(4043)株式会社トクヤマ 収益認識会計基準等適用により減収
横田 浩 代表取締役 社長執行役員 |
株式会社トクヤマ(4043) |
|
企業情報
市場 |
東証プライム市場 |
業種 |
化学(製造業) |
代表取締役社長執行役員 |
横田 浩 |
所在地 |
東京都千代田区外神田1-7-5 フロントプレイス秋葉原 |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数 |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,729円 |
72,088,327株 |
124,641百万円 |
13.2% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
70.00円 |
4.0% |
243.22円 |
7.1倍 |
3,120.25円 |
0.55倍 |
*株価は6/24終値。各数値は22年3月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2019年3月(実) |
324,661 |
35,262 |
33,400 |
34,279 |
493.26 |
50.00 |
2020年3月(実) |
316,096 |
34,281 |
32,837 |
19,937 |
287.05 |
70.00 |
2021年3月(実) |
302,407 |
30,921 |
30,796 |
24,534 |
351.11 |
70.00 |
2022年3月(実) |
293,830 |
24,539 |
25,855 |
28,000 |
389.09 |
70.00 |
2023年3月(予) |
360,000 |
24,500 |
25,000 |
17,500 |
243.22 |
70.00 |
*単位:円、百万円。予想は会社側予想。2022年3月期 の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を
適用。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。
トクヤマの2022年3月期決算概要、横田社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期決算概要
3.2023年3月期業績見通し
4.中期経営計画2025の進捗
5.横田社長に聞く
6.今後の注目点
<参考1:中期経営計画2025の進捗>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 22年3月期の売上高は前期比2.8%減の2,938億円。石油化学製品の販売価格上昇したことに加え、半導体関連製品・ヘルスケア関連製品などが堅調に推移したが、収益認識会計基準等を適用した結果減収。同基準適用による減収額は465億円で、適用なしでは12%の増収。営業利益は同20.6%減の245億円。塩化ビニルモノマーの海外市況上昇等はあったものの、原燃料コストおよび物流費等の増加により減益。当期純利益は同14.1%増の280億円。減損損失が大幅に減少したほか、前期特別損失に計上した解体撤去引当金繰入が今期は計上がなかった。
- 23年3月期の売上高は前期比22.5%増の3,600億円の予想。化成品やセメントなどの価格修正、および半導体関連製品などの拡販により増収を予想している。営業利益は前期並みの245億円を予想。電子材料・化成品・セメントなど主要製品の価格改定が進むが、原燃料コスト増加、研究開発費・減価償却費の増加を予想している。配当は前期と同じく70.00円/株の予定。予想配当性向は28.8%。
- 横田社長に前中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージ伺った。『「電子」「健康」「環境」の3分野を注力事業領域と明確化し事業を推進し、2025年度 には成長事業の連結売上高比率50%以上は通過点とし、更なる高みを目指す中期経営計画は着実に進捗しています。目標達成に向け全社一丸となって邁進して参りますので、これからも是非ご支援いただきますようお願い申し上げます』とのことだ。
- 石炭火力発電に依存したエネルギー多消費型事業が収益を牽引してきた同社にとって、事業構造の転換はそう容易ではないであろうが、長年蓄積してきた化学技術を活かして、環境関連製品の開発、リサイクル事業の拡大、独自のバイオマスの発掘、など、「環境」分野における事業機会の創出に取り組んでいる。大きな成果はこれからであろうが、着実に歩みを進めているようだ。一方、「電子」「健康」はマーケティング能力の強化を通じて結果も出始めている。引き続き「中期経営計画2025」の進捗を注目していきたい。
1.会社概要
ソーダ灰、苛性ソーダなど幅広い用途に用いられる必要不可欠な基礎化学製品、多結晶シリコンを始めとする半導体関連製品、国内第4位の生産量のセメントのほか、メガネ関連材料や医薬品原薬などのファインケミカル製品を展開する総合化学メーカー。1918年創業。多様な特有技術から生み出される先端製品、高度に統合・集積された徳山製造所の競争力などが大きな強み。
【1-1 沿革】
1918年にガラスの原料であるソーダ灰(炭酸ナトリウム)の国産化を目指し、創業者 岩井勝次郎により「日本曹達工業株式会社」として設立された。現在でもソーダ灰製造を継続する唯一の国産メーカーである。
1938年にはソーダ灰事業の副産物を生かした湿式法によるセメント製造を開始した。
第二次大戦後、無機関連事業を伸張させた後、高度経済成長時代に入ると、塩化ビニルやポリプロピレンなど石油化学関連事業を拡大させた。
2度のオイルショックを経た後は、電子材料・ファインケミカルなど高付加価値分野へ進出。1984年には、現在では世界トップスリーに入る多結晶シリコン事業に進出した。また、1985年には電子部品の放熱材料として用いられる窒化アルミニウム粉末を独自開発の製法である還元窒化法により製造を開始した。
以降も、メガネレンズ材料や歯科器材など生活・医療分野、環境・エネルギー分野などへ事業フィールドを拡大させてきた。
ただ、2009年にマレーシアに設立した連結子会社「トクヤママレーシア」における多結晶シリコン事業が市況下落により大幅に収益が悪化。これにより15年3月期、16年3月期に多額の減損損失を計上し無配に転じた。
こうした状況に対し、2016年5月には「財務基盤の再建」に向けた種類株式の発行による資金調達を実施。
同時に、「あらたなる創業」に向けたビジョンの下、5年間の中期経営計画「再生の礎」を策定・発表し、組織風土の変革、事業戦略の再構築などの重要課題に取り組んでいる。18年3月期には4期ぶりの配当を実施した。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場に移行した。
【1-2 経営理念など】
同社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、2022年3月期を初年度とする「中期経営計画2025」策定にあたり存在意義を再定義し、スローガン「もっと未来の人のために」を掲げ、新たにMission、Vision、Valuesを定めた。
Mission 経営理念
|
存在意義 |
化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する |
Vision 経営方針 |
ありたい姿 |
*マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業 *独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業 *社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業 *世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業 |
Values 行動指針 |
価値観 |
*顧客満足が利益の源泉 *目線はより広くより高く *前任を超える人材たれ *誠実、根気、遊び心。そして勇気 |
【1-3 事業内容】
「中期経営計画2025」において、成長事業を「電子」「健康」「環境」と定義したことに伴い、22年3月期からよりセグメントを見直し、「化成品」「セメント」「電子材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントとした。
*以下のセグメント詳細説明は、旧セグメント分類による。
◎化成品
<概要・主要製品>
ソーダ灰、苛性ソーダ、塩化カルシウムなど、幅広い用途に用いられ、各産業において必要不可欠な基礎化学製品を取り扱っている。
また、苛性ソーダの製造工程で発生する塩素と水素は多結晶シリコンの製造工程で使用されるなど、効率的な事業運営が行われている。
「顧客に選ばれ続けるトクヤマを実現する」という部門目標のもと、顧客企業個々のニーズに見合った安定的かつタイムリーな製品・サービスの提供に努めている。
事業 |
特長 |
主要製品 |
ソ-ダ・塩カル |
国内需要の伸び悩みや輸入品の増加による競争激化から、事業環境は厳しく、国内のソーダ灰メーカーは現在同社1社。国内メーカーとしての存在意義と責任は今まで以上に大きく、創業以来培ってきた技術と、長年にわたり築き上げてきた顧客との信頼関係を軸に、競争力を維持・強化し国内市場で確固たる地位を築いくことを目指している。 また珪酸ソーダカレットは、原料であるソーダ灰や苛性ソーダから一貫して自社生産する競争力と生産能力の高さを武器に国内トップシェアを誇っている。 |
ソーダ灰、塩化カルシウム、珪酸ソーダ、重曹 |
クロルアルカリ・塩ビ |
苛性ソーダ生産能力は年間49万トンで国内第3位。また、併産される塩素を利用して多様な製品を生産しており、同社の競争力を下支えしている。これらの製品群は多岐にわたるため、特定の分野の消費動向から受ける影響が少ないのも特長。 塩化ビニル樹脂(塩ビ)はその40%が石油由来で、残りの60%は塩由来。石油への依存度という面からは、塩ビは省資源性の高いプラスチックである。さらに塩ビ製の複層ガラスサッシは住宅の保温効果に優れ、冷暖房のエネルギーを節約することによる地球温暖化ガスの排出削減にも有効である。 |
苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、酸化プロピレン、メチレンクロライド |
主要製品 |
用途 |
ソーダ灰 |
ガラス原料、グラスウール原料、石けん・洗剤原料、かん水、水処理助剤 他 |
塩化カルシウム |
凍結防止剤、防塵、除湿剤、廃液処理、食品添加物 |
苛性ソーダ |
製紙原料(パルプ)となる木材チップの溶解、アルミニウム原料のボーキサイト(鉱石)の溶解、調味料、石けん、廃水処理剤、中和剤 |
塩ビ |
パイプ、電線被覆、フィルムなどの原料 壁紙、床材、手袋などの原料 |
(同社提供)
<基本方針と施策>
顧客ニーズに沿った、高品質及びコスト競争力に優れた基礎化学素材及びサービスを提供することにより、顧客の事業発展に貢献するとともに、中核事業として安定的かつ、継続的な収益向上に貢献する。
事業 |
主要施策 |
ソ-ダ・塩カル |
*国内単一メーカーとして、安定供給・品質を維持 *融雪向け粒状塩化カルシウムの増産 |
クロルアルカリ・塩ビ |
*苛性ソーダ・塩素の更なる原価低減を目指した自家発電と電解の競争力強化 *塩化ビニルモノマーの輸出拡大とプラントフル稼働の維持 *塩素誘導品(塩ビ、酸化プロピレン、クロロメタン他)の収益力強化 |
◎セメント
<概要・主要製品>
1938年、徳山製造所内の副産物の有効活用という観点でスタートした。徳山製造所南陽工場で製造するセメントやセメント系固化材など関連製品は、生コンクリートやコンクリート二次製品として、住宅・ビル・ライフラインを支える構造物、港・橋・道路など社会資本となり人々の暮らしを支えている。
社内だけでなく、社外からも廃プラスチックや家庭ゴミを燃やした後の灰など多くの廃棄物を受け入れ、セメントを製造する工程で原料や熱エネルギーとして利用しており、資源循環型社会の形成に貢献している。
事業 |
特長 |
主要製品 |
セメント |
徳山製造所南陽工場は、単一工場としては国内最大規模。 セメント事業は国内第4位で、東京・大阪・広島・高松・福岡を主な拠点として、地域に根ざした営業活動を展開している。また東京・大阪・広島・福岡の4地区にセメント試験室を設置。セメントおよびセメント系固化材の使用に際し、施工前の配合試験、施工後の管理試験を実施し、きめ細かいユーザーサポートを提供している。
またセメント系やモルタル系の各種建材製品をトクヤマエムテックが製造販売するほか、同社独自の漆喰をシート化する技術により、建築内装材「漆喰ルマージュ」や、古典的なフレスコ画の技法に漆喰による立体造形技術を組み合わせた最新フレスコ技法「Fresco Graph」などを展開し、セメント・建材分野で培った技術で新たな事業機会を追求している。 |
ポルトランドセメント、高炉セメント、セメント系固化材 |
資源 |
低含水・高含水汚泥設備や鋭角廃棄物処理施設など様々な再資源化設備で、廃プラスチック類、汚泥、ガラスくずを始め多様な廃棄物を受け入れている。 |
廃棄物処理 |
<基本方針と施策>
事業環境の変化に柔軟に対応し、最適な製造・販売・物流体制を整備・構築する。廃棄物処理収益の最大化、原価低減による競争力強化を図る。
事業 |
主要施策 |
セメント |
*生産効率及び原単位改善と廃棄物受入増を軸とした原価低減 *4号キルン(セメントの焼成に使う窯)を最大限活用した輸出の拡大による収益確保 *トクヤマエムテックによるインフラの補修・補強事業の拡充 |
資源 |
*原料系の最適化と可燃系廃棄物の活用促進及び燃料化プラント事業の最適化 |
2013年6月に買収したトクヤマニューカレドニアは、クリンカ(セメントの製造過程でできる塊状の物質で、粉砕してセメントを作る。)の輸出先としてセメント部門の収益改善に寄与している。
中長期では人口減に伴う国内需要の縮小が不可避であるため、安定した輸出先の確保による販売数量の増大、セメント工場の稼働率向上、廃棄物受け入れ拡大を目指し、トクヤマニューカレドニアに続く海外粉砕工場の展開を検討・推進していく。
(同社資料より)
◎電子材料
<概要・主要製品>
半導体に使われる高純度多結晶シリコンは、世界有数のシェアを有する。またその副生物から製造する乾式シリカはシリコーンゴムやCMPスラリー、複写機トナーなどに使用されている。放熱性に優れた窒化アルミニウムは、半導体製造装置のほか、インバーター、LEDなどの省エネルギー分野で、電子工業用高純度薬品は半導体、液晶パネルの製造などで使用されている。
事業 |
特長 |
主要製品 |
シリコン |
徳山製造所において年産8,500トンの多結晶シリコン生産能力を有し、国内一位。 |
半導体用多結晶シリコン |
シリカ |
独自の技術により開発されたレオロシールは高度に精製した原料ガスを酸水素炎中で高温加水分解させ、反応から包装まで全てクローズドシステムで一貫した管理のもとに製造されている。そのため、高純度、高分散性、高比表面積という特徴を有しており、多くの用途で使われている。日本国内だけでなく中国にも生産拠点を持ち、事業の最適化を図りながら、安定・継続的な供給に努め、世界市場を視野に入れて更なる事業拡大を目指している。 |
乾式シリカ |
放熱材 |
窒化アルミニウム粉末から、顆粒、粉末を焼結したセラミックスなど、用途にあわせた製品を展開している。独自開発の製法・還元窒化法は、不純物の極めて少ない良質な製品を生み出し、その製造能力は世界最大の年産840トンを誇る。窒化アルミニウム粉末では、世界シェア70%以上を獲得している。 |
窒化アルミニウム |
ICケミカル |
アジアの成長市場に向け、より高純度な製品を供給すべく、製造・販売拠点を各地に展開している。 |
電子工業用高純度薬品、フォトレジスト用現像液 |
主要製品 |
用途 |
多結晶シリコン |
半導体ウエハ |
乾式シリカ |
CMPスラリー、各種エラストマー、各種シーラント、液状樹脂製品、粉体製品 |
窒化アルミニウム |
電子部品の放熱材料 |
電子工業用高純度薬品 |
ウエハ、電子デバイス等の精密洗浄及び乾燥 |
(多結晶シリコン)
|
(窒化アルミニウムセラミックス)
|
(同社提供)
<基本方針と施策>
顧客から選ばれ続ける製品の供給と開発品の提案により事業と収益の拡大を図る。
事業 |
主要施策 |
多結晶シリコン |
*最先端品を始めとし顧客要求品質を的確に把握し、品質世界一・コスト極小化を実現 |
乾式シリカ |
*CMP、シリコーン向けに続く高機能品の拡充 *中国子会社徳山化工におけるコストダウンと高付加価値化 |
ICケミカル |
*先端半導体向け製品の品質追求、拡販 |
放熱材 |
*窒化アルミ粉末生産能力増強 *窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムフィラーの事業化 |
同社が製造している世界シェア30%の多結晶シリコンや放熱材用窒化アルミニウムなど半導体製造プロセスに不可欠な様々な半導体関連製品は、同社が長年かけて開発・蓄積してきた様々な特有の要素技術の組み合わせから創出された先端材料であり、どれも世界的に極めて高い競争力を有している。
(同社資料より)
半導体製造分野では半導体の大容量化・小型化に伴う 半導体の微細化・3次元化が急速に進んでいる。
同社の「半導体用高純度多結晶シリコン」、「電子工業用高純度薬品」は、歩留まり悪化を引き起こす不純物、残渣物を極限まで低減させた超高純度材料であり、微細化・3次元化を進める半導体メーカーから高い評価を得ている。
また、半導体の安定した動作に不可欠な放熱材料においても同社製品の評価は高い。
近年、車載用、産業機器、電鉄向けパワーデバイスの高出力化・小型化に伴い放熱材料の需要が急増しているが、同社では、窒化アルミニウム粉末、窒化アルミニウムセラミックス、窒化ケイ素、窒化ホウ素など、独自の還元窒化法などにより開発された不純物の極めて少ない高熱伝導率の放熱材料を供給している。
上の図の様に、原料から最終製品に至る半導体製造プロセスにおいて、「点」ではなく、多様な先端製品を「面」で供給することで、より大きな事業機会を創出し、需要を取り込んでいく考えだ。
◎ライフサイエンス
<概要・主要製品>
トクヤマ本体が手掛けるファインケミカル事業とNF事業および、グループ会社が開発・製造・販売する歯科材料、臨床検査システム等から成る。
ファインケミカル事業では、同社の強みである有機合成技術から生まれた、メガネ関連材料やジェネリック医薬品原薬・中間体を中心に事業展開をしており、NF事業では、水は通さず空気や湿気は通すという微多孔質フィルムを製造販売している。
海外グループ会社としては、中国はじめ新興国で急速に需要が伸びている紙おむつ用の通気性フィルムの製造販売を担っている上海徳山塑料などがある。
事業 |
主要製品 |
ファインケミカル |
医薬品原薬・中間体(アミノ基保護材、縮合剤)、プラスチックレンズ関連材料(フォトクロミック材料、ハードコート剤) |
NF |
微多孔質フィルム |
(株)トクヤマデンタル |
歯科医療器材の製造・輸出入・販売 |
(株)エイアンドティー |
臨床検査試薬・機器システムの開発・製造・販売 |
*エイアンドティーは2021年2月1日付で完全子会社。
(医薬品)
(同社提供)
<基本方針と施策>
顧客起点の開発・製造・販売体制の確立・強化により、国内外の市場で優位なポジションを獲得。事業の拡大を図り、人々の生活・健康(QOL)の改善に貢献する。
事業 |
主要施策 |
ファインケミカル |
メガネ用調光材料のシェア拡大、用途開拓 |
NF |
中国事業の立て直し |
歯科器材事業 |
審美充填材料を中心とした海外展開の加速 |
医療診断システム事業 |
江刺工場増設による生産体制強化 |
同セグメントでは、フォトクロミック材料(調光材料)の成長に力を入れている。
フォトクロミック材料とは、太陽光(紫外線)を照射すると無色からグレーやブラウンなどに発色し、照射を止めると再び無色の状態に戻る樹脂材料。
近年では、スポーツウェア・ドライブウェア用途に加え、有害紫外線への意識の高まり、高齢化にともなう緑内障など眼の疾患増加を背景に、フォトクロミック材料の使用が増大している。
同社製品は、「赤・青・黄の3原色発色による豊富なカラーバリエーション」、「速い発色および退色速度」、「夏場の高温下でも十分な発色性能」、「優れた耐久性」、「紫外線を99%以上カット」といった特長を持っている。
こうした特長を訴求し、製品仕様に関する顧客ニーズへの対応など細やかな顧客対応や製品ラインナップの拡充によりシェア拡大を図るとともに、視認性向上、紫外線遮蔽などの特長を活かした新規用途の開拓も進める。
|
|
(同社資料より)
◎環境事業
<概要・主要製品>
将来の一つの柱とするために、グループ内に点在していた環境関連事業を集約し、新たな事業展開を目指すセグメントとして2022年3月期より新設したセグメント。
廃石膏ボードリサイクル、イオン交換膜、樹脂サッシ、CO2排出削減の技術開発及び事業化などに取り組んでいる。
事業 |
主要製品 |
(株)トクヤマ・チヨダジプサム |
廃石膏ボードのリサイクル事業 |
(株)アストム |
脱塩・濃縮用イオン交換膜及び電気透析装置の製造販売 |
(株)エクセルシャノン |
樹脂サッシ及び関連製品、住宅用建築資材の製造販売 |
◎その他
報告セグメントである「化成品」、「セメント」、「電子材料」、「ライフサイエンス」、「環境事業」に含まれない事業セグメントで、海外販売会社、運送業、不動産業などを含む。
【1-4 研究開発】
「化学技術で暮らしに役立つ価値を創造する」という研究開発の理念に基づき、①顧客起点をベースに事業にコミットした研究開発の推進、②特有技術の深耕と新技術との融合によるオンリーワン、ナンバーワン技術の創出、③技術を基軸としたマーケットインによる独自製品の創出、の4つを目指して研究開発に取り組んでいる。
高齢化社会の到来、環境重視、ICT技術の飛躍的発展・普及などを見据え、化学メーカーとしてこれまでに培ってきた無機や有機の材料合成、高純度化、結晶・析出、粉体制御、焼結などの特有技術をベースにしつつ、大学等とのオープンイノベーションにも積極的に取り組んで更に新たな技術を融合し、先端材料で世界トップとなる研究開発を目指している。
研究開発拠点として「つくば研究所」(茨城県つくば市)、「徳山研究所」(山口県周南市)を持ち、東西2拠点体制を敷いている。
「つくば研究所」では、中長期的な視点に立った先端技術開発、基盤技術としての分析解析技術開発、複合材料を特徴とする歯科材料分野、高付加価値製品をターゲットとした有機ファインケミカル分野の研究開発を行っている。
徳山製造所内に立地する「徳山研究所」は、徳山地区の研究・開発の拠点。
徳山地区の開発グループのみならず様々な研究・開発チームが集まることによって得られるシナジー効果や、ものづくりの現場である製造部にも近く情報交換が容易といったメリットも大きい。
【1-5 同業他社】
コード |
社名 |
売上高 |
増収率 |
営業利益 |
増益率 |
営業利益率 |
ROE |
ROA |
時価総額 |
PER |
PBR |
4005 |
住友化学 |
3,120,000 |
+12.8 |
200,000 |
-14.8 |
6.4% |
14.5 |
6.1 |
901,006 |
7.1 |
0.7 |
4042 |
東ソー |
– |
– |
– |
– |
– |
16.3 |
15.5 |
594,247 |
– |
0.8 |
4043 |
トクヤマ |
360,000 |
+22.5 |
24,500 |
-0.2 |
6.8% |
13.2 |
6.3 |
125,145 |
7.1 |
0.6 |
4063 |
信越化学 |
– |
– |
– |
– |
– |
16.3 |
18.7 |
7,674,928 |
– |
2.3 |
4118 |
カネカ |
740,000 |
+7.0 |
48,000 |
+10.2 |
6.5% |
7.1 |
5.9 |
227,460 |
8.0 |
0.6 |
4183 |
三井化学 |
1,920,000 |
+19.1 |
140,000 |
-13.5 |
7.3% |
16.7 |
8.1 |
661,030 |
6.2 |
0.9 |
4185 |
JSR |
410,000 |
+20.2 |
57,500 |
+31.4 |
14.0% |
10.5 |
6.1 |
940,684 |
19.5 |
2.4 |
4205 |
日本ゼオン |
400,000 |
+10.6 |
45,500 |
+2.4 |
11.4% |
10.9 |
10.6 |
332,142 |
8.6 |
0.9 |
5711 |
三菱マテリアル |
1,590,000 |
-12.2 |
36,000 |
-31.7 |
2.3% |
8.0 |
3.7 |
270,473 |
13.4 |
0.5 |
*売上高、営業利益は今期予想、単位は百万円。ROE、ROAは前期実績、単位は%。時価総額、PER(予)・PBR(実)は6月6日終値ベース。単位は百万円、倍。東ソー、信越化学は現時点では今期予想非開示。開示が可能となった時点で速やかに開示する。
トクヤマは同業中、ROEは比較的高水準な一方、PER、PBRとも低水準にとどまっている。一層の成長戦略の訴求が求められる。
2.2022年3月期決算概要
(1)連結業績概要
|
21/3期 |
構成比 |
22/3期 |
構成比 |
前期比 |
予想比 |
売上高 |
302,407 |
100.0% |
293,830 |
100.0% |
-2.8% |
+0.3% |
売上総利益 |
95,152 |
31.5% |
95,412 |
32.5% |
+0.3% |
– |
販管費 |
64,230 |
21.2% |
70,872 |
24.1% |
+10.3% |
– |
営業利益 |
30,921 |
10.2% |
24,539 |
8.4% |
-20.6% |
+11.5% |
経常利益 |
30,796 |
10.2% |
25,855 |
8.8% |
-16.0% |
+17.5% |
当期純利益 |
24,534 |
8.1% |
28,000 |
9.5% |
+14.1% |
+27.3% |
*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。22/3期より収益認識会計基準等を適用。
減収減益
売上高は前期比2.8%減の2,938億円。石油化学製品の販売価格上昇したことに加え、半導体関連製品・ヘルスケア関連製品などが堅調に推移したが、収益認識会計基準等を適用した結果減収。同基準適用による減収額は465億円で、適用なしでは12%の増収。
営業利益は同20.6%減の245億円。塩化ビニルモノマーの海外市況上昇等はあったものの、原燃料コストおよび物流費等の増加により減益。
当期純利益は同14.1%増の280億円。減損損失が大幅に減少したほか、前期特別損失に計上した解体撤去引当金繰入が今期は計上がなかった。
(2)セグメント別動向
|
21/3期 |
構成比 |
22/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
売上高 |
|
|
|
|
|
化成品 |
81,385 |
26.9% |
101,482 |
34.5% |
+24.7% |
セメント |
89,593 |
29.6% |
50,366 |
17.1% |
-43.8% |
電子材料 |
61,853 |
20.5% |
74,996 |
25.5% |
+21.2% |
ライフサイエンス |
28,662 |
9.5% |
33,564 |
11.4% |
+17.1% |
環境事業 |
9,581 |
3.2% |
10,305 |
3.5% |
+7.6% |
その他 |
62,383 |
20.6% |
36,302 |
12.4% |
-41.8% |
調整 |
-31,053 |
– |
-13,188 |
– |
– |
合計 |
302,407 |
100.0% |
293,830 |
100.0% |
-2.8% |
営業利益 |
|
|
|
|
|
化成品 |
13,585 |
16.7% |
14,225 |
14.0% |
+4.7% |
セメント |
4,454 |
5.0% |
-1,912 |
– |
– |
電子材料 |
7,104 |
11.5% |
7,232 |
9.6% |
+1.8% |
ライフサイエンス |
3,498 |
12.2% |
6,036 |
18.0% |
+72.6% |
環境事業 |
-368 |
– |
-468 |
– |
– |
その他 |
5,677 |
9.1% |
3,851 |
10.6% |
-32.2% |
調整 |
-3,030 |
– |
-4,425 |
– |
– |
合計 |
30,921 |
10.2% |
24,539 |
8.4% |
-20.6% |
*単位:億円。22年3月期より事業セグメントの区分方法を、「化成品」「セメント」「電子材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントに変更した。21年3月期は変更を反映している。
*化成品
増収増益。
苛性ソーダ |
原燃料価格の上昇で製造コストが増加し減益 |
塩化ビニルモノマー |
輸出価格が上昇し増益 |
塩化ビニル樹脂 |
国内の販売価格修正が進み増益 |
ソーダ灰/塩化カルシウム |
原燃料価格の上昇で製造コストが増加し減益 |
*セメント
減収、営業損失。
セメント |
出荷は前期並みだったものの、原料価格の上昇で製造コストが増加したことにより、損益が悪化 |
*電子材料
増収増益。
半導体向け多結晶シリコン |
5Gの普及やデータセンターの増設を背景に販売が堅調に推移。原料価格の上昇はあったが増益 |
ICケミカル |
海外向けを中心として販売数量が増加したものの、原料価格の上昇等により減益 |
乾式シリカ |
原料価格は上昇も、半導体用研磨材用途を中心に販売数量が増加し増益 |
放熱材 |
販売数量は堅調に推移したものの、先進技術事業化センターの研究開発費の増加等により前期並み |
*ライフサイエンス
増収増益
医薬品原薬・中間体 |
ジェネリック医薬品向けの販売数量が堅調に推移し増益 |
プラスチックレンズ関連材料 |
メガネレンズ用フォトクロミック材料の海外向けを中心とした出荷が増 加し増益 |
歯科器材 |
海外向けを中心に出荷が増加し増益 |
*環境事業
減収、営業損失。
環境事業を将来の一つの柱とするために、グループ内に点在していた環境関連事業を集約し、新たな事業展開を目指すセグメントとして22年3月期から新設。
(3)財務状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS
|
21年3月末 |
22年3月末 |
増減 |
|
21年3月末 |
22年3月末 |
増減 |
流動資産 |
199,760 |
223,950 |
+24,190 |
流動負債 |
83,308 |
102,337 |
+19,029 |
現預金 |
83,681 |
83,116 |
-565 |
仕入債務 |
39,547 |
49,055 |
+9,508 |
売上債権 |
70,901 |
78,201 |
+7,300 |
固定負債 |
98,224 |
97,954 |
-270 |
たな卸資産 |
39,599 |
55,723 |
+16,124 |
負債合計 |
181,533 |
200,292 |
+18,759 |
固定資産 |
187,034 |
209,259 |
+22,225 |
純資産 |
205,261 |
232,917 |
+27,656 |
有形固定資産 |
124,025 |
139,602 |
+15,577 |
株主資本 |
190,438 |
213,573 |
+23,135 |
無形固定資産 |
1,882 |
2,682 |
+800 |
利益剰余金 |
157,332 |
180,534 |
+23,202 |
投資その他の資産 |
61,126 |
66,974 |
+5,848 |
負債純資産合計 |
386,794 |
433,210 |
+46,416 |
資産合計 |
386,794 |
433,210 |
+46,416 |
有利子負債残高 |
98,436 |
109,216 |
+10,780 |
*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。
たな卸資産、有形固定資産の増加などで、資産合計は前期末比464億円増加し4,332億円となった。
仕入債務及び有利子負債の増加などで、負債合計は同187億円増加の2,002億円。
利益剰余金の増加で、純資産は同276億円増加の2,329億円。
この結果、自己資本比率は前期末から0.5ポイント上昇し51.8%となった。
DEレシオは前期末と変わらず0.5倍。
◎キャッシュ・フロー
|
21/3期 |
22/3期 |
増減 |
営業CF |
43,314 |
25,986 |
-17,328 |
投資CF |
-19,276 |
-33,797 |
-14,521 |
フリーCF |
24,038 |
-7,811 |
-31,849 |
財務CF |
-22,530 |
5,118 |
+27,648 |
現金同等物残高 |
83,050 |
82,496 |
-554 |
*単位:百万円。
営業CFプラス幅は縮小。フリーCFはマイナスに転じた。キャッシュポジションは低下した。
3.2023年3月期業績見通し
(1)通期業績予想
|
22/3期 |
構成比 |
23/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
売上高 |
293,830 |
100.0% |
360,000 |
100.0% |
+22.5% |
営業利益 |
24,539 |
8.4% |
24,500 |
6.8% |
-0.2% |
経常利益 |
25,855 |
8.8% |
25,000 |
6.9% |
-3.3% |
当期純利益 |
28,000 |
9.5% |
17,500 |
4.9% |
-37.5% |
*単位: 百万円。予想は会社側発表。
増収減益
売上高は前期比22.5%増の3,600億円の予想。化成品やセメントなどの価格修正、および半導体関連製品などの拡販により増収を予想している。
営業利益は前期並みの245億円を予想。電子材料・化成品・セメントなど主要製品の価格改定が進むが、原燃料コスト増加、研究開発費・減価償却費の増加を予想している。
為替の前提は125円/USD(22/3期は112円/USD)、国産ナフサは上期88,000円/kl、下期68,000円/kl(56,800円/kl)。
配当は前期と同じく70.00円/株の予定。予想配当性向は28.8%。
(2)セグメント別動向
|
22/3期 |
構成比 |
23/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
売上高 |
|
|
|
|
|
化成品 |
101,482 |
34.5% |
125,500 |
34.9% |
+23.7% |
セメント |
50,366 |
17.1% |
63,000 |
17.5% |
+25.1% |
電子材料 |
74,996 |
25.5% |
93,500 |
26.0% |
+24.7% |
ライフサイエンス |
33,564 |
11.4% |
35,000 |
9.7% |
+4.3% |
環境事業 |
10,305 |
3.5% |
15,000 |
4.2% |
+45.6% |
その他 |
36,302 |
12.4% |
41,500 |
11.5% |
+14.3% |
調整 |
-13,188 |
– |
-13,500 |
– |
+2.4% |
合計 |
293,830 |
100.0% |
360,000 |
100.0% |
+22.5% |
営業利益 |
|
|
|
|
|
化成品 |
14,225 |
14.0% |
16,000 |
12.7% |
+12.5% |
セメント |
-1,912 |
– |
-1,500 |
– |
– |
電子材料 |
7,232 |
9.6% |
7,000 |
7.5% |
-3.2% |
ライフサイエンス |
6,036 |
18.0% |
6,000 |
17.1% |
-0.6% |
環境事業 |
-468 |
– |
0 |
0.0% |
– |
その他 |
3,851 |
10.6% |
2,500 |
6.0% |
-35.1% |
調整 |
-4,425 |
– |
-5,500 |
– |
– |
合計 |
24,539 |
8.4% |
24,500 |
6.8% |
-0.2% |
*単位:億円
各セグメントについて以下のような状況を見込んでいる。
*化成品
増収増益
原油、石炭等の市況価格上昇により、石油化学製品などを中心として原燃料コストが増加傾向にあり、収益面で変動リスクの大きい状況が続く。販売価格修正、原単位や固定費の削減などのコスト競争力強化を推進し、収益確保に努める。
*セメント
増収減益
国内需要は、都市部の再開発工事の本格化等により緩やかな回復が見込まれるものの、公共投資の減少や工期の長期化などにより、前期並みにとどまると予想。一方で原料価格の動向等、事業を取り巻く環境は不透明な状況が続くと想定している。
引き続き販売価格の修正を進めるとともに、製造コストの徹底した削減、各営業拠点における施策の実行等により、収益改善に努める
*電子材料
増収減益
半導体関連製品の更なる拡販に向けた積極的な投資を行う。半導体市場は、5Gの普及やデータセンターの増設を背景に堅調な推移が予想され、微細化の進展に伴い、高品質化と安定供給に対する顧客からの要求がさらに高まっている。こうした環境下、半導体向けの多結晶シリコンは、品質を更に追求し、他社との差別化を図る。ICケミカルは、台湾及び韓国の製造・販売拠点を整備し、需要拡大に対応したグローバルでの供給体制の確立に注力する。放熱材は、既存製品の拡販及び新規品の製品化を進める。
*ライフサイエンス
増収減益
プラスチックレンズ関連材料、歯科器材等の出荷数量については海外向けを中心に堅調な推移を見込む。引き続き顧客ニーズや市場の変化に対応した新製品開発と販売活動に注力し、収益の拡大を目指す。医療診断システムについては、グループ全体でリソースの活用・協業を進め、診断試薬開発をより一層強化し、事業を拡大する。
*環境事業
増収赤字縮小
環境事業を将来の一つの柱とするために、イオン交換膜、樹脂サッシ、及び廃石膏ボードリサイクル等の既存事業の拡大に加え、CO2排出削減の技術開発及び事業化を加速し、事業ポートフォリオ転換のシンボルとして持続可能な社会への貢献と事業の成長を実現する。
(3)設備投資・減価償却
22/3期は設備投資、研究開発費とも期初計画に及ばなかった。23/3期は成長事業、研究開発中心に積極的な投資を実施する。主な投資案件は高純度IPA韓国JV工場建設、研究基盤拡充、Si・シリカ・シラン関連投資、電解技術関連投資など。
投資額増加により減価償却費も前期を上回る。
4.中期経営計画2025の進捗
「中期経営計画2025」では、「事業ポートフォリオの転換」「地球温暖化防止への貢献」「CSR経営の推進」の3つを重点課題としている。
それぞれの進捗状況は以下のとおりである。
(1)事業ポートフォリオの転換
成長事業へのリソース投入と国際展開加速を図った。
◎電子
ICケミカルでは、台湾FTAC社は今期第1四半期に出荷を開始する。韓国でJV契約を締結し、2024年度に稼働を予定している。
シリコンでは高品質化対応投資、シリカは増強投資、放熱材では窒化ケイ素の出荷を今期中に開始する予定。
◎健康
歯科器材は、コンポジットレジンの世界展開が進んでいる。米国シェア5%を達成し、海外売上高比率70%を達成した。2025年度には対2020年度比で120%成長を目指している。そのために鹿島工場の増設を完了し、更なる拡張を計画している。
プラスチックレンズ関連材料も、レンズメーカーとの連携強化により世界シェアは25%を超えた。
原薬・中間体は特有技術により創薬への展開を目指している。
診断は、試薬開発による診断項目の拡大を目指している。
◎環境
廃石膏ボードは北海道室蘭に第3拠点を設立し、2023年春に稼働を開始する予定。
太陽光パネルリサイクルは、技術開発を更に進めている。
イオン交換膜の設備を増強した。
廃プラスチックの受け入れを増量した。
(2)地球温暖化防止への貢献
2022年度の排出量は前期並みで、2019年度比では26万トン減少と見込んでいる。
バイオマス・アンモニア関連の投資を進め、非化石燃料使用の増加により、2023年度以降から本格的にCO2排出量を削減し、2030年度に2019年度(総排出量360万トン)比で180万トン、50%削減する計画だ。内訳は、バイオマスで約30%、アンモニアで約20%。投資額はそれぞれ110億円、150億円と想定している。2050年度のカーボンニュートラルを目指す。
将来想定されるカーボンプライシングとCO2削減投資の経済合理性で柔軟に対応していく。
セメントにおけるCO2回収の実証実験を開始した。
周南コンビナートの脱炭素推進協議会に参画したほか、木質バイオマス材利活用連携協定を締結した。
発電所・石炭代替エネルギー利用計画を策定した。
(3)CSR経営の推進
22年3月、CSR推進会議の下に、専門委員会としてサステナビリティ委員会を新設した。
脱炭素社会への対応リスク「地球温暖化防止への貢献」と、サプライチェーン上の倫理リスク「CSR調達の推進」に対応する。
5.横田社長に聞く
横田社長に中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージ伺った。
Q:「エネルギー大量消費型の御社にとって『環境との調和』を実現することが、持続的成長には不可欠との思いでスタートした今回の中期経営計画ですが、1年を経て取り巻く環境や御社内の意識に変化は感じますか?」
世界的なCO2削減、カーボンニュートラルに向けた動きの中で、スタート時点では日本政府の取り組みや意識はやや出遅れていた感がありましたが、ここに来て急速にキャッチアップしてきました。
私も、経済産業省やエネルギー庁の方々と頻繁に情報交換をしているのですが、日本企業の競争力を低下させることなく、向上させる中でカーボンニュートラルを達成するために日本として取るべき戦略が明確になってきたと感じています。
個社単独の取り組みには限界があるので、我々のような化学業界であればコンビナート全体でエネルギー構造の転換を進めるといった産業政策も具体的に検討が始まったというのは大きな変化です。
当社に関して言えば、石炭火力発電の利用をベースとしたビジネスモデルの上に成り立っているため、事業の在り方そのものの大転換が必至であり、10年程度は大丈夫かもしれないが、もう少し長いスパンで見ると、持続性に大きな不安が生じるかもしれない、そうした非常に強い危機感を持って今回の中期経営計画を策定しました。
当社の状況に関する認識は社内でもかなり浸透してきましたが、危機意識だけで出口の見えない議論となってしまうのも避けなくてはなりませんので、2030年度に2019年度比でCO2排出量を半減し、削減量50%のうち、30%をバイオマスで、20%をアンモニアでというある程度具体的な道筋を明らかにし、周南コンビナートについては、新燃料としてアンモニアを導入し、水素を燃料とした発電に切り替えていくという素案を社内各部署に示すことができました。
コンビナート全体でのエネルギー構造の転換実現には法整備も含めて様々な課題があるのですが、産業界の要望を実現できるよう、政府と緊密に協議を重ねてまいります。
当社内では、エネルギー転換を進めるにあたり、各事業の採算をより詳細に詰めていき、今後の事業の在り方を具体的に検討していきます。
このように、1年前と比べると、燃料転換の道が少しずつではありますが、見えてきたと感じています。
Q;「その他、環境に関する取り組みの進捗についてお聞かせください」
バイオマスに関しては、当社発電所における使用に加え、一定の競争力を維持していくためには他社に外販するくらいの経済規模で自社開発していかなければなりません。いままで無価値と思われていたような素材をバイオマスとして活用するために、当社の化学技術と外部パートナーのエンジニアリング技術を組み合わせて、適切なバイオマス材料を発掘、実用化していきたいと考えています。
2021年1月には周南市木質バイオマス材利活用推進協議会が発足し、当社も参画しました。
周南市は豊富な森林資源と木質バイオマス材を燃料とする発電設備を併せ持つっています。この特性を活かし、バイオマス材利活用の方向性や推進に向けた検討を企業・大学・自治体と共同で進めてまいります。
CO2回収については、22年3月に三菱重工エンジニアリング株式会社との間で、セメント製造時に排出されるCO2の回収技術の検証のため、共同実証試験の実施について合意しました。
セメントの製造では、石灰石を原料として使用することから、工業プロセスとしてCO2の排出が避けられず、当社においても原料由来の排出量は、年間約180万トン(GHG排出量として)に上ります。今回の共同実証試験は、2022年6月から9か月間の予定で、徳山製造所南陽工場のセメント製造部において、三菱重工エンジニアリング独自のCO2回収装置をセメントプラントに設置し、排ガスからCO2の回収を行います。長期連続運転の信頼性評価を行うとともに回収したCO2ガス内の不純物などのデータを分析し、セメント工場における最適なCO2回収技術の適用性を検証します。
廃石膏ボードリサイクルに関しては、北海道室蘭に第3の受入れ拠点を設置することができました。
石膏というのは石炭や天然ガスを発電所で燃焼させて発生する硫黄酸化物を中和する過程でできるもので、今後化石燃料で発電をしないということは石膏の生産量は確実に減少に向かいます。
一方で建築物の内装などに使われる「石膏ボード」」は、たとえば住宅を解体した際には廃棄物として最終処分場に持ち込むしかないのですが、現在最終処分場の受け入れ余力の不足が問題となっており、自治体が受け入れを拒否するケースも出てきています。そうした中、第3拠点が設置できたことは事業の着実な進捗であるとともに、自治体からも感謝されており、大変うれしいことです。
天然の石膏価格は高価なので、こうした流れから建築物に不可欠な「石膏ボード」をリサイクルして使用するという動きは世界的に高まると考えられますので、日本以外での需要取り込みも視野に入れていきたいと考えています。
太陽光発電モジュールについては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金を基に北海道で実証実験を行ってきましたが、前期下期に一旦目標をクリアできたので、予算が延長となり次の目標実現のための実験を行っています。
事業として成立し、実際に再利用できるリサイクルシステムとしての確立に向けて引き続き取り組んでいきます。
Q:「環境以外で中期経営計画について注目しておくべき進捗についてコメントいただけますか?」
半導体の微細化を支える高純度材料分野や放熱材料分野でトップシェアを獲得し、国際展開を加速することを目指す電子材料事業では、マーケティング能力の強化が課題です。
この分野では最先端で事業を展開しているお客様と材料を始めとした様々な技術のすり合わせを行うことができるかがカギなのですが、お客様から具体的かつハイレベルなお話もいただけるようになってきました。着実に進化していると考えています。
ライフサイエンス事業では特有技術で差別化可能な領域(眼・歯・診断)でのニッチトップ獲得を目指しています。
世界シェア25%を目標としていたプラスチックレンズ関連材料は、ここ1-2年の伸長が目覚ましく、想定よりも早くほぼ目標を達成しました。こちらも、お客様と共同で技術開発を進めることができた、マーケティング機能が強化されたことが大きな要因です。
Q:「それでは最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします」
「電子」「健康」「環境」の3分野を注力事業領域と明確化し事業を推進し、2025年度 には成長事業の連結売上高比率50%以上は通過点とし、更なる高みを目指す中期経営計画は着実に進捗しています。
「電子」では、台湾、韓国で投資も行ってきましたので、今後はその成果を回収していきます。
「健康」では、先ほど申し上げたように、目標通りのシェアを実現させることができており、さらなる成長を追求します。
「環境」でも、エネルギー転換の道筋が見えつつあり、リスクの軽減と事業機会創出に注力し、2030年のCO2排出50%削減、2050年のカーボンニュートラルを見据えて投資、研究開発、事業化に取り組んでいきます。
前中期経営計画で掲げていた組織風土改革にも引き続き注力し、優秀な人材に活躍の場を与えることで、活力があり持続性の高い企業への変革を目指してまいります。
目標達成に向け全社一丸となって邁進して参りますので、これからも是非ご支援いただきますようお願い申し上げます。
6.今後の注目点
石炭火力発電に依存したエネルギー多消費型事業が収益を牽引してきた同社にとって、事業構造の転換はそう容易ではないであろうが、長年蓄積してきた化学技術を活かして、環境関連製品の開発、リサイクル事業の拡大、独自のバイオマスの発掘、など、「環境」分野における事業機会の創出に取り組んでいる。大きな成果はこれからであろうが、着実に歩を進めているようだ。一方、「電子」「健康」はマーケティング能力の強化を通じて結果も出始めている。
引き続き「中期経営計画2025」の進捗を注目していきたい。
<参考1:中期経営計画2025の進捗>
2022年3月期から2026年3月期までの5年間の「中期経営計画2025」を策定した。
【4-1 策定の背景】
前中期経営計画「再生の礎」では、「先端材料世界トップ」「伝統事業日本トップ」を掲げ、コスト競争力のある事業構造の実現に向け取り組んだ。
その結果、不採算事業からの撤退、半導体関連製品や歯科器材等の成長事業の販売増加、有利子負債の削減など、一定の成果を上げることができたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響、先行投資の実施による固定費増加等により、売上高、営業利益、総資産利益率(ROA)、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は計画未達となった。
(前中計の振り返り)
|
16年3月期 |
21年3月期目標値 |
21年3月期実績 |
進捗評価 |
売上高 |
3,071億円 |
3,350億円 |
3,024億円 |
新型コロナ影響および次期中計に向けた先行投資の実施による固定費増加等により目標未達 |
営業利益 |
230億円 |
360億円 |
309億円 |
|
ROA |
5.7% |
10% |
8.0% |
不採算事業からの撤退と、半導体関連製品や歯科器材等の成長事業の販売増加により、売上高営業利益率は目標達成 |
売上高営業利益率 |
7.5% |
10% |
10.2% |
|
総資産回転率 |
0.77回転 |
1.0回転 |
0.79回転 |
|
財務指標 |
|
|||
CCC |
69日 |
55日 |
|
在庫の削減が進まず目標未達 |
D/Eレシオ |
4.7倍 |
1倍 |
0.50倍 |
利益の積み上げと有利子負債削減により達成 |
同社を取り巻く事業環境は、「産業構造変化の加速」「デジタル革命の急進」「環境意識の高まり」「国内需要の縮小」「健康志向の高まり」「環境意識の高まりと規制強化」など今後も大きな変化が予想される。
そうした中、今後も持続的に収益力を向上させ、社会的課題を解決していくには、徳山製造所の統合された高効率な生産プロセスを競争力の源泉とし、石炭火力発電に依存したエネルギー多消費型事業が収益を牽引してきた事業構造のまま変化に対応するのではなく、これまでの延長線上にない事業の構築・成長、収益力・競争力の確保が必要と考え、「中期経営計画2025」を策定した。
【4-2 中期経営計画2025概要】
(1)目指す姿
スローガン「もっと未来の人のために」を掲げ、新たにMission、Vision、Valuesを定めた。
Mission 経営理念
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存在意義 |
化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する |
Vision 経営方針 |
ありたい姿 |
*マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業 *独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業 *社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業 *世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業 |
Values 行動指針 |
価値観 |
*顧客満足が利益の源泉 *目線はより広くより高く *前任を超える人材たれ *誠実、根気、遊び心。そして勇気 |
前述の事業環境の変化を踏まえ、「電子」「健康」「環境」の3分野を、自社が貢献できる注力事業領域と明確化し事業を推進する。
また、CO2排出量削減にも積極的に取り組む。
エネルギー多消費型事業(化成品・セメント)の比率を下げ、省エネルギー型事業(電子・健康・環境)の比率を高め、2050年度カーボンニュートラルを実現する。
(2)数値目標
最終年度2026年3月期の数値目標及び達成に向けたポイントは以下の通り。
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2021年3月期 (実績) |
2026年3月期 (計画) |
CAGR |
達成に向けたポイント |
売上高:現行基準 |
3,024億円 |
3,700億円 |
4.7% |
ポートフォリオ転換も成長維持 |
売上高:収益認識基準 |
2,550億円 |
3,200億円 |
4.1% |
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営業利益 |
309億円 |
400億円 |
5.3% |
高収益事業の強化、拡大 |
成長事業の売上高成長率 |
– |
CAGR10%以上 |
– |
研究開発強化・国際展開加速 |
ROE |
13.2% |
10%以上 |
– |
株主資本効率と財務基盤の両立 |
*CAGRはインベストメントブリッジが計算。
(3)重点課題
「事業ポートフォリオの転換」「地球温暖化防止への貢献」「CSR経営の推進」の3つを重点課題としている。
①事業ポートフォリオの転換
成長事業を「電子」「健康」「環境」に再定義し、組織化(事業領域「電子」「健康」「環境」と事業部門を一致)し戦略推進スピードを加速する。成長事業の連結売上高比率50%以上を目指す。
化成品事業・セメント事業は効率化を進め、持続的なキャッシュを創出する。
技術面においては社外との連携強化に技術よる技術の差別化を促進し、付加価値を追求する。
また、DX推進などにより、全社規模で効率的なオペレーションを展開するほか、成長する海外市場における事業拡大を推進する。
◎目指す事業ポートフォリオ
(2025年度目標)
成長事業の連結売上高比率50%以上は通過点とし、更なる高みを目指す。
2030年度は「電子」「健康」「環境」の3事業で売上高構成比60%以上を目指す。
(同社資料より)
◎事業別戦略
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事業目標 |
重点施策 |
投資方針/国際展開 |
化成品 |
既存事業での安定的収益確保 |
*持続可能な環境に配慮した製造プロセスの革新 *電解槽のエネルギー効率を世界トップ水準に高め省エネによるCO2排出量の削減 *DX推進による製造プロセスとサプライチェーンの改善 |
*安定した事業の継続に必要な設備の維持更新 *環境課題に対応する省エネ・合理化 |
セメント |
エネルギー効率国内トップクラス |
*CO2排出量削減に向けた省エネ設備導入 *廃プラスチック燃焼量増加による石炭使用量減少 |
*安定した事業の継続に必要な設備の維持更新 *環境課題に対応する省エネ・合理化 *循環型社会に貢献する廃棄物処理の拡大 |
電子材料 |
半導体の微細化を支える高純度材料分野や放熱材料分野でトップシェアを獲得し、国際展開を加速 |
*海外市場へ積極展開 *新規用途展開・製品ラインナップ拡充 |
*ICケミカル 台湾JVの増設他グローバル拠点の拡充(アジア、北米)
*放熱材料 窒化ケイ素、窒化ホウ素の上市と海外拡販(アジア、北米、欧州)
*シリコン 高純度多結晶シリコンのマーケティング強化/シラン系製品の拡充とアジア展開(アジア)
*シリカ CASE(※)やパーソナルケア用途の拡大/有機シリコーン分野への参入 (アジア、北米) ※CASE Coating, Adhesive, Sealant, Elastomer |
ライフサイエンス |
特有技術で差別化可能な領域(眼・歯・診断)でのニッチトップ獲得 |
*ビオチンなどの健康・医薬向け製品ラインナップの拡充 *独自性を持つ二軸延伸微多孔質フィルムの新規用途展開と上海拠点拡充 *化粧品素材、サプリ等ヘルスケア製品の海外展開加速と新規分野開拓 *化学との融合による診断試薬の開発加速、新規アライアンス、検査対象領域の拡大 |
*ファインケミカル フォトクロミック材料で世界シェア25%を目指す(北米、欧州、アジア)/化粧品素材、サプリ、動物用関連製品などの海外展開加速(欧州、東南アジア)
*歯科器材 ブランド浸透、オムニクロマシリーズの海外販売拡充(北米、欧州・ロシア・CIS、新興国)
*診断 オープンな検体検査自動化システムをアライアンスを通じてOEM供給No.1を目指す(中国、韓国) |
環境事業 |
将来を担う新たな事業の柱として確立 |
*環境規制強化による水処理膜の需要拡大への対応 *廃石膏ボードや太陽光発電モジュール等の資源リサイクル事業の拡大 *開発した次世代エネルギー技術の事業化 |
(投資方針) *イオン交換膜:生産能力増強 *廃石膏ボードリサイクル:事業拠点の拡大 *太陽光発電モジュールのリサイクル:リサイクル技術の確立と事業化
(国際展開) 環境対応需要を取り込み、アジア及び欧州各国へ進出(中国、韓国、アジア、欧州) |
数値目標
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2021年3月期 |
2026年3月期 |
増減 |
売上高 |
|
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化成品 |
810 |
850 |
+4.9% |
セメント |
480 |
560 |
+16.7% |
電子材料 |
650 |
1,020 |
+56.9% |
ライフサイエンス |
310 |
460 |
+48.4% |
環境事業 |
80 |
180 |
+125.0% |
その他 |
440 |
380 |
-13.6% |
調整 |
-300 |
-250 |
– |
合計 |
2,550 |
3,200 |
+25.5% |
営業利益 |
|
|
|
化成品 |
135 |
135 |
0.0% |
セメント |
45 |
35 |
-22.2% |
電子材料 |
80 |
200 |
+150.0% |
ライフサイエンス |
30 |
75 |
+150.0% |
環境事業 |
-5 |
15 |
– |
その他 |
45 |
50 |
+11.1% |
調整 |
-30 |
-110 |
– |
合計 |
300 |
400 |
+33.3% |
*21年3月期は収益認識基準適用した21年2月時点(中計発表時)での予想値。
◎研究開発方針
前中計では、研究開発方針として顧客起点の研究開発、事業部門開発への経営資源集中、オープンイノベーションの強化を掲げていた。
結果としては、新規半導体薬液やアルカリ水電解、要素技術の棚卸と強みの再検証、開発テーマの軌道修正、パイプラインの増加といった成果もあったが、コーポレート開発希薄化起因の中長期開発テーマの設定不足、環境分野に関する技術開発の遅れといった課題も残った。
そこで中期経営計画2025では、価値創造型企業・ソリューション提供型企業への転換を果たすために、以下のような方針のもと研究開発を進める。
*コーポレート開発へ経営資源集中
・マーケティングを軸にした中長期開発テーマへの注力
・事業部門開発の未着手領域を攻める
*事業部門開発の強化
・顧客提案のバリエーションを増やす
・更なる開発スピードの向上
*オープンイノベーションの強化
高純度化技術、還元窒化、焼結、粉体制御、結晶・析出、電極・膜、ゾルゲル、光重合、分子設計といった同社の特有技術を活用して競争力のある製品開発を目指す。
◎DX推進
データとデジタル技術の利活用によりDXを推進する。
AI活用で、従来の不可能を可能にし、製造プロセスの改善や研究開発を加速させる。
以下3つのフェーズで変革を推進し、労働人口の減少、デジタル化推進、競争環境の変化といった変化を乗り越える。
〈Phase1〉企業存続への施策実行 |
効率化による人材余力の確保 製造プロセス管理の革新 CRMツール活用 |
〈Phase2〉変革への基盤整備 |
サプライチェーン管理レベル向上/ デジタル教育拡充/ AI活用 |
〈Phase3〉変革の推進 |
MI(※)による開発速度向上/ 顧客起点でのビジネスモデル創出 |
※MI:マテリアルズ・インフォマティクス。統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、材料開発を高効率化する取り組み
◎国際展開の加速
現在約20%の海外売上高比率を2030年度までに50%以上まで引き上げる。
◎設備投資計画
5年間で2,000億円の設備投資を計画している。
成長事業への重点投資、CO2排出量削減、省エネがキーワードである。
主な投資案件は、台塑徳山精密化学(IPA-SE)、窒化ケイ素生産設備、発電所:バイオマス混焼設備、徳山製造所:港湾インフラ設備など。
積極的な投資により事業ポートフォリオの転換を強力に推進する考えだ。
◎キャッシュ・フローの創出と配分
事業収益の増加、新規開発品によるキャッシュ創出、投資案件の精査、たな卸資産の圧縮により5年間で2,500億円の営業キャッシュ・フローを生み出す。
キャッシュの使途は、設備投資2,000億円、M&Aや新規事業開発など戦略的投資に最大300億円。
株主還元は配当性向20-30%を予定しており、タイミングを見て自己株式の取得も検討する。
②地球温暖化防止への貢献
次世代エネルギーの技術開発を加速、事業化し、2030年度にCO2総排出量を2019年度比30%(200万トン)削減し、2050年度にはカーボンニュートラルを実現する。
そのために自家発電では2030年度に50%削減を目指し、最終的にはCO2排出量ゼロを実現する。
またセメント・化成品においても、石灰石使用量の低減やCCU技術(※)・環境貢献製品の使用などオフセットの可能性を検討中である。
※CCU技術(Carbon dioxide Capture and Utilization):CO2を回収・利用する技術。従来の化石燃料由来の燃料や化学品等の製品を、CO2を原料として製造した製品へと置き換えることで低炭素化を図る。さらに、CO2を耐久性のある素材に変えればCO2を長期間固定でき、固定している期間はCO2ゼロ排出となる。
2050年度カーボンニュートラルの内訳は、エネルギー起源CO2削減70%、原料起源CO2削減10%、環境貢献製品・革新的技術開発20%を計画している。
原燃料の脱炭素を目指すとともに、環境貢献製品の開発・実装によりカーボンニュートラルを達成する。
カーボンニュートラルに向けたアクションプランは以下の通りである。
技術開発の成否が大きなカギを握っている。
(同社資料より)
③CSR経営の推進
ありたい姿の実現に向けた具体的なアクションプランとして重要課題(マテリアリティ)に取り組む方針である。
(同社資料より)
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 |
監査等委員会設置会社 |
取締役 |
9名、うち社外4名 |
監査等委員会 |
5名、うち社外4名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月27日
<基本的な考え方>
当社は、社会全体の大きな変革の中で、直面する事業環境にあわせて、当社の存在意義を「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」と再定義しました。持続可能な社会に貢献するために環境と調和して事業を継続させ、顧客と共に未来を創造することのできるトクヤマでありたいとの思いを込めています。これは、株主の皆様をはじめとして、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの方々との信頼と協働によってこそ可能であり、それが持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋がると考えております。その実現のためには、コーポレートガバナンスは経営の重要な課題であり、常に充実を図ってゆく必要があると認識しています。以上が基本的な考え方です。
基本方針としては、コーポレートガバナンスコードを踏まえて、株主の皆様の権利・平等性の尊重、各種ステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確立、取締役会の独立性整備と監督機能の強化、意思決定の迅速化と責任の明確化、および株主の皆様との建設的な対話などに努めます。
<実施しない主な原則とその理由>
原則 |
実施しない理由 |
補充原則4-1-3【最高経営責任者の後継者計画】 |
当社は、最高経営責任者(社長執行役員)の後継者計画の策定と運用、および審議を行ない、人材委員会に答申する機能を持つ「社長指名委員会」を2021年8月に新たに設置いたしました。 取締役会は、社長指名委員会の活動状況について、当社の経営理念(ビジョン)や経営戦略が踏まえられ、後継者候補に十分な時間と資源をかけた育成が計画的に行われるよう、人材委員会を経た定期的な報告について審議し、適切な監督を行います。 |
補充原則4-11-1【取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方】 |
当社は、取締役会が、当社の定める経営方針・中期経営計画等に照らして、実効性ある議論を行い、求められる意思決定機能及び経営執行の監督機能を適切に発揮できるよう、取締役の員数、個々の取締役の専門的知識、経験、能力等から貢献を期待できる領域のバランスや多様性を考慮して、取締役会の構成を考えております。 なお、上記に関するスキルマトリックスを含めた取締役会の構成は、株主総会招集通知参考書類をご参照下さい。 (https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2022_Jun_Notification.pdf) |
<開示している主な原則>
原則 |
開示内容 |
原則1-4【政策保有株式】 |
当社は、経営戦略の一環として、取引の維持強化、資金調達、原材料の安定調達等事業活動の必要性に応じて、政策的に上場企業の株式を保有することがあります。 この政策保有上場株式については、効率的な企業経営を目指す観点から、可能な限り縮減します。2021年度は上場株式1銘柄を売却し、保有する上場株式は21銘柄となりました。 また、毎年取締役会において、リスクを織り込んだ資本コストと便益との比較により経済合理性を検証し、将来の見通しを踏まえて保有の適否を確認します。 当社は、当社と投資先企業双方の企業価値への寄与を基準に議決権を行使します。 |
原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】 |
当社は、株主・投資家の皆様からの理解と信頼を得るため、会社の経営・財務情報のみならず社会に提供する製品・サービス、環境的・社会的側面などの非財務情報についても、適時・適切にかつわかりやすく開示するよう努めています。情報開示の基本姿勢、適時開示体制については、本報告書の「V-2.その他コーポレートガバナンス体制等に関する事項(適時開示体制の概要)」をご覧ください。 株主・投資家の皆様との建設的な対話を促進する統括的な役割は、広報・IRグループ所管部門長が担います。 対話の企画、実施などについては、広報・IRグループが主体となり、経営企画グループ、経営管理グループ、財務・投融資グループ、CSR企画グループ、総務グループ、研究開発部門、事業部門など社内の各部署と密接に連携しています。 経営トップ自らが株主・投資家と対話を行うIR活動として、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を年4回開催している他、証券会社主催のカンファレンスやスモールミーティングへの出席などを随時実施しています。またIR活動を担当する広報・IRグループは、国内外の機関投資家との個別面談や個人投資家向け会社説明会などを行っています。その他IR活動の詳細については、本報告書の「III-2.IRに関する活動状況」をご覧ください。 株主・投資家の皆様との対話で得られたご意見等につきましては、経営トップと関係部署の責任者が出席するIR会議の中で確認・共有しているほか、IR報告書により社内の各部署へフィードバックし、経営戦略や事業戦略の策定や軌道修正に活かし、企業価値向上につなげています。 なお、インサイダー情報の管理については、社内規程を定め、秘密保持誓約等で情報管理を徹底しています。 |