(9266)株式会社一家ダイニングプロジェクト 先行き不透明 新業態に注目

2021/06/24

 

 

 

武長 太郎 代表取締役社長

株式会社一家ダイニングプロジェクト(9266)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表取締役社長

武長 太郎

所在地

千葉県市川市八幡2-5-6 糸信ビル3F

決算月

3月末日

HP

https://ikkadining.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

587円

6,618,300株

3,884百万円

-134.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

未定

52.95円

11.1倍

*株価は6/2終値。各数値は21年3月期決算短信より。新型コロナウイルス感染拡大の影響により合理的な算定が困難であるため今期予想は未定。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

6,149

244

243

154

27.73

0.00

2019年3月(実)

7,078

289

286

122

19.84

0.00

2020年3月(実)

7,991

167

129

-122

-19.82

0.00

2021年3月(実)

3,426

-1,115

-1,131

-949

-153.86

0.00

2022年3月(予)

0.00

*単位:百万円、円。17年10月12日付で1:20、18年6月15日付で1:2、19年10月1日付で1:2の株式分割を実施。EPSは遡及して調整。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により合理的な算定が困難であるため今期予想は未定。

 

 

株式会社一家ダイニングプロジェクトの2021年3月期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21年3月期は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休業等の影響が、飲食事業、ブライダル事業ともに大きく、売上高は前年同期比57.1%減の34億26百万円。売上総利益は同57.3%減の22億86百万円。営業損益は11億15百万円の赤字に転落(前期は1億67百万円の黒字)。販売管理費抑制に取り組むも、大幅な売上減の影響を吸収できなかった。また、雇用調整助成金・時間短縮協力金の受領で5億10百万円を助成金収入として特別利益に計上した一方、店舗臨時休業等による損失として5億72百万円を特別損失として計上したことで相殺する格好となり、当期純損失も9億49百万円と赤字幅が拡大する結果となった。新規出店は11店舗。退店は10店舗となり、店舗数は2021年3月末で69店舗。

     

  • 新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が見通せない状況の中、今後の事業への影響について適正かつ合理的な算定が不可能なため2022年3月期業績予想は未定としている。算定が可能になった時点で速やかに開示を行う予定。

     

  • 引き続き不透明なコロナ禍の状況を受けて、通期予想は非開示となっている。なお、『大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん』全店でランチ営業を開始し、ランチ、昼飲み需要の取り込みを積極的に図っている点は対応として一定の評価が与えられよう。その他、注目すべき点としては新業態『韓国屋台ハンサム』が挙げられる。相対的なものではあるが、高年齢層の方が新型コロナウイルスに対する警戒感が強いなか、若年層狙いの同業態は比較的外食需要を取り込みやすい面もある。想定通り客層は、女性客7割といった実績となっているようで、同社の顧客層拡大に向けた最初の1手となるだろう。

     

1.会社概要

グループミッションとして『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』を掲げ、主力業態である餃子・串焼き・もつ鍋などが中心メニューの「屋台屋博多劇場」と、炉端・蒸焼・大鍋がメインの「こだわりもん一家」、全卓にハイボールタワーを設置した「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」などを展開。他には類を見ない接客サービス、業界における独自のポジショニング、理念を共有する人材育成のための取り組みなどが特長・強み。
2021年3月末現在、1都3県に69店舗を展開。ブライダル事業も展開。

 

 

【1-1 沿革】

学生時代の旅の途中、お客様の笑顔に囲まれる飲食業の楽しさ・面白さに魅了された武長社長はホテルでのアルバイトなどサービスの基礎を学びながら資金を貯め、20歳で1997年10月に同社の前身である有限会社ロイスカンパニーを設立し、同年12月には1号店として「くいどころバー一家(現こだわりもん一家)本八幡店」を千葉県市川市にオープンした。
その年の12月22日、来店客からコースターの裏に書かれた「こんな素敵なお店をありがとう。」とのメッセージを受け取った武長社長は、深く感銘を受け、「お客様の喜び・感動は自分の喜び・感動である。」ことを改めて強く認識。
お客様と喜びと感動を分かち合うことを理念に掲げて店創り、会社創りに邁進する。
2000年8月に有限会社から株式会社へ組織変更し、同時に商号を「株式会社一家ダイニングプロジェクト」へ変更。
2010年2月には新業態である屋台屋博多劇場1号店「屋台屋博多劇場 成田店」を千葉県成田市にオープンした。
2011年8月には屋台屋博多劇場の初の都心部の出店となる「屋台屋博多劇場 八重洲店」を東京都中央区にオープンするなど、1都3県で店舗を拡大するとともに、2012年8月にはブライダル施設「The Place of Tokyo」 を東京都港区にオープンし、ブライダル事業へも参入し、業容を着実に拡大。2017年12月、東証マザーズ市場に上場し、2020年3月には東証1部へ市場変更した。

 

【1-2 経営理念】

沿革で述べた武長社長の創業時の強い想いを込め、以下のようなグループミッション、経営理念、社訓を掲げている。

 

(グループミッション)
『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』

 

(経営理念)

お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う。

誇りの持てる「家族のような会社」であり続ける。

夢を持ち、限りなき挑戦をしていく。

 

(社訓)

笑顔であれ

どんな時も明るく元気に仕事をせよ。笑顔は活力の源である。

思いやる人となれ

人の喜びや悲しみを共有せよ。心優しき者が繁盛店を創る。

目標を定め、実行せよ

実行の前に目標がある。ゴールを定めない者は結果を出せない。

やり抜く強さを持て

自分を信じ、決して諦めるな。希望は自身の中にある。己に勝て。

前向きに捉えよ

愚痴や言い訳を言うな。否定的な考え方はつまらない人生を呼び寄せる。

素直な心であれ

感動、感激、感謝せよ。吸収力は感受性の高さに比例する。

日々改善、改革せよ

失敗を恐れるな。進化し、変化し、大きく飛躍せよ。

 

【1-3 事業内容】

報告セグメントは「飲食事業」と「ブライダル事業」の2つ。売上高で6-7割を占める飲食事業が成長ドライバーである。

 

(*)なお、飲食事業は年末・年始が、またブライダル事業は婚礼シーズンである10月、11月が年間を通じた最繁忙期となるため、3月決算の同社においては第3四半期(10-12月)に売上・利益が偏重する季節特性がある点には留意する必要がある。

 

(1)飲食事業
餃子・串焼き・もつ鍋などが中心メニューの博多業態「屋台屋博多劇場」と、炉端・蒸焼・大鍋がメインの一家業態「こだわりもん一家」が中心業態。
他に、「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」「おでんトさかな にのや」「寿司トおでん にのや」「鮨あらた」「Remo Café」を運営している。「屋台屋博多劇場」、「こだわりもん一家」ともに、『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』として来店客に喜びと感動を提供するための様々な特長を備えている。

 

業態

特長

「屋台屋博多劇場」

48店舗(21年3月末)

*「福岡・博多の風物詩である、中洲の屋台街の雰囲気や活気を再現した空間で、気軽で安くて旨い屋台飯を楽しんで頂ける、笑顔と活気があふれた劇場」がコンセプト。

 

*屋台をそのままお店にしたような店舗設計店内の活気やスタッフの笑顔が外からでもわかるように間口を広くし、遠くからでも一目で博多劇場だとわかる、店名の入った提灯やのれん、看板を掲げたファザードを設置。店内に入ると、串焼きや鉄板焼き、おでんといった屋台さながらのオープンキッチンとカウンター席。個室は作らず、開放感のある店内はスタッフの元気や活気が客に伝わる劇場をイメージし、設計している。

 

*「旨くて安い屋台飯」をコンセプトに、メニューを作成毎日手仕込みで作り、鉄鍋で調理する博多劇場名物の「鉄鍋餃子」をはじめ、肉や季節の野菜のほか、色々な食材を串に刺して焼く「博多串焼き」、博多名物である「博多もつ鍋」など。その他、鉄板焼きやおでんなどの屋台飯、辛子明太子や、ごま鯖などのメニューを取り揃え、ドリンクは、ハイボールや店内で仕込む自家製塩レモンサワー、九州の酒蔵より取り寄せた焼酎などを提供している。

 

*サービスと商品を組み合わせることで顧客との接点を増やし、客に楽しんでもらうために様々な取り組みを行っている。(「鉄鍋餃子」100個(総重量1.5㎏)を60分以内に食べたら無料イベントの実施の他、年齢同数の餃子の誕生日プレゼント、3回以上の来店で、乾杯ドリンクを通常料金で1リットルサイズに変更するなど独自のアプリ会員システム「屋台屋会員」の運営)。

 

(同社資料より)

 

業態

特長

こだわりもん一家

7店舗(21年3月末)

*「お客様の第二の我が家」をコンセプトに、「いらっしゃいませ」ではなく「おかえりなさい」と出迎えるなど、自分の家に居る様なくつろげるお店造り。

 

*30代~50代のサラリーマンやOLを中心に、家族連れやカップルなど幅広い客層が様々なシーンで利用。

 

*店内の中央部分には、その日水揚げされた鮮魚や旬の野菜が並べられた食材のディスプレイを設置。奥には開放感のあるオープンキッチンを配置し、目の前で食材や調理の様子を見ることができる。

 

*オープンキッチンを囲む様に配置されたカウンター席の間には、「こだわりもん一家」の特徴である「畳」を設置。「畳」には着物を着た「女将」がおり、一人一人の客と会話をし、魚を煮る・焼く・刺し身にするなど要望に合わせたおもてなしを提供する。その他、様々な利用シーンに対応できるよう、カウンター席、テーブル席や掘り炬燵の宴会個室などを用意。

 

*日本各地から地魚や旬の野菜、郷土の名物調味料や地酒を仕入れており、素材の味を活かした炉端焼きを中心とした通常メニュー、旬の食材を使用し45日ごとに年8回変わる旬彩メニュー、料理長が市場へ足を運び買い付けした日替わりメニューなどがある。

 

*店舗ごとに、その日の鮮魚や旬野菜を桶に入れて席まで運び、直接素材を見てもらったうえで、好みの調理法で料理を提供する「桶売りサービス」、料理長一押しの厳選素材を通常の販売価格より低価格で提供する「タイムセール」、食事が進んだ頃に、メニューにはない料理長のおもてなしの一品を、出来立ての状態で客の席を回り販売する「中間サービス」など、料理を通じ顧客との接点を増やす取り組みを実施している。

 

(同社資料より)

 

業態

特長

大衆ジンギスカン酒場

ラムちゃん

10店舗(21年3月末)

*昨今の健康志向の高まりにより、「低糖質」「高タンパク」な食材が注目されヘルシーで太りにくい健康食材が一段と注目されている。脂肪燃焼に効果的なカルニチンを多く含むラム肉と、低糖質でプリン体も少ないウイスキー(ハイボール)を思う存分楽しめることをコンセプトとして、そうした需要を取り込む。

 

*全卓に強炭酸ハイボールタワーを設置し、60分500円(税抜)飲み放題で、顧客自身でハイボールを好きなタイミングで好きなだけ注ぐことができるため、注文してもなかなか運ばれてこないといった心配がない、ストレスフリーな構造となっている。

 

*こだわりの岩塩で塩締め・低温熟成させ、かつ柔らかく旨みを最大限に引き出した低カロリー高タンパクのラム肉を使ったジンギスカンが最大の売りとなっている。マトンに比べてクセがない(羊肉特有の臭み)ため、男女・世代を問わずに気取らず楽しめる、活気に溢れた大衆酒場。

 

(同社HPより)

 

(同社資料より)

 

(2)ブライダル事業
東京タワーの目の前に位置し、東京タワーを一望できる開放的なチャペルが特長であるブライダル施設「The Place of Tokyo」を運営している。
「The Place of Tokyo」には、和モダンをコンセプトとしてデザインした4階会場「Tower room」、オープンキッチンを併設した3階会場「Terrace room」、パリの宮殿をイメージした地下2階会場「Grand room」と趣の異なる3つの披露宴会場があり、婚礼料理も、幅広い年齢層のゲストにも喜んでもらえるよう、素材そのままの風味を活かした和テイストのオリジナルのジャパニーズキュイジーヌを提供している。
また、利用客の要望に応じて出身地の食材を使用したメニューをアレンジしたり、新郎新婦の希望に沿ったウェディングケーキを作成したりするなど、日本一の“おもてなし”集団」として独自のサービスを創出・提供している。
 

(同社資料より)

【1-4 特長と強み】

(1)他には類を見ない接客サービスによる高いリピート率
同社では来店客を自分の大切な人(家族)と考え、接客している。
基本的なサービスマニュアルはあるものの、それをベースにスタッフが自ら考え、マニュアルにはないおもてなしを表現できるよう理念浸透や教育に取り組んでいる。
調理場スタッフも含めスタッフ全員で来店客を出迎えるためのオープンキッチンの導入、こだわりもん一家業態における「女将」の対応に加え、「2.成長戦略」で述べる会員企画など、他社には見られないユニークな接客サービスが高いリピート率に結び付いている。

 

(2)業界における独自のポジショニング
居酒屋マーケットの中で低価格帯ながらも、顧客に対するサービスレベルが高く、独自のポジションを構築している。また、コロナ禍の影響とは関係なしに、飲食店の利用は昔と比較して企業や大人数での利用から、個人や親しい人との少人数利用の需要形態へと移行しつつある。こうした社会背景等も反映しつつ、積極的な業態開発を行っていく方針を示している。

 

(同社資料より)

(同社資料より)

 

(3)理念を共有する人材育成のための取り組み
グループミッション、企業理念、社訓を、パートアルバイトを含めた全スタッフにいかに深く浸透させることができるかが業容拡大、企業価値向上のための最も重要なポイントであると考えており、人材の採用および育成についても同社ならではの取り組みを実施している。

 

◎社内教育プログラム「IKKAユニバーサルカレッジ」
「マインド」、「知識」、「スキル」、「行動」、「コミュニケーション」など、広範囲なテーマにわたり座学と実践を交えて包括的な人材育成を行っている。
社内講師も着実に育ってきており、継続的かつ安定的に同社の理念やビジョンを継承・浸透させていく仕組みとなりつつある。

(同社資料より)

 

◎社内動画共有ポータルサイト
後述の従来型イベントの開催や、集合研修や対面での会議をすることに伴う新型コロナウイルス感染リスクも警戒されるなか、社内動画共有ポータルサイトを立ち上げ、各種教育プログラム動画を配信し、コロナ禍においても歩みを止めることなく、教育体制の充実、理念浸透の強化を図っている。

 

(同社資料より)

 

◎各種イベントの実施
社員やアルバイトメンバーへの理念浸透、モチベーション向上、離職率低下を図るため、以下のような各種賞賛・イベントを開催している。

(同社資料より)

 

こうした取り組みが功を奏し、同業他社と比較して低い離職率を実現するとともに、人手不足が深刻化する中でも新卒採用に関しても安定したエントリー数を確保し、計画通りの採用に成功している。

 

【1-5 成長戦略】

同社では成長ドライバーを飲食事業、なかでも中心業態の「屋台屋博多劇場」の拡大と位置付けている。
「屋台屋博多劇場」による成長戦略は以下のとおりである。

 

(1)商品戦略
同社資料によると、2015年に仕事帰りの「ちょい飲み」が一般化し、新生銀行の発表した統計データによるとサラリーマンの小遣い額は、37,873 円と前年比231円の微増で1979 年の調査開始以来、過去3番目に低い額となった。

 

そうした中、博多劇場では下記の代表的なメニューに見られるように、気軽に利用できる客単価でありながら、高いコストパフォーマンスを実現している。
また、2018年4月からは「180円メニュー」を増品し、よりリーズナブルなメニュー作りを進めている。

(同社資料より)

 

(2)会員企画
総来店客数の増大及び継続的なリピーターの獲得を重視する同社において「会員企画」は重要な取り組みであり、ユニークな販促企画を次々と産み出している。

 

主な企画名

概要

バースデー餃子

誕生日に年齢同数の餃子をプレゼント

V・I・P会員

3回行くとVIP会員になり、VIP会員は最初の飲み物をメガジョッキにしてくれるのに加え、同伴来店客にも同様のメガジョッキをサービス

博多出身者を探せ

博多出身者の方には、特別メニューをプレゼント

持ち出せ企画

指定の品物を持参するとその個数分ドリンクをサービス

博多劇場1号店オープンからの8年間の累計会員数は20年9月末で100万人を突破。
一方、16年10月からスマホ・アプリ会員をスタートさせ、18年1月からはアプリ会員に一本化しているが、20年6月末のアプリ会員は62万人を突破した。継続した会員獲得とアプリ企画のブラッシュアップで客数増・リピート率上昇を目指している。

 

(3)出店戦略
認知度およびブランド価値向上を図るため、今後3年程度は東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で集中的に出店する。
最寄り駅乗降客数10万人以上の都心店舗と、それ以外の郊外店舗を組み合わせたハイブリッド型出店で、約200の候補地(駅)の中から厳選して年間10~12出店する計画である。
心のこもった接客を最重視する同社では十分な接客が可能なスタッフの育成が不可欠であり、サービスレベルを低下させることなく成長を追求するためには無理のない着実な店舗拡大が重要と考えている。

 

【1-6 株主還元】

同社は継続的に当期純利益を計上しているが、現在成長過程にあり、事業規模の拡大および財務基盤の強化を目的として内部留保の充実を優先してきたため、設立以来配当を実施していない。
ただ、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、今後は、経営成績および財務状況等を総合的に勘案しながら、配当の実施を検討していく考えだ。
なお、株主の支援に対する感謝の意を表すとともに、店舗の利用を通じて事業内容の理解と継続的な支援を得ることを目的として株主優待制度を設けている。

 

(2021年3月末日以降の株主向け優待)

所有株式数

優待内容

100株以上200株未満

2,500円相当の食事優待券

200株以上400株未満

5,000円相当の食事優待券

400株以上

10,000円相当の食事優待券

 

 

2.2021年3月期決算概要

同社飲食事業では、過去の実績からも12月の忘年会等の需要による客数の増加およびコース予約増加による客単価の向上、ブライダル事業では、婚礼の需要が高まる10~11月の施行件数の増加といった季節要因に加え、第1~2四半期に新規出店した店舗の売上寄与もあり、第3四半期(10-12月)の売上高が他四半期に比べ増加する傾向にある。
これに対し、第1~2四半期(4-9月)は、飲食事業において新規出店を集中し、それに伴う出店コストや人員確保のための採用費、新卒入社での人員増による人件費の増加などにより、費用が先行するため利益は低水準となりやすい。投資家はこうした同社決算の特性に留意する必要がある。

 

(1)業績概要

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

対前年期比

売上高

7,991

100.0%

3,426

100.0%

-57.1%

売上総利益

5,356

67.0%

2,286

66.7%

-57.3%

販管費

5,188

64.9%

3,402

99.2%

-34.4%

営業利益

167

2.1%

-1,115

経常利益

129

1.6%

-1,131

当期純利益

-122

-949

単位:百万円

 

大幅減収の影響を吸収できず各利益段階で赤字転落
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休業等の影響が、飲食事業、ブライダル事業ともに大きく、売上高は前年同期比57.1%減の34億26百万円。売上総利益は同57.3%減の22億86百万円。営業損益は11億15百万円の赤字に転落(前期は1億67百万円の黒字)。販売管理費抑制に取り組むも、大幅な売上減の影響を吸収できなかった。また、雇用調整助成金・時間短縮協力金の受領で5億10百万円を助成金収入として特別利益に計上した一方、店舗臨時休業等による損失として5億72百万円を特別損失として計上したことで相殺する格好となり、当期純損失も9億49百万円と赤字幅が拡大する結果となった。
新規出店は11店舗、退店は10店舗。その結果、店舗数は2021年3月末で69店舗となっている(その他、既存店2店舗の業態変更を実施)。なお、新規出店11店舗の内訳は、屋台屋博多劇場3、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん6、Remo Cafe2、退店の内訳は屋台屋博多劇場3、こだわりもん一家5、Trattoria&winebar TANGO 1、爆辛スパゲッティ専門店 青とうがらし1。

 

*既存店とは、新規開店した月を除き、18ヶ月以上経過した店舗。改装等により稼働していない期間があった店舗は当該月から除外している。

 

(2)セグメント動向

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

対前期比

売上高

 

 

 

 

 

飲食事業

5,827

72.9%

2,812

82.1%

-51.7%

ブライダル事業

2,163

27.1%

613

17.9%

-71.6%

合計

7,991

100.0%

3,426

100.0%

-57.1%

営業利益

 

 

 

 

 

飲食事業

121

2.1%

-710

ブライダル事業

45

2.1%

-405

合計

167

2.1%

-1,115

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。
*セグメント別損益を適切に反映させるため、共通費用の配分方法の見直しを行っている関係で、2020年3月期のセグメント情報は、見直し後の配分方法に基づいて作成。

 

◎飲食事業
大幅な減収、営業損失で着地。
拡大方針を示していた大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん等の新規出店、サービス力向上及び店舗オペレーションの改善、自社アプリ会員の獲得によるリピーター客数の増加に継続して注力。また、新型コロナウイルス感染症の予防対策の徹底や賃料の減免などによる固定費圧縮などに取り組んだ。

 

(新規出店など)
ドミナントエリア拡大に向けて下記、出店した。
東京都への出店(屋台屋博多劇場北千住店、屋台屋博多劇場歌舞伎町店、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん八王子店、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん町田店、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん浅草橋店)
神奈川県への出店(大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん本厚木店)
千葉県への出店(屋台屋博多劇場千葉ニュータウン店、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん船橋店、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん木更津店)

 

Remo Café:本八幡店、おおたかの森店

 

以上、直営店11店舗を出店し、直営店は合計で69店舗となった。

 

(業態変更、退店など)
*業態変更
既存店の「こだわりもん一家 神保町店」を「屋台屋博多劇場」へ変更した。
既存店の「爆辛スパゲティ専門店青とうがらし 新宿西口店」を新業態の「おでんトさかな にのや」へ変更した。

 

*退店
不採算店舗として、「屋台屋博多劇場」の蒲田店、南柏店、高田馬場店の3店舗、「こだわりもん一家」の千葉店、西葛西店、東陽町店、銀座店、上野店の5店舗、「Trattoria&winebar TANGO」の六本木店、「爆辛スパゲッティ専門店 青とうがらし」の代々木店、合計10店舗を退店とした。

 

(既存店の状況)
既存店(屋台屋博多劇場業態・こだわりもん一家業態)は前年同期比60.7%の減収。4月4日より飲食事業全店舗において臨時休業の措置を実施(5月15日より段階的に営業を再開)したことに加え、新型コロナウイルス感染への懸念などによる影響に伴う客足の落ち込み、忘年会需要の喪失などが大きく影響した。業態別では、「屋台屋博多劇場」が同58.9%減収、「こだわりもん一家」が同67.5%減収となり、会計期間を通じて相対的に「こだわりもん一家」の苦戦が目立つ格好となった。なお、客単価については同0.1%増。客数は同60.7%減少。わずかではあるものの、客単価の増加を達成したことはポジティブな要素と言えよう。

 

(同社資料より)

 

◎ブライダル事業
大幅減収で営業損失。
結婚式のニーズの多様化により少人数婚のニーズが高まり、婚礼1組当たりの組人数が減少傾向にある中、婚礼の主力広告媒体との連携強化による来館数・成約率の向上、サービス力向上及びコスト削減、宴席の新規案件の取り込み及びリピート客数の増加、レストランのサービス力、商品力の向上及び新規客数の増加にも継続して注力するとともに、SNSのLIVE配信を利用したリモート会場案内、オンライン結婚式オプションや家族婚・挙式のみプランの販売、3密を回避した婚礼料理コースの開発など、コロナ禍における様々なニーズに対応した取り組みを強化。

 

ただ、飲食事業同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、4月10日より臨時休業の措置を実施しており、5月27日より営業を再開しているものの、結婚式及び宴席の延期やキャンセルが相次ぎ、施行件数が大幅に減少したことで売上高が著しく低下。不要不急の経費の見直し、コストコントロールに努めて販管費を前期比で大きく削減するも営業損失での着地となった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20年3月末

21年3月末

 

20年3月末

21年3月末

流動資産

966

1,242

流動負債

1,142

1,313

現預金

693

632

仕入債務

151

61

売上債権

95

102

短期借入金

492

833

固定資産

2,424

3,022

固定負債

1,180

2,597

有形固定資産

1,735

1,896

長期借入金

862

2,254

建物

1,480

1,651

負債合計

2,322

3,910

無形固定資産

16

11

純資産

1,069

353

投資その他の資産

672

1,113

利益剰余金合計

412

-537

敷金・保証金

524

572

負債純資産合計

3,391

4,264

資産合計

3,391

4,264

借入金合計

1,354

3,088

単位:百万円

 

複数の取引先金融機関から24億円の借入れ実行の他、新株式の発行などによる資金調達を通じてキャッシュポジションを強化した結果、期末時点においても前期と概ね同水準の現預金残高を保持しており、資産合計は前期末に比べ872百万円増加し42億64百万円となった。
なお、借入金は同17億34百万円増加。当期純損失の計上による利益剰余金の減少などで、純資産は同715百万円減少の3億53百万円。この結果、自己資本比率は前期末より23.3ポイント低下し、8.2%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

244

-1,412

-1,657

投資CF

-688

-620

+68

フリーCF

-443

-2,033

-1,589

財務CF

278

1,966

+1,688

現金同等物残高

609

542

-67

単位:百万円

 

税引前当期純損益の損失幅が拡大したことなどから、フリーCFのマイナス幅も拡大。
長期借入増等により財務CFは大幅に増加した。
キャッシュポジションはやや減少した。

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想について

新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が見通せない状況の中、今後の事業への影響について適正かつ合理的な算定が不可能なため2022年3月期業績予想は未定としている。算定が可能になった時点で速やかに開示を行う予定。

 

(2)注力施策

新業態『にのや』
4月12日に、にのや業態2店舗目となる『寿司トおでん にのや』を有楽町にオープンしている。ウィズコロナ・アフターコロナの居酒屋の在り方を見据え、短時間の利用に向いた立ち飲みカウンター席と、少人数向けのテーブル席を設け、小分け可能な手作りの料理を提供する。酒のあて(肴)になるリーズナブルな巻き寿司や日本酒を、手軽に楽しめるのが魅力の店舗だ。ただし、オープンからすぐに緊急事態宣言(4月25日から適用開始)が発出され、時短営業に加えて、同業態の訴求ポイントでもある酒類の提供が終日停止となるなど、フル稼働が難しい状況となっている。

 

(同社資料より)

 

新業態 『韓国屋台ハンサム』
既存店である屋台屋博多劇場柏2号店を業態変更し、新業態『韓国屋台ハンサム』1号店を4月26日に出店している。20代~40代女性を中心に韓国ドラマや音楽コンテンツやファッションが人気を博し、大きなブーム(第4次韓国ブーム)となっている背景を受けて開発した業態となる。従来の屋台屋ブランドの客層(30~50代男性がメインターゲット)に加えて、10代~20代の若年層の女性客を中心とした新規客層の獲得及びノンアルコール需要の取込みを狙った格好だ。また、ランチ営業・テイクアウト・デリバリー対応も行う他、SNSを利用した効果的な販促も進めている。

 

(同社資料より)

 

(3)出店戦略

出店数については引き続きコロナ禍の状況を見ながら検討する方針であり、期初段階で具体的な出店計画は開示していない。ただし、前述した通り、にのや業態の2店舗目となる『寿司トおでん にのや』、『韓国屋台ハンサム』は出店済みながら、新型コロナ影響による緊急事態宣言の発出に伴う酒類メニューの提供制限や外出自粛等で正確なデータを十分に収集することができていない状況だ。こうした新業態のポテンシャルの見極めを行ったうえで、出店を漸次加速していくことになるとみられる。なお、会社側は、両業態に非常に手ごたえを感じているとのことだ。

 

(4)その他

2021年5月25日開催の取締役会において、2021年6月24日開催予定の定時株主総会における承認を前提に、 2021年10月1日(予定)を期日として、単独株式移転の方法により「株式会社一家ホールディングス」を設立することを決議している。消費者ニーズに機動的かつ柔軟に対応できる体制を確保し、競合他社との競争力の強化、事業リスクの管理体制の強化を図る狙いがある。

 

なお、本株式移転に伴い、同社は完全子会社となるため、同社株式は上場廃止となるが、新たに設立する持株会社の株式について 東京証券取引所市場第一部への新規上場を申請する予定。上場日は、東京証券取引所の審査によるが、持株会社の設立登記日(株式移転効力発生日)である2021年10月1日を予定している。

 

4.今後の注目点

引き続き不透明なコロナ禍の状況を受けて、通期予想は非開示となっている。なお、『大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん』全店でランチ営業を開始し、ランチ、昼飲み需要の取り込みを積極的に図っている点は対応として一定の評価が与えられよう。その他、注目すべき点としては新業態『韓国屋台ハンサム』が挙げられる。相対的なものではあるが、高年齢層の方が新型コロナウイルスに対する警戒感が強いなか、若年層狙いの同業態は比較的外食需要を取り込みやすい面もある。想定通り客層は、女性客7割といった実績となっているようで、同社の顧客層拡大に向けた最初の1手となるだろう。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外4名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2020年6月24日

 

<基本的な考え方>
当社は、「お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う」とういう理念のもと、「あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団」というグループミッションを掲げ、飲食事業、ブライダル事業のみならず、おもてなしに関わる様々な事業で、日本人の文化である“おもてなし”を広め、日本を代表する「おもてなし」のリーディングカンパニーを目指しております。
当社は、企業価値の継続的な向上には、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に努めております。株主をはじめとするステークホルダーと良好な関係を築き、事業活動を行うことで、長期的な成長を遂げることができると考えております。
透明かつ公平な経営を最優先に考え、株主総会の充実をはじめ、取締役会の活性化、監査役の監査機能の強化及び積極的な情報開示に努め、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図ってまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

【補充原則1-2-4】

当社は、機関投資家や海外投資家の比率が相対的に低いため、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳は実施しておりません。今後は、株主・投資家の皆様のご意見・ご要望を参考にしつつ、機関投資家や海外投資家の比率、費用対効果等を勘案し、引き続き議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳の導入について検討してまいります。

【原則1-3】

当社は、資本効率の向上や株主に対する適切な利益還元は、重要な経営課題のひとつであると考えておりますが、具体的な方針を定めるには至っておりません。当面は、収益力の向上・改善が最重要課題であると認識しており、収益力を強化し、企業価値の向上に努めてまいります。

【補充原則4-1-2】

当社は、経営環境の変化が激しい中で、中期的な業績予測を掲げることは、必ずしもステークホルダーの適切な判断に資するものではないとの観点から、事業単年度毎の見通しを公表することとしており、数値目標をコミットメントする中期経営計画は策定しておりません。一方、単年度予想と実績との乖離に関する原因分析は定期的に行っており、決算発表等を通じ株主を含むステークホルダーに対し開示・説明を行っております。

 

<各原則に基づく主な開示>

【原則1-4】

当社は現状、政策保有株式として上場株式を保有しておりません。

【原則5-1】

当社では、IR担当取締役を選任するとともに、管理部をIR担当部署としております。管理部は、経理部、広報部、総務部等IR活動に関連する部署を統轄し、日常的な部署間の連携を図っております。株主や投資家に対しては、代表取締役社長が出席する決算説明会を半期に1回開催するとともに、個人投資家説明会や役員懇親会(株主総会後)を実施しております。その他、株主から面談の希望があった際は、目的・内容等に応じ、IR担当取締役や代表取締役社長が対応することとしております。これらの活動を通じて得られた意見等は、適宜取締役会にフィードバックを行っております。なお、株主との対話に際してはインサイダー情報の漏洩防止を徹底しております。

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