(7089)フォースタートアップス株式会社 大幅増収増益 着実に需要取込む
志水 雄一郎 社長 |
フォースタートアップス株式会社(7089) |
企業情報
市場 |
東証マザーズ |
業種 |
サービス業 |
代表取締役社長 |
志水 雄一郎 |
所在地 |
東京都港区六本木1丁目6-1 泉ガーデンタワー 36F |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数 |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,510円 |
3,426,800株 |
5,174百万円 |
9.9% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
0.00円 |
– |
90.46円 |
16.7倍 |
305.38円 |
4.9倍 |
*株価は8/5終値。発行済株式数、DPS、EPSは22年3月期第1四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2018年3月(実) |
747 |
196 |
126 |
43.25 |
0.00 |
|
2019年3月(実) |
1,045 |
271 |
274 |
192 |
65.47 |
0.00 |
2020年3月(実) |
1,262 |
308 |
287 |
203 |
68.96 |
0.00 |
2021年3月(実) |
1,273 |
158 |
161 |
95 |
28.70 |
0.00 |
2022年3月(予) |
2,200 |
450 |
450 |
310 |
90.46 |
0.00 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。
フォースタートアップス株式会社の会社概要、業績動向、成長戦略、志水社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第1四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.中長期の取り組み・考え方
5.志水社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 「(共に)進化の中心へ」をミッション、「for Startups」をビジョンに掲げ、「成長産業支援事業」として「タレントエージェンシー」「オープンイノベーション」の2つのサービスを展開。今期から人材支援に加え資金支援も実施することでハイブリッドキャピタル化を図り、スタートアップ企業の早期成長を促していく。「イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク」「国内最大級の成長産業データベース『STARTUP DB(スタートアップデータベース)』」などが競争優位性。
- 22年3月期第1四半期は大幅な増収増益。売上高は前年同期比74.9%増の5億25百万円。タレントエージェンシーサービス、オープンイノベーションサービスともに需要を着実に取り込んだ。営業利益は同215.5%増の1億41百万円。増収により売上総利益が同75.7%増加。今後の成長を見据えた積極的な人材採用投資を進めたため販管費も同45.6%増加したが吸収し、大幅な増益となった。同社が重視している受注高は、過去最高であった前第4四半期の4億66百万円を超え、2四半期連続でピークを更新した。
- 第1四半期の好調な業績を踏まえ、通期業績予想を大幅に上方修正した。売上高は前期比72.8%増の22億円、営業利益は同184.6%増の4億50百万円の予想。ハイブリッドキャピタル元年と位置付け、引き続き人材への投資を積極的に行うが、両事業ともスタートアップ企業の旺盛な需要を確実に取り込み、大幅な増収増益を見込んでいる。
- 成長産業の支援インフラを中長期で構築することを目指し、人材支援中心に実績を積み上げ、スタートアップ支援においてNo.1のポジションを構築した同社が、成長産業支援に最も重要な2つの要素である「人材支援」と「資金支援」を組み合わせるのが「ハイブリッドキャピタル」。スタートアップ企業の早期成長を促していく。
- 2018年3月期から2021年3月期までの売上高成長率(CAGR)は19.4%だったが、当面2024年3月期までのCAGRは30%増を目標とする。その後も成長産業の支援インフラを拡充させることで、高成長を目指していく。
- 志水社長に、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「日本が再び競争力を取り戻し、明るい未来を迎えるためには新たな産業、スタートアップの創出が絶対的に必要です。日本政府も本腰を入れて動き出しています。そうした中でスタートアップの事を最も知り、スタートアップを成長させることができる我々はまさに「国策銘柄」です。また、前上期は業績的には大変厳しい状況でしたが、下期から風向きが大きく変わりました。今期に入ってもその勢いに衰えはありません。足元の業績についてもしっかりと伸ばしていきます。短期・中長期、両方の視点で是非当社のこれらからにご期待ください」とのことだ。
- 同社のタレントエージェンシーサービスでは、候補者がスタートアップからの内定を承諾した時点で計上する「受注」を重視している。その受注高は、回復傾向に入った前第4四半期に過去最高を記録したのに続き、今第1四半期は更にそれを上回った。新型コロナウイルス感染者数の再拡大はなお不透明要因ではあるものの、ワクチン接種も進んでいることから昨年のような「視界ゼロ」という状況ではない。会社側想定通りにスタートアップ企業の旺盛な人材採用ニーズを着実に取り込んでいくことができるか注視していきたい。
- 中期的な視点では、投資事業および「STARTUP DB ENTERPRISE」の収益寄与スピードやインパクトを注目していきたい。投資事業に関しては、タレントエージェンシーサービスとのシナジーについても期待したい。
1.会社概要
日本の競争力を回復させ明るい未来をもたらすためにはスタートアップの成長が不可欠との想いから「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指している。
「成長産業支援事業」として「タレントエージェンシー」「オープンイノベーション」の2つのサービスを展開。今期から人材支援に加え資金支援も実施することでハイブリッドキャピタル化を図り、スタートアップ企業の早期成長を促していく。「イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク」「国内最大級の成長産業データベース『STARTUP DB』」などが競争優位性。
【1-1 上場までの沿革】
1996年に大手人材紹介会社に入社後キャリアを重ね、新規事業の立ち上げなどトップクラスの実績を上げてきた志水 雄一郎氏(現 フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長)に、自らの存在意義を改めて問い直す機会が訪れる。
そこでこれまでの自身の人生と日本社会の変化を振り返ると同時に、これからの日本の将来を見通して見ると、日本経済およびこれまでの日本経済を支えて来た大企業が「失われた20年」と呼ばれる長期低迷に喘ぎ、今後も明るい未来を予想し難いと考える。
一方で、世界に目を向けるとベンチャー企業の躍進が国富の大きな部分を創出していることを知り、人材関連事業に携わっていた自分および業界は、「本来取り組むべき課題解決=人の力を活用することによる企業の成長」に向き合わず、自分や自社の成長、営業成績のみを目標としていたことを痛感。
そこで、人材関連事業に携わるものとして、「人の可能性を信じ、人を最適に組み合わせることで日本企業および日本の競争力を復活させ、明るく最高の未来を次世代に繋いでいく」ことへの挑戦を決意する。
2013年4月、志水氏の想いに共感し協力を申し出た(株)ウィルグループ(東証1部、6089)は、子会社の(株)セントメディア(現(株)ウィルオブ・ワーク)の一事業部門としてネットジンザイバンク事業部を発足させ、志水はそこでスタートアップ企業に対する人材支援サービス提供を開始した。
国内有数のベンチャーキャピタルであるグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先だったスマートニュースのCXO(経営チーム)組閣を手掛けたことを始めとした数々の実績から、VCや起業家における認知度や評価は急上昇し、案件数も拡大していく。
経営判断のスピードアップのため2016年9月に会社分割により株式会社ネットジンザイバンクを新設。
2018年3月、フォースタートアップス株式会社に商号を変更した。
企業規模を拡大し、スタートアップに対する支援スピードをさらに加速させるため、2020年3月、東京証券取引所マザーズ市場に上場した。
【1-2 理念】
同社では、『「進化の中心」にいることを選択する挑戦者達』をスタートアップスと呼んでいる。
沿革にあるように、志水社長の「日本に明るい未来をもたらすためには多くのスタートアップスの成長が不可欠」との強い想いをベースに創業以来スタートアップスを支援してきたが、2021年7月、新ミッション「(共に)進化の中心へ」を掲げた。
新ミッションは、「進化の中心とは何か」を、時代に合わせて常に問い、その目標をアップデートし続けていく姿勢を表現している。
また、「(共に)」とすることで、「支援者」という立ち位置にとどまらず、時には自らも時代を創る「主体者・創造主」となる覚悟を示しており、スタートアップスと(共に)進化の中心であり続けることが、日本の成長、次世代にとっての未来のアップデートにつながると考えている。
Mission | (共に)進化の中心へ |
Vision | for Startups |
Value | Startups First
全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。
Be a Talent スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。 そして、自らの生き様を社会に発信せよ。
The Team 成長産業支援という業は、TEAMでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。 |
【1-3 同社を取り巻く環境】
(1)日本経済・日本企業の凋落「失われた30年」
下の表はフォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」より引用した、平成元年(1989年)および平成31年(2019年)の世界時価総額ランキング(一部抜粋)を比較したものである。
1989年の世界時価総額No.1はNTTで、上位20社中日本企業は14社。上位50社でも32社が日本企業で、まさに「Japan as No.1」という、日本にとって輝かしい時代であった。
しかし、1989年12月に記録した日経平均38,915円をピークに、バブル経済は崩壊。失われた30年という長期低迷に入り、日本企業の競争力は低下。2019年の世界時価総額ランキングでは上位20位はおろか、50位以内にランクインしたのがトヨタ1社という凋落ぶりである。
また、2019年の顔ぶれ(上位20社)を見ると、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon,Microsoft)を始めとした米国企業15社のほか、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)という中国IT企業が登場。30年間における産業構造の変化および国家の浮沈を明確に表している。
(フォースタートアップス株式会社 STARTUP DB :平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?より)
また、IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑」によれば、バブル期に1位だった日本の総合順位は最新2020年では過去最低の34位まで落ち込んだ。
8,000円台を下回った日本株は一時3万円台まで回復したが、それでもピークの約8割の水準に過ぎず、史上最高値更新を続ける米国株とは対照的である。これも現在の両国の国力のみならず将来に対する見通しや期待を映し出しているといえよう。
(2)スタートアップ支援に力を入れ始めた日本政府
ただ、こうした状況について日本政府も手をこまねいているわけではない。
2018年6月には「未来投資戦略2018」を発表。「3-2 ベンチャー支援強化」の項で新たなKPIとして、「企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場ベンチャー企業または上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出」という目標を掲げ、「我が国の強みを活かし、官民が一丸となってあらゆる政策を総動員すること等を通じて、我が国のベンチャー・エコシステムの構築を加速し、グローバルなベンチャー企業を生み出していく」との方針を打ち出している。
スタートアップ支援の中核省庁である経済産業省では、新規産業の創出、ベンチャーの創業・成長促進のために、支援人材のネットワーク構築、起業応援の税制・融資制度の整備、起業家教育の推進などの取り組みを実施。新しい事業やベンチャーが次々と生まれ成長するエコシステム(※)の形成を目指している。
※エコシステム
スタートアップや大企業、投資家、研究機関など、産学官のさまざまなプレイヤーが集積または連携することで共存・共栄し、先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。
(経済産業省の主な施策)
企業のベンチャー投資促進税制 | 認定ベンチャーファンドを通じてベンチャー企業へ出資した企業は、出資額の一定割合を上限に損失準備金を積み立て、損金算入することができる。(平成31年3月31日に期限が到来したため、新たな活用はできない) |
エンジェル税制 | ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度 |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 民間金融機関のみでは、長期的・安定的な資金供給が難しい女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)の新規開業して概ね7年以内の起業家に対し、日本政策金融公庫が低利融資を行う制度 |
J-Startup | 世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目指す経済産業省が、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム |
(同省ウェブサイトより)
このうち、「未来投資戦略2018」を受けて経済産業省が立ち上げたベンチャー支援プログラムが「J-Startup」である。
「J-Startup」では、トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが、日本のスタートアップ企業約10,000社の中から一押し企業を推薦し、外部審査委員会がその推薦内容を尊重しつつ企業をチェック。厳正な審査で選ばれた企業をJ-Startup企業として選定する。
選定されたスタートアップ企業に対しては、民間支援機関・NEDO・JETRO・METIによる事務局が中心となりを支援するコミュニティを構築し、「J-Startup企業」とサポーター、政府機関を結びつけ、タイムリーかつスピーディな支援を実現する。
フォースタートアップス株式会社もサポーター企業の1社である。
(J-Startup資料より)
また、2020年7月には、内閣府・文部科学省・経済産業省が「スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ ~コロナを乗り越えて新たな成長軌道へ~」を発表した。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、スタートアップ向けのリスクマネー供給の減少、事業展開や研究開発の停滞等、自律的なエコシステム形成に向けたリスクが顕在化し、大きな分岐点にあるとの危機意識の下で、スタートアップは、その機動性で、今後の社会変革に対応するイノベーションを牽引するキープレイヤーであると改めて位置付け、今後3年間を集中支援期間としてスタートアップ・エコシステム支援パッケージを実行している。
具体的には、アントレプレナーシップ教育の推進(大学における講座の開設など)、SBIR(Small Business Innovation Research)制度改革(研究開発型スタートアップ等への補助金等の支出機会の拡大や、初期段階の技術シーズから事業化までの一貫した支援)、J-Startup地域版の立ち上げ、JETRO等による海外発信等である。
経済産業省、内閣府、文部科学省以外に、総務省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省、防衛省、財務省の各省もスタートアップ支援プログラムを打ち出しており、「ALL Japan」でのスタートアップ支援体制構築が加速している。
(3)起業に向けた環境の変化
「2017年版 中小企業白書」によれば、我が国の開業率は2000年以降5%前後で推移し、欧米諸国に比べて一貫して低水準で推移している。
(2017年版 中小企業白書より)
ただ一方、フォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」によれば、米ペンシルべニア大学ウォートンスクールと市場調査会社Y&Rが起業環境についての国際比較を行ったところ、日本は調査対象80か国中、イギリス、アメリカを抑え、ドイツに次いで第2位という調査結果を報告している(2021年版でもカナダに次いで第2位)。
開業率が低水準なのは事実であるものの、上記のような政府の創業支援政策の積極化に加え、ICTの進化、クラウドサービスの普及・浸透など、起業に向けたハードルは確実に低下し、一段とスタートアップが産まれやすい環境が整いつつある。
こうしたことから、同社を取り巻く事業環境は中長期的なトレンドとしても良好である。
【1-4 事業内容】
提供するサービスは、「タレントエージェンシーサービス」「オープンイノベーションサービス」の2つ。セグメントは、成長産業支援事業の単一セグメント。
【1-4-1 タレントエージェンシーサービス】
スタートアップ企業に対して人材支援サービスを提供している。
支援内容は、「①人材紹介」と「②起業支援」に区分される。
(1)サービス概要
①人材紹介
(プロセス)
スタートアップ企業に対して、主として雇用期間の定めのない候補者を紹介する。
同社のコンサルタントであるヒューマンキャピタリストがスタートアップ企業から求人情報を獲得し、求人内容に合致する候補者を発掘し、ヘッドハンティングする。スタートアップ企業に人的資源を最適配置することを重視しているため、国内の人材紹介会社の多くが採用する登録型(求職者の登録媒体を設け求職者を集めるスタイル)ではなく、求人ニーズに合致した人材を効率的に発掘できるハンティング型を採用している。
発掘にあたっては、主として株式会社ビズリーチ等が運営する外部の人材データベースを利用している。
同社が支援するスタートアップは独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズを中心としたVCからの紹介案件が中心。VCは投資ポートフォリオの中でも、フォースタートアップスがCXO(経営チーム)の組閣を始めとした人材確保を支援することで、今後更に急成長すると期待するスタートアップを紹介するため、フォースタートアップスにとっても成功確率の高い案件を手掛けることとなる。
また、紹介されるスタートアップは既にVCから出資を受けているため、支援にあたっての資金面での問題は無い。
(マッチングに際してのノウハウ)
スタートアップの要望に合う適切な人材を発掘、マッチングするにはノウハウが必要である。
同社では社内における情報の共有を重視している。
ヒューマンキャピタリストは現在手掛けている案件について、「スタートアップの要望」「候補者の発掘およびマッチングの進捗」などを社内システムに随時登録し、他のヒューマンキャピタリストもそうした情報を共有できるようにしている。
このため、仮に自分の手掛けている案件ではマッチングの可能性が低そうな場合でも、候補者を他のヒューマンキャピタリストの案件に紹介することで、マッチングの確率が向上し、結果的にスタートアップ、候補者双方が満足することとなる。
また、スタートアップの要求は時として、やや現実的ではないケースもあるが、そうした際、ヒューマンキャピタリストはスタートアップと会社の現状・今後の方針や見通しなどを深くディスカッションし理解したうえで、「このフェーズであればこの人で」「少しフェーズを下げてこういう能力の人を2名採用してはどうか」等、現実的な提案を行うことも重要な役割である。
(収益)
候補者がスタートアップ企業に入社した事実を企業等に確認した上で、入社日を基準に成功報酬としてのコンサルティングフィーを収受している。
成功報酬型以外にも、毎月一定数の候補者の提案や、ターゲット人材の設定等のコンサルティングサービスも提供している。
売上は入社日が基準となるため、例えば2-3月に内定が出れば4月に入社することが多いなど、期間収益に影響を与えるため、同社内では内定を承諾した時点で計上する「受注」を重視している。
主な原価は、候補者発掘にあたって使用する外部データベースの利用料など。
なお、(株)ビズリーチが運営する「ビズリーチ」経由での取引が21年3月期で51.0%を占めている。フォースタートアップスでは、今後もビズリーチ社との良好な関係を保ちながら取引を行うことに加え、複数媒体の利用推進によるリスク低減を図っている。
②起業支援
日本のスタートアップ・エコシステムの形成には、起業家数の増加が必要不可欠であると考えており、以下のような起業支援サービスを行っている。
ベンチャーキャピタルと連携した起業家創出プログラム | ベンチャーキャピタルと提携し、起業家の創出を行っている。
具体的には、同社が発掘した起業希望者を提携するベンチャーキャピタルに紹介し、そのベンチャーキャピタルが相談や起業サポートを行う。 |
研究機関と連携した起業家創出プログラム | 国内の研究機関(大学等)には、高い技術力をベースにした優れたアイディア・人材が多く存在しているが、そのアイディアをビジネスとして実行できるケースは決して多くない。
そこで、日本が誇る優れた技術を成長産業へ成長させるため、大学系ベンチャーキャピタルと連携して経営陣等の人材支援を行う等、起業サポートを行っている。 |
いずれも、紹介した起業希望者や支援した経営陣等が実際に起業に至った場合には、同社はベンチャーキャピタルや研究機関から成功報酬を収受するほか、そのスタートアップ企業に対して継続的な人材支援を行う。
【1-4-2 オープンイノベーションサービス】
データベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進している。
具体的なサービス内容は以下の通り。
資金調達支援 | 資金調達ニーズのあるスタートアップ企業に、主に大手企業などの資金提供元を紹介。
資金調達が行われれば、その規模に応じた手数料を収受する。 |
データベース課金 | データベース「STARTUP DB」のデータを法人向けに提供。
定額利用料金を収受するほか、顧客ニーズに応じたデータ販売やサービス提供により収入を得る。 |
公共事業受託 | 官公庁・自治体によるスタートアップ業界関連の調査事業等を競争入札により受託する。 |
また、2021年4月、スタートアップの成長を加速させるために事業会社やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)からの資金調達支援を開始した。
事業会社やCVCからのスタートアップ企業への出資は増加傾向にあるが、スタートアップの成長戦略を実現する適切な資本業務提携先に出会う機会は限定的である。
また、CVCに限らず事業部本体からの調達可能性もあり、一つの企業の中でも複数の候補部署が存在し、スタートアップの戦略次第では同じ企業であっても適切な提携先の部署が異なることもある。
そこで、同社のオープンイノベーショングループでは、スタートアップの成長戦略を実現するために適切な資本業務提携先を紹介するサービスを開始した。
同グループでは、多数の事業会社やCVCの出資注力領域や出資可能金額、出資検討期間などの出資ニーズを集約している。スタートアップの調達スケジュールや目的などを資本業務提携先に予め伝達することで、調達可能性がある企業との商談を実現。初回面談設定から調達実施までをフォローする。
紹介可能な資本業務提携候補は毎月増加しているため、スタートアップの資金調達可能性は拡大している。
フィー体系はイニシャルコストが不要の完全成果報酬型である。
(同社資料より)
【1-5 特長と強み】
中長期的に良好な事業環境にある同社の特長・強み、競争優位性は以下の通りである。
(1)ベンチャーキャピタル・起業家等イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク
イノベーションの創出源泉となる新たなテクノロジーは、移り変わりが激しく、その結果としてスタートアップ企業の人材ニーズも大きく変動する。
スタートアップ企業に人的資源を最適配置するには、スタートアップ企業自体だけでなく、成長産業に対する広範かつ深い理解が重要である一方、情報のキャッチアップコストや候補者とのマッチングコストが高いという課題がある。
そのため、この領域で収益性の向上を図るためには、スタートアップ企業に関連した幅広い情報収集力や企業側・候補者側双方をマッチングさせる仕組みが必要である。
同社は、この課題を解決するために、ベンチャーキャピタルや起業家、大手企業、政府、エコシステムビルダー等と密な連携を行う情報収集ネットワークを構築している。
未公開企業への投資活動を専門に行っているベンチャーキャピタルは、投資背景等のスタートアップ企業に関する客観的な情報を保有している。一方、起業家は企業の将来的な展望や起業背景等の内面的な情報を保有していることから、ベンチャーキャピタル及び起業家と緊密な連携を行うことで、スタートアップ企業に関する様々な情報をタイムリーにキャッチアップすることができる。
具体的には、独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズやインキュベイトファンド株式会社等の複数のベンチャーキャピタルと定期的に情報交換を実施するとともに、起業家との勉強会も定期的に開催し、起業家とヒューマンキャピタリストが直接連携できる仕組みを構築している。
同社では、同一のヒューマンキャピタリストがクライアント企業及び候補者を担当する両面型の運営方式を採用している。
そのため、キャッチアップされたスタートアップ企業情報をヒューマンキャピタリストはタイムリーかつ正確に候補者に説明することができ、それにより候補者のヒューマンキャピタリストへの信頼感は一段と強まることとなる。
これが結果として難易度が高いCEO、CFO、事業責任者等の経営幹部層の採用に結びついている。
(2)国内最大級の成長産業データベース「STARTUP DB」の活用
同社は、日本のスタートアップマーケットは、スタートアップ企業に関する客観的な情報が不足していると考えている。
そこで、その課題の解決のために、5年以上前からスタートアップに関する客観的な情報を収集し、統一データベース「STARTUP DB」を構築。2018年5月から原則無料で一部を公開している。
2021年4月末現在の掲載企業数は13,000社を超えている。
(同社資料より)
データベースの掲載内容は、スタートアップ企業の事業内容のほか、役員情報、資金調達情報、登記簿情報から算出した評価額等。マスコミや世界最大級のベンチャーデータベース「Crunchbase」とも連携してスタートアップ企業に関する情報を積極的に発信している。
これらの公開情報に加え、ベンチャーキャピタルや起業家との情報収集ネットワークを通じて収集した情報を基に、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、その情報を整理・序列化し、データベースとして蓄積。成長産業を可視化している(こちらは非公開)。
その上で、特に同社が成長性の高いと考える有力スタートアップ企業に対し優先的に人材紹介サービスを提供している。
これは、有力スタートアップ企業は調達資金額も多く、人材ニーズが旺盛なため収益機会が大きいことに加え、有力スタートアップ企業に人的資源を最適配置することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新サービスや成長産業の創出、日本の競争力回復にもつながると考えているためである。
ヒューマンキャピタリストは、「STARTUP DB」にいつでもアクセス可能であり、有力スタートアップ企業に優先的に候補者をマッチングできる環境が出来上がっている。
2021年7月、スタートアップとの事業創造をサポートするための新サービス「ENTERPRISE」の有償提供を開始した。
スタートアップとの接点を創出するだけではなく、事業会社とスタートアップ双方の健全な関係性の中で、速やかに事業創造を進め、さまざまな形で利益を生み出すためのプラットフォームを目指す。
(ENTERPRISE 4つの特徴)
1.全ての検索機能が利用可能
現在、「STARTUP DB」の無料ユーザーは検索結果の閲覧や一部機能に制限がかかっているが、ENTERPRISEユーザーは全ての検索機能が利用可能。ソート機能は累計調達金額の金額順や最終資金調達金額順などさまざまな条件で並び替えができる。今後のアップデートでは、ソート機能や条件付き検索の強化、データ取得などを予定している。
2.類似サービスの閲覧検索
協業・共創パートナーをリサーチする際に重要となる近しい領域の類似サービス閲覧も可能となる。リリース時は約1,500サービスを対象としているが、今後、類似サービスは順次アップデート予定。この機能により、1社のスタートアップ情報をもとに、類似サービスをリサーチすることが可能で検索効率を高めることができる。
3.リストアップ
ENTERPRISEユーザーの希望テーマにマッチしたコンタクトしたいスタートアップを同社専門チームがリストアップする。
専門チームはタレントエージェンシー、外部コミュニティマネージャーやアクセラレーションプログラムに携わってきたメンバー構成されている。明確な定義が決まっていない調達シリーズの絞り込みなど累計資金調達額のレンジや所在地など、データベース上での絞り込みが難しい条件にも柔軟に対応する。
4.商談オファー
協業・共創に向けた商談をスタートアップと行うにあたり、700社以上のスタートアップとの取引実績や、これまで培ってきたネットワークを通じて、接触希望のスタートアップへ専門チーム経由で商談を打診する。
(3)実績
同社はメルカリを含め数多くの支援実績を積み上げており、VC、スタートアップ企業、政府、大企業、エコシステムビルダーから高い評価を得ている。累計人材支援数1,642名(2021年3月末時点、業務委託除く)のうち、約32%が経営幹部クラスであり、スタートアップの成長には同社の人材支援が不可欠となっている。
(同社資料より)
2.2022年3月期第1四半期決算概要
【2-1業績概要】
21/3期1Q |
構成比 |
22/3期1Q |
構成比 |
前年同期比 |
|
売上高 |
300 |
100.0% |
525 |
100.0% |
+74.9% |
売上総利益 |
252 |
84.0% |
443 |
84.4% |
+75.7% |
販管費 |
207 |
69.1% |
302 |
57.5% |
+45.6% |
営業利益 |
44 |
14.9% |
141 |
26.9% |
+215.5% |
経常利益 |
50 |
16.8% |
140 |
26.6% |
+177.7% |
四半期純利益 |
34 |
11.6% |
96 |
18.4% |
+177.2% |
*単位:百万円。
大幅な増収増益
売上高は前年同期比74.9%増の5億25百万円。タレントエージェンシーサービス、オープンイノベーションサービスともに需要を着実に取り込み、大幅な増収。
営業利益は同215.5%増の1億41百万円。増収により売上総利益が同75.7%増加。今後の成長を見据えた積極的な人材採用投資を進めたため販管費も同45.6%増加したが吸収し、大幅な増益となった。
同社が重視している受注高は、過去最高であった前第4四半期の4億66百万円を超え、2四半期連続でピークを更新した。
【2-2 サービス別動向】
21/3期1Q |
構成比 |
22/3期1Q |
構成比 |
前年同期比 |
|
タレントエージェンシーサービス |
291 |
96.9% |
510 |
97.1% |
+75.3% |
オープンイノベーションサービス |
9 |
3.1% |
15 |
2.9% |
+62.4% |
売上高合計 |
300 |
100.0% |
525 |
100.0% |
+74.9% |
*単位:百万円
◎タレントエージェンシーサービス
大幅増収。
前上期は、新型コロナウイルス感染症によりクライアントであるスタートアップ企業の多くにおいて採用計画の見直しが行われ、求人案件数が減少したが、下期より回復に向かい、前期末時点ではコロナ流行前の水準に戻った。
今期に入ってもスタートアップ企業の人材採用ニーズは一段と高まっている。
こうした中、同社ではタレントエージェンシー営業人員を増員するとともに、採用ニーズの強い企業や経営幹部層・エンジニアなど、需要の高いポジションの支援強化や育成をはじめとするマネジメント機能の強化に継続的に取り組んでいる。
この結果、タレントエージェンシーサービスの受注高は四半期ベースの過去最高を更新。売上高も前年同期比、前期比とも大幅な増収となった。
◎オープンイノベーションサービス
大幅増収。
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、従来の大手企業のオープンイノベーション関連投資は全般的に見直しが図られているが、新規事業創出や既存事業変革を優先度高く向き合う大手企業の予算は引き続き底堅く推移している。
また、第1四半期は、地方自治体の主催するインキュベーションプログラムなどとも積極的に連携を図り、営業先を拡大するなど、大手企業や官公庁・自治体に対し営業を強化した。
【2-3 財務状態】
◎主要BS
21年3月末 |
21年6月末 |
増減 |
21年3月末 |
21年6月末 |
増減 |
||
流動資産 |
1,252 |
1,419 |
+167 |
流動負債 |
275 |
352 |
+77 |
現預金 |
1,042 |
1,179 |
+136 |
未払金 |
95 |
122 |
+26 |
売上債権 |
190 |
220 |
+29 |
固定負債 |
83 |
66 |
-16 |
固定資産 |
148 |
144 |
-3 |
負債合計 |
358 |
419 |
+60 |
有形固定資産 |
34 |
33 |
-0 |
純資産 |
1,042 |
1,145 |
+103 |
無形固定資産 |
5 |
4 |
-0 |
利益剰余金 |
620 |
717 |
+96 |
投資その他の資産 |
108 |
106 |
-1 |
負債純資産合計 |
1,400 |
1,564 |
+163 |
資産合計 |
1,400 |
1,564 |
+163 |
長短借入金残高 |
150 |
133 |
-16 |
*単位:百万円
現預金の増加で資産合計は前期末比1億63百万円増加の15億64百万円。利益剰余金の増加で純資産は同1億3百万円増加の11億45百万円。
自己資本比率は前期末より1.2ポイント低下し73.2%。
【2-4 トピックス】
①経済産業省の「スタートアップ向け経営人材支援事業」の総合アドバイザリーにPublic Affairs戦略室室長泉友詞氏が着任
2021年7月、経済産業省による令和3年度「中小企業新事業創出促進対策事業費補助金(スタートアップ向け経営人材支援事業)」の事務局運営に関わる総合アドバイザリーに、同社Public Affairs戦略室室長 泉友詞氏が着任した。
(スタートアップ向け経営人材支援事業概要)
経済産業省は、大企業等とスタートアップ企業の間でイノベーションの担い手となる人材が環流することで、スタートアップ企業への人材流動性が高まることを通じた、2つのエコシステムの創出を目指している。
*スタートアップ企業が成長するエコシステム(スタートアップ・エコシステム)
*大企業等とスタートアップ企業による価値共創が促進されイノベーションが創出されるエコシステム(イノベーションエコシステム)
一方、イノベーションエコシステム創出に際し、特にテクノロジー系スタートアップ企業において経営人材の不足が顕著である。
経済産業省は、以下の2点により大企業等に人材が滞留してしまっている構造上の課題がその背景であると考えている。
①大企業等からスタートアップ企業に人材を流動させるための民間事業者の取り組み・事業者間連携が不足している。
②人材側にスタートアップ企業で働くことの価値が十分に認められていない。
そこで、この「スタートアップ向け経営人材支援事業」では、こうした課題を解消するため、大企業等からスタートアップ企業への人材流動に向けた取り組みの費用の一部を補助し、スタートアップ企業の成長に寄与する人材を効率的・効果的にマッチングする好連携を創出・情報発信することを目指している。
(同社の役割)
同社は、スタートアップ経営人材に関する知見の提供や事業設計などに関わる総合アドバイザリーとして運営補助を行う。
Public Affairs戦略室室長泉友詞氏は、以下のようなコメントを発表している(インベストメントブリッジが要旨作成)
* | スタートアップ企業の創出に最も重要な成長資源である「ヒト」の領域においては、議論が進んでいないのが現状である。 |
* | 一方、スタートアップに関わる中央政府の動きは活発化しており、スタートアップを取り巻く環境は10年前とは比較にならないほど充実しはじめている。 |
* | そうした中、20〜40代のスタートアップ企業への転職希望者も徐々に増えているが、従来型の人材支援構造におけるマッチングのままでは難しい点が多く、かつ支援事業者間でマッチングナレッジが共有されていない為、最適な人材の流動化が進んでいない。 |
* | アドバイザリー着任を機に、ヒューマンキャピタリストとしてのナレッジを共有し、スタートアップ経営人材の流動を促進することで、志ある皆様と共に日本の競争力強化に向け尽力していく。 |
②「2020 年エージェント・ヘッドハンターランキング」で職種別決定人数部門 経営ボード 1位、職種別決定人数部門 専門職 2位を受賞
2021年3月、株式会社リクルートキャリアが運営する転職サイト「CAREER CARVER」 における2020年に最も活躍したエージェント、ヘッドハンターを表彰する「2020 年エージェント・ヘッドハンターランキング」で、職種別決定人数部門 経営ボード 1位、職種別決定人数部門 専門職 2位を受賞した。
③同社を含めた1,000名未満の港区スタートアップ複数社が合同で新型コロナワクチン職域接種を実施
タクシーアプリ運営などモビリティDXを推進する株式会社Mobility Technologies、独立系戦略コンサルティングファームである株式会社コーポレイトディレクションと合同で、新型コロナウイルスワクチンの「職域接種」に関する政府方針に沿い、Fringe81株式会社、株式会社ヤプリ、CIC Japan合同会社、医療法人社団ビーンズの協力のもと、社員1,000人以下のスタートアップ企業数社とも連携し、7月1日に第1回目の合同職域接種を実施した。
また、このプロジェクトは「GO-DO」と表し、同様の取り組みを実施する従業員1,000名未満の中小企業などへのノウハウ共有のため、実施関連レポートを情報公開する。
(背景)
職域接種について、従業員1,000名未満の企業は、企業数社で協力して人数規模、接種会場、そして医療従事者を用意し、職域接種の要件を満たす必要があるが、その実施に際しては準備の負担が大きく、実行は容易ではない。
政府は新規の申請の受け付けを一時休止すると発表したが、これは予想を上回るスピードで供給量を超える接種機会が創出されているためで、それに伴い、フリーザーやワクチンの受け取り方法や接種会場の設計、運用など、申し込みから接種完了までに関わる多方面で情報が必要である。
また、今回の新型コロナウイルスのみならず、同様の取り組みが今後も必要とされる可能性もある。そこで、同社では、複数の企業による合同接種を実現させ、今回のノウハウをレポートにまとめ、公開することとした。
「GO-DO」プロジェクトを通じて、安心して働ける環境整備に努めるとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、および早期収束に寄与する考えだ。
③日本と米国で活躍する経営コンサルタント A.T.カーニー日本法人会長、 CIC Japan会長 梅澤高明氏が顧問に就任
2021年7月、A.T.カーニー日本法人会長で、CIC Japan会長の梅澤 高明氏が21年10月に同社顧問に就任すると発表した。
A.T.カーニー、CIC Japan、クールジャパン機構などにおける梅澤氏の数々のトップマネジメントとしての実績や経験は、フォースタートアップスによるハイブリッドキャピタル化を含む経営戦略の実行や、オープンイノベーション支援、Public Affairsなど、成長産業支援事業の中で同社が取り組む各種サービスの進化に不可欠であると、フォースタートアップスでは考えている。
また、梅澤氏はフォースタートアップスが掲げるバリューの一つである『Be a Talent』を日本の産業界で最も体現する一人であり、共に日本の成長産業創造に向けて歩みたいという強い想いから顧問就任が実現した。
(梅澤 高明 氏プロフィール)
東京大学法学部卒、MIT経営学修士。CIC Tokyoの設立責任者。A.T. カーニーの日本法人会長を兼務。日米で25年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。同社のグローバル取締役、日本代表などを歴任。クールジャパン、知財・デザイン、インバウンド観光、税制などのテーマで政府委員会の委員を務める。一橋ICS(大学院国際企業戦略専攻)特任教授。
3.2022年3月期業績予想
【3-1 業績予想】
21/3期 |
構成比 |
22/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
修正率 |
進捗率 |
|
売上高 |
1,273 |
100.0% |
2,200 |
100.0% |
+72.8% |
+23.2% |
23.9% |
営業利益 |
158 |
12.4% |
450 |
20.5% |
+184.6% |
+150.0% |
31.4% |
経常利益 |
161 |
12.7% |
450 |
20.5% |
+179.1% |
+150.0% |
31.1% |
当期純利益 |
95 |
7.5% |
310 |
14.1% |
+225.7% |
+148.0% |
31.3% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
業績予想を上方修正。スタートアップ企業の旺盛な需要を確実に取り込み大幅な増収増益を予想。
第1四半期の好調な業績を踏まえ、通期業績予想を大幅に上方修正した。
売上高は前期比72.8%増の22億円、営業利益は同184.6%増の4億50百万円の予想。
ハイブリッドキャピタル元年(※「4.中長期の取り組み・考え方」で詳細説明)と位置付け、引き続き人材への投資を積極的に行うが、両事業ともスタートアップ企業の旺盛な需要を確実に取り込み、大幅な増収増益を見込んでいる。
【3-2 主な取り組み】
タレントエージェンシーサービスにおいては、採用意欲旺盛な企業への集中的な営業強化、人員の積極的な採用、育成をはじめとするマネジメント機能の強化などに注力する。
オープンイノベーションサービスにおいては、データベース・資金調達支援・公共事業受託サービスから成る事業ポートフォリオの確立を図る。
また、新規事業として投資事業に進出する(※「4.中長期の取り組み・考え方」で詳細説明)。
2021年7月、「STARTUP DB」の有料サービス「ENTERPRISE」をリリースした。
人員増強については、前期を上回る50名程度の採用を計画している。
4.中長期の取り組み・考え方
【4-1 ハイブリッドキャピタル】
(1)スタートアップの資金調達状況
【1-3 同社を取り巻く環境】で触れたように、コロナ禍の影響もあり、スタートアップ向けのリスクマネー供給が一時的に減少しているようだが、政府は危機意識をもって支援を強化している。
また、コロナの影響という観点からはワクチン接種も進んでおり、マイナスの影響は徐々に薄らいでいくものと思われる。
一方、中長期的には成長産業への資金流入は増加傾向にあると考えられる。
(2)ハイブリッドキャピタルとは?
創業以来、成長産業の支援インフラを中長期で構築することを目指し、人材支援中心に実績を積み上げ、スタートアップ支援においてNo.1のポジションを構築した同社は、中長期の目標である「成長産業の支援インフラの構築」を実現するために、これまでの「人材の支援」に加え、「資金の支援」をスタートさせる。
(同社資料より)
成長産業支援に最も重要な2つの要素(資本)を組み合わせるのが「ハイブリッドキャピタル」。
2022年3月期を「ハイブリッドキャピタル元年」と位置付け、スタートアップ企業の早期成長を促していく。
(同社資料より)
また、VC、行政、大企業との連携・コミュニケーションを一層強化する。
(3)スキーム
2021年5月、主力サービスであるタレントエージェンシーサービスとのシナジーを創出し、成長産業支援をより強固なものとするため、「資金」支援として投資事業を行う連結子会社「フォースタートアップスキャピタル合同会社」を設立した。
起業時や成長期における資金調達の支援にとどまらず、自ら資金提供者となることで責任と覚悟を持って起業家を支え、加えて人材支援で培ってきた同社の組織的能力を注力することによって投資先企業の成長速度と成功確度を高め、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を創出する。
(同社資料より)
【4-2 中長期成長イメージ】
2018年3月期から2021年3月期までの売上高成長率(CAGR)は+19.4%。
ハイブリッドキャピタル化により当面2024年3月期までのCAGR+30%を目標としている。
その後も成長産業の支援インフラを拡充させることで、高成長を目指していく。
(同社資料より)
5.志水社長へのインタビュー
志水社長に、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
Q:「御社が成長してきた背景として、VCと緊密な関係を構築できたということが一つの大きなポイントだと思うのですが、その経緯などをお話しいただけますか?」
ネットジンザイバンク事業部を立ち上げたのち、あるベンチャー企業の経営者とミーティングをしていた際、ベンチャーキャピタルの経営会議に出席するということを伺いました。その経営者にご紹介いただいてお会いしたのが、日本のVC最高峰といわれるグロービス・キャピタル・パートナーズのキャピタリストの方でした。
その際私は、まだ何の実績もない状況でしたが、「VCは次のソニー、次のホンダを生み出すのがミッションですよね。私もその想いで事業を立ち上げました。一緒にできることはないでしょうか?」と無邪気にもお願いしたところ、まず1社チャンスを頂くことができ、これを成功させることが出来たら、次のチャンスを頂けるということになりました。
実は、グロービス・キャピタル・パートナーズには以前からいくつもの大手人材会社が一緒にやりましょうと提案してきたのですが、結局は立ち消えになっていたのです。理由は、儲からないから。グロービス・キャピタル・パートナーズは「人材会社は対象会社が上場すれば一生懸命になるが、未上場の時はどこも人材支援をやってくれない」と感じていたので、チャンスだけは頂くことができたわけです。
そこで私はご紹介いただいたスタートアップのCEOにお会いして素晴らしい会社と思い、CXO(経営チーム)から組閣していきました。それぞれのポジションに最適な人材をハンティングしてくることができました。
すると、グロービス・キャピタル・パートナーズの当社を見る目が変わりました。また元キャピタリストでエンジェル投資もやっておられる起業家の方も、「日本のスタートアップの歴史の中でこんな組閣は見たことない」とおっしゃっていただき、当社の評価は上昇していきました。
そしてグロービス・キャピタル・パートナーズから頂いた次の依頼がメルカリやスマートニュースでした。
その2社ではCXOを始め、約50名以上をマッチングし、彼らが中核メンバーとなってハイバリュエーションで上場しました。
こうした実績の積み重ねにより当社とグロービス・キャピタル・パートナーズはスタートアップ創出に向けた日本最高のパートナーシップを構築することができたのです。
これにより、他のVCや起業家をはじめ、省庁、大企業などスタートアップに関わる多くの方々からもいろいろなお話を頂けるようになり、事業は順調に成長していきました。
グロービス・キャピタル・パートナーズとのパートナーシップ構築は当社にとって大変重要なターニングポイントだったと思います。
Q:「ありがとうございます。チャンスをくれたグロービス・キャピタル・パートナーズとそのチャンスを見事にものにした御社、日本最高のパートナーシップにふさわしいお話ですね。続いて、御社の競争優位性はどこにあるのかをお聞かせください」
3つあります。
1つは、今お話ししたグロービス・キャピタル・パートナーズを始めとしたVCとのパートナーシップです。
当社は新規にスタートアップを開拓する必要がありません。接点を作るためのマーケティングも不要です。大部分のお客様はVCからの紹介です。しかもVCの目利き力というスクリーニングを通した優良なお客様です。
他社がこれから当社のようなVCとの強固なパートナーシップを構築するのは極めて困難だと思います。
2つ目は「STARTUP DB」です。
各公開情報に加え、ベンチャーキャピタルや起業家とのパートナーシップやネットワークを通じて収集した情報を基に、当社が独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、成長産業・成長企業を可視化しています。
この成長力の可視化は極めて重要なポイントです。
ベンチャー投資によって日本の競争力を回復させ、国力を向上させるとしたら、成長性が高くかつその確度の高い企業群に集中投資していかなければなりません。
そうした視点や戦略を、VC、エコシステムビルダー、政府とも共有するには、こうしたインフラが不可欠です。
「STARTUP DB」も、他社が今からキャッチアップすることは非常に難しいでしょう。
3つ目は、意識の高い当社社員のチーム力です。
現在当社には約100名の社員がいますが、全員スタートアップが大好きなメンバーです。
日本を代表するような起業家、投資家と日常的につながる中で、彼らとパートナーや友人として一緒にスタートアップの成長を目指していくという働き方や生き方ができるこの場に魅力を感じてくれる大事な仲間です。
そんな彼らがいるから、ベンチャーキャピタルや起業家、大手企業、政府、エコシステムビルダーの皆さんが、「フォースタートアップスと一緒にやっていこう」と思って頂ける。このチーム力は当社ならではの大きな資産です。
Q:「3つ目の競争優位性は非常に興味深いお話です。競争優位性をより強固なものとするには何らかのシステムや仕組みが必要だと思います。社員の皆さんがスートアップ大好きになる、ヒューマンキャピタリストを育成する、そのための仕組みはあるのでしょうか?」
もちろん、入社後の研修制度などはありますが、最も重要なのは、当社におけるスタートアップ支援のための生態系を体感・体験してもらうことです。
当社では、約2日に1度の頻度でこのオフィスに日本を代表する起業家をお呼びして(コロナ禍の現在はオンライン含む)います。年間百数十名の起業家がなぜ当社に来ていただけるか、それは当社に来てプレゼンテーションすれば勝てるとわかっているからです。
ヒューマンキャピタリストは起業家の事業にかける想いや成長戦略を聞き、その後、名刺交換し、フェイスブックで友達になる。
これを2日に一度体験、体感することで、皆スタートアップが大好きになっていきます。また、起業家から直接話を聞き、体験・体感したことを採用候補者に伝えることができる。候補者はヒューマンキャピタリストの上辺ではない話に共鳴しマッチングが成立する。こうした成功体験が、ヒューマンキャピタリストの育成、人的資本強化に最も効果的です。
加えて私が最も重要と考えているのは、「何のためにやるのか、誰のためにやるのか」ということですが、これも、こうした体験、体感できる場を設けることで理解してもらえます。
他社が起業家を呼ぼうとしても、何故御社に行かなければならないのですか、ということになる。こうした場を設けることができるのは、スタートアップの人材支援で豊富な実績を持ち、信頼の厚い当社のみです。
Q:「続いて成長戦略について伺います。今期を「ハイブリッドキャピタル元年」と位置付けていますが、重要なポイントについてご説明ください」
これまで人材支援を中心に事業を展開してきましたが、これからは「人材」と「資金」の2つのソリューションを組み合わせてまさにハイブリッドでスタートアップを支援していきます。
そのため、今年5月、投資事業を行う投資子会社「フォースタートアップスキャピタル合同会社」を設立しました。
資金調達の支援にとどまらず、当社自身が資金提供者となるわけですが、当社の投資ポートフォリオは成功確率の極めて高い案件で構成されるという点が通常のVCとの大きな違いだと考えています。
これまではVCから勝たせたいスタートアップのご紹介を受け、CXOの組閣を始めとした人材面でのコンサルティングが中心でしたが、今後は出資、ストックオプションなど、スタートアップの状況に応じて多様な関わり方が可能になりますから、今まで以上に当社の意思をもってバリューアップを手掛けることができることも、当社の投資事業の特長です。実はこれまでも多くのスタートアップから出資の機会を提供するのでもっとコミットしてほしいというお声を頂いていたのですが、これを機に、外部資金も含めた投資に踏み出すことが可能になります。
加えて、国内最大のシード専門投資ファンドであるインキュベイトファンド株式会社と共に取り組んでいる起業支援プログラムも成功確率アップに大きく寄与すると考えています。これはインキュベイトファンド自身が練り上げたビジネスアイデアを、起業家ではなく、例えば最年少で執行役員に昇格したというような優秀な方に授けて事業を立ち上げるというもので、これまでの実績から非常に成功確率が高いことがわかっています。
当社自身が資金提供者となることで今まで以上に責任と覚悟をもってスタートアップを支え、「人材支援」と「資金支援」によって成長速度と成功確度を高め、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を創出していきたいと考えています。
Q:「前期、オープンイノベーションサービスで内閣府、NEDOから大口の案件を受注しました。こちらの今後の見通しはいかがでしょうか?」
省庁、自治体などからの案件を当社では「パブリック・アフェアーズ」と呼んでいますが、今期も続々とリリースできると思います。
日本政府もスタートアップ育成は喫緊の課題であると考えており、育成のための重要な要素である「人材支援」と「スタートアップに関するデータ」で最も優れているのはフォースタートアップスだという認識が浸透しています。
もう一つの重要な要素である「資金」についても、当社は日本中のエコシステムビルダーを繋げてソリューションを提供できるため、日頃から様々なご相談も頂いており、非常に良好な関係を築くことができています。
Q:「一方で、今後の課題についてはどうお考えですか?」
1つは株式市場からの信頼向上です。
2020年3月の上場に際しては、設立から3年半でのスピード上場ということもあり評価いただいていたのですが、折からの新型コロナウイルスの影響もあり初値は1,628円と公開価格1,770円を下回りました。その後暫くは堅調な展開でしたが、コロナの影響による低調な業績から年末にかけ下落し、少し戻してはいますが、今も公開価格を下回っています。
ただ、前下期から受注は大幅に回復し、今期に入りそのトレンドは更に強まっていることから、通期業績予想を大幅に上方修正いたしました。こうした業績動向もご評価いただき、株式市場の信頼を早く回復したいと思っています。
他には、今期からハイブリッドキャピタルで事業の幅を広げていきますが、現実的にはタレントエージェンシー売上が大半を占めるので、早期に依存度を下げていく必要があると考えています。
「STARTUP DB」の有償サービス「ENTERPRISE」や、パブリック・アフェアーズおよび投資事業などで収益機会の拡大を図っていきます。
Q:「それでは最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」
日本が再び競争力を取り戻し、明るい未来を迎えるためには新たな産業、スタートアップの創出が絶対的に必要です。
これについては日本政府も本腰を入れて「人」も「資金」も全て集中させようと動き出しています。そうした「国策」の中でスタートアップの事を最も知り、スタートアップを成長させることができる、それが我々フォースタートアップスであり、まさに「国策銘柄」です。
新ミッションを「(共に)進化の中心へ」としたように、スタートアップを成長させるとともに、我々も成長していきます。それを証明できる時が来たと考えています。
また、先程も申しましたように、前上期は業績的には大変厳しい状況でしたが、下期から風向きが大きく変わりました。
コロナ禍で上期は様子を見るしかなかったのが、時間が経つにつれ、DX化を進めないと勝ち残れないことが企業もわかってきた。そのため、DX化に対応できる人材ニーズは急速に高まっており、今期に入ってもその勢いに衰えはありません。
足元の業績についてもしっかりと伸ばしていきます。
短期・中長期、両方の視点で是非当社のこれらからにご期待ください。
6.今後の注目点
同社のタレントエージェンシーサービスでは、候補者がスタートアップからの内定を承諾した時点で「受注」を計上し、候補者が入社した日に「売上」を計上する。両社に大きな差は生じにくいが、例えば2-3月に内定が出れば4月に入社することが多くなるなど、期間収益に影響を与えるため、同社内では「受注」を重視している。
その受注高は、回復傾向に入った前第4四半期に過去最高を記録したのに続き、今第1四半期は更にそれを上回った。
新型コロナウイルス感染者数の再拡大はなお不透明要因ではあるものの、ワクチン接種も進んでいることから昨年のような「視界ゼロ」という状況ではない。会社側想定通りにスタートアップ企業の旺盛な人材採用ニーズを着実に取り込んでいくことができるか注視していきたい。
中期的な視点では、投資事業および「STARTUP DB ENTERPRISE」の収益寄与スピードやインパクトを注目していきたい。
投資事業に関しては、タレントエージェンシーサービスとのシナジーについても期待したい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 7名、うち社外2名 |
監査役 | 3名、うち社外2名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月18日
<基本的な考え方>
当社は、「for Startups」という経営ビジョンのもと、ユーザー、クライアント、株主、従業員、取引先、社会等のステークホルダーに対する責任を果たし、全てのステークホルダーからの信頼を獲得することを基本的な考え方としております。当該基本的な考え方のもと、経営のさらなる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能の強化等のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、企業価値を安定的かつ継続的に向上に努めていく方針であります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施していく方針です。