(4829) 日本エンタープライズ株式会社 増収増益、システム開発の好調見込まれる

2020/02/28
 

植田 勝典 社長

日本エンタープライズ株式会社(4829)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表者

植田 勝典

所在地

東京都渋谷区渋谷1-17-8

決算月

5月

HP

http://www.nihon-e.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

256円

40,133,000株

10,274百万円

2.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

2.00円

0.8%

3.99円

64.2倍

123.18円

2.1倍

*株価は01/17終値。ROEは前期末実績。BPSは第2四半期決算短信より。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年5月(実)

5,530

219

252

327

8.07

3.00

2017年5月(実)

4,838

192

229

99

2.45

2.00

2018年5月(実)

3,892

174

257

166

4.11

2.00

2019年5月(実)

3,413

242

292

97

2.44

2.00

2020年5月(予)

3,850

275

300

160

3.99

2.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

日本エンタープライズ株式会社の2020年5月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年5月期第2四半期決算概要
3.セグメント別事業概況
4.2020年5月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:CSR・ESG活動>
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20/5期上期は前年同期比9.2%の増収、同74.6%の営業増益。キッティングの伸長と脱通信キャリアプラットフォームを進めるコンテンツの底打ちでクリエーション事業が同13.4%増加した他、トータルソリューションを展開したソリューション事業もシステムの受託開発を中心に同3.6%増と堅調に推移。売上が増加する中、貸倒引当金の戻し入れ等で販管費が減少したため、営業利益率が7.6%と2.8ポイント改善した。
  • 通期予想に変更はなく、前期比12.8%の増収、同13.5%の営業増益。下期は、引き続きキッティングやAI・IoT・セキュリティ関連でのシステム開発の好調が見込まれる中、コンテンツサービスが四半期ベースで増収に転じる他、中古端末の買取販売を行う端末周辺事業(ソリューション事業)が立ち上がってくる。1株当たり2円の期末配当を予定している(予想配当性向50.2%)。
  • 通期予想に対する進捗率は、売上高45.7%(通期実績ベースの前年同期47.2%)、営業利益48.9%(同31.8%)と順調。業績のけん引役であるキッティングやシステム開発に先行きの不安がない事に加え、コンテンツサービスにおける非キャリアプラットフォームへのシフトの進展、更には端末周辺事業が徐々に本格化してくる事を考えると、通期業績は上振れする可能性が高い。これら事業はいずれもモーメンタムが良好であり、今期に限らず、来期以降の見通しも明るい。このため、同社に対する投資家の関心は高く、1月15日に開催された第2四半期決算説明会では活発な質疑応答が行われた。今後の展開に期待したい。

1.会社概要

モバイルソリューションカンパニーを標榜。個人向けスマートフォンアプリの開発・提供、企業向けシステム開発、モバイルキッティング、e コマース、AI チャットボット等のサービスを提供しており、事業セグメントは、自社IP(Intellectual Property)を活用したアプリケーションやシステムを提供する「クリエーション事業」と企業の業務用ソフトウェアやシステムの開発を請け負う「ソリューション事業」に分かれる。また、新たなサービスの創出に向け、IoT、ブロックチェーンなどの実証事業に積極的に取り組んでいる。
2001年2月16日に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ市場)へ株式上場。2007年7月10日の東京証券取引所市場第二部への市場変更を経て、2014年2月28日に同市場第一部の指定を受けた。

 

【経営理念】

同社の経営理念は「綱領・信条・五精神」及び「日エン経営原則」に刻まれており、「これを繰り返し学ぶ事で基本理念を永遠に堅持していく」事が同社社員の責務。こうした正しい考えと正しい行動の下にこそ、長い目で見た「株主価値の極大化」、すなわち「資本という大切な“お預かりもの”を1円もムダにせず、最大化していくことが可能である」と言うのが同社を率いる植田社長の考えである。そもそも同社は、「社業を通じて社会のお役に立ちたい」という強い一念から植田社長が興した会社であり、様々なIT機器を通して便利で面白い多種多様なコンテンツを制作し提供する事でユーザーの満足度を高めると共に社会貢献していく事を目指している。こうした植田社長の経営哲学の下、創業初年度の経常利益は、ほぼ全額が日本赤十字社・各地社会福祉協議会・児童養護施設等に寄付され、東日本大震災の折には、被災した方々の支援と東北地方の復興に寄与するべく日本赤十字社に寄付が行われた。

 

1-1 企業グループ連結子会社8社、非連結子会社1社

連結子会社は、アプリ/WEBサイト企画・開発・運用、業務支援等の(株)ダイブ、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、アプリ/システム開発~運用、デバッグ等の(株)フォー・クオリア、音声通信関連ソリューションの(株)and One、スマートフォン向けキッティング支援ツール等の(株)プロモート、アプリ/システム開発、HEMS等の(株)会津ラボ、太陽光発電の山口再エネ・ファクトリー(株)、電子商取引サービス「いなせり」の企画・開発・運営を手掛ける いなせり(株)の国内8社。非連結子会社は、コンテンツ運営等を行うNE銀潤(株)の国内1社。

 

1-2 事業概要

事業は、クリエーション事業とソリューション事業に分かれ、19/5期の売上構成比は、それぞれ54.3%、45.7%。

 

クリエーション事業 : 自社IP(Intellectual Property)を活用したアプリケーション・システムの提供
コンテンツサービス、ビジネスサポートサービス、及び太陽光発電等、自社で保有する権利や資産を活用したサービスを提供している。

 

コンテンツサービスでは、総合電子書籍サービスやゲーム等のエンターテイメント系のコンテンツ、「ATIS交通情報サービス(交通情報)」、「女性のリズム手帳(ヘルスケア)」、「フリマjp(フリマ)」、更には消費者向け魚介ECサイト「いなせり市場」といったライフスタイル系のコンテンツを提供している。

 

コンテンツ

サービス

エンター

テインメント

・話題のコミック・小説を中心に、ビジネス・実用書・雑誌・写真集等、多彩なジャンルをカバーした総合電子書籍サービスやエンターテインメント関連のコンテンツ

 

 

ライフスタイル ・各IC間の所要時間がわかる詳細渋滞マップや通過地点のリアルタイムの道路状況を届ける交通ライブ映像等、全国の高速道路・一般道路の詳細情報を知りたいユーザーに役立つ機能を搭載した実用アプリ

・20万ユーザーを擁する女性のための「美」と「健康」のサポートアプリ、ブランド品からファッションアイテム、電化製品までオールジャンルの商品を取扱うフリーマーケットアプリ

・一般消費者が、仲卸の目利きに適った魚介商品を購入できるECサイト

 

 

 

 

一方、ビジネスサポートサービスでは、キッティング作業における人的負担の軽減と生産性・正確性を向上させる支援ツール『Kitting-One』の開発・販売及び『Kitting-One』を使ったキッティング作業の代行を行う「キッティングサービス(役務の提供)」、車両動態管理クラウド『iGPS on NET』等の提供も手掛ける「ATIS交通情報サービス」、操作性・柔軟性に優れたビジネスフォン環境を提供するIP-PBXソフトウェア『Primus』等の開発・販売を行っている「音声ソリューション」、東京魚市場卸協同組合所属仲卸業者のインターネット水産物販売サイト「いなせり」の運営といったサービスを提供しており、新規事業・サービスの開発につなげるべく、IoT・ブロックチェーン等の実証事業も手掛けている。

 

ビジネス

サポート

サービス

キッティング ・人的作業の軽減を可能とし「生産性」「正確性」の向上を実現できるキッティング作業支援ツール「Kitting-One」の開発・販売、及び「Kitting-One」を使ったキッティングサービス(役務)の提供
ATIS交通情報 ・高速・貸切バス等の運送業、運輸・物流業、配送・引越業等の法人向けに、全国の高速・一般道路の渋滞、事故、規制情報等最新の交通事象をマップ上で確認できるクラウド型の交通情報サービス『ATISon Cloud』の提供

・ケーブルテレビ、コミュニティFM、新聞社等へのデータ配信提供等のストック型ビジネス

・GPS(IP無線)と道路交通情報連動型車両動態管理サービスに予定実績管理機能を追加した『iGPSonNETプレミアム』

音声

ソリューション

・操作性・柔軟性に優れたビジネスフォン環境を提供するIP-PBXソフトウェア『Primus』やVoIPエンジン『Primus SDK』の開発・販売
教育・調達・観光 ・eラーニング、リバースオークション、観光促進等
いなせり ・飲食事業者向け鮮魚eコマース『いなせり』を東京魚市場卸協同組合の仲卸との連携による水産物販売サービス
実証事業 ・「ブロックチェーンと多機能『SMART PLUG』を活用した電力取引」の実証事業(株式会社エナリスとの共同事業)
その他 太陽光発電 ・山口県での再生可能エネルギーによる地域活性化事業。小中学校体育館の屋根に設置した太陽光発電設備を活用して環境や再生エネルギーについて学べる環境の提供

(同社資料を基に作成)

 

キッティング支援ツール「Kitting-One」
キッティング支援ツール「Kitting-One」は、従来、1台ずつ手作業で行われていた端末導入時の個別設定(端末の設定や業務で必要なアプリのインストール等)を支援するRPAツール。キッティングから品質問題(設定漏れやミス)の確認までをワンストップでカバーする。ユーザーのパソコンにインストールし、ユーザーが『Kitting-One』を使ってキッティングを行う。同社は、ユーザーがキッティングを行った端末1台毎にライセンス収入を得ている。通信キャリアや携帯電話の大手販売代理店等を顧客とし、これらの顧客が、企業や金融機関等、端末販売先の要請に応じてキッティングを行う際にキッティング支援ツールが使われる。作業における人的負担の軽減と生産性・正確性の向上に寄与するもので、スマートフォン向けのキッティング支援ツールとしては国内唯一の商品であり、競合する商品がない。大手企業に採用され、キッティング実施台数はサービス開始から約5万台に及ぶ。2019年8月には特許を取得している(第6560065号)。

 

スマートフォンを中心とした国内モバイル通信市場は、コンシューマ向けの成長が一段落する中、「働き方改革」や「IoT」の普及もあり、法人向け市場が拡大している。また、キッティング業界では、1台ずつ手作業で個別設定対応を行う単純作業から、ツールを活用した業務効率化の需要が高まっている。企業におけるスマートフォン、タブレット、PC等のIT機器の活用の拡大と新しい端末への買い替え需要でキッティング市場は更なる成長が期待でき、キッティング業務を効率化するツールの需要拡大が予想される。

 

(同社資料より)

 

ソリューション事業 : 企業の業務用ソフトウェアやシステムの受託開発
システム開発・運用サービスとその他に分かれる。システム開発・運用サービスでは、クリエーション事業で培ったノウハウを活かし、受託開発(スクラッチ開発)を中心としたトータルソリューションサービスに力を入れている他、中古端末買取販売サービスの育成に取り組んでいる。トータルソリューションサービスでは、アプリ開発やサイト構築等の受託に加え、サーバ設計~構築、運用監視、デバッグ、カスタマーサポート、コンサルティング等をワンストップで提供している。

 

一方、中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)は、キッティングサービス(役務の提供)や支援ツール導入の取引先である企業や携帯電話販社を中心に仕入先が順調に拡大しており、端末の安定調達に向けた取り組みが進んでいる。また、取り扱い台数の増加に伴い販売先の新規開拓も進んでいる。

 

2019年6月28日には、中古端末販売に欠かせない、「データ消去」や価格を左右する「グレーディング(査定)」等のサービス提供に向け、業界団体であるリユースモバイルジャパンにも加入した。電気通信事業法が一部改正され、2019年10月から携帯端末と通信料金の完全分離が実施された。これにより携帯端末価格の値引きが抑制されるため、中古端末の需要拡大が予想される(既に中古端末のマーケットは、スマートフォンを中心に拡大傾向)。

 

 

システム開発・運用サービス ソリューションサービス

需要が増えている、AI、IoT、セキュリティ関連システムにフォーカスし、コンサルティングから開発、保守・運用まで、市場のニーズに合わせたトータルソリューションサービスを提供。

中古端末買取販売サービス

中古端末を買い取りバイヤーに販売するサービス。厳正なグレーディング(査定)に加え、リファービッシュ(中古品等の端末を新品に準じる状況に仕上げる)の提供を目指している。

その他 広告代理業務等。

(同社資料を基に作成)

 

2.2020年5月期第2四半期決算概要

2-1 上期連結業績

19/5期 上期

構成比

20/5期 上期

構成比

前年同期比

売上高

1,611

100.0%

1,759

100.0%

+9.2%

売上総利益

747

46.4%

772

43.9%

+3.3%

販管費

670

41.6%

637

36.2%

-4.9%

営業利益

77

4.8%

134

7.6%

+74.6%

経常利益

96

6.0%

154

8.8%

+60.3%

親会社株主帰属利益

27

1.7%

107

6.1%

+286.1%

* 単位:百万円

 

前年同期比9.2%の増収、同74.6%の営業増益
売上高は前年同期比9.2%増の17億59百万円。キッティングの伸長と脱通信キャリアプラットフォームを進めるコンテンツサービスの底打ちでクリエーション事業が同13.4%増加した他、AI、IoT、セキュリティ等の分野でトータルソリューションを展開したソリューション事業も同3.6%増と堅調に推移した。

 

営業利益は同74.6%増の1億34百万円。大型のキッティング案件の獲得やコンテンツサービスにおける非通信キャリアのプラットフォームへのシフト等で原価率が上昇したものの、売上の増加で吸収して売上総利益が同3.3%増加。一方、販管費は、広告宣伝費(19百万円増)が増加したものの、貸倒引当金の戻し入れ(32百万円)や人件費(12百万円減)の減少等で同4.9%減少した。
最終利益が1億7百万円と前年同期の27百万円を大きく上回ったのは、子会社の損益改善などに伴う税負担率の低下による(52.3%→22.9%)。

 

 

クリエーション事業

19/5期 上期

構成比

20/5期 上期

構成比

前年同期比

コンテンツ

640

69.9%

639

61.5%

-0.2%

ビジネスサポート

241

26.3%

367

35.4%

+52.5%

その他(太陽光発電)

34

3.8%

32

3.1%

-6.0%

セグメント売上高

917

100.0%

1,040

100.0%

+13.4%

連結調整前利益

271

29.6%

336

32.4%

+24.2%

* 単位:百万円

 

コンテンツサービスは、通信キャリアが運営するプラットフォーム市場が縮小する中、AppStoreやGooglePlay等の通信キャリア以外のプラットフォームへの展開に注力した事でゲームを中心にエンターテインメントコンテンツの売上が増加した。ビジネスサポートサービスは、役務の提供とライセンス料の増加によるキッティングの大幅な伸長で売上が同52.5%増加。その他(太陽光発電)は天候等の影響で若干の振れはあるが、安定した稼働が続いている。

 

ソリューション事業

19/5期 上期

構成比

20/5期 上期

構成比

前年同期比

システム開発・運用

690

99.4%

719

99.9%

+4.1%

その他

3

0.6%

0

0.1%

-84.7%

セグメント売上高

694

100.0%

719

100.0%

+3.6%

連結調整前利益

75

10.8%

94

13.1%

+25.5%

* 単位:百万円

 

システム運用・開発は、企業の活発なIT投資が続く中、グループ力を活かしたトータルソリューションの提供で案件の取込みが進んだ。尚、19/5上期のその他には、広告代理の収益(3百万円)が計上されている。

 

2-2 第2四半期(9-11月)業績

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

売上高

775

835

794

1,007

871

888

売上原価

405

458

456

536

484

502

販管費

337

332

337

307

304

333

うち広告宣伝費

29

26

35

41

36

38

営業利益

32

44

1

163

82

52

経常利益

43

52

31

164

93

60

原価率

52.3%

54.9%

57.4%

53.3%

55.6%

56.6%

販管費率

43.6%

39.8%

42.4%

30.5%

34.9%

37.6%

* 単位:百万円

 

第2四半期(9-11月)の売上高は前四半期比1.9%増の8億88百万円。大型案件の反動によるキッティングの減少等でクリエーションの売上が同11.7%減少したものの、トータルソリューションの提供で企業の旺盛なIT投資需要を取り込んだソリューション事業の売上が同25.4%増と伸びた。

 

営業利益は同37.0%減の52百万円。ソリューション事業の売上構成比の上昇で原価率が上昇する中、第1四半期に貸倒引当金の戻し入れ(32百万円)があった反動で販管費が増加したため営業減益となった。もっとも、この影響を考慮すると実質的には営業増益。着実に収益性が改善しており、前年同期との比較では16.4%の営業増益。

 

クリエーション事業

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

コンテンツ

331

309

303

347

322

317

ビジネスサポート

122

118

106

152

211

156

その他

19

15

10

17

19

13

売上高

473

443

420

517

552

487

セグメント利益

145

125

96

181

178

158

* 単位:百万円

 

第2四半期(9-11月)は売上高4億87百万円(前四半期比11.7%減)、セグメン利益1億58百万円(同11.3%減)。コンテンツサービスは通信キャリア以外のプラットフォームへの展開が進んでおり、前四半期比1.4%の減収ながら、第1四半期の同7.4%の減収から下げ幅を縮小。一方、前年同期比では10.0%の増収。ビジネスサポートサービスは、第1四半期にキッティングで大型の役務提供案件があった反動で前四半期比25.9%の減収となったが、キッティング支援ツール「Kitting-One」のライセンス収入は倍増しており、第2四半期としては売上高が過去最高となった(17/5期以降)。

 

ソリューション事業

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

システム開発・運用

300

390

373

487

319

400

その他

1

2

1

2

0

0

売上高

301

392

374

489

319

400

セグメント利益

28

46

32

91

45

49

* 単位:百万円

 

第2四半期(9-11月)は売上高4億円(前四半期比25.4%増)、セグメント利益49百万円(同7.9%増)。システム開発・運用サービスにおいて、AI、IoT、セキュリティ等の分野にフォーカスすると共に、子会社の開発力を活かしたグループシナジーの発揮で、企業によるIT投資需要の取込みが進んだ。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

19年5月

19年11月

19年5月

19年11月

現預金

4,345

4,571

仕入債務

130

116

売上債権

567

486

未払法人税・消費税等

79

97

流動資産

5,154

5,281

退職給付に係る負債

55

59

有形固定資産

372

363

有利子負債

277

317

無形固定資産

334

312

負債

822

890

投資その他

174

175

純資産

5,213

5,242

固定資産

881

851

負債・純資産合計

6,035

6,133

* 単位:百万円

 

第2四半期末の総資産は前期末との比較で97百万円増の61億33百万円。好調な業績と売上債権の回収が進んだ事による営業CFの改善等で現預金が増加した。自己資本比率80.6%(前期末81.4%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

19/5期 上期

20/5期 上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

111

331

+220

+198.0%

投資キャッシュ・フロー(B)

-61

-39

+21

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

49

291

+242

+488.0%

財務キャッシュ・フロー

-105

-55

+49

現金及び現金同等物期末残高

4,077

4,492

+414

+10.2%

* 単位:百万円

 

税引前利益1億61百万円(前年同期96百万円)、減価償却費88百万円(同96百万円)、法人税等△38百万円(同△56百万円)で3億31百万円の営業CFを確保した。

 

3.セグメント別事業概況

3-1.クリエーション事業

コンテンツサービス
AppStoreやGooglePlay等の通信キャリア以外が運営するプラットフォームへシフトしつつ、トレンドコンテンツに挑戦している。

 

連結子会社交通情報サービス(株)が提供する「ATIS交通情報サービス」では、全国の高速・一般道路の渋滞、事故、規制情報等の交通事象をマップ上でリアルタイムに確認できる個人向けアプリ「ATIS交通情報」にドライブレコーダー機能を追加した(2019年12月25日)。市販のスマホホルダーにスマホを設置してアプリを起動するだけで使用可能(衝撃検知時の録画は、前後10秒間、30秒間、60秒間から選択でき、手動録画も可能)。ドライブレコーダーの機能性を向上させると共に、アプリ「ATIS交通情報」のサービスも更に拡充させていく考え。

 

(同社資料より)

 

キッティング
スマートフォンを中心とした国内モバイル通信市場は、コンシューマ向けの成長が一段落する中、「働き方改革」や「IoT」の普及もあり、法人向け市場が拡大している。また、キッティング業界では、1台ずつ手作業で個別設定対応を行う単純作業から、ツールを活用した業務効率化の需要が高まっている。企業におけるスマートフォン、タブレット、PC等のIT機器の活用の拡大と新しい端末への買い替え需要でキッティング市場は更なる成長が期待でき、キッティング業務を効率化するツールの需要拡大が予想される。こうした中、「Kitting-One」は大手キャリアに採用された他、キッティングサービス(役務の提供)を含めて、携帯電話の大手販売代理店等での利用も広がっている。

 

「いなせり」
連結子会社いなせり(株)が豊洲市場の高品質な魚介商品を購入できる鮮魚eコマースとして、飲食事業者向け鮮魚eコマース「いなせり(BtoB)」と一般消費者向け鮮魚eコマース「いなせり市場(BtoC)」を展開している。「いなせり」については、品揃え拡充の要望に応えて2019年12月に魚料理の添え物となる青果の販売を開始した。更なる登録店舗数増加と利用拡大に取り組んでいく。一方、「いなせり市場」については、2019年11月にサブスクリプション型の「豊洲仲卸厳選・お楽しみ月額パック(月6,000円)」の提供を開始した。SNSの開設によるPR強化で利用者を拡大させていく考え。

 

IP-PBXサービス
IP-PBXソフトウェア「Primus」を提供している連結子会社(株)and Oneが、(株)クロノス(東京都港区、代表取締役 前澤芳樹)と提携し、2019年12月にクラウドシステム・IVR(自動音声応答)・SMS(ショートメール)を組み合わせたクラウド型コールシステム「T-Macss」(ティーマックス)の提供を開始した。

 

「T-Macss」は、入電に対して自動受付で担当者(オペレーター)へ振り分けるIVRや、音声メッセージで待機案内等をするACD(着信呼自動分配装置)機能に加え、SMSに対応した機能を備える。電話が込み合っている場合、オペレーターが空き次第コールバックしたり、WebサイトのURLを知らせたりする事で顧客のストレスを低減させる事ができるうえ、開封率の高いSMSの送信による潜在顧客のつなぎとめ効果も期待できる(コールセンターで問い合わせ電話が受信可能電話回線数を上回り発生する、いわゆる“あふれ呼”は、潜在顧客獲得の機会損失になると問題視されている)。(株)and One は、IP-PBXソフトウェア「Primus」と「T-Macss」をセットで販売する事で、交換機からIVR、ACD、SMSまでの一気通貫のサービスが可能になる。

 

尚、(株)クロノスはインフラの設計・運用に強みを持つソフトウェア開発企業であり、SMSをコミュニケーションツールとしてサービス提供している。また、「T-Macss」は、(株)フューチャートの採用管理システム「bizpla」にも採用され、採用管理CTIシステム「T-Macss for bizpla」として各企業の採用活動に利用されている。

 

実証実験
連結子会社(株)会津ラボは、福島県が実施する「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業」に2017年から3年計画で参画している。この一環として、2019年12月に「模擬DR(ディマンド・レスポンス)実証実験」を福島県内等で開始した。DRとは、卸市場価格の高騰時や系統信頼性の低下時に、電気料金価格の設定やインセンティブの支払いを前提に需要家の電力消費パターンを変化させる(電力の使用を抑制させる)事。「模擬DR実証実験」では、福島県内等の一般家庭約300世帯に「SMART PLUG」を配布(約1,500個)し、専用のスマートフォンアプリを通じて節電要請を行い、節電状況に応じて付与するインセンティブ効果や、消費電力の記録・分析から得られる効果の検証を行い、DRの有効性を測定する。

 

3-2.ソリューション事業

クリエーション事業で培ったノウハウを活かした受託開発(スクラッチ開発)を中心としたトータルソリューションサービスが様々な分野で伸びている。また、今後の市場拡大が期待できる中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)を開始した。

 

トータルソリューションサービス
企業によるIT投資の増額基調が続く中、働き方改革やオリンピック等を背景に需要が拡大している、AI、IoT、セキュリティ関連システムにフォーカスして、コンサルティングから、開発、保守・運用までを一貫してカバーするトータルソリューションサービスを強化している。
大手エレクトロニクス企業、大手アミューズメント企業、大手セキュリティ企業等で既に実績をあげており、例えば、「月額決済サービス」システムでは、コンサルティングから携わり、システム開発から運用・保守まで一括でサービスを提供している。

 

月額決済サービス導入開発支援

 

 

(同社資料より)

個別に行われている決済手続きを、契約している通信キャリアのID等で簡単に支払いできる決済システム。

手軽さだけでなく、ECサイトでの離脱低減を実現。更に、各キャリアとのやり取りを同社が担うため、窓口を一本化できる。

 

 

Zoom米国本社との顧客紹介契約締結
2020年1月、アプリ・WEBサイト企画・開発・運用、及び業務支援を行う連結子会社(株)ダイブがZoom米国本社(米国カリフォルニア州)と顧客紹介契約を締結した。
Zoom社はビデオ中心のユニファイドコミュニケーション(通信サービスの統合)プラットフォームを展開する企業。特にソフトウェアベースのウェブ/ビデオ会議ソリューション「Zoom」は、高品質・高画質に加え、場所・デバイスを選ばずに参加できる使いやすさが評価されている。全世界で多数の企業・団体に導入されており、日本国内でも急速に普及が進んでいる。

 

今回の契約は「Zoom」の導入を検討している国内企業をZoom社に紹介するもので、ダイブの法人向け営業力が認められ、実現した。大手法人向けに各種アプリケーション開発を行っているダイブは、他社との差別化を図るため、近年、北米企業との提携に注力しており、今回の契約は初の北米企業との締結である。

 

 

中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)
調査会社によると、2018年の国内中古流通台数は約130万台(2017年117万台)だったが、2020年には流通台数が300万台に達する見込み。世界市場は国内の約10倍、米国に限っても約2倍の市場規模であり、国内市場の拡大余地は大きい。ただ、個人情報の流出が懸念されているため、同社の古端末買取販売サービスでは、端末のリファービッシュを実施する。事業の拡大に不可欠な仕入先については、既存事業で培った既存顧客の活用に加え、幅広く開拓していく考え。

 

(同社資料より)

 

 

4.2020年5月期業績予想

4-1連結業績

19/5期実績

構成比

20/5期予想

構成比

前期比

売上高

3,413

100.0%

3,850

100.0%

+12.8%

営業利益

242

7.1%

275

7.1%

+13.5%

経常利益

292

8.6%

300

7.8%

+2.5%

親会社株主帰属利益

97

2.9%

160

4.2%

+63.6%

*単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、前期比12.8%の増収、同13.5%の営業増益
売上高は前期比12.8%増の38億50百万円。下期も引き続きキッティングを中心にしたビジネスサポートサービス(クリエーション事業)やAI・IoT・セキュリティ関連でのシステム受託開発・運用サービス(ソリューション事業)の好調が見込まれる。加えて、通信キャリア以外のプラットフォームへの展開でコンテンツサービスが増収に転じる他、端末周辺事業の収益貢献が徐々に始まる。

 

利益面では、売上の増加で営業利益が2億75百万円と同13.5%増加する見込み。補助金収入の減少で経常利益が同2.5%の増加にとどまるものの、特別損失の一巡等で最終利益は1億60百万円と同63.6%増加する見込み。

 

配当は1株当たり2円の期末配当を予定している(予想配当性向50.2%)。

 

 

5.今後の注目点

通期予想に対する進捗率は、売上高45.7%(通期実績ベースの前年同期47.2%)、営業利益48.9%(同31.8%)、経常利益51.6%(同33.0%)、純利益67.5%(同28.6%)。業績のけん引役であるキッティングやシステム開発に先行きの不安がない事に加え、コンテンツサービスにおける非キャリアプラットフォームへのシフトの進展、更には端末周辺事業が徐々に本格化してくる事を考えると、通期業績は上振れする可能性が高い。これら事業はいずれもモーメンタムが良好であり、今期に限らず、来期以降の見通しも明るい。加えて、ドライブレコーダー機能を追加した個人向けアプリ「ATIS交通情報」や「いなせり市場」でのサブスクリプションモデルのサービス開始等の材料も有する。このため、同社に対する投資家の関心は高く、1月15日に開催された第2四半期決算説明会では活発な質疑応答が行われた。今後の展開に期待したい。

 

<参考:CSR・ESG活動>

同社は、創業以来の企業理念(「我々は商人たるの本分に徹しその活動を通じ社会に貢献し、文化の進展に寄与することを我々の真の目的とします」)の下、社業を通じて顧客、取引先、株主・投資家、地域社会、従業員等すべてのステークホルダーの物心共の幸せに貢献する事がグループの社会的責任と認識し、CSR・ESG活動の一環として下記の取組みを進めている。

 

環境(E)面では、環境への取組みとして、太陽光パネルによる発電(山口県宇部市)等を通じ持続可能な社会の実現に向けた取組みを進めている。

 

社会(S)面では、新技術創出支援に力を入れており、総務省が実施し、株式会社角川アスキー総合研究所が業務実施機関として運営する、これからの日本を創るInnovator(開拓者)を支援する「異能vationプログラム」に協賛し、新技術の創出を支援している。また、慈善事業・支援活動として、創業初年度の経常利益ほぼ全額を日本赤十字社・各地社会福祉協議会・児童養護施設等に寄付して以来、毎年、最終利益の1%の寄付を行っている。東日本大地震の際は、被災された方々の一日も早い復興を願い、日本赤十字社通じて義援金を拠出した。この他、一般社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)が認定するDCA資格取得等を通じて、インターネットによる健全な情報発信を推進する等、健全な情報発信にも力を入れている。

 

* 同社資料より

 

ガバナンス(G)面では、顧客満足への取組みとして、「お客様第一主義を貫く」ことを「日エン経営原則」に掲げ、品質・価格・サービスの全てにおいて顧客の要望に真摯に向き合い、顧客満足を追及している。また、品質へのコミットメントとして、「ダントツ品質」をスローガンに顧客の期待を超える価値の提供に努めている他、「カスタマーサポートセンター」を自社で運営し、的確・迅速な顧客の要望への対応や寄せられた要望のサービスや商品への反映による改善・品質向上に取組んでいる。
ステークホルダーに対しては、同社に対する理解を深めてもらうべく、適時かつ適切な経営状況・事業活動状況の開示に努めている。
特に株主に対しては、株主総会を株主と直接対話する貴重な場と考え、多くの株主が出席できるよう、毎年8月に東京都内のホテルで開催している事に加え、同社への理解を深めてもらうべく、株主総会会場に同社サービスが実体験できる場を設けている他、映像で案内している。社員に対しては、社員が個々の能力を十分に発揮できるよう、「毎週2日のノー残業デー」、「子育て支援」などワーク・ライフ・バランスに配慮した、職場環境づくりに努めている他、社員の親睦と健康増進を図るため、社内クラブ活動を支援している。
この他、情報保護への取組みとして、「情報セキュリティ基本方針」並びに「個人情報保護方針」を定め、同社が取扱う情報資産の適切な保護・管理に努めている。また、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO27001認証」を取得している。

 

(同社資料より)

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 5名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年08月23日)
基本的な考え方
当社グループは、経営目標の達成の為に取締役会が行う意思決定について、事業リスク回避または軽減を補完しつつ、監査役会による適法性の監視・取締役の不正な業務執行の抑止、また、会社の意思決定の迅速化と経営責任の明確化を実現する企業組織体制の確立により、株主利益の最大化を図ることがコーポレート・ガバナンスと考えております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
<補充原則4-1-3:CEOなどの後継者計画>
当社は、経営陣幹部向けに「植田塾」を開催し、経営者として求められる「戦略思考」「リーダーシップ」等の資質の醸成を図っておりますが、現在、最高経営責任者等の後継者計画の策定を行っておりません。今後、後継者候補の育成計画の策定及び監督を検討してまいります。なお、計画の策定にあたっては、十分な時間と資源をかけて後継者候補の育成が行われていくよう努めます。

 

<原則4-11:取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件>
当社の取締役会は、取締役は7名以内、監査役は4名以内の規模で構成しております。社外取締役は2名程度、監査役は過半数を社外監査役とすることを基本的な考え方としております。現在、当社の取締役会には、女性若しくは外国人の取締役・監査役は存在しておりませんが、取締役会としての役割・責務を実効的に果たすための多様性と適正規模を両立した形で構成していると認識しております。将来的には、ジェンダー及び国際性の面における多様性の確保に努めてまいります。また、当社は監査役として公認会計士を1名選任しており、財務会計に関する適切な知見を有している監査役を選任しております。

 

<開示している主な原則>
<原則5-1:株主との建設的な対話に関する方針>
当社では、「IR活動の基本姿勢と開示基準」、「情報開示の方法と情報の公平性」、「将来の見通しについて」、「IR自粛期間について」からなるIR基本方針を策定しており、当社ウェブサイトにて公表しております。
●IR基本方針
URL:https://www.nihon-e.co.jp/ir/management/line.html

 

現在、当社ではこのIR基本方針に基づき、株主との建設的な対話という観点から、以下の取り組みを積極的に実施しております。
(1)当社では常務取締役管理本部長を内部情報管理責任者に指定し、経理部、総務部、人事・広報部等のIR活動に関連する部署を管掌し、日常的な部署間の連携を図っております。
(2)社内各部門の会社情報については、内部情報管理責任者が一元的に把握・管理し、的確な経営判断のもと、有機的な連携に努め、IRに関連する他部署との情報共有を密にすることで、連携強化を図るよう努めております。
(3)広報・IRグループにおいて、株主・投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けると共に、アナリスト向けに決算説明会を開催し、社長又は常務取締役が説明を行っております。
(4)IR活動及びそのフィードバック並びに株主異動等の状況については、適宜取締役会へ報告を行い、取締役や監査役との情報共有を図っております。
(5)投資家と対話をする際は、当社の公表済みの情報を用いた企業価値向上に関する議論を対話のテーマとすることにより、インサイダー情報管理に留意しております。

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