。
SNS・ソーシャルリスニング「NetBase」
|
NetBase Quid社が提供するAI製品。Twitter・Facebook・InstagramなどSNS上にあるテキスト・画像を瞬時に解析する。 話題の中心人物を探索する分析サービス「 SNS Link 」の提供を開始した。
海外で高く支持されているブランドであり、「豊富な対応メディア」「詳細な分析機能 ・多彩なフィルタリング」「50ヶ国語対応」「膨大なデータのリアルタイム分析」などが特長で、すべてのビジネス領域で活用可能な対応力も強みである。
TDSEは、アジアパシフィックの正規販売パートナーとなっている。 Netbase代理店としてISIDとの協業により、日本生命、日本航空を始め大手企業向け販売が拡大している。 |
対話型AIプラットフォーム「COGNIGY」
|
短期間で拡張性の高い対話型AIの設計/開発を可能とするプラットフォーム。 世界中の競合製品(IBMやGoogle)のなかで、リーダークラスの称号を調査会社ガートナーが認証している。
LINE、Slack、Teamsなど多様なチャネルとの連携が可能で、「23言語に対応した NLP(自然言語処理)」「ビジネスユーザーが開発可能なローコード仕様(GUIによる対話構築)」「Salesforceなど 様々な業務システムと連携可能」「Voice UIなど必要となる管理機能をすべて搭載」といった点が特長・強みである。
TDSEはアジアパシフィックの正規販売パートナーで、バーチャル接客&CRM ツール、コロナワクチン接種予約ボット、多言語による観光案内自動化などを協業も含め提供している。 |
TDSEは、米国シリコンバレーや欧州・アジアを始めとして、国内外にあるベンチャー企業のリサーチを進めている。
調査対象企業が持つテクノロジー及びプロダクトが、TDSEの新たなソリューションサービスとして導入が相応しいと判断した場合は、ビジネス化を図ることとしている。海外ベンチャー企業調査についても、調査協力体制を構築している。
(2)顧客企業
①概要
2013年の設立以来、リクルートをはじめとするサービス業や金融業、製造業の顧客を中心としつつ、大手アパレル、大手総合スーパーなども含め200社強にサービスを提供している。
経営層やAI事業推進者とのビジョン交換・議論を頻繁に行うほか、システム構築も含めたデータ経営支援ビジネスを展開していることから、中長期にわたる強固な関係を構築することができている。
特にリクルートグループに関しては、「商品需要予測 」「広告宣伝費最適化」「Webサイト商品レコメンド」「UI・UX改善解析」「商品投資効果分析」「類似画像分析」など、各事業会社の多様なAI構築を手掛けており、22年3月期売上高の約3割をリクルートグループ向け売上高が占めている。
(同社資料より)
②導入実績
金融業界始め、多くの業界・業態でイノベーション実現に向けた支援実績を有している。
(同社資料より)
2021年3月期以降は、コロナ禍で対面販売が減少する一方でオンライン販売が急伸する中、「需要予測」「ダイナミックプライシング」「食品ロス削減」といったニーズが高まり、小売・流通企業の案件が増大している。
今後は、顧客企業との継続した関係構築および拡大を図るとともに、業界ごとの市場の成長性や規模などを考慮しながら、コンサルティングサービスにおいては大企業を中心に展開していく。AI製品等のサブスクリプションサービスについては、大企業だけでなく、中堅企業もターゲットにした幅広い新規顧客の開拓を図る。
<データサイエンス活用事例>
上記のように多くの業界・業態でイノベーション実現に向けた支援実績を有している。
以下に、同社のデータサイエンス活用事例を紹介する。
◎商品需要予測による生産・在庫管理
業種 |
小売・流通 |
業務 |
時系列予測 |
課題 |
店舗在庫適正化 |
(現状)
商品ごとの日時(1週間先まで)の売上予測を行い、店舗の最適な在庫管理を行う必要性があった。
また、商品ごとの月次(3か月先まで)の売上予測を行い、製造における最適な生産計画を立てることも同様に課題であった。
さらに、店舗の在庫管理や製造における生産計画は属人性が高く、AIによるオートメーション化を行いたいと考えていた。
(アナリティクス・AIソリューション)
商品ごとの過去の売上やその他の外部データを用いていくつかのモデル(LightGBM、Prophet、CatBoost)を作成し、より精度の良いモデルで予測を行った。
(効果)
*売上に基づく日時、月次の需要予測が可能になった。
*不要な在庫を減らし、過剰生産が抑制された。
◎ダイナミックプライシング
業種 |
小売・流通 |
業務 |
価格適正化 |
課題 |
価格適正化 |
(現状)
スーパーなどの小売店では商品の売れ残りを防ぐために、商品の値下げなどを行うが、価格を下げすぎると利益が減り、値下げ幅を小さくしすぎると購買に至らず、さらに廃棄商品が増えてしまうという課題を抱えている。
このケースでは、これまで値下げの判断やタイミングは担当者の経験に依存していたが、利益を最大化する売値や値下げ価格をデータに基づき決定するためにダイナミックプライシングの導入を検討していた。
(アナリティクス・AIソリューション)
①各時点での需要予測と②動的計画法を用いたダイナミックプライシングを実施した。
*購買データと商品の在庫状況から機械学習を用いて各時刻の売上を予測
*販売期間を等分し各時刻での利益の総和を最大化する価格列を算出
(効果)
*ダイナミックプライシングのアルゴリズムにより、適切な値下げ幅を算出することで利益を最大化することに成功した。
*担当者の属人性に依存しない値下げが可能になった。
◎複写機メーカーによる消耗品交換予測
業種 |
製造 |
業務 |
アフターサービス |
課題 |
物流コスト削減・在庫適正化 |
(現状)
複写機(コピー機)トナーなどの消耗品交換タイミングは顧客によって異なるため、定期的に消耗品を配送する従来の方法では、在庫及び物流に無駄が発生していた。
(アナリティクス・AIソリューション)
顧客別に消耗品交換を予測するAIエンジンを開発した。このAIエンジンにより、消耗品がなくなる前に補充/交換を実施し、消耗品在庫の無駄の削減、さらには配送ルートの最適化も実現し、消耗品の物流を効率化することが可能となった。
(効果)
*アフターサービスの質向上…消耗品が無くなる前に補充/交換
*消耗品の在庫削減…消耗品発注単位の最大化。在庫滞留期間を削減
*物流の効率化…消耗品の配送単位の効率化・物流コスト低減
以上はデータサイエンス活用事例ほんの一端であるが、時系列・画像・自然言語など全てのデータを取り扱い、それらを複合的に組み合わせて最適化を実現する業務用AIを構築できる点は、他社には難しい同社の強みである。
【1-6 成長戦略】
【1-4 市場環境】で触れたように、DX市場、AIビジネス市場ともに今後も急成長が見込まれる。
そうしたフォローの風を受け、同社は以下のような成長戦略・取り組みを推進する。
(基本戦略)
成長ステージを意識した事業に取り組み、持続的に成長できる収益基盤を確立し、高付加価値ビジネスを推進する。
(取り組み)
☆ |
収益基盤拡大にむけ、DX・AIコンサルティング/システム実装にむけたコンサルティングメニューを強化する。 |
☆ |
高成長事業の位置づけとして、自社/他社AI製品の拡充を図り、サブスクリプションサービス売上を拡大する。 |
☆ |
主力領域である「分析サービス」は、市場規模が小さいが、高度な技術を要するため、引き続き自社の強みを発揮できる領域として注力する。 |
☆ |
安定成長事業である「コンサルティングサービス」によるノウハウの提供と、高成長事業である「サブスクリプションサービス」によるAIエンジンの提供でシナジーを創出する。 |
(同社資料より)
【1-7 特長・強み・競争優位性】
同社の主な競争優位性は以下の3点である。
(1)国内最高峰のデータサイエンティスト集団
役職員138名のうち、8割以上がデータサイエンティストとエンジニアで構成されている。更に、データサイエンティスト職の9割が理系修士以上、その内5割が後期課程進学者・博士学位取得者である。また、素粒子・宇宙物理・航空工学など専門的に科学教育を受け、先進国の研究所で解析技術・知識を得た多彩なデータサイエンティストが多数おり、国内最高峰のデータサイエンティスト集団と自負している。
(2)幅広い領域で活かせるAI技術を保有する「scorobox」
創業以来、様々な業界・業種におけるコンサルティングにより経験してきたプロジェクト実績、AI技術、ノウハウを「scorobox」といライブラリーに蓄積している。これらを同社の知的財産として活用することで、フロー型においてはコンサルティングの高度化・効率化を図っているほか、ストック型ではモジュール適用によって機能強化を進めている。
また、ライブラリーを活用することで経験の浅い技術社員の早期育成にも寄与している。
(同社資料より)
(3)AIビジネスを推進する協業ネットワーク
同社単独でのビジネス推進ではなく、相互に強みを補完できるAI企業・IT企業、事業会社や大学・専門団体等、協業先等と共創体制を構築しながら、最新技術キャッチアップおよび新サービス企画・研究・開発を推進している。
(同社資料より)
2.2022年3月期決算概要
【2-1業績概要】
|
21/3期 |
構成比 |
22/3期 |
構成比 |
前期比 |
予想比 |
売上高 |
1,323 |
100.0% |
1,723 |
100.0% |
+30.2% |
+7.7% |
売上総利益 |
469 |
35.4% |
705 |
40.9% |
+50.4% |
– |
販管費 |
418 |
31.6% |
487 |
28.3% |
+16.5% |
– |
営業利益 |
50 |
3.8% |
217 |
12.6% |
+330.4% |
+81.7% |
経常利益 |
68 |
5.2% |
219 |
12.7% |
+220.0% |
+83.0% |
当期純利益 |
190 |
14.4% |
148 |
8.6% |
-22.3% |
+78.7% |
*単位:百万円。予想比は21年10月公表の業績予想に対する増減。
*21/3期は、投資有価証券の配当金受領および売却益を計上。
大幅な増収増益、修正予想も上回る
売上高は前期比30.2%増の17億23百万円。フロー型ビジネスでは案件の大規模化が進み、ストック型ビジネスではNetbaseの新規顧客獲得が進んだ。
営業利益は同330.4%増の2億17百万円。事業強化を目的とした技術社員の増強や非対面での営業推進やデジタル技術等を用いてのマーケティングの強化を行いコストも増加したが、増収効果で吸収し大幅な増益となった。
売上高・利益とも予想を上回った。
【2-2 決算のポイント】
(1)フロー型・ストック型
ストック型ビジネスの売上比率は前期比3%低下した。
「大規模×長期化(LTV の最大化)」に繋がる顧客との接点増加活動を行った結果、大型案件を受注しフロービジネスが拡大した。ストック比率は低下したが、成長を加速させるためにストック重視の方針に変更はない。
(2)フロー型売上高の内訳
サービス業、製造業・金融業の高シェアは維持した一方、大手アパレル、大手総合スーパー業、大手ディスカウントストアからの受注が拡大した。
ビジネス領域におけるコンサルティングの強化、AIシステム実装のコンサルティングの強化、顧客との中長期にわたる関係強化などがその要因。
データ解析やAI 技術が重要な役割を果たすため、これまで以上にデータサイエンス人材の確保が重要課題と認識している。
(3)新規・既存顧客売上高
中長期的な基盤固めによりフロー型の既存顧客向け売上高は前期比約4割増加した。
(同社資料より)
(2)ストック型売上高の内訳
Cognigyの減少部分をNetbaseで吸収し、ストック型ビジネス全体では前年を上回った。
*Netbase
デジタルマーケティングによる市場への訴求力強化とISIDとの代理店政策の効果による増収。構成比72%。
*Scorobo
電力大手等の案件は順調に推移している。構成比5%。
*Cognigy
チャットボットは競争が激化している。構成比18%。
(同社資料より)
【2-3 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
|
21年3月末 |
22年3月末 |
増減 |
|
21年3月末 |
22年3月末 |
増減 |
流動資産 |
1,674 |
1,891 |
+216 |
流動負債 |
193 |
323 |
+129 |
現預金 |
1,443 |
1,613 |
+170 |
固定負債 |
20 |
20 |
0 |
売上債権 |
172 |
201 |
+28 |
負債合計 |
213 |
343 |
+129 |
固定資産 |
129 |
159 |
+30 |
純資産 |
1,590 |
1,708 |
+117 |
投資その他の資産 |
95 |
124 |
+28 |
利益剰余金合計 |
530 |
637 |
+107 |
資産合計 |
1,804 |
2,051 |
+247 |
負債純資産合計 |
1,804 |
2,051 |
+247 |
*単位:百万円
現預金の増加などで資産合計は前期末比2億47百万円増加し20億51百万円。負債合計は同1億29百万円増加の3億43百万円。
利益剰余金の増加などで純資産は同1億17百万円増加の17億8百万円。
自己資本比率は前期末から4.9ポイント低下し83.3%。
◎キャッシュ・フロー
|
21/3期 |
22/3期 |
増減 |
営業CF |
47 |
224 |
+176 |
投資CF |
1,008 |
-13 |
-1,022 |
フリーCF |
1,056 |
211 |
-845 |
財務CF |
-520 |
-40 |
+479 |
現金同等物残高 |
1,443 |
1,613 |
+170 |
*単位:百万円。
フリーCFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。
3.2023年3月期業績予想
【3-1 業績予想】
|
22/3期 |
構成比 |
23/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
売上高 |
1,723 |
100.0% |
2,020 |
100.0% |
+17.2% |
営業利益 |
217 |
12.6% |
220 |
10.9% |
+0.9% |
経常利益 |
219 |
12.7% |
220 |
10.9% |
+0.2% |
当期純利益 |
148 |
8.6% |
124 |
6.1% |
-15.8% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
*23/3期は、代表取締役(創業者)の退任に伴う特別功労金贈呈による特別損失を計上。
増収、利益は前期並みの予想
売上高は前期比17.2%増の20億20百万円、営業利益は同0.9%増の2億20百万円の予想。
ビジネス領域におけるコンサルティングおよびAIシステム実装のコンサルティングを強化するほか、デジタルマーケティングおよびパートナーネットワークの強化にも取り組む。
増収も、人材育成、研究開発への投資に注力するため、利益は前期並みの予想。
4.東垣社長へのインタビュー
東垣 直樹社長に、企業理念、自社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
東垣社長は1981年1月21日、神戸生まれ。1995年、中学生の時、阪神・淡路大震災を経験し、「人の役に立つ仕事、人からありがとうと言ってもらえる仕事」を志向するようになる。インターネットが急速に浸透する中、ITの持つ世の中を変える力に惹かれ、ITコンサルタントとして多くのお客様の役に立つ道を志す。同時に、若いうちから様々な経験をして自分の可能性を広げたいと考え、大手企業ではなく、当時未上場であった株式会社テクノスジャパンに入社した。
製造業を中心としたコンサルタントとして活動しながら、海外からの案件導入など新たな挑戦にも携わり、経験を積んでいく。
2013年に設立されたテクノスデータサイエンス株式会社(現 TDSE株式会社)をビジネスにおける幅広い経験・知識を活かして更に強化することを託され、2017年9月に執行役員エンジニアリンググループ長として同社入社。執行役員として営業、技術双方を統括した後、2019年6月、取締役執行役員常務技術統括就任。AIやデータサイエンスを事業展開して成長を追求するためには経営トップの若さが必要との判断から、39歳の2020年6月、代表取締役社長に就任した。
Q:「改めて御社のミッション、ビジョンをお話しくださいますか」
「データに基づいて意思決定を高度化する」、つまり、データとテクノロジーによって、勘や経験による属人的な意思決定を高度化し、人々がより効率的に、より最善の選択ができる環境を創り出すことが、当社のミッションです。
そして、そうした仕組みを提供することで、非効率が効率化され、人々の自由な時間とより良い選択肢がある、人々が幸せに暮らせる社会をつくることをビジョンとしています。
AIやデータの活用によるITの力で世の中を変え、様々な社会課題を解決することが我々の社会的な存在意義であると考えています。
Q:「そうした中で、社長ご自身のミッションは何であるとお考えですか?」
このたび、当社創業時の代表取締役社長で代表取締役会長の城谷が退任し、代表取締役は私1名となりました。そこで、当社設立の意味・背景を改めて考えてみました。
当社は、フロー型である安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティングサービス」と、ストック型で高成長事業の「AI製品等によるサブスクリプションサービス」の2つのサービスを創業以来提供してきました。
もちろん、両サービスをバランスよく成長させていくことが必要なのですが、当社が世の中から求められているものは何か、当社が収益性を向上させながら持続的に成長を追求するためには何が必要かと考えると、やはりAI製品、プロダクトを活用したサービスへの注力が必要です。
コンサルティングサービスを伸長させながらも、サブスクリプションサービスを更に高成長させ、ストックの構成比を高めていくのが私のミッションの一つであり、そのための人材の確保・育成、環境創り、事業基盤づくりに取り組んでいこうと考えています。
Q:「続いて、御社の強み、競争優位性について教えてください」
「国内最高峰のデータサイエンティスト集団」と自ら名乗っているように、優秀なデータサイエンティストを多数有している点が当社最大の競争優位性です。
創業時からその実績を蓄積しており、社内環境や社内での教育スキルも確立することが出来ています。
データサイエンティスト職の9割が理系修士以上、その内5割が後期課程進学者・博士学位取得者となっています。
そのため、企業の事業部というよりも、各領域のスペシャリスト集団がお互いに議論しあい、貴重な情報や考え方を教え合う・共有し合うといった大学の研究室に近い文化が醸成されている点は大きな特長です。
深く物事を追求できる点に魅力を感じ、当社を選択するケースも多々ありますし、研究室などとパイプを持っていますから、当社のデータサイエンティストが卒業生として後輩をリクルーティングすることもあります。
教育については、プロジェクトを進めていく上の方法論、、つまり、どういう段取りを踏んで成果に結びつけていくのかを知識を基に体系化しています。これによって、豊富な経験を積んだデータサイエンティストが講師の立場で、ロールプレイングを行い、まだ経験の浅い人材でも着実に実力をつけていくことができます。当社では数学的な知見を持ったデータサイエンティストがプロダクト作りだけでなく、コンサルティングも担っています。この点も大きな特色であり、お客様からの信頼に繋がっています。
こうしたことは優秀な人材を集めればすぐ実現可能というものではありません。約10年かけて脈々と受け継がれ、形成されてきたてきたいわば当社の文化は他社に対する大きなアドバンテージであると考えています。
Q:「御社の成長戦略について伺います。コンサルティング、サブスクリプション、それぞれ成長・拡大させていく上での、課題や重要なポイントはなんでしょうか?」
労働集約型のコンサルティングに関しては、ある程度は人員数を増やしながらも、パートナーを上手く活用していくことが重要です。
優秀なパートナーと持続的に仕事を手掛けていくには、ある程度大きな案件をスポットではなく、連続性を持った帯の形で受注してアイドルタイムを極力減らしていくことが必要ですので、受注力の強化と共に案件の選別化を進めていきます。
サブスクリプションに関しては、NetBaseを単なる分析ツールの販売ではなく、このツールを活かしながら、広告領域で広告主の売上増大に貢献するような仕組みを検討していきます。
また、現在はNetBaseがサブスクリプションサービスの約7割を占めていますが、ポートフォリオの分散が必要と認識しています。Cognigyはチャットボットとは異なる対話型AIプラットフォームという点を訴求していくことが必要です。また、自社AIについてもこれまでに蓄積したノウハウを活かして製品化、サービス化を進めていきます。
両事業の基盤となる人材確保・育成の基盤となる環境整備にも取り組んでいきます。
リモートやワーケーションも取り入れながら、コミュニケーションの活性化も図り、個々人が最高のパフォーマンスを上げることのできる職場環境づくりを目指します。
Q:「では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」
更なる成長を目指すにあたり、社員も増えていく中で、価値観をもう一度共有しあう必要があると考え、昨年、ミッション、ビジョン、バリューを再定義しました。
少子高齢化が進む日本は、生産性が極めて低水準です。
翻って海外ではデジタルやデータを活用することで生産性を向上させているケースが多数見られます。
ですので、海外から学び、緻密さ、繊細さといった日本の得意分野を活かして日本の生産性改善に取り組む必要があると、我々は考えています。
現在の若い人たちは、将来に対し不安も多いと思いますが、ミッション・ビジョンにあるように、AIやデータの力で「最善の選択ができる環境を創る」「自由な時間とより良い選択肢がある、人々が幸せに暮らせる社会をつくる」ことによってそうした不安を打ち消す責務が我々にはあります。
簡単なことではないと思っていますが、株主の皆様とご一緒にそうした明るい未来、世界を創造していきたいと考えていますので、是非応援いただきたいと思います。
5.今後の注目点
今期の利益は前期並みながらも、売上高は連続して2ケタ成長で、20年3月期、21年3月期と続いた横這いを脱し、伸長が続く。ただ、ドライバーは引き続きフロー(既存)ということとなろうが、「ストック型比率の向上」「NetBase以外のプロダクトの販売拡大」がどの程度進むかを注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 |
監査役設置会社 |
取締役 |
4名、うち社外取締役1名(うち独立役員1名) |
監査役 |
3名、うち社外監査役2名(うち独立役員1名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月21日
<基本的な考え方>
当社は、「データに基づいて、意思決定を高度化する」というミッションのもと、「データを活用した可能性溢れた豊かな社会」の実現に向けて、更なる飛躍を目指し、株主、取引先、従業員等ステークスホルダーの信頼を得、継続的な企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンスの充実が経営上の重要な課題であると位置づけ、コンプライアンス体制及びリスク管理体制の構築・強化を図り、取締役会を中心に「経営の効率化」及び「監督機能の強化」に主眼を置き、健全で透明性が高く、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制の構築に努めてまいります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。