(1716)第一カッター興業株式会社 今期事業は堅調・上半期に期待

2022/04/14
 

 高橋 正光 社長

第一カッター興業株式会社(1716)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

建設業

代表者

高橋 正光

所在地

神奈川県茅ケ崎市萩園833番地

決算月

6月

HP

http://www.daiichi-cutter.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,310円

12,000,000株

15,720百万円

13.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

27.00円

2.1%

137.46円

9.5倍

1,265.03円

1.0倍

*株価は3/11終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは22年6月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2018年6月(実)

16,283

2,187

2,263

1,487

130.68

12.50

2019年6月(実)

14,871

1,760

1,843

1,251

109.90

10.00

2020年6月(実)

17,440

2,296

2,482

1,523

133.86

12.50

2021年6月(実)

19,337

2,760

2,936

1,743

153.16

18.00

2022年6月(予)

19,998

2,746

2,922

1,564

137.46

27.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。2021年1月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して調整。

 

第一カッター興業(株)の2022年6月期第2四半期決算概要、通期業績見通しなどについてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年6月期第2四半期決算概要
3.2022年6月期業績予想
4.中期経営計画方針(2022年6月期-2024年6月期)の進捗
5.今後の注目点
<参考1:中期経営計画方針 2022年6月期-2024年6月期>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21年6期の売上高は前年同期比20.8%増の112億17百万円。全セグメント増収。営業利益は同26.8%増の16億56百万円。増収により外注比率が上昇し粗利率は2.1ポイント低下したが、粗利額は同13.5%増加。販管費も増加したが増収効果で吸収し2ケタの増益で、営業利益率も0.7ポイント改善した。売上・利益とも期初予想を上回った。四半期ベースでは、第2四半期(10-12月)の民間工事などの伸長で完成工事高が増加。売上高・営業利益とも四半期の最高を記録した。 
  • 上期において民間工事の受注が当初の想定を大幅に超えたことから、22年6月期通期業績予想を上方修正した。ただし、修正幅は上期実績の予想超過分で下期見通しは据え置いている。売上高は前期比3.4%増の199億98百万円、営業利益は同0.5%減の27億46百万円の予想。同社の事業は公共事業関連工事が多いため、第4 4半期(4月~6月)の売上高は減少する傾向にある。今期の第4四半期(4-6月)は例年どおりと想定した結果、通年では前期比若干の減益と見込んでいる。配当予想の修正はない。前期比9円/株増配の27円/株を予定している。予想配当性向は19.6%。 
  • セグメント別では、切断・穿孔工事事業では下期を通じて高速道路・橋梁補修工事が堅調で前期比増収増益を見込む。ビルメンテナンス事業は、上期に引き続き大手デベロッパー案件を中心に増収ベースで推移する。リユース・リサイクル事業は、下期は利益率も改善する。 
  • 新型コロナウイルスの影響を受けながらも2ケタの増収増益で、中期経営計画の数値目標を全てクリアした前期決算を受けた今期も、好調なスタートとなっている。上期進捗率は売上高56.1%、営業利益で60.3%と例年を上回る水準。下期予想は据え置いているが、同社が得意とする高速道路・橋梁補修等の工事は堅調で、中期経営計画で掲げている「既存市場の拡大」において、東京都心部強化及び関西・九州エリア強化も着実に進んでいるようだ。今期は微増収・微減益の予想だが、下半期でどれだけの積み上げを行っていくかを注目したい。

1.会社概要

ダイヤモンド工法とウォータージェット工法による専門技術を強みとする社会インフラの維持補修工事を展開。ビルメンテナンスやIT機器のリユース・リサイクルも手掛ける。
ダイヤモンド工法は、工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断削孔を行うもの。従来のコンクリート破砕工法では、常に騒音や振動、粉塵等の公害を意識する必要があったが、ダイヤモンド工法は、安全に、スピーディーに、正確に、環境に影響を与える事なく工事を行う事ができる。
一方、ウォータージェット工法は、超高圧で水を噴射してコンクリートの結合を破壊する。鉄筋を傷める事なく、ピンポイントでコンクリート構造物の修繕補修が可能。

 

グループは、ワイヤーソーやコアボーリング工事を手掛ける(株)ウォールカッティング工業、海洋土木(水中での切断穿孔工事)に強い(株)光明工事、沖縄県に拠点を置く(株)新伸興業、建築関連のウォータージェット工法に強い(株)アシレ、及びリユース・リサイクル事業を手掛ける(株)ムーバブルトレードネットワークスの連結子会社5社と、持分法適用関連会社のダイヤモンド機工(株)等。
新規開設やM&Aにより子会社含め全国に23事業所を展開している。

 

【1-1. 沿革】

日本で最初に道路の切断機を導入した建設会社でアルバイトをしていた創業者が今後の需要拡大を予見し、1967年8月、神奈川県茅ケ崎市に「ダイヤモンド工法」によるアスファルト・コンクリート構造物の切断・穿孔工事を目的とし、同社を設立した。

 

当初は工事案件も少なかったが、建設省(現:国土交通省)が、道路の切断工事の際には安全性などの観点からカッターを使用することを義務付ける通達を発出したことが契機となり、仕事量が増大していく。
同業他社が自身の地元で事業を行っていたのに対し、同社は1969年6月に札幌営業所を開設したのを皮切りに、千葉、栃木、水戸、高崎などへ展開。同時に道路切断のみでなくコンクリート構造物の穿孔工事や切断工事など工事対象範囲の拡大も進めていく。顧客ニーズに迅速に対応する機動力、工事品質の高さ、工事に使用する材料や機械についての豊富な知識やノウハウなどが顧客に高く評価され業容は着実に拡大し、2004年には株式を日本証券業協会に店頭登録した。
2000年代に入り、M&Aによる工法の多様化や事業所の全国展開を一段と加速させ、2017年12月には東証1部に上場。
インフラ老朽化という日本が直面する社会的な課題解決に取り組んでいる。

 

【1-2. 企業理念】

新中期経営計画(2022年6月期-2024年6月期)策定にあたり、新たに、コーポレートブランドをリニューアルするとともに、以下のようなTAGLINE(※)、PURPOSE、STATEMENT、MISSIONを掲げた。

 

 

 

 

TAGLINE 日本語:街の道路から宇宙まで 全ての社会インフラを綺麗にする会社です

英語:RESET AND GO

PURPOSE 平時も有事も社会インフラの安全を守り、安定した社会を支える。
STATEMENT 高度経済成長期に作った社会インフラの多くが改修の時期を迎えています。全国の道路、水道はもちろん、日々使っているビル、発電所やダムや鉄道など、一度止まってしまうと日常にも経済にも大きく影響を与えます。そうなる前に、私たち第一カッターは社会インフラ改修作業の一番手として新しいものを作る前に古いものを取り除き、再起動させる仕事をしています。

私たちは日常業務の中で安全安心だけでなく、作業効率性、人材育成制度、技術革新を行い、若い働き手が少なくなったとしても多様な人が働ける環境作りを目指します。世界のどこかで違う言葉をもつ人とも共同し、誰もが働きやすい環境を目指すことで、ゆくゆくは危険な場所には人が行かずにロボットで作業できるようになるかもしれません。

そして、日本では天災が頻発し、災害対応も日常的になってきました。日常的に鍛錬することで、有事における作業でも本領を発揮し、危険な場所でも安全に作業します。

私たちはただの職人では止まらない。日々の仕事に革新を持たせ、社会を支えることに繋げてく。世界でも宇宙でも第一に呼ばれる会社を目指します。

MISSION 性別国籍を問わず、職人が安全で働きやすい環境を作り、業界の発展に寄与する。

 

高効率/低環境負荷となる施工技術を磨き、社会と顧客の課題に答える。

 

独りよがりにならず、かっこいい人・組織を目指し社会や家族に誇れる会社である。

 

※TAGLINE
企業のコンセプトや理念を表したり、その企業や製品、サービスがどんな価値を提供しているかを端的にあらわしたりする言葉

 

【1-3. 事業内容】

事業は、切断・穿孔工事事業、ビルメンテナス事業、及びリユース・サイクル事業に分かれる。
切断・穿孔工事業は、同社、(株)ウォールカッティング工業、(株)光明工事、(株)新伸興業、(株)アシレ、ダイヤモンド機工(株)が手掛け、ビルメンテナス事業は同社が、リユース・リサイクル事業は(株)ムーバブルトレードネットワークスが、それぞれ手掛けている。

 

<切断・穿孔工事事業>
切断・穿孔工事とは、道路等の各種舗装、及びコンクリート構造物の解体、撤去等に必要な切断工事、穿孔工事の事。
同社グループの切断・穿孔工事事業では、工業用ダイヤモンドを使用したダイヤモンド工法(第一カッター興業株式会社の登録商標)、及び水圧を利用したウォータージェット工法を中心に事業を展開している。
切断・穿孔工事で発生する排水は回収され、大型中間処理施設で中和され切断水として再利用される。また、切断されたコンクリート等の廃棄物は脱水処理後、コンクリート等の原料へと再生される。

 

 

(同社資料より)

 

グループで全国をカバーしており、同社が東日本全域に、(株)アシレが神奈川・大阪に、(株)ウォールカッティングエ業が主に東海地方に、(株)光明工事が大阪・中四国地方に、(株)新伸興業が沖縄県に、ダイヤモンド機工(株)が九州地方に、それぞれ営業基盤を有している。

 

同社グループは専門工事業者として、インフラの建設工事や維持補修工事の一翼を担っており、主な得意先は総合建設業者、道路建設業者、及び設備業者等。得意先が工事を受注し、コンクリート等の切断穿孔工事を同社グループに発注する。得意先は公共事業関連工事を中心に事業展開しているため、同社グループが施工する工事も大半が公共事業関連工事である((株)アシレは民間分野の客層が大半)。
一方、公共事業関連工事以外の工事としては、化学工場・石油プラント・発電所等のメンテナンスやウォータージェット工法による洗浄等が挙げられる。工事を種類別に分類すると、土木工事、建築関連工事、都市土木工事、道路・空港工事、生産設備メンテナンスに分類される。

 

◎主要取引先
大成建設、大林組、鹿島建設、ショーボンド建設、鉄建建設、東鉄工業、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム、野村不動産パートナーズ、大成ロテック、鹿島道路、山九、三菱地所コミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービス、NIPPO、日本道路、清水建設、三井住友建設他(順不同)。

 

 

◎主な工事内容

土木工事

橋梁工事、港湾工事、ダム関連工事といった、大型構造物の補修・撤去工事を行っており、水中など特殊な環境下での切断・穿孔作業の場合にも、専属のオペレーターによる施工を行っている。

建築関連工事

建物解体工事、免震工事、耐震工事、改修工事、新築工事といった、解体・リニューアル工事に伴う各種作業を行っている。また、周辺施設への環境負荷軽減にマッチした施工方法で、従来工法では困難な施工にも対応している。

都市土木工事

鉄道工事、廃棄物処理施設工事、上下水道施設工事といった、都市基盤施設における土木関連工事を行っている他、計画立案から施工までトータルで対応する環境関連工事も手掛けている。

道路・空港工事

道路の補修等に伴う各種切断や表面処理、劣化コンクリート除去、空港での滑走路グルービングや灯火設置のためのコアドリリング等作業を行っている。グルービングマシンやコア特装車といった特定条件での切断・穿孔作業が可能な事が同社の強みである。

生産設備メンテナンス

生産設備メンテナンスでは、工場メンテナンスに伴う各種設備洗浄、改造工事に伴う無火気切断、床の塗り替え、及び下地処理等を行っている。同社では産業洗浄技能士を常駐させる事で、作業の品質と安全を確保している。

 

◎主要なテクノロジー:独自の工法
*ダイヤモンド工法
工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断・削孔を行う。フラットソーイング、コアドリリング、ウォールソーイング、ワイヤーソーイング、グルービングの5つの基本工法をもとに、独自のアイデアで多種多様なダイヤモンド工法を行っている。
「ダイヤモンド工法」は同社の商標登録であり、業界No.1の実績を有している。

 

ダイヤモンド工法に用いられる工具には、「ダイヤモンドブレード」、「ダイヤモンドビット」、「ダイヤモンドワイヤー」があり、それぞれダイヤモンド砥粒を使用している。
「ダイヤモンドブレード」は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼き固めた(焼結した)チップを基盤の周りに付けたもの。
「ダイヤモンドブレード」を高速で回転させる事で対象物を切断する(建材の種類や切断の深さ等に応じてサイズを使い分ける)。「ダイヤモンドビット」は筒状のチューブの先端にダイヤモンドチップの付いた刃先を付けたもの。高速で回転させ対象物を穿孔する(穴の大きさや穿孔の深さによって様々なビットを使い分ける)。
「ダイヤモンドワイヤー」はダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼結したビーズをワイヤーに一定間隔で装着したもの。対象物に制約がなく、複雑な形状物であっても切断できる。

 

フラットソーイング
一般に床・床版・舗装のような水平面の切断に最適な工法。ダイヤモンドブレードを機械に取り付け、機械の進行に合わせてオペレーターが後方から歩きながら一人で操作する。目地切り、傷んだ舗装の打ち替え・撤去目的のコンクリート部分の切断、電気・電話・ガス・水道・下水道など舗装下に管を敷設する際の舗装部分の切断等に用いられている。動力はガソリン・ディーゼル・電気・油圧等で、切断によって過熱した切れ刃を冷却するために、刃先に水を送りながら切断する(圧縮されたエアーを冷却に使う乾式フラットソーイングもある)。

 

(同社Webサイトより)

 

コアドリリング
ダイヤモンドビットによって被穿孔物に工具を貫入させて孔をあける工法。正確な円形切断を求められる現場で使用される。給排水管・電気配線・空調設備のダクト、耐震補強等、どのような径の孔でも容易に穿孔できる。強度検査用サンプル採取や、アンカーボルト用の穿孔、厚い壁の一部を除去する場合のラインカット等、仕上がりの精度が特に求められる現場で活躍する。

 

(同社Webサイトより)

 

ウォールソーイング
壁や斜面・床面等に走行用ガイドレールをアンカーボルトで固定し、ダイヤモンドブレードの高速な回転と駆動機のレール上の移動によって対象物を切断する工法。ドアの開口部や換気口・窓の設置に多用され、直角・斜め共に切断可能。レールに沿って切断するため、正確に開口部を設ける事ができる。また遠隔操作も行えるため、どのような状況下においても安全な作業が可能。本体が小型・軽量なため持ち運び自在で、ビルや高速道路・地下鉄等、作業スペースの狭い現場においても優れた機動力を発揮する。

 

(同社Webサイトより)

 

ワイヤーソーイング
ワイヤーソーに一定の張力を加えながら、油圧式またはエンジン式の駆動機により高速回転させて対象物を切断する工法。対象物の形状に左右される事なく、厚大・複雑な構造物も容易に切断可能。また遠隔操作や自動運転もできるため、水中・高所・地下等あらゆる環境下において安全かつ自由に施工できる。

(同社Webサイトより)

 

グルービング
硬化した路面に車輌の走行方向と平行あるいは直角方向に切削を行い、複数の浅い溝(安全溝)を同時に施工する工法。専用のグルービングマシンを用いて、ドラムと呼ばれる筒状の装置に複数のダイヤモンドブレードを所定のピッチに重ね、セットしたものを回転させ路面を切削する(滑り抵抗や排水性を向上させる事で路面を改善する)。ドライ工法とウェット工法があり、滑走路や舗装道路、急斜面に施工する事で路面使用時のスリップを未然に防止する。1956年にイギリスの空港で初めて施工され、世界に広がった。

 

(同社Webサイトより)

 

*ウォータージェット工法
水を高圧水発生装置によって加圧・圧縮し、ノズルから噴射される高速水噴流で、はつり(コンクリート製品を、削る、切る、壊す、穴を開ける等の作業)・洗浄等を行う。対象物に与えるひずみが少なく、マイクロクラックがほとんど発生しない、低振動等の特徴を有し、環境に配慮した優れた工法として注目されている。
同社では、土木・建築や産業メンテナンス、また環境関連など幅広い分野でウォータージェット工法を活用している。
土木・建築では、コンクリート除去処理、成型(コンクリート壁の開口、コンクリート構造物の部分除去)、表面処理、塗膜除去処理、洗浄処理等で使われ、産業用メンテナンスでは、タンクリアクター等のプラント機器の清掃作業(スケール除去等)で使われる。また、金属切断(アブレイシブ切断)もできるため、火気厳禁の場所での改修工事にも対応する。

 

(ウォータージェット工法の特長)

振動が少ない ブレーカー、削岩機等の打撃破砕とは異なり、ノズルから噴射された超高圧水のエネルギーによってコンクリートのセメントモルタル結合を破砕するメカニズムが特徴。
構造物への影響が最小限 対象物に与える変形、ひずみ、残留応力が少なく、マイクロクラックもほとんど発生しないため、構造物への影響を最小限に抑えた作業が可能。
ピンポイントで除去 適切な圧力と流量の設定により、鉄筋を傷めずコンクリートの劣化部分だけをピンポイントで除去できる。
塗膜や付着物だけを除去 圧力の調整によって、対象物の塗膜や付着物だけを除去できる。
遠隔操作 対象物とノズルが接触しないため機械の遠隔操作が容易。曲線・曲面における自由な作業が可能となり、均一な品質が得られる。

 

<ビルメンテナス事業>
同社単独の事業である。集合住宅やオフィスビル等において、排水管清掃、貯水槽清掃、給水設備点検、床清掃、ファイバースコープ調査、機械式ピット清掃等を行っている。

 

<リユース・リサイクル事業>
(株)ムーバブルトレードネットワークス、持分法適用非連結子会社1社、持分法非適用関連会社2社の事業である。リユース事業では、主に一般企業からタブレット、パソコン、サーバー、液晶ディスプレイ等の中古IT関連機器・OA機器を仕入れ、データ消去及び補修・改修を行った後、主に法人に対してこれらの機器を販売している。また、主に法人向けにIT関連機器のデータ消去を行うサービスや、OA機器のオフィス設置サービスも行っている。リユースが難しい中古品については解体した後、中間処理を行い再資源化を行うマテリアルメーカー・素材業者に販売している。一般的な素材から金・銀・コバルト等の希少金属まで再資源化を行う業者への販売を行う。

2.2022年6月期第2四半期決算概要

2-1 連結業績(累計)

 

21/6期2Q

構成比

22/6期2Q

構成比

前期比

期初予想比

売上高

9,285

100.0%

11,217

100.0%

+20.8%

+19.2%

売上総利益

3,162

34.1%

3,589

32.0%

+13.5%

販管費

1,856

20.0%

1,933

17.2%

+4.2%

営業利益

1,306

14.1%

1,656

14.8%

+26.8%

+24.4%

経常利益

1,415

15.2%

1,760

15.7%

+24.4%

+25.1%

四半期純利益

825

8.9%

901

8.0%

+9.3%

+20.7%

* 単位:百万円。

 

増収増益、予想も上回る。
売上高は前年同期比20.8%増の112億17百万円。全セグメント増収。
営業利益は同26.8%増の16億56百万円。増収により外注比率が上昇し粗利率は2.1ポイント低下したが、粗利額は同13.5%増加。販管費も増加したが増収効果で吸収し2ケタの増益で、営業利益率も0.7ポイント改善した。
売上・利益とも期初予想を上回った。
四半期ベースでは、第2四半期(10-12月)の民間工事などの伸長で完成工事高が増加。売上高・営業利益とも四半期の最高を記録した。

 

(注)同社の事業は公共事業関連工事が多いため、年間を通じて売上高は第2四半期(10月~12月)・第3四半期(1月~3月)に集中し、それに比して第1四半期(7月~9月)・第44半期(4月~6月)の売上高は減少する傾向にある。今後、業績の変動を平準化していく方針だが、当面は、業績が第2四半期、第3四半期に偏る傾向が続くものと思われる。

 

2-2 セグメント別動向

 

21/6期2Q

構成比

22/6期2Q

構成比

前年同期比

切断・穿孔工事事業

8,158

87.9%

9,766

87.1%

+19.7%

ビルメンテナンス事業

217

2.3%

230

2.1%

+6.0%

リユース・リサイクル事業

909

9.8%

1,220

10.9%

+34.1%

連結売上高

9,285

100.0%

11,217

100.0%

+20.8%

切断・穿孔工事事業

1,535

18.8%

1,943

19.9%

+26.6%

ビルメンテナンス事業

20

9.4%

22

9.7%

+10.1%

リユース・リサイクル事業

102

11.2%

92

7.6%

-9.5%

調整額

-350

-402

連結営業利益

1,306

14.1%

1,656

14.8%

+26.8%

* 単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

切断・穿孔工事事業
主に民間工事の受注・施工が極めて好調に推移したため、完成工事高は前年同期比19.7%増の97億66百万円。完成工事高の増加に伴い増益。

 

ビルメンテナス事業
首都圏を中心に大手デベロッパーの新規案件開拓に努めた結果、完成工事高は同6.0%増の2億30百万円。また、完成工事高の増加に伴い増益。協力会社ネットワークの増強が奏功した。

 

リユース・サイクル事業
中古スマートフォン等の販売に係る新規の顧客開拓を図ったが、利益率の低い商品が売上の中心を占めたため増収も減w機となった。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

20年6月

21年12月

増減

 

20年6月

21年12月

増減

流動資産

10,915

11,544

+628

流動負債

2,756

2,754

-1

 現預金

6,640

6,250

-389

 仕入債務

1,076

864

-211

 売上債権

3,645

4,757

+1,111

 短期借入金

34

29

-4

固定資産

7,076

7,321

+245

固定負債

914

937

+23

 有形固定資産

5,225

5,522

+297

 長期借入金

212

235

+22

 無形固定資産

388

354

-33

負債合計

3,670

3,691

+21

 投資その他

1,461

1,443

-17

純資産

14,321

15,173

+852

資産合計

17,991

18,865

+873

 利益剰余金

12,811

13,602

+791

       

負債・純資産合計

17,991

18,865

+873

* 単位:百万円.。借入金にはリース債務を含む。

 

売上債権、有形固定資産の増加などで資産合計は前期末比8億73百万円増加の188億65百万円。
負債はほぼ変わらず、同21百万円増加の36億91百万円。
利益剰余金の増加などで純資産は同8億52百万円増加の151億73百万円。
自己資本比率は前期末より0.5ポイント上昇の76.3%。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

21/6期2Q

22/6期2Q

増減

営業CF

856

375

-481

投資CF

-981

-527

+453

フリーCF

-124

-152

-28

財務CF

-50

-236

-186

現金及び現金同等物期末残高

6,141

6,220

+79

* 単位:百万円

 

売上債権の増加などで、営業CFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは前年同期末同水準。

3.2022年6月期業績予想

3-1 連結業績

 

21/6期 実績

構成比

22/6期 予想

構成比

前期比

修正率

進捗率

売上高

19,337

100.0%

19,998

100.0%

+3.4%

+9.9%

56.1%

営業利益

2,760

14.3%

2,746

13.7%

-0.5%

+13.4%

60.3%

経常利益

2,936

15.2%

2,922

14.6%

-0.5%

+13.7%

60.3%

当期純利益

1,743

9.0%

1,564

7.8%

-10.3%

+11.0%

57.7%

* 単位:百万円

 

業績予想を上方修正
上期において民間工事の受注が当初の想定を大幅に超えたことから、通期業績予想を上方修正した。ただ修正幅は上期実績の予想超過分。下期見通しは据え置いている。
売上高は前期比3.4%増の199億98百万円、営業利益は同0.5%減の27億46百万円の予想。
前述のように、同社の事業は公共事業関連工事が多いため、第44半期(4月~6月)の売上高は減少する傾向にある。今期の第4四半期(4-6月)は例年どおりと想定した結果、通年では前期比若干の減益と見込んでいる。
配当予想の修正はない。前期比9円/株増配の27円/株を予定している。予想配当性向は19.6%。

 

3-2 セグメント別動向

 

21/6期

構成比

22/6期(予)

構成比

前期比

進捗率

切断・穿孔工事事業

16,898

87.4%

17,267

86.4%

+2.2%

56.6%

ビルメンテナンス事業

430

2.2%

438

2.2%

+1.9%

52.6%

リユース・リサイクル事業

2,009

10.4%

2,293

11.5%

+14.2%

53.2%

連結売上高

19,337

100.0%

19,998

100.0%

+3.4%

56.1%

切断・穿孔工事事業

3,240

19.2%

3,273

19.0%

+1.1%

59.4%

ビルメンテナンス事業

41

9.6%

38

8.7%

-8.6%

58.9%

リユース・リサイクル事業

208

10.4%

202

8.8%

-2.8%

45.8%

調整額

-729

-767

連結営業利益

2,760

14.3%

2,746

13.7%

-0.5%

60.3%

* 単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

*切断・穿孔工事事業
下期を通じて高速道路・橋梁補修工事が堅調で前期比増収増益

 

*ビルメンテナンス事業
上期に引き続き大手デベロッパー案件を中心に増収ベースで推移

 

*リユース・リサイクル事業
下期は利益率も改善

 

4.中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の進捗

中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の4つの重点戦略についての、22年6月期上期の進捗は以下の通りである。

 

①人材戦略
*戦略・施策
・ブランディング゙ × EX(従業員体験) ×安心・安全=サステナビリティの実現
・マネジメント層の強化・増員・多様性確保

 

*進捗・成果
ブランディング専門のプロジェクトチームを組成してブランドの社内浸透を図る。

 

②優位性強化戦略
*戦略・施策
・業界リーディングカンパニーとして既存技術の自動化・可視化への投資加速
・インフラメンテナンス領域におけるTech関連開発への先行投資

 

*進捗・成果
研究開発部会において、技術可視化のための投資を拡大

 

③ガバナンス戦略
*戦略・施策
・プライム市場適合のカガバナンス体制の構築、サステナビリティ関連開示強化
・株主とのコミュニケーション深化(非財務情報の積極開示・指標多様化・還元方針)

 

*進捗・成果
取締役会の過半数を社外取締役が占める

 

④成長戦略
*戦略・施策
・既存市場におけるカバー領域の拡大、新規事業立ち上げ準備
・有機的なM&A・資本提携・アライアンスによるネットワークの拡充・拡大

 

*進捗・成果
既存市場における競争力強化を目指して有力な提携先等を模索

 

5.今後の注目点

新型コロナウイルスの影響を受けながらも2ケタの増収増益で、中期経営計画の数値目標を全てクリアした前期決算を受けた今期も、好調なスタートとなっている。
上期進捗率は売上高56.1%、営業利益で60.3%と例年を上回る水準となっている。下期予想は据え置いているが、同社が得意とする高速道路・橋梁補修等の工事は堅調で、中期経営計画で掲げている「既存市場の拡大」において、東京都心部強化及び関西・九州エリア強化も着実に進んでいるようだ。
今期は微増収・微減益の予想だが、下半期でどれだけの積み上げを行っていくかを注目したい。

 

<参考1:中期経営計画方針 2022年6月期-2024年6月期>

21年11月、中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)を発表した。

 

4-1 前中計の振り返り

建設現場における同社のポジションは下請の一部であり、直接職人を送り出し作業を行う立場にある。しかし、「専門施工業」という切断・穿孔に特化した独自のポジションを確立しており、切断・穿孔に不可欠な高い技術力を有した職人集団の形成が成長のカギとなる。このため、前中期事業計画では、ヒトに軸足を置き、「基本戦略1 人材採用・育成の強化・拡充」「基本戦略2 営業展開の強化」「基本戦略3 協力会社ネットワークの強化」「基本戦略4 研究開発」という4つの基本戦略を進めた。

 

数値目標として掲げた各項目の達成状況は以下の通りである。

◎3か年の数値計画

 

19/6期 計画

同 実績

20/6期 計画

同 実績

21/6期 計画

同 実績

売上高

14,318

14,871

15,700

17,440

17,400

19,337

営業利益

1,624

1,760

1,730

2,296

1,910

2,760

営業利益率

11.3%

11.8%

11.0%

13.2%

11.0%

14.2%

親会社株主帰属利益

1,014

1,251

1,080

1,523

1,190

1,743

EPS

89.12

109.90

94.88

133.86

104.54

153.16

 

 

 

 

 

 

従業員数(連結)

500

501

525

568

550

608

* 単位:百万円、円、人。EPSは2021年1月1日付で1:2の株式分割を実施したため、現在の発行済み株式数に合わせた過年度の表記。

 

全項目において計画値を上回った。

 

◎インフラ別売上構成比

 

16/6期

17/6期

18/6期

19/6期

20/6期

21/6期

生活インフラ

62.0%

59.1%

56.9%

58.9%

54.8%

56.4%

輸送インフラ

23.5%

26.6%

27.0%

29.0%

32.2%

33.9%

産業インフラ

14.6%

14.3%

16.1%

12.1%

12.9%

9.7%

 

輸送インフラは堅調な市況が追い風となり、その比率を高めたが、コロナ禍の影響もあり産業インフラが落ち込んだ。全体の比率としては輸送・産業インフラの比率は3年間で上昇した。

◎成長投資

 

内容

19/6期

20/6期

21/6期 計画

21/6期

3年累計実績

人材投資 人材採用・研修

1.7億円

2.0億円

1.0億円

1.6億円

5.3億円

生産性向上 現場環境改善、働き方改革

4.0億円

4.1億円

3.0億円

11.6億円

19.7億円

事業領域拡大 新規営業所展開、M&A

1.2億円

8.7億円

2.0億円

0.1億円

10.0億円

研究開発 R&D、新技術への投資

0.3億円

0.8億円

0.5億円

1.3億円

2.4億円

合計

7.2億円

15.6億円

6.5億円

14.6億円

37.4億円

 

人材教育、研究開発、拠点機能増強、M&A等の積極的な投資を実施し、目標投資水準(20億円)を超える投資実績となり、成長の源泉に繋がった。

 

4-2 新中期経営計画

新中期経営計画においては、社会資本ストックの維持補修に関わる同社がどのように社会課題に対して価値を提供していけるか、また進行を速める少子高齢化に対して、魅力ある職場づくりと技術の伝承といった社会課題に対しても同社としての価値提供についての取組みを表現した。

 

また、同社の事業は社会課題に深く関連しているものの、その存在意義を明確にし、全従業員だけでなく取引先・株主・地域に対しての発信を高め、近年頻発化・甚大化する災害に対しても一番に駆けつける存在であり続けるための準備を平時から行う必要性を強く感じており、中期経営計画に併せてコーポレートブランディングについて刷新を行うこととした。

 

(1)ブランドリニューアル
高橋社長と従業員有志とともに取組んだリブランディング・プロジェクトにおいて、コーポレートブランドをリニューアルするとともに、以下のようなTAGLINE(※)、PURPOSE、STATEMENT、MISSIONを掲げた。

 

 

 

 

 

TAGLINE 日本語:街の道路から宇宙まで 全ての社会インフラを綺麗にする会社です

英語:RESET AND GO

PURPOSE 平時も有事も社会インフラの安全を守り、安定した社会を支える。
STATEMENT 高度経済成長期に作った社会インフラの多くが改修の時期を迎えています。全国の道路、水道はもちろん、日々使っているビル、発電所やダムや鉄道など、一度止まってしまうと日常にも経済にも大きく影響を与えます。そうなる前に、私たち第一カッターは社会インフラ改修作業の一番手として新しいものを作る前に古いものを取り除き、再起動させる仕事をしています。

私たちは日常業務の中で安全安心だけでなく、作業効率性、人材育成制度、技術革新を行い、若い働き手が少なくなったとしても多様な人が働ける環境作りを目指します。世界のどこかで違う言葉をもつ人とも共同し、誰もが働きやすい環境を目指すことで、ゆくゆくは危険な場所には人が行かずにロボットで作業できるようになるかもしれません。

そして、日本では天災が頻発し、災害対応も日常的になってきました。日常的に鍛錬することで、有事における作業でも本領を発揮し、危険な場所でも安全に作業します。

私たちはただの職人では止まらない。日々の仕事に革新を持たせ、社会を支えることに繋げてく。世界でも宇宙でも第一に呼ばれる会社を目指します。

MISSION 性別国籍を問わず、職人が安全で働きやすい環境を作り、業界の発展に寄与する。

 

高効率/低環境負荷となる施工技術を磨き、社会と顧客の課題に答える。

 

独りよがりにならず、かっこいい人・組織を目指し社会や家族に誇れる会社である。

 

※TAGLINE
企業のコンセプトや理念を表したり、その企業や製品、サービスがどんな価値を提供しているかを端的にあらわしたりする言葉

 

(2)中期経営計画2024の位置づけ

PURPOSE「平時も有事も社会インフラの安全を守り、安定した社会を支える。」の実現に向けた道標であり、コミットメントでもある。

 

「安心安全」「持続的な成長」「循環型社会」といった社会課題の実現に向け、人財・ノウハウ・ネットワーク・財務などの資本を活用し、「インフラクレンジング(切断穿孔・ビルメンテナンス)」「リユース・リサイクル」「建設中小へのサービス」といった事業を通じて価値を提供する。

 

(同社資料より)

 

(3)中期経営計画2024の概要

長期展望として「世界一のエンジニア集団」「時価総額1,000億円」を目指す中で、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の各目標及び数値目標(財務・非財務)をコミット。
実現のための「人材戦略」「優位性強化戦略」「ガバナンス戦略」「成長戦略」を掲げている。

 

(同社がエンジニア(職人・技能労働者)にこだわる理由)
労働集約型産業である建設業界においては、少子高齢化の流れの中で現在約340万人の建設従事者は2030年にはその1/3が高齢化によって離職すると言われている。そうした職人の減少に対応するため、工事現場では施工を外注し、工場で製造された製品を現場で組み立てるファブレス化が進んでいる。そのため、職人はその技術を発揮するのではなく下請企業と位置付けられ、待遇は劣化。そうした環境がさらに職人を不人気なものとしてしまうという負のスパイラルが起きている。
一方で、日本の社会インフラの老朽化が進んでいる。15年後には国内に存在する道路橋約72万6千橋の63%、港湾施設約4万4千施設の52%が建設後50年以上経過する状。また、国内建設市場の長期的なトレンドをみると、純社会資本ストックの総量は2000年以降増加傾向が収束し、近年では横ばいから微減トレンドに変化している。これは、建設投資が「新設・新築」から「維持・修繕」にシフトしていることを示しており、上記のように大半のインフラ構造物が新設から50年近い時間が経過するなか、「壊して建て替える」か「治療して長く使う」、つまり「維持・補修」の必要性が社会インフラの老朽化とともに急速に高まっている。

 

こうしたギャップが発生している中、同社では今後、「ヒト」がいることの価値は今とは比較にならないほど高まることは間違いなく、ヒトを有している企業の競争優位性は飛躍的に向上すると考えており、「優秀なエンジニア(職人・技能労働者)を供給することが社会的な責務であると認識している。

 

(3)中期経営目標

今回の中計及びその先2036年6月期の数値目標は以下の通りである。

 

(同社資料より)

 

(4)各戦略の概要

コミットメント実現のための「人材戦略」「優位性強化戦略」「ガバナンス戦略」「成長戦略」の4戦略の概要は以下の通り。

 

①人材戦略
持続的成長の基盤となる3テーマにおける目標を掲げている。

 

テーマ

目標

EX(従業員体験)の多様化・質向上

 

エンジニアのキャリア多様化

ステージに応じた教育機会

女性活躍

ブランディング 社会的価値の可視化

格好良さの発信

仲間(ステークホルダー)の拡大

安全・安心の追求 安全の可視化

ワークライフの確保

安心な環境

 

◎EX(従業員体験)の多様化・質向上
入社から退社までのジャーニーマップを作成し、従業員の経験価値を可視化する。
常にVISION・MISSIONの共有が重要である。

 

(同社資料より)

 

◎ブランディング
ブランドリニューアルとアクションを通じて、ステークホルダーの信頼を拡げる。
ステークホルダーには、現在の株主・顧客・仕入先・協力会社・従業員にとどまらず、潜在株主、潜在取引先、潜在従業員・潜在関係者など、これから同社との関係構築の可能性のある人々・組織を含む。

 

コンプライアンスを真ん中に置く企業文化により、「働くことを誇れる社員」働いてみたいという採用希望者」「何か手伝いたいという関係者」「一緒に仕事をしたいという顧客」「応援したいという株主」を増やす。

 

◎安全・安心
注力してきた残業時間抑制に関しては、「1か月840時間以内(月平均70時間)」、「複数月平均 休日労働を含んで4-6か月それぞれ平均80時間以内」という2023年までの目標を前倒しで達成した。
2024年までに原則「休日労働を含んで45時間未満」という目標の達成を目指す。

 

「時間:完全週休二日制、年間休日数の増加」「報酬:ベースアップ、株式を用いた退職金制度の拡充」「ライフスタイル:保険拡大と健康増進、働き方の多様化」の多様化」にも取り組んでいく。

 

また、年次・階層・目的別に研修制度を多様化させるほか、安全パトロール、安全・技術の可視化、コンプライアンスなど、安全・技術研修にも注力する。

 

②優位性強化戦略
以下、3テーマ及び目標を掲げている。

テーマ

目標

研究開発

 

研究開発部会

新たな開発組織「Co-Demensional Innovation Lab. (CDI‐Lab.)」

技術×Tech

グループ展開 グループ会社のメリット最大化

人的交流

教育の共有

協力会社ネットワークの強化 整備場の開放

安全教育

未経験者採用の支援

 

◎研究開発
社長直轄で、工事本部・営業本部とともに構成する「研究開発部会」では、既存技術の改良から自動化・可視化までを手掛けている。
自薦・他薦不問の開発組織で、「困りごと」「不便」「エコ」をキーワードに案件の大小問わず開発を推進。
過去8年間で172件のアウトプットを行っており、同社ならではの独自の工法や技術が生み出されている。

 

新たな開発組織である、「Co-Demensional Innovation Lab. (CDI‐Lab.、協次元イノベーション研究所)を設立した。
同社における独立組織で、上記の研究開発部会とも切り離して運用する。外部専門人材の獲得も視野に入れている。
そのため、研究開発部会が既存技術の改良を行うのとは棲み分けし、DX対応機械開発・アシスト技術・新工法開発など、中長期スパンで、基礎研究から高度なIoT対応機械の開発やアシスト技術の研究、及び新工法の開発をメインとする。
高度技術・工法開発による生産性向上や負担軽減を広く業界全体に提供し、日本にとって欠かせない専門施工業界を持続可能で魅力ある職場へと変えていく。また、DEEP TECH(※)エコノミーへの貢献を果たすことをミッションとしている。

 

※Deep Tech
科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み

 

◎グループ展開
同社は専門工事業でニッチな業態なため、売上・利益の規模を追求していくには一定の工事件数や顧客数を確保していく必要があるため、早くからM&Aも活用した全国展開を進めてきた。
グループ化した会社に対しては、研修、採用、人的交流、営業など多角的にメリットを提供しており、連結後の売上・利益は各社とも大きく拡大している。

 

◎協力会社ネットワークの強化
協力会社とのネットワークは同社競争優位性における重要な要素である。上記の全国展開を可能としているのも協力会社とのネットワークによるもので、協力会社を重要なパートナーと認識しており、社内でも「下請け」と呼ぶことを禁じている。
同社の持続的な成長・社会貢献の為には、協力会社にとって安心・安全な基盤を提供する義務があると考えている。
協力会社には小規模事業者が多いため、自力でのインフラ整備が難しい現状を踏まえ、整備場の開放、各種安全教育の実施、採用支援などの準備を進めていく。

 

③ガバナンス戦略
以下、3テーマ及び目標を掲げている。選択を申請したプライム市場の適合水準を目指す。

テーマ

目標

ガバナンス強化 取締役会の監督機能強化

管理・内部監査部門強化

基本理念・行動指針策定、教育強化

サステナビリティ関連開示の強化 サステナビリティ方針明確化

TCFD対応

非財務情報の開示多様化

株主との対話深化 株主還元方針

資本コスト明示

情報発信の強化

 

◎ガバナンス強化
取締役会は過半数、監査役会は全数と、上位意思決定機関の社外比率を過半以上に引き上げ、監督機能強化を図る。

 

◎サステナビリティ関連開示の強化
以下のスケジュールで各課題への対応を進め、社会に貢献し、持続可能なビジネスモデルを表現し広く認知を高める。

(同社資料より)

 

◎株主との対話強化
以下のような目標実現を目指す。

(同社資料より)

 

④成長戦略
以下、3テーマ及び目標を掲げている。

テーマ

目標

既存市場の拡大 東京都心部強化

九州エリア強化

カーボンニュートラル

宇宙関連事業

M&A 既存事業(事業承継、成長企業、ニッチ特化企業)

周辺事業の模索

新規事業 第4セグメントに向けた試行錯誤

自社人的資本の持つ独自の強みを事業化準備

 

◎既存市場の拡大
東京都心部は想定市場規模年間30億円、九州は同80億円、関西は同500億円と同社では想定しており、市場を深耕する。

 

カーボンニュートラルでは、グリーン成長戦略市場の取り込みを図る。
現在部門別CO2排出割合の最も高いのは電力部門だが、化石燃料を使用している産業・運輸の電化により、電力由来の比率が今後更に高まることが予想されることから、電力業界での市場を模索する。
想定市場規模は170億円。

 

宇宙関連では、スペースポートの整備・保守関連事業の獲得、宇宙空間での活躍を想定している。
前者では、2020年6月に閣議決定された「宇宙基本計画」に基づき、今後スペースポート(離発着場)の整備が進むと見られるため、同社の得意とする空港整備関連技術の獲得を進める。
後者では、世界一のエンジニア集団として、宇宙空間でノウハウが活かせるビジネスを模索する。
現在、一般社団法人 スペースポートジャパン(※)に専門施工会社として唯一正会員として参加している。

 

※一般社団法人スペースポートジャパン
日本にスペースポート (宇宙港)を開港することをもって、広く日本の宇宙関連産業を振興することを目的とし、ビジネス機会の創出、国内外の関連企業および団体との情報交換および連携、情報発信、勉強会やイベントの開催などを行っている。

 

◎M&A
将来不足する付加価値の高いエンジニアと技術の受け皿ととなることを目指し、M&A戦略を推進する。
M&A方針は、以下の3つ。

 

*事業領域の明確化
同社が得意とする、「切る」「はつる」「あらう」「剥がす」「削る」という5つのキーワードを行う専門施工会社

 

*サプライチェーンの前後
同社事業の工事施工の前後にあたる「調査」「設計」「保守」に関わる会社

 

*特化した技術を有する関連事業
他には真似のできない特化した技術・仕組・客層を有する会社

 

◎新規事業
同社は、下請業態・中小零細など規制の枠組みに適合しにくい企業に必要なノウハウを有しており、こうしたノウハウは中小零細企業の生産性向上とシナジーが高いと考えている。そこで、このノウハウを転用した中小企業向けサービス事業を模索する。

 

対象は中小零細企業。日本企業の99.7%が中小企業で、建設業だけでも約47万社が存在する。中小企業向けサービスを開発・提供することで、中小企業の事務生産性向上へ貢献するほか、教育提供による離職率の低下に貢献する。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 5名、うち社外3名
監査役 3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年12月21日)
基本的な考え方
当社は、お客様、株主、地域住民及び従業員等ステークホルダーと共存共栄できるコーポレート・ガバナンス体制を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ることを重要な経営課題の一つとして認識しております。また、経営の透明性・健全性を確保するため社外監査役及び社外取締役を選任し、経営監視機能の強化を図っております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
※2021年6月の改訂後のコードに基づいて記載を行っております。

 

【原則1-4.政策保有株式】
当社は、原則として株式の政策保有を行わない方針でございます。しかし、取引の内容・規模等を総合的に勘案し、安定的な取引関係の維持・強化を図ることが当社の企業価値の向上に資すると判断された場合には、取引先の株式を保有する場合もございます。保有する株式については、取締役会において毎年当社の企業価値向上に資するか否かを検証してまいります。検証の結果、保有の意義が認められない、あるいは薄れたと判断された場合は、適宜売却に向け手続きを進めることと致します。
保有する株式の議決権行使については、当該会社の企業価値を毀損させるようなこと等がないかを検討のうえで議決権を行使します。

 

【補充原則2ー4①】
当社は、一人ひとりが持つ多様な価値観や能力をいかんなく発揮できる環境作りを重視しており、人材の登用に際しては、能力や適性など総合的に判断し、性別や採用ルートによらず登用しております。現時点では人材の多様性に関して測定可能な数値目標を定めるには至っておりませんが、今後も引き続き多様性の確保に向けた施策を推進するとともに、目標についても検討してまいります。

 

【補充原則3-1③】及び【補充原則4-2②】
サステナビリティを巡る取組みについては、中長期的な企業価値向上の観点からも重要な経営課題と認識しております。現在、サステナビリティに関する方針及び取り組みに関しましては検討を重ねており、明確になり次第、開示していくつもりでおります。

 

【補充原則4-11 ①】
当社における取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性等に関する考え方及び取締役の選任に関する方針・手続きについては、取締役候補の指名に関する考え方と同様であり、原則3-1(ⅳ)に記載のとおりであります。
これらについては、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示しております。
また当社では、効率性の高い経営システムを推進していくための適正な規模を考慮し、現在は社内取締役2名、社外取締役3名(うち、独立社外取締役3名)、社外監査役3名をそれぞれ選任しております。社外取締役の3名は、それぞれ労務問題の専門家、企業経営に精通した他社の代表取締役を務める者及び上場企業におけるマネジメント経験の豊富な者であります。また、監査役はCSRコンサルタント、豊富な内部監査経験を有する者や企業会計に精通している公認会計士及び企業法務に精通している弁護士で構成されており、健全で持続可能な成長が図れるように、取締役会全体としてのバランスに配慮しております。

 

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は財務経理部をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、半期に一度決算説明会を開催するとともに、逐次個別面談等を実施しております。
また当社は、株主や投資家との建設的な対話を促進するためには、当該株主・投資家との信頼関係の構築・維持が重要であり、そのために適切な情報開示を行うことが必要不可欠と認識しております。その認識を実践するため、法令に基づく開示以外にも、株主をはじめとするステークホルダーにとって重要と判断される情報(非財務情報も含む)を積極的に開示する等、経営戦略や経営状況について、当社ホームページを通じ、積極的に情報開示を行っております。
なお、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針の策定及び開示については、今後の検討事項と致します。

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則3-1.情報開示の充実】
(ⅰ)当社の企業理念等を当社ホームページ、決算説明資料にて開示しております。
(ⅱ)コーポレート・ガバナンスの基本方針を当社ホームページ及びコーポレート・ガバナンスに関する報告書にて開示しております。
(ⅲ)取締役の報酬等については、株主総会において決議された報酬総額の範囲内で、各役員の貢献度や業績を考慮した上で、今後の経営戦略を勘案し取締役会にて決定しております。
なお、上記内容については有価証券報告書にて開示しております。
(ⅳ)取締役及び監査役候補者の指名を行うに当たっての方針・手続きについては、社内規程等で定めておりませんが、それぞれ豊富な経験と高い見識を有し、取締役・監査役の職務と責任を全うできる人材で、かつ人格に優れた者を候補者として選定し、取締役会にて決定しております。
(ⅴ)取締役・監査役候補者の選任理由を株主総会招集通知にて開示しております。

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