ムゲンエステート 増収減益も、通期業績予想に変更無し

2020/06/19
 

藤田 進一 社長

株式会社ムゲンエステート(3299)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

不動産業

代表取締役社長

藤田 進一

所在地

東京都中央区日本橋浜町3-19-3

決算月

12月末日

HP

https://www.mugen-estate.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

541円

24,361,000株

13,179百万円

7.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

25.00円

4.6%

66.53

8.1倍

943.48円

0.6倍

*株価6/11終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年12月期第1四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年12月(実)

57,488

6,310

5,696

2,925

121.35

21.00

2017年12月(実)

63,568

7,122

6,478

4,276

175.61

25.00

2018年12月(実)

53,931

5,985

5,237

3,356

137.80

30.00

2019年12月(実)

39,677

3,157

2,493

1,688

69.38

30.00

2020年12月(予)

45,157

3,219

2,443

1,595

66.53

25.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2016年12月期より当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社ムゲンエステートの2020年12月期第1四半期決算概要等についてご紹介致します。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年12月期第1四半期決算概要
3.2020年12月期業績予想
4.中期3ヵ年経営計画の進捗
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20年12月期第1四半期決算は増収減益。売上高は前期比5.4%増の92億円。投資用不動産、居住用不動産とも平均販売単価が上昇、販売件数は減少した。営業利益は同23.9%減の5億円。粗利額が同5.3%減少した一方人件費など販管費が同12.4%増加した。 
  • 20年12月期の通期業績予想に変更は無い。売上高は前期比13.8%増の451億円の予想。不動産売買事業においては、不動産市場の動向を注視したバランスのとれた仕入と販売を考慮し、早期に稼働率改善等を図り、商品化へつなげていく。不動産賃貸事業は、不動産動向を見極め、キャッシュポジションの水準を勘案し、固定資産としての物件取得を進める。営業利益は同1.9%増の32億円の予想。不動産価格の高騰や金融機関の融資厳格化の影響が継続すると想定し、不動産売買事業の粗利率は、前期とほぼ同水準と予想。また、広告宣伝費、本社移転費用、固定資産取得による租税公課の費用などの増加を見込む。配当は前期比5.00円/株減配の25.00円/株の予定。予想配当性向は37.6%。 
  • 業績予想は据え置いたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響は現時点では今後どの程度の規模・期間になるのかなど不透明であるため、今後、状況が大きく変化し、合理的な算定が可能となり、開示が必要と判断された場合には、速やかに予想を開示する考えだ。 
  • 業績予想を据え置いているが、新型コロナウイルスの影響は不透明で、投資家としては四半期ごとの開示を見守るしかない。一方中期的には、「既存事業をゼロベースで見直し、阻害要因を一つ一つ丁寧に拾い上げ、改善することで、確かな経営基盤を作り上げ、更なる成長を続ける企業体への進化を目指し」て取り組んでいる中期3ヵ年経営計画の進捗を注目したい。 

1.会社概要

中古の区分所有マンション等を買取り、内装リフォームを施して物件に新しい価値を付加して再販する不動産買取再販事業のパイオニア。仕入、バリューアップ、販売全ての工程を一人の担当者が責任を持って進める点が特色。多彩な商品力で顧客のニーズに的確に対応するとともに、業界内で独自のポジショニングを築いている。

 

【1-1 沿革】

1990年、現在代表取締役会長の藤田進氏が、住宅の第一次取得者層を対象とした良質な中古マンション供給を目指して同社を設立。中古マンションの不動産買取再販事業をスタートさせた。
中古マンション市場が拡大する中、外部資本は入れず、人材を育てながら着実に成長を続ける。1997年には不動産仲介事業を営む子会社(株)フジホームを設立。リーマンショック、東日本大震災などの困難な時期もあったがこれを乗り越え、2014年6月、東京証券取引所マザーズ市場に上場。2016年2月、東証1部へステップアップした。
上場後も不動産買取再販事業を中核に更なる成長を目指し、不動産特定共同事業許可の取得、投資顧問会社の設立など、事業ドメインの多様化や拡大を図っている。

 

【1-2 経営理念など】

社是に、社名でもある「夢現(ムゲン) ~夢を現実にし、理想を追求する~」を掲げる。
住宅取得という顧客の夢を実現する事を手伝いながら、会社として、また社員としても成長し、夢を実現させるということを表している。

 

VISION 不動産ビジネスを通して、夢のある社会の実現をはかる。
MISSION お客様の夢の実現をお手伝いし、お客様と共に成長する。

 

<企業理念>

社会の繁栄に貢献し、成長し続けていきます。
コンプライアンス経営に徹します。
ステークホルダー満足度の充実につとめます。

 

<行動規範>

1. 『三方よし』の精神を大切にする。
2. 『もったいない精神』を大切にする。
3. 『ありがとう』という感謝の気持ちを大切にする。
4. 常に『改革』の視点と『チャレンジ精神』を持ち続ける。
5. 『信用』を継続させる。
6. すぐやる。必ずやる。出来るまでやる。
7. コンプライアンス重視の経営

 

【1-3 市場環境】

◎拡大する中古住宅・リフォーム市場
国土交通省によれば、日本の全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは2013年で約14.7%。シェアは大きくなりつつあるものの、欧米諸国と比べると1/6程度であり、依然として低い水準にある。また、これまで行われてきた住宅投資額の累積と、住宅ストックの資産額を比較すると、住宅ストックは投資額を約540兆円下回るということだ。
加えて、少子高齢化が進行して住宅ストック数が世帯数を上回り、空き家の増加も生ずる中、政府は既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備が必要と考え、2016年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定した。

 

*住生活基本計画(2016年3月)のポイント
「少子高齢化・人口減少社会を正面から受け止めた、新たな住宅政策の方向性を提示」する同計画は、以下の3つが主要ポイントである。
①若年・子育て世帯や高齢者が安心して暮らすことができる住生活の実現
②既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速
③住生活を支え、強い経済を実現する担い手としての住生活産業を活性化

 

このうち、「②既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速」においては、既存住宅の質の向上と併せ、住みたい・買いたいと思う魅力の向上を図り、既存住宅が流通し、資産として次の世代に承継されていく新たな流れを創出することを目指す。
具体的には、老朽化・空き家化が進むマンションの建替え・改修等を促進し、マンションの建替え等の件数(1975年からの累計)を、2014年までの約250件から、2025年までに約500件に増大させる。
加えて、既存住宅の流通促進等により空き家の増加を約100万戸抑制する。

 

また、「③住生活を支え、強い経済を実現する担い手としての住生活産業を活性化」においては、木造住宅の供給促進や生産体制整備(担い手の確保・育成、技術開発)を進めるほか、住宅ストックビジネスの活性化に取り組み、既存住宅流通の市場規模を2013年の4兆円から2035年に8兆円へ、リフォームの市場規模を同じく7兆円から12兆円へ、合計20兆円市場へ成長させることを指標として掲げている。

 

◎有望な首都圏住宅市場 
~巨大な潜在市場~
総務省統計局による「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の「非木造の共同住宅(専用住宅)」総数は約824万戸。
2019年12月期に同社が取り扱った物件数は投資用不動産、居住用不動産合計して409件であったことを考えると、開拓余地は極めて大きい。

 

~首都圏の世帯数は増加傾向~
また、少子化の進行で日本全体での人口減少は今のところ避けられない見通しだが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、首都圏の世帯数は2025年のピークに向け今後も増加を続ける見通しだ。

 

 

 

◎信用力の高い供給者の競争力は相対的に上昇する局面へ
ここ数年にわたり旺盛な需要に支えられ不動産市場が活況を呈してきた一方で、アパート建築請負・賃貸大手の建築基準法違反、地方銀行によるアパートローン不正融資、新興不動産会社の預金残高データ改ざんによる不適切融資など、足元では様々なひずみ、ゆがみが明るみに出ており、不動産価格の上昇と相まって購入および投資意欲の減退を予想する向きもある。

 

ただ、たしかに一時のような活況感には及ばないものの、金利が引続き低水準で推移するなか、実需・投資双方において良質な物件・案件に対するニーズは根強いものがあり、前述した不祥事が多発したことは逆に信用力の高い供給者の競争力を相対的に高め、投資家や購入者から選別されるステージに入ったともいえるだろう。

 

<同業他社比較>

   

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

2975

スター・マイカ・ホールディングス

35,259

+9.6%

3,387

-6.6%

9.6%

28,728

15.6

1.6

11.4%

3288

オープンハウス

570,000

+5.5%

62,000

+7.3%

10.9%

325,190

5.3

2.3

32.3%

3294

イーグランド

19,069

-6.8%

814

-43.9%

4.3%

4,080

9.7

0.6

12.3%

3299

ムゲンエステート

45,517

+13.8%

3,219

+1.9%

7.1%

12,522

7.7

0.5

7.6%

8923

トーセイ

80,354

+32.3%

13,737

+8.2%

17.1%

50,289

5.6

0.8

15.3%

8934

サンフロンティア不動産

45,391

0.7

16.8%

8940

インテリックス

42,182

+14.1%

1,164

-30.4%

2.8%

4,779

9.2

0.4

8.0%

*単位:百万円、倍。売上高、営業利益は各社の今期予想。ROEは前期実績。時価総額、PER、PBRは2020年5月25日終値ベース。
サンフロンティア不動産の今期予想は未定。

 

【1-4 事業内容】

事業セグメントは「不動産売買事業」と「賃貸その他事業」の2つだが、売上高は不動産売買事業が2019年12月期で約92%と大部分を占めている。今後は不動産賃貸収入等安定的な収益源の拡大・強化も進めて行く。

 

 

<不動産売買事業>
不動産売買事業は不動産買取再販事業、不動産内外装工事事業、不動産流通事業の3事業から成るが、中心は不動産買取再販事業。

 

◎不動産買取再販事業
首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を中心に、区分所有マンション、投資用不動産、戸建等の中古不動産を買取り、築年数、専有面積、間取り、立地、管理状態等に応じたバリューアップを子会社(株)フジホーム等で行う。

 

主なバリューアップは、
*内外装工事
*建物の管理状況の改善
*経年劣化に伴う修繕工事
*空室の賃貸
*滞納家賃の解消実施
等で、バリューアップを行った物件を「再生不動産」として、主に初めて住宅を購入する一次取得者層、個人投資家、中小企業等に販売する。

 

(同社資料より)

 

買取り及び販売に際しては不動産仲介会社に仲介を依頼するが、顧客ニーズの変化や市場動向を把握するため、一部は(株)フジホームでも仲介を行っている。

 

顧客ニーズに的確、迅速に対応するため、区分所有マンション、投資用不動産(賃貸マンション、アパート、オフィスビル)、戸建等多様な物件を取り揃えている。
物件は、投資用不動産と居住用不動産とに分かれる。
投資用不動産は、投資家が利回りを求めるために購入する物件で、一棟賃貸マンションや一棟オフィスビルが主力で、その他、一棟アパート、投資用区分所有マンション等がある。
物件価格は平均1~2億円。
居住用不動産は、購入者等、自らが居住するために購入する物件で、区分所有マンションが中心で戸建物件等もある。主に一次取得者層を対象としており、物件価格は2~3千万円台が中心。
販売件数は2019年12月期、投資用不動産252件、居住用不動産157件の合計409件となっている。

 

同社では、営業担当者が買取りから、バリューアップ企画、販売に至るまで一貫して責任を持つ独自のビジネスフローを展開している。
営業担当者は、三井のリハウス、野村不動産アーバンネット、住友不動産販売、東急リバブル等、首都圏の不動産仲介会社に足を運び、個人や法人の売り物件情報を仕入れる。実際に足を運ばないと、まだ市場に出回っていない優良な物件情報を入手するのは難しいということだ。

 

これらの物件情報のうち、リノベーション等バリューアップを行えば適切な価格で再販が可能と判断した物件を買取り、(株)フジホームが施工管理し、協力会社でリフォームを行う。
営業担当者は、例えば3DKの中古マンションを2LDKに間取りを変更し再販する場合、その地域の特性を考えた上で、どんな層が、どのくらいの金額で買ってくれるかという出口までを考えた上で、リフォーム内容(間取り変更プランやリフォームの工事費用など)のアイデアも出す。

 

営業担当者が一貫して責任を持つと言っても、買取るには一定の基準がある。
物件価格と管理費のバランス、駅からの距離、バス便物件は取り扱わない等、具体的な条件を掲げた「買取り12ヶ条」と呼ばれるこの基準は、長年の経験の中から有効なものを成文化したもので、経験の少ない担当者でも判断が出来る同社独自のノウハウとなっている。また、上司である部長、課長などに相談し、適切なアドバイスを貰いながら仕事を進めて行く。
マンションの営業というとコミッションの高さから単独行動が多いという傾向が見られるが、同社の場合は同僚である営業担当にも積極的にアドバイスしたり、部下をしっかりと指導をしたりといった、チームで動く文化が根付いているということだ。加えて同社の場合、営業担当者のコミッション報酬は、再販金額ではなく、再販した際の利益に対して決められるため、むやみに仕入れて売れ残るというリスクも他社に比べて小さい。

 

◎不動産内外装工事事業
子会社(株)フジホームが買取った中古不動産の内外装工事を行う。一級建築士を始めとする工事関連資格保持者による的確な物件の調査・診断と年間500件を超える内外装工事で培ったノウハウが強み。
ムゲンエステートからの発注が9割方だが、外部案件も手掛けている。

 

◎不動産流通事業
ムゲンエステートが買取りした物件の販売に当たり、(株)フジホームが中古不動産情報をホームページや他社の運営する不動産情報サイトに掲載している。ムゲンエステートが買取する際の仲介も行っている。
また、エンドユーザーのニーズを的確に把握する事で、不動産買取再販事業とのシナジー効果を発揮している。

 

以上の各事業のほか、更なる成長を続ける企業体へ進化することを目指し、開発事業、不動産特定共同事業も開始した。

 

<賃貸その他事業>
不動産買取再販事業における販売効率化を推進している。

 

◎不動産賃貸事業
買取った投資用不動産及び固定資産物件をエンドユーザーに賃貸している。買取った物件は原則的には売却するが、売却までの間の賃貸収入を得ている。

 

◎不動産管理事業
買取った投資用不動産及び固定資産物件の賃貸管理業務。
建物の管理状況の改善、経年劣化に伴う修繕工事、空室の賃貸、滞納家賃の解消実施等によりバリューアップを図り、不動産投資利回りの向上に結び付けている。また、不動産買取再販事業における投資用不動産購入者の意向に応じて販売後も引き続き賃貸管理業務を行うケースもある。

 

【1-5 特徴と強み】

①シナジー経営
上記のように不動産買取再販のほか、不動産賃貸、不動産内外装工事、不動産流通、不動産管理の各事業を展開している。長年の実績に裏打ちされた各事業のノウハウが緊密な連携のもとに融合され、市場の変化に対し機動的な対応が可能で、各事業間のシナジーを生み出している。

 

②多彩な商品力と独自のポジショニング
中核事業の不動産買取再販事業においては、強力な情報収集力により、首都圏エリアの全ての中古不動産を網羅しており、区分所有マンション、投資用不動産(一棟賃貸マンション、一棟オフィスビル、一棟アパート)、戸建等多種多様な物件を取り揃え、顧客ニーズに的確かつ迅速に対応することができる。
これに加え、不動産仲介会社から仕入れた情報に対し全方位的に対応できるため、仲介会社からの評価も高く、仕上がった再販物件を仲介会社に持ち込むと、更に優良な仕入れ情報を入手することが出来るという好循環に繋がっている。
こうした多彩な商品力により中古不動産再生市場において独自のポジショニングを築いている。

 

③プロの目利き力
中古住宅流通・リフォーム市場で培ってきた情報収集力、投資判断力、物件管理能力、技術対応力等プロの目利き力を活かして優良な物件を市場に供給している。この他、安定した施工管理体制、長年培ってきた営業ノウハウ、約50行の金融機関との取引に基づく資金調達力も同社の強みとなっている。

 

 

2.2020年12月期第1四半期決算概要

(1)業績概要

 

19/12期1Q

構成比

20/12期1Q

構成比

前年同期比

売上高

8,826

100.0%

9,298

100.0%

+5.4%

売上総利益

1,491

16.9%

1,412

15.2%

-5.3%

販管費

764

8.7%

859

9.2%

+12.4%

営業利益

727

8.2%

553

5.9%

-23.9%

経常利益

563

6.4%

377

4.1%

-32.9%

四半期純利益

385

4.4%

251

2.7%

-34.8%

*単位:百万円

 

増収減益
売上高は前期比5.4%増の92億円。投資用不動産、居住用不動産とも平均販売単価が上昇、販売件数は減少した。
営業利益は同23.9%減の5億円。粗利額が同5.3%減少した一方人件費など販管費が同12.4%増加した。

 

(2)セグメント別動向

 

19/12期1Q

構成比

20/12期1Q

構成比

前年同期比

売上高

         

 不動産売買事業

8,007

90.7%

8,525

91.7%

+6.5%

 賃貸その他事業

818

9.3%

773

8.3%

-5.5%

合計

8,826

100.0%

9,298

100.0%

+5.4%

セグメント利益

         

 不動産売買事業

728

9.1%

681

8.0%

-6.4%

 賃貸その他事業

295

36.1%

244

31.6%

-17.3%

 調整額

-296

-372

合計

727

8.2%

553

5.9%

-23.9%

*単位:百万円。売上高は外部顧客への売上高。セグメント利益の構成比は売上高利益率。

 

賃貸その他事業における不動産賃貸収入は前年同期比6.2%減。

 

◎不動産売買事業の状況
①売上高・件数

 

19/12期1Q

20/12期1Q

前年同期比

売上高

7,978

8,489

+6.4%

 投資用

6,223

6,578

+5.7%

 居住用

1,754

1,910

+8.9%

販売件数

92

88

-4.3%

 投資用

41

39

-4.9%

 居住用

51

49

-3.9%

平均販売単価

86.7

96.4

+11.2%

 投資用

151.8

168.6

+11.1%

 居住用

34.4

38.9

+13.3%

*単位:百万円、件

 

*投資用不動産、居住用不動産共に増収。平均販売単価もともに上昇した。
*一棟用物件の平均販売単価は214.3百万円で前年同期比16.5%の下落。
*3億円超の投資用不動産販売は前年同期と同じく7件。10億円超は0件。
*エリア別では、投資用不動産で、東京都の平均販売単価は上昇も販売件数は減少。居住用不動産では、東京、神奈川で販売件数、平均販売単価ともに上昇した。
*海外投資家向け販売において前年同期比で売上高が減少する中、販売件数が増加。高価格帯の投資用物件の販売件数が減少したため、平均販売単価は減少した。

 

②販売用不動産の在庫状況

 

 

販売用不動産は引続き仕入を厳選し、在庫入れ替えを行っている。投資用不動産の在庫は前期末よりも2.5%増加した。

 

(3)財務状態

◎主要BS

 

19年12月末

20年3月末

 

19年12月末

20年3月末

流動資産

64,367

65,604

流動負債

12,185

14,207

 現預金

13,708

13,783

 買入債務

467

443

 販売用不動産

49,887

51,143

 短期有利子負債

10,340

12,820

 仕掛販売用不動産

147

157

固定負債

33,486

33,288

固定資産

4,096

4,131

 長期有利子負債

32,618

32,414

 有形固定資産

3,068

2,875

負債合計

45,671

47,495

 無形固定資産

83

85

純資産

22,840

22,292

 投資その他の資産

944

1,170

 利益剰余金

17,914

17,443

資産合計

68,512

69,788

負債純資産合計

68,512

69,788

*単位:百万円

 

販売用不動産が増加し資産合計は同12億円増加の697億円となった。短期有利子負債が増加したことなどから、負債合計は同18億円増加の474億円。純資産は利益剰余金の減少で同5億円減少の222億円。
この結果自己資本比率は前期末の33.2%から1.4pt低下し31.8%となった。有利子負債は同22億円増加の452億円。
有利子負債依存度は前期末比2.1pt上昇の64.8%、ネットD/Eレシオは、同0.13上昇の1.42倍。

 

 

3.2020年12月期業績予想

(1)業績予想

 

19/12期

構成比

20/12期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

39,677

100.0%

45,157

100.0%

+13.8%

20.6%

売上総利益

6,475

16.3%

7,394

16.4%

+14.2%

19.1%

販管費

3,318

8.4%

4,175

9.2%

+25.8%

20.6%

営業利益

3,157

8.0%

3,219

7.1%

+1.9%

17.2%

経常利益

2,493

6.3%

2,443

5.4%

-2.0%

15.5%

当期純利益

1,688

4.3%

1,595

3.5%

-5.5%

15.8%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。販管費は、売上総利益と営業利益の差額を(株)インベストメントブリッジが計算。

 

業績予想に変更無し。増収・営業増益
業績予想に変更は無い。売上高は前期比13.8%増の451億円の予想。不動産売買事業においては、不動産市場の動向を注視したバランスのとれた仕入と販売を考慮し、早期に稼働率改善等を図り、商品化へつなげていく。開発事業及び不動産特定共同事業は、2021年度以降の収益化を目指す。不動産賃貸事業は、不動産動向を見極め、キャッシュポジションの水準を勘案し、固定資産としての物件取得を進める。
営業利益は同1.9%増の32億円の予想。不動産価格の高騰や金融機関の融資厳格化の影響が継続すると想定し、不動産売買事業の粗利率は、前期とほぼ同水準と予想。また、広告宣伝費、本社移転費用、固定資産取得による租税公課の費用などの増加を見込む。
配当は前期比5.00円/株減配の25.00円/株の予定。予想配当性向は37.6%。

 

<不動産買取再販事業の状況>

 

17/12期

18/12期

19/12期

20/12期

(予)

前期比

進捗率

売上高

61,143

50,632

36,277

41,700

+14.9%

20.4%

 投資用

52,203

41,491

30,986

35,490

+14.5%

18.5%

 居住用

8,939

9,141

5,291

6,210

+17.4%

30.8%

販売件数

676

593

409

440

+7.6%

20.0%

 投資用

318

302

252

260

+3.2%

15.0%

 居住用

358

291

157

180

+14.6%

27.2%

平均販売単価

90.4

85.3

88.6

94.7

+6.8%

 投資用

164.1

137.3

122.9

136.5

+11.0%

 居住用

24.9

31.4

33.7

34.5

+2.4%

単位:百万円、件

 

(2)新型コロナウイルス感染拡大による影響

業績予想は据え置いたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響は現時点では今後どの程度の規模・期間になるのかなど不透明であるため、今後、状況が大きく変化し、合理的な算定が可能となり、開示が必要と判断された場合には、速やかに開示する考えだ。

 

●不動産売買事業
<不動産買取再販事業>
*販売契約済みの取引が、決済の期限を延長する事態が数件発生している。
*金融機関は中小企業の資金繰り支援要請に対応するため、エンドユーザーの融資に関しては、対応スピードの遅れや融資姿勢における一層の厳格化がみられる。
*先行き不透明感によるエンドユーザーの購入意欲が低下している。
*仕入方針を厳格化したため、仕入に関しては計画を若干下回るペースで推移している。

 

●賃貸その他事業
<不動産賃貸事業>
*訪日外国人の帰国、インバウンド向けのテナントの撤退、賃料支払猶予の要請増加などの影響がみられる。
*滞納者の増加も見込まれるが、国土交通省からの要請に基づき、柔軟な対応を行う。
<<動産内外装工事事業 >
*2月下旬からリフォーム資材に一部の供給の遅れがあったが、徐々に供給が再開している。引き渡しの早い物件から資材を優先的に使用し、完工できるよう対応している。
<発事業>
*開発周辺の住民明会を延期し、個別説明に切り替えるなど、計画以上に時間を要している。

 

4.中期3ヵ年経営計画の進捗

同社では2019年12月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を推進中である。

 

(1)概要

<経営方針>
「事業基盤を支える商品づくり」、「収益基盤を支えるネットワークづくり」、「経営基盤を支える人材・システムづくり」の3つを経営方針として、確かな経営基盤を作り上げ、更なる成長を続ける企業体へ進化する。

 

<位置づけ>
今回の中期経営計画は、第一次中期経営計画とし、その後策定予定の第二次、第三次中期経営計画による大きな成長に向けた強固な経営基盤を作り上げる再整備の期間と位置付けている。
既存事業をゼロベースで見直し、阻害要因を一つ一つ丁寧に拾い上げ、改善することで、経営方針にあるように、確かな経営基盤を作り上げ、更なる成長を続ける企業体への進化を目指す。
期間を固定するフィックス方式を採用し、目標達成に全社挙げて邁進する。

 

<事業方針>
上記の経営方針の下、6つの事業方針を掲げ、事業施策を実行する。

 

事業方針

 

事業施策

①環境変化や社会ニーズに対応したお客さまに喜ばれる商品の提供 グループ内で蓄積したリフォーム・リノベーションのノウハウを外部顧客向けの商品として提供する。不動産特定共同事業許可取得や投資顧問設立によって構築した事業基盤を活かし、時代のニーズに沿った新しい不動産関連商品の開発とともに新たな顧客層を深耕する。
②保有不動産の再生 エリアや建築物に合った用途変更(コンバージョン)や規模修繕を実施し、付加価値の最大化を図る。直近ではシェアハウスへのコンバージョンなども手掛けた。付加価値の高い物件開発を進める。
③商品・サービスを極める 空ビルや空室率の高い物件に対して、早期に稼働率改善を図ることで商品化を早め、在庫回転率の向上を図る。稼働率向上については賃貸部門と営業部門が連携し、目標を設定して達成を目指す。藤田社長がリーダーシップをとって進めていく。
施工後の点検項目を細部まで実施し、安全・安心・快適な物件提供を行い満足度向上を目指す。
中国人顧客などのニーズを吸い上げ、付加価値の高いインバウンド向けの物件開発を行う。
④不動産売買を極める 物件ごとの利益管理を再度徹底・見直し、コストをかけることでさらに付加価値を高めるなど、収益性の向上を図る。
昨年来の他社の事例を踏まえ、コンプライアンス強化によるリスク管理の徹底を図る。
海外投資家向けセミナーの開催等でニーズを収集し、海外投資家への販路を拡大する。
⑤多様なワークスタイルへの対応

⑥グループ力の更なる強化

ダイバーシティの推進による人材確保と育成、グループ内の人員配置の最適化人事や階層別研修実施による人材マネジメント、働く環境の整備、業務フロー見直しによる業務の見える化を実施する。

 

<定量目標>
以下のような数値目標の達成を目指す。
中長期的な安定成長のための財務安全性として、自己資本比率30%以上を維持する。

 

18/12期

19/12期

20/12期(予想)

21/12期(計画)

連結売上高

539

396

451

630

連結経常利益

52

24

24

55

連結自己資本比率

32.9%

33.2%

30%以上

*単位:億円。

 

(2)20年12月期第1四半期の具体的な取り組み

各経営方針に沿った具体的な取り組みは以下の通りである。

 

①不動産買取再販事業
*経営方針:事業基盤を支える商品づくり、収益基盤を支えるネットワークづくり

 

・持続的な成長に向け、マーケット動向を注視し、中長期的な付加価値向上が可能な物件を厳選して仕入れている。

 

(同社資料より)

 

・案件管理を強化するため、営業支援システムを導入し作業工数を抑制するほか、グループ間のリレーション強化による事業期間の短縮を図っている。営業担当者が買取りから、バリューアップ企画、販売に至るまで一貫して責任を持つ独自のビジネスフローを展開している同社においては、極めて重要な取り組みである。
・主力の買取再販に加え、開発事業を開始した。新築開発用の土地仕入および、設計、施工管理、運営管理のノウハウをさらに磨き、固定資産によるストック収入増加を目指す。

 

②不動産特定共同事業法に基づく事業の開始
*経営方針:事業基盤を支える商品づくり、収益基盤を支えるネットワークづくり

 

2018年12月期に取得した不動産特定共同事業許可に基づき、不動産特定共同事業をスタートさせた。
第一弾は、中古マンションの大規模リノベーションを行う「フォーチューンコート代々木プロジェクト」で、2020年7月に組合を組成する予定である。
このプロジェクトを始めとして、将来の資産設計や相続計画等に不動産投資を活用してもらうために小口商品の特徴をわかりやすく掲載する不動産情報提供サイト「ブドーさん」を開設した。
「備える不動産小口投資」「1口100万円からの不動産投資」を掲げ、不動産投資初心者にもわかりやすく不動産投資情報を提供する。

 

今後も居住利便性が高く、中長期的な賃料アッププランのもと、付加価値の高い投資商品を提案する。
適切なリノベーションの実施により、長期間にわたり快適に住み続けられる住宅を提供し、競争力、高稼働率を維持する考えだ。
加えて既存住宅ストックを有効活用することで建替えサイクルを延長し、建直しで生じる廃材等の環境負荷の低減も図る。

 

③クラウドファンディング事業を開始
*経営方針:事業基盤を支える商品づくり、収益基盤を支えるネットワークづくり

 

2020年1月、子会社 株式会社ムゲンファンディングが、貸付型ファンドのオンラインマーケット「Funds」を運営するファンズ株式会社(旧 株式会社クラウドポート)と業務提携契約を締結した。
不動産投資経験の少ない個人投資家に向け、資産運用の一つの選択肢として、小口の不動産投資サービスを提供する。

 

第一弾として、2020年2月、不動産買取再販事業の区分マンションの調達資金として「ムゲン買取再販事業ファンド#1」の募集を開始し、投資募集金額100%を達成した。
今後はその他の事業の資金調達手段としても活用を検討していく。
まずは、個人投資家に対する認知度を向上させることを主目的としている。

 

④フジホームWEBサイトリニューアル
*経営方針:事業基盤を支える商品づくり、収益基盤を支えるネットワークづくり

 

子会社フジホームのWEBサイトを全面的にリニューアル。物件情報検索機能の充実、施工事例の紹介に注力した。

 

⑤本社移転による働き方改革への取り組み
*経営方針:経営基盤を支える人材・システムづくり

 

2020年5月、本社を東京都千代田区大手町の大手町フィナンシャルシティ サウスタワーに移転し、本社、横浜を除く全支店、グループ会社をワンフロアに集約した。
集約によるグループ全体としての業務効率化に加え、ワークライフバランスの向上、社員相互のコミュニケーションの活性化、優秀な人材の継続的な確保が期待でき、新本社は新たな価値創出につながるものと考えている。

 

5.今後の注目点

業績予想を据え置いているが、新型コロナウイルスの影響は不透明で、投資家としては四半期ごとの開示を見守るしかない。
一方中期的には、既存事業をゼロベースで見直し、阻害要因を一つ一つ丁寧に拾い上げ、改善することで、確かな経営基盤を作り上げ、更なる成長を続ける企業体への進化を目指して取り組んでいる中期3ヵ年経営計画の進捗を注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態 監査役会設置会社
取締役 7名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年3月24日
<基本的な考え方>
当社は、社是として、経営の考え方の根幹であり社名の由来でもある『夢現』(夢を現実にし、理想を追求する)を実現し、企業価値の持続的向上を図るため、以下の三つの企業理念を掲げております。

 

・社会の繁栄に貢献し、成長し続けていきます。
・コンプライアンス経営に徹します。
・ステークホルダー満足度の充実につとめます。

 

当社では、この企業理念の実現のために最も必要な施策は、経営の透明性と健全性の確保及び環境の変化に迅速・適切に対応できる経営機能の強化であり、コーポレートガバナンスの確立が最重要課題であると認識し、(1)業務執行責任者に対する監督・牽制の強化、(2)情報開示による透明性の確保、(3)業務執行の管理体制の整備を推進しております。

 

また、当社取締役会は、実効性のあるガバナンスの枠組みを示しその実現に資することを目的として、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」(以下「当社ガイドライン」)を定めております。

 

「当社ガイドライン」の全文は、当社HPに掲載しておりますのでご参照ください。
→ https://www.mugen-estate.co.jp/ir/management/governance/pdf/CGguidelines_20200324.pdf

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2-4 議決権電子行使プラットフォームの利用等や招集通知の英訳】 現在、議決権電子行使プラットフォームの利用や招集通知の英訳を行っておりませんが、現状の株主構成や株式分布状況等を勘案すると、株主の議決権行使が問題なく行える環境にあると認識しております。

今後は、機関投資家や海外投資家の比率等の変化を踏まえて、議決権行使の環境整備や招集通知の英訳について検討してまいります。

【補充原則4-10-1 任意の仕組みの活用と独立社外取締役の関与・助言】 当社は、監査役会設置会社であり、取締役7名中2名を独立社外取締役として選任しております。独立社外取締役の人数は取締役会の過半数には達しておりませんが、個々の高度な独立性や高い専門的な知識と豊富な経験を活かすことで、適切な関与・助言を得る体制を整えていると認識しております。

現在、任意の諮問委員会を設置しておりませんが、今後は、統治機能の更なる充実を図る中で、独立社外取締役のより適切な関与・助言を得るべく任意の諮問委員会等の設置を検討してまいります。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】 当社は、政策保有株式としての上場株式を保有しておりませんが、今後、相手企業の関係強化や提携を図る目的で取得の必要が生じた場合には、中長期的な経済合理性等を検証し、その結果を開示するとともに、株式保有を行う方針であります。
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 当社は、経営企画室をIR担当部門として、当該部門の担当役員が統括し、関連部門と連携を図りながら、個人投資家向け会社説明会やアナリスト・機関投資家向け決算説明会等を定期的に開催しております。また、株主との建設的な対話を通じて双方向のコミュニケーションの充実を図り、経営に関する分析や評価を吸収し経営陣幹部に報告しております。なお、“株主との対話”についての基本方針を「当社ガイドライン」に定め、当社HPにて開示しております。

 

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