(8793) NECキャピタルソリューション株式会社 リサ事業、その他事業が増収牽引

2019/12/05

 

今関 智雄 社長

NECキャピタルソリューション株式会社(8793)

 

 

会社情報

市場

東証1部

業種

その他金融業(金融・保険業)

代表取締役社長

今関 智雄

所在地

東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟

決算月

3月末日

HP

https://www.necap.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,305円

21,533,400株

49,634百万円

7.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

60.00円

2.6%

301.86円

7.6倍

4,131.64円

0.6倍

*株価は11/1終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月

202,637

4,870

6,031

3,334

154.85

44.00

2017年3月

215,718

6,024

6,537

3,517

163.35

44.00

2018年3月

231,432

12,674

13,455

6,006

278.93

50.00

2019年3月

204,131

8,929

8,900

6,391

296.81

55.00

2020年3月(予)

210,000

10,000

10,000

6,500

301.86

60.00

*予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

NECキャピタルソリューション株式会社の2020年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期第2四半期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.中期計画2017の進捗状況
5.今後の注目点
<参考1:中期計画2017について>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 20年3月期第2四半期の売上高は、前年同期比13.4%増の1,145億円。リース需要が旺盛なことを受け賃貸・割賦事業が堅調だったことに加え、リサ事業が大幅増収、その他の事業における大型売却があった。経常利益は同112.1%増の87億円。リサ事業における収益計上、為替評価益の発生で大幅増益となった。

     

  • 業績予想に変更は無い。売上高は前期比2.9%増の2,100億円、経常利益は同12.3%増の100億円の予想。前期2期連続で過去最高を更新した当期純利益は同1.7%増の65億円で連続して最高を更新する見込み。主力の賃貸・割賦事業では、リース需要は下期に消費増税の反動減が見込まれるものの、営業資産の積み上げが進むと予想。売上総利益は前期に下げ止まり、今期は反転を実現している。他セグメントも堅調な推移を見込んでいる。配当は前期比5円/株増配の60円/株の予定。予想配当性向は19.9%。

     

  • 上期実績の通期予想に対する進捗率は売上高で5割強、利益は8割を超えているが、例年上期偏重の傾向にあるため通期予想は据え置いている。中期計画2017策定時の計画値「経常利益 85億円、当期純利益 45億円」を上回る今期予想「経常利益 100億円、当期純利益 65億円」に対し、第3四半期、第4四半期でどれだけ積み上げを行っていくことができるかを注目したい。また、「コア領域の拡充と新事業の収益化」を目指す次の3ヵ年計画における具体的な取り組みにも期待したい。

     

1.会社概要

NECグループに属する金融サービス会社。リースを中心とした賃貸・割賦事業が売上のおよそ8割を占める。官公庁・自治体に強みを持つNECとの関係をベースとする安定した事業基盤、ICTと金融の融合などが大きな特長・強み。事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するCSV経営を目指している。

 

【1-1 沿革】

1978年11月にNECグループの金融サービス会社として設立される。(社名:「日本電気リース株式会社」)
1996年3月には稼動資産残高(購入価格ベース)が1兆円を突破した。
2005年2月に東京証券取引所市場第二部に上場し、2006年3月には東京証券取引所市場第一部銘柄として指定された。
2008年11月に社名を「NECキャピタルソリューション株式会社」に変更。
2010年12月に「株式会社リサ・パートナーズ」を子会社化し、リサ事業をスタート。
2012年4月に社会イノベーションに多大な価値を提供する可能性のあるベンチャー企業に投資を行う「イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合」を設立。
同年10月に香港法人「日本電氣租賃香港有限公司」を設立したのを皮切りに、シンガポール、マレーシア、タイにも子会社を設立し海外展開を積極的に推進している。

 

【1-2 経営理念など】

企業理念

私たちは「Capital Solution」を通してより豊かな社会の実現に貢献します。

 

従業員全員が企業理念に基づくそれぞれのミッション、バリュー、ビジョンを明確に捉え、顧客の信頼に足るベストパートナーを目指している。

 

また、同社では以下のようなグループビジョンを2013年10月に制定した。
今後10年間にわたり、グループで共有して目指す方向性であり、ありたい姿を文言化したもの。
同社を取り巻く外部環境及び内部環境は絶えず変化する事が予想されるが、どんな変化に対しても事業展開がぶれないよう、同社の拠り所とするものである。

 

グループビジョン

お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー

 

社会価値向上

 

お客様と共にCSV(Creating Shared Value)経営を実践することで、社会価値向上を目指します。

 

グローバルに

 

日本のみならずアジア地域を中心に、海外進出するお客様、現地のお客様に対し、サービスを提供します。

 

サービス・カンパニー

 

お客様が抱える課題を解決するために、より質の高いサービスの提供を目指します。

(サービスとは、当社における金融サービス、ICT周辺サービスの総称)

 

このグループビジョンでは、事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するCSV(Creating Shared Value)の概念に基づく経営を目指すという方向性を打ち出した。

 

近年、企業が永続的に存在するためには、より豊かな社会の創造に貢献する社会価値を創造することが求められるようになっており、同社もCSV経営という考えを中心に据えて、10年後のありたい姿を明確にし、持続的な成長を目指していきたいと考えている。

 

同社はこれまでもCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を強く意識した事業展開を行ってきた。
リース事業が循環型産業であることにいち早く着目し、リース満了品の3R(リデュース、リユース、リサイクル)処理や環境に配慮した機器をリースする「エコリース」の拡販に取り組んできたのはその一例。
また同社が得意とする官公庁・自治体向けのビジネスでは、社会インフラ構築そのものの支援をしている。
このような素地を足掛かりに、CSRから一歩進んで、事業そのものを通した社会価値の向上に貢献していきたいと考えている。

 

【1-3 市場環境など】

◎リースの仕組み
同社の売上の大半を占める「リース取引」の仕組みは以下のとおり。

 

プレーヤーは以下の3者。

賃借人(ユーザー)

リース契約に基づき、物件を借り、使用し、対価としてリース料を支払う。

賃貸人(リース会社)

賃借人が希望する物件を調達し、貸与し、対価としてリース料を受け取る。

サプライヤー(メーカー等)

対象物件を賃貸人に販売する。

 

 

日本では、リース会計基準により、リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに区分される。

 

<ファイナンス・リース>
以下の2要件を満たすリースを指す。
①リース期間の中途での解約が禁止されている。(中途解約禁止)
②物件金額と付随費用(賃貸人の調達金利、税金、保険、手数料など)合計が、リース料で概ね全額(90%以上)回収されること(フルペイアウト)。つまりリース料総額は「物件金額+付随費用」となる。
ユーザーには、事務管理の省力化、コスト削減、多額の初期費用が不要など様々なメリットが生じる。

 

事務管理の省力化、コスト削減

機器等をユーザー自身で購入・所有する場合、資金調達、動産保険の契約、減価償却費の計算、固定資産税の申告等の事務管理が発生するが、リースを利用した場合は、月々のリース料を支払うだけで、諸手続きをユーザーが行う必要が無い。

コスト把握が容易

支払は月々のリース料に一本化され、設備投資にかかった費用を容易に管理することができる。

多額の初期費用が不要

 

リース料はリース期間内で原則定額。初期費用として多額の資金を用意する必要がない。

陳腐化に弾力的に対応

 

リース期間は、ユーザーの設備使用予定期間に合わせて一定の範囲内で設定することができ、設備の陳腐化に柔軟に対応が可能。

 

ファイナンス・リース取引は、さらに、「所有権移転外ファイナンス・リース」と「所有権移転ファイナンス・リース」に区分される。
「所有権移転ファイナンス・リース」は譲渡条件付きリース、購入選択権付リース、特別仕様物件のリースの3つで、限定的。
「所有権移転外ファイナンス・リース」は、「所有権移転ファイナンス・リース」以外のファイナンス・リースで、ファイナンス・リースの大部分は「所有権移転外ファイナンス・リース」となる。

 

 

<オペレーティング・リース>
ファイナンス・リース以外のリースのこと。
つまり、上の2要件のうち両方、もしくはいずれかを満たさないリース。
通常は「②フルぺイアウト」の要件を満たさない仕組みのリースである。
将来価値が見込まれる機器や設備に関し、その価値をあらかじめ見込んだリーススキーム。

 

オペレーティング・リースを行う場合は、まずリース終了時点におけるリース物件の中古物件価値(残存価額)を見積もり、物件金額から残存価額を差し引いた金額をベースにしてリース料を設定する。
残存価額は、ユーザーがオペレーティング・リース取引を希望する物件について、リース会社が「中古市場の有無や動向」、「経済情勢」、「同一物件の過去の実績」、「ユーザーの使用状況」などから将来の市場価値を予測して設定する。
このため、オペレーティング・リースにおけるリース料総額は、物件金額よりも小さく、ファイナンス・リースと比べて安くなる。

 

 

同社が扱うのは主として「ファイナンス・リース」だが、一部航空機、商業施設などを対象としたオペレーティング・リースも取り扱っている。

 

◎市場動向・規模
公益社団法人リース事業協会の統計によれば、2018年度のリース取扱高は5兆円程度。
2008年4月に導入された新リース会計基準(※)及び同年9月に発生したリーマンショックの影響により、取扱高は1991年度をピークに大きく減少してきた。
ただ、中堅・中小企業には新リース基準が適用されないこと、前述の様なオフバランス以外のファイナンス・リースのメリットは依然魅力的であることから、近年は5兆円近辺で推移している。

 

また、2019年1月には国際会計基準(IFRS)と米国会計基準(USGAAP)におけるリース会計基準が改正された。従来のオペレーティング・リースでは、借手は資産を「オフバランス」として処理できるため、総資産利益率などの財務指標を向上させることも可能であったが、今回のリース会計基準の適用により借手はオペレーティング・リースにおいてもファイナンス・リースと同様、リース開始日に「リース負債」と「使用権資産」を貸借対照表にそれぞれ計上しなければならない。国際会計基準(IFRS)および米国会計基準(USGAAP)における改正であるため現時点では影響は限定的であるが、将来的には日本基準における改正の可能性も見込まれる。

 

こうした環境下、リース会社間の競争に加えて、マイナス金利政策の導入で事業環境が悪化している地方金融機関が、リース会社の取引先を含めたこれまでは融資対象としていなかった先に対しても貸出を積極化させており、競争は激化している。
サービスの多様性、高付加価値化など、差別化要因の確立がリース会社各社に求められている。

 

(※)新リース会計基準:2008年4月の導入。それまでは、所有権移転外ファイナンス・リース取引は所有権の移転が無いことから賃貸借処理(オフバランス)が認められていたが、新基準では原則廃止となり、 売買処理(オンバランス)が原則となった。原則としてリース開始時に貸借対照表に「リース資産」、「リース債務」を計上。また、リース資産に係わる減価償却費とリース債務に係わる利息相当額を、それぞれ損益計算書に計上する。
適用対象会社は、金融商品取引法が適用される上場会社並びにその子会社及び関連会社または、会社法上の大会社 (資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)。
中小企業は、従来通り、賃貸借処理(オフバランス)を継続できる。資本金5億円未満かつ負債総額200億円未満の株式会社、特例有限会社、合名会社、合資会社または合同会社は、新リース会計基準の適用を受けず、従来通りの賃貸借処理(オフバランス)が認められている。

 

◎同業他社比較

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

利益率

ROE

ROA

時価総額

PER

PBR

7148

FPG

24,315

-8.6

14,045

-2.7

57.8%

32.3

13.6

103,639

10.0

3.1

8424

芙蓉総合リース

700,000

+13.2

39,500

+10.5

5.6%

10.1

1.6

218,072

8.3

0.8

8425

興銀リース

450,000

+16.9

24,200

+5.6

5.4%

10.3

1.2

152,157

8.9

0.9

8439

東京センチュリ

1,100,000

+3.0

79,300

+2.0

7.2%

12.7

2.2

558,713

10.2

1.3

8566

リコーリース

329,100

+4.8

17,800

+3.0

5.4%

7.0

1.7

114,975

9.4

0.6

8586

日立キャピタル

466,500

+2.9

45,000

+37.6

9.6%

306,199

8.8

0.8

8591

オリックス

2,434,864

-14.9

329,438

-2.0

13.5%

11.6

3.4

2,276,375

6.8

0.8

8593

三菱UFJリース

865,000

+0.1

178,000

+12.4

20.6%

9.4

1.5

601,104

8.5

0.8

8793

NECCソリュ

210,000

+2.9

10,000

+12.0

4.8%

7.4

1.0

49,634

7.6

0.6

※売上高、営業利益は今期予想、単位は百万円。ROE、ROAは前期実績、単位は%。時価総額、PER(予)・PBR(実)は11月1日終値ベース。単位は百万円、倍。オリックスは前期実績。

 

多くのリース会社が、PBR1倍割れの状況にある。
同社も収益性の向上に加え、投資家に対する認知度の向上や、特徴・強み・競争優位性・持続的な利益拡大の道筋などの理解促進が不可欠である。

 

【1-4 事業内容】

1.事業セグメント
事業セグメントは賃貸・割賦事業、ファイナンス事業、リサ事業、その他の事業の計4つ。

 

 

◎賃貸・割賦事業
リース事業および割賦販売事業を行っている。

 

ファイナンス・リース以外には、保守契約をセットしたスキームである「メンテナンス・リース」、航空機・商業施設などを対象とした「オペレーティング・リース」、ICT機器を対象とした解約自由の残価設定型オペレーティング・リースである「Nレンタル」サービスなど、様々なサービスを提供している。

 

オペレーティング・リースは通常、経年による価値低下が緩やかでリース契約期間満了後もある程度の価格で売却可能な飛行機や建物といった資産が対象となり、陳腐化の速いPC等ICT機器は対象とし難いが、同社の「Nレンタル」サービスは、ICT機器を再生することで価値を高めてこの課題をクリアし、国内外の中古市場へ販売している。

 

(Nレンタル イメージ)

 

(同社HPより)

 

このようにリースされた製品は必ず返却されることから、同社ではリースは資源循環型社会に貢献するサービスであると捉え、リース満了品のうち再販可能なICT製品をリユース中心に3R処理し、資源循環型社会づくりにつなげている。
割賦販売はユーザーの設備投資における資金ニーズや設備所有ニーズに対して、ユーザーに代わって同社が設備を購入し、ユーザーへ割賦販売する事業。購入代金や金利等は分割で回収する。

 

(同社HPより)

 

近年は、取り扱う営業資産の多様化を進めており、太陽光パネル等の再生可能エネルギー関連設備、建物、航空機等にも取り組んでいる。

 

◎ファイナンス事業
主に「企業向け貸付」や「ファクタリング」から構成される。
企業向け貸付は、主に「各種債権流動化プログラムの提供」や「設備投資向けストラクチャードファイナンスの提供」等を行う事業。
ファクタリングは売掛金の早期回収を実現し、企業の資金調達負担を軽減するサービスである。
この他、有価証券の投資業務等も行っている。

 

◎リサ事業
金融サービスの多様化を目的に2010年12月に連結子会社とした株式会社リサ・パートナーズ(以下、リサ)が展開する事業。
顧客企業の抱える経営課題に対し、資金面で支援する「投融資」と、金融・不動産を軸に専門的見地から助言する「アドバイザリー」の両面から、解決策を提供している。
事業成長支援、資本効率改善、債権の健全化、不動産の有効活用など、幅広い課題にワンストップで対応できるのは、各専門分野のプロフェッショナルが多数在籍しているリサならではの強みである。

 

中でもリサが得意としているのが、180を超える地域金融機関とのネットワークを活かした地域企業の活性化支援。
その強みを活かして2014年3月には、日本政策投資銀行、地域経済活性化支援機構と共に「観光活性化マザーファンド」を設立している。
このファンドは全国各地の観光産業の活性化を目的とし、宿泊、飲食、観光物産品の製造・販売、地方交通等、観光関連の事業を幅広く投資対象としている。同ファンドを通じて、国内各地で、地域ごとの豊かな観光資源を活かした経済活性化に貢献することで、観光大国としての日本経済の成長に寄与していきたいと考えている。

 

◎その他の事業
ストラクチャードファイナンスの組成手数料等の様々な手数料収入が計上される他、賃貸・割賦事業において同社が保有するリース満了・中途解約物件を売却する中古品売買、保守料の回収、顧客の債権管理に関する業務効率化やアウトソーシングニーズに対し同社が業務を代行するサービスなどがある。
CSV観点の新しいニーズの開拓と事業化を推進する中で新たに取り組むこととなった太陽光発電事業、PFI事業、ヘルスケア事業の手数料もこのセグメントに含まれる。

 

(ICT関連事業)
ICTのライフサイクルである導入、利用、廃棄まですべての領域で顧客のICT資産の運用・管理の最適化をBPO(Business Process Outsourcing)型クラウドサービスで支援している。
また契約満了後のICT機器は、子会社のキャピテック&リブートテクノロジーサービス株式会社によって再生し、海外を含む独自のルートで中古販売している。

 

(PFI事業)
PFI(Private Finance Initiative)は、民間資金を活用した社会資本整備、つまり民間の資金、経営能力及び技術能力を活用して公共施設等の建設、維持管理、運営等を行う官民連携事業。
一般的にはプロジェクト・ファイナンスによる資金調達の組成が必要となるため、専門スタッフが事業に最適なストラクチャーを構築し、低利な資金調達の支援、官公庁・自治体への提案書作成等、事業者側に立ったサービス提供を行っている。

 

(ヘルスケア事業)
投資家から募った資金をヘルスケア施設に特化して投資する不動産投資信託証券「ヘルスケア REIT」を中心に展開。ヘルスケアREIT向けのウェア・ハウジング・ビジネスを通してREITの運営をサポートしている。

 

(エネルギー事業)
CSV経営の一つとして、SPC(特定目的会社)を通した太陽光発電事業の他、地域新電力会社の運営、電力の買い取り及び販売を行っている。
2015年10月には、「エネルギーの地産地消」というコンセプトの下、浜松市や株式会社NTTファシリティーズ、浜松市内の金融機関や民間企業と共に地域新電力会社「株式会社浜松新電力」を設立した。
浜松新電力は、市内の太陽光発電事業者等から電力を買い取り、小中学校をはじめとした市内の公共機関を中心に電力を販売している。地域産のエネルギーを地域内で消費することで、外部からの供給に頼らない電力の安定確保が実現でき、加えて、電力供給に関わる資金や資源を市内で循環させることで、地域経済の活性化にもつなげていく。

 

2.海外展開
現在、香港、シンガポール、マレーシア、タイに現地法人を設立し、海外展開を進めている。
通常海外拠点設立に際しては、相当の準備と期間が必要になるが、同社はNECの海外戦略に呼応し、既にNECがサービスを展開し注力しているマーケットに対し、金融面のサポートをするという形をとりリスクの低減を図っている。
現地企業への対応、アジアへの進出を図る日本企業の支援等も含め、事業を拡大していく考えだ。

 

【1-5 特長と強み】

①NECとの関係をベースとした安定した事業基盤
NECグループに属する金融サービス会社である同社は、設立以来NECと顧客基盤を共有してきたことから、主力の賃貸・割賦事業で契約実行高の約6割を占める官公庁・自治体や大企業を中心とする安定した顧客基盤を有している。
また、契約実行高の3分の2近くがNECやNEC系販社からのものとなっている。NEC製品については、メンテナンスリースやベンダー・ファイナンス・プログラム等、NECの製品やサービスと組み合わせたメーカー系ならではのリースも提供している。

 

NECとは戦略的なパートナーシップの構築を推進している。
NECが顧客に行うシステム等の提案活動に際し、同社は販売方法について検討を行い、「チームNEC」として提案活動を行っている。
NECは競合先との差別化を図った提案ができ、同社は他の金融サービス会社と競合することなく商談を進めることができ、両社ともメリットを享受している。

 

リース契約は平均5年程度という長期間にわたり、顧客と取引をするビジネス。
メーカーが機器を販売した後も、同社と顧客の取引は続いており、新たな顧客の課題を知ることもでき、こうした顧客との関係から、同社からNECに新規のビジネスチャンスを紹介することもある。

 

②「ICT」と「金融」の融合
様々な種類の設備についてリースを提供している同社だが、中でもNECの販売促進のための金融会社として歩んできた経緯から、ICT製品のリースの取扱割合が約8割と高くなっている。
こうしたバックボーンを背景に、多くのリース会社の中で同社の存在を特徴づけているキーワードが『「ICT」と「金融」の融合』だ。
「ICT」と「金融」が融合した同社ならではのサービスの代表例が「PITマネージドサービス」。
利用に際して各種の設定や管理が必要となるPCを始め様々なデバイスやソフトウェアなどICT資産の「調達、展開から運用管理・資産処分」に至るまでのライフサイクルを管理する各種サービスをワンストップで提供するBPO型クラウドサービスである。

 

(同社HPより)

 

パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレット端末等のマルチデバイスに柔軟に対応し、NECに限らず複数のメーカーを取り扱い、顧客の状況に合わせたベストな提案を行っている。
また、最新の技術・サービスを取り入れたクラウドサービスにより、トータルコストの削減とクオリティ維持に貢献している。
加えて、サービスデスクを運営し、コンプライアンスやセキュリティを考慮した各種サービスを提供して顧客のバックオフィス機能の業務を代行する。

 

NECとの戦略的な連携という強固な事業基盤の上で、ICTに関する豊富な知見を武器に、幅広い金融ソリューションを提供しているのがNECキャピタルソリューション株式会社である。

 

③CSV経営
同社を特徴づけるもう一つのキーワードがCSV経営だ。
2013年10月、自社の存在意義を明確にし、持続的成長を追求するためには決してぶれることの無い指針が必要と考え、採り入れた。

 

前述の様にCSVは、事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するという考え方。
2011年、「競争戦略論」で有名なマイケル・ポーター教授が、ハーバード・ビジネス・レビューで提唱した。
社会に対する責任や活動としてはCSRが有名だが、CSRが、コンプライアンス(法令順守)や、環境マネジメント、フィランソロピー(社会貢献的活動)など本業の周辺における活動であるのに対して、CSVは、本業、事業そのものでの戦略的展開が重視される。
CSVは、CSRより一歩進んで、社会的価値の実現を通じて企業価値、事業価値や競争力を向上させる新しい動きとして理解されはじめている。

 

同社はこれまでもCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を強く意識した事業展開を行ってきた。
リース事業が循環型産業であることにいち早く着目し、リース満了品の3R(リデュース、リユース、リサイクル)処理や環境に配慮した機器をリースする「エコリース」の拡販に取り組んできたのはその一例。
また同社が得意とする官公庁・自治体向けのビジネスでは、社会インフラ構築そのものの支援をしており、それは同社のCSV経営の中核に位置付けられるものである。
同社ではCSV経営は、全社員が自分の部署において何をなすべきかを話し合ったほか、社長が支店を含めた全部門と議論するなど理解、浸透を図った結果しっかりと定着している。加えて、中期計画2017の策定を契機に改めてリマインド、ブラッシュアップを図る為社長が全社員と議論する場を設けた。

 

以下はCSV経営実践の具体的な取り組みである。

 

取り組み事例①:光海底ケーブルプロジェクト向けシンジケートローンを組成
2018年4月、日本・グアム・オーストラリアを結ぶ大容量光海底ケーブルプロジェクト向けシンジケートローンをリードアレンジャーとして組成した。

 

このプロジェクトは、日本・グアム・オーストラリアを結ぶ大容量光海底ケーブルシステムの建設・運用をするもので、建設はNECが請負い、運用は RTI Connectivity Pte. Ltd.(シンガポール)が行う。
プロジェクト資金は、国内金融機関 8 社で組成したシンジケートローンで調達され、NECキャピタルソリューションはリードアレンジャーとしてこのシンジケートローンを組成し、貸付人としても参画する。
クラウドサービスや新たな産業アプリケーションを背景に、通信需要が拡大の一途を辿る中、国際通信の99%は海底ケーブルによって賄われており、海底ケーブルは今日のデジタル社会に不可欠な通信インフラとなっている。
同プロジェクトは、拡大する通信需要に応えるとともに、アジア・オーストラリア地域における迂回ルートとしても期待されるなど、重要な役割を担っている。

 

今回のプロジェクトは、社会の価値向上に資することに加え、新中期計画2017の重要な事業戦略の一つと位置付ける「NECとの戦略的なパートナーシップの確立と深耕」においても、NECにおけるNECキャピタルソリューションのプレゼンスを更に大きく向上させるものといえよう。

 

取り組み事例②:(仮称)お茶と宇治のまち歴史公園整備運営事業」に係る事業契約を締結
2018年11月、他7社で組成するコンソーシアムを通じ、特別目的会社(SPC)、株式会社宇治まちづくり創生ネットワークを設立し、同年10月16日付で宇治市と「(仮称)お茶と宇治のまち歴史公園整備運営事業」に係る事業契約を締結した。

 

この事業は、宇治まちづくり創生ネットワークが、施設の設計・建設から維持管理・運営を一貫して行うPFI事業。
同社は同事業の代表企業を務めるとともに、出資・SPC管理等を行い、同事業を積極的に進めていく方針である。
株式会社宇治まちづくり創生ネットワークの代表者にはNECキャピタルソリューションの執行役員である林隆志氏が就任した。

 

「宇治まちづくり創生ネットワーク」という会社名には、地域の団体や企業とともに地域一帯のまちづくりを担っていく、という意味を込めている。同施設が中心となって市民や地域団体とともに、地域の活性化や宇治のブランド力向上につながる事業に取り組んでいく。
同社は、2017年4月に発表した「中期計画2017」において、PFI・PPP事業(※)の拡大を戦略のひとつに掲げているが、今回の運営事業は、代表企業として同事業に参画する初めての取り組みである。

 

※PPP/PFI事業
「PFI」とは、Private Finance Initiativeの頭文字を取ったもので、民間資金を活用した社会資本整備、つまり民間の資金、経営能力および技術能力を活用して公共施設等の建設、維持管理、運営等を行う官民連携事業のこと。「PPP」とはPublic Private Partnershipの頭文字を取ったもので、官公庁と民間事業者がパートナーを組んで事業を行うこと。従来公営で行われてきた事業に、民間事業者が事業の計画段階から参加して、設備は官公庁が保有したまま、設備投資や運営を民間事業者に任せる民間委託などを含む手法を指す。

 

【1-6 ROE分析】

 

2014/3期

2015/3期

2016/3期

2017/3期

2018/3期

2019/3期

ROE (%)

7.2

3.9

4.4

4.5

7.3

7.4

 売上高当期純利益率(%)

2.19

1.32

1.65

1.63

2.60

3.13

 総資産回転率(回)

0.32

0.28

0.25

0.26

0.26

0.23

 レバレッジ(倍)

10.32

10.36

10.89

10.89

10.79

10.39

 

19年3月期の売上高当期純利益率は前期比0.5ポイント上昇。今期予想も同水準である。
後述のように、同社では最終的に株主一定規模のリース資産を保有する必要があるため業態的に総資産回転率の上昇はなかなか難しいだろうが、マージンの着実な向上によるROEの上昇が望まれる。

 

【1-7 株主還元について】

主力の事業であるリースは、契約期間が長く、定期的にリース料を受領するビジネスモデルであるため、ベースとなる収益は安定的な推移となっている。こうした事業の特性から、配当方針も安定配当を第一とし44円/株を続けていたが、2018年3月期に上場来最高益を計上したことや、昨今の株式市場における配当性向の動向などを勘案して、同期に初の増配を行い50円/株(配当性向17.9%)とした。前2019年3月期も55円/株(配当性向18.5%)と連続して増配を行い、今2020年3月期も5円増配の60円/株(配当性向19.9%)とする予定である。
今後も安定配当を基本方針としつつも、配当性向についても25%を目指すべき水準とし、配当額を決定していく考えだ。

 

また、保有期間および保有株式数に応じた株主優待制度を設けており、3月末現在の株主を対象に年に一度実施している。株主優待品の発送は7月初旬の予定。

該当要件

優待品

1単元(100株)以上の株式を1年未満保有

オンラインカタログギフト  2,000円相当

1単元(100株)以上の株式を1年以上保有

オンラインカタログギフト  3,000円相当

5単元(500株)以上の株式を1年未満保有

オンラインカタログギフト 10,000円相当

5単元(500株)以上の株式を1年以上保有

オンラインカタログギフト 15,000円相当

 

株主が事前に優待品の辞退を申し出た場合は、同社より優待品相当額を寄付する計画。(寄付先は未定)

 

2.2020年3月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

19/3期2Q

対売上比

20/3期2Q

対売上比

前年同期比

売上高

101,011

100.0%

114,573

100.0%

+13.4%

売上総利益

12,110

12.0%

17,182

15.0%

+41.9%

販管費

7,409

7.3%

8,976

7.8%

+21.1%

営業利益

4,700

4.7%

8,205

7.2%

+74.6%

経常利益

4,120

4.1%

8,740

7.6%

+112.1%

四半期純利益

2,691

2.7%

5,365

4.7%

+99.3%

*単位:百万円

 

各事業とも堅調で増収増益。
売上高は、前年同期比13.4%増の1,145億円。賃貸・割賦事業が堅調だったことに加え、リサ事業が大幅増収、その他事業における大型売却があった。
経常利益は同112.1%増の87億円。リサ事業における収益計上、為替評価益の発生で大幅増益となった。また、額は小さいものの、営業資産残高の増加を背景に、基軸となる賃貸・割賦事業の売上総利益が2019年3月期に前期比下げ止まり、当第1四半期以降は反転を実現させ、その改善幅が拡大している点は明るい兆しと言える。

 

(2)事業別動向

売上高

19/3期2Q

構成比

20/3期2Q

構成比

前年同期比

賃貸・割賦

83,282

82.4%

84,841

74.0%

+1.9%

ファイナンス

3,039

3.0%

3,288

2.9%

+8.2%

リサ

8,281

8.2%

14,987

13.1%

+81.0%

その他

6,436

6.4%

11,501

10.0%

+78.7%

調整

-28

-45

合計

101,011

100.0%

114,573

100.0%

+13.4%

営業利益

 

 

 

 

 

賃貸・割賦

2,497

3.0%

1,810

2.1%

-27.5%

ファイナンス

2,002

65.9%

1,442

43.9%

-28.0%

リサ

1,466

17.7%

6,028

40.2%

+311.1%

その他

-351

-250

調整

-914

-825

合計

4,700

4.7%

8,205

7.2%

+74.6%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高に対する利益率。

 

*賃貸・割賦事業
増収・減益。
2019年度第2四半期の業界全体のリース取扱高は前期比14.2%と2桁増。同社の主力である情報通信機器のリース取扱高も同28.8%の増加と市場全体を上回る伸び。また倒産件数は増加したものの負債総額は減少し、事業環境は総じて堅調である。

 

営業資産残高増で増収も、与信関連戻入益の減少および販管費増加により営業利益は減益。
契約実行高は、官公庁・自治体における複数の大型案件獲得に加え、ベンダーファイナンスやICTレンタル等の強化施策により前年同期比30.7%増と大幅に伸長。
OS Windouws10への更新需要、POSなど省力化投資に加え消費税増税の駆け込み需要もありリース需要を確実に取り込んだ。
成約高は官公庁・民需領域ともに大型案件を複数受注しこちらも同44.7%増と好調だった。

 

*ファイナンス事業
増収・減益。
売上高は企業融資が伸長し増収。
与信関連戻入益の減少により営業利益は減益。
契約形態別の契約実行高は、一括ファクタリングが減少した一方、企業融資が増加し堅調に推移した。
業種別契約実行高では、製造業や不動産業を中心に増加した。

 

*リサ事業
ファンドビジネスに加え不動産売却等により、売上高、利益ともに大幅に増加した。
案件による波はあるものの、ポートフォリオの拡充で安定的に収益を上げられるようになってきたと会社側は考えている。

 

(アセットビジネス)
投資有価証券売却益や配当収益の計上により、増収増益となった。

 

(不動産)
大型の販売用不動産の売却の計上により増収増益。

 

(アドバイザリー)
M&A等の手数料収入を安定的に確保し、ほぼ前年並みの売上・利益だった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年3月末

19年9月末

 

19年3月末

19年9月末

流動資産

780,629

808,246

流動負債

415,890

426,370

 現預金

21,041

19,564

 買入債務

20,351

19,184

 リース債権及び

 リース投資資産

431,727

433,280

 短期有利子負債

376,238

385,942

 営業貸付金

243,682

270,083

固定負債

373,793

391,434

固定資産

115,054

115,130

 長期有利子負債

365,100

382,589

 有形固定資産

59,546

59,520

負債合計

789,684

817,804

  賃貸資産

54,703

1,373

純資産

105,999

105,572

 無形固定資産

5,910

5,335

 株主資本

88,577

93,297

 投資その他の資産

49,596

50,275

負債純資産合計

895,683

923,376

  投資有価証券

39,247

40,669

有利子負債残高

741,338

768,531

資産合計

895,683

923,376

自己資本比率

9.9%

10.2%

単位:百万円

 

営業貸付金の増加などにより資産合計は前期末比276億円増加の9,233億円。
有利子負債の増加により負債は同281億円増加の8,178億円となった。株主資本は増加したが、非支配株主持分の減少などで純資産は同4億円減少の1,055億円。
自己資本比率は前期末比0.3ポイント上昇し10.2%となった。

 

◎営業資産残高
賃貸・割賦事業の残高は官公庁・民需共に伸長した。民需ではベンダーファイナンスやICTレンタル等の強化施策が奏功し、前期末に続き残高は5,000億円を超えた。
外貨建てを含む企業融資が伸長し、ファイナンス事業の残高も増加した。
ヘルスケア関連施設の取得等でその他の事業の残高は増加したが、ファンドのEXITや買取債権の回収等によりリサ事業の残高は減少した。
全体の残高は前期末および前年同期末比で増加。引続き順調に積み上げが進んでいる。

 

 

◎資金調達状況
資金原価率(資金原価 ÷ 有利子負債平残)は前年同期比0.03ポイント低下の0.64%となった。
有利子負債合計に占めるCP、社債、債権流動化の構成比である直接調達比率は、CP発行拡大により前年同期末の37.1%から39.3%へ上昇した。ただし今後更なるCPの利用は限定的であると考えている。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期2Q

20/3期2Q

増減

営業CF

25,048

-20,180

-45,228

投資CF

-4,041

-2,653

+1,388

フリーCF

21,007

-22,833

-43,840

財務CF

-35,438

21,576

+57,014

現金同等物残高

21,004

19,168

-1,836

単位:百万円

 

割賦債権および営業貸付金の増加等で営業CFはマイナスに転じた。
投資有価証券の償還による収入増で投資CFのマイナス幅は縮小したが、フリーCFはマイナスに転じた。
CPが純増したことなどから財務CFはプラスに転じた。キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

◎国産無農薬バナナの生産に関する実証実験事業に着手
2019年8月、農業における実証実験事業を行う目的で合同会社アグリラボを設立した。

 

この実証実験事業は、高品質な農産物を生産し(生産実証)、ブランド化して販売する(販売実証)目的で、田中節三氏が開発した凍結解凍覚醒法®※で処理した苗を用い国産無農薬バナナを栽培するもの。
生産実証は、飛島建設株式会社へ業務委託し、販売実証はNECキャピタルソリューションが行う。
(飛島建設は、太陽光を利用して効率的な栽培システムを展開し、国内農業の活性化にも取り組んでいる)

 

農業分野においては、食料自給率の低下、農業従事者の高齢化による離農や耕作放棄地の拡大など課題が山積している。
NECキャピタルソリューションは、そうした課題解決に向け大規模営農化による収益モデルの構築を目指し、2016年8月に農地所有適格法人「株式会社みらい共創ファーム秋田(秋田県南秋田郡)」設立に共同参画し、常勤社員を派遣するなど、地域に密着した取り組みを推進している。
みらい共創ファーム秋田における取り組みをもとに今回の実証実験事業を行うことで、新たなビジネスモデルの構築に取り組み、農業が抱える課題の解決に貢献する考えだ。

 

◎農業分野における事業機会の創出を目的に株式会社ファームフェスに出資
2019年9月、農業分野における事業機会の創出を目的に、株式会社ファームフェス(鹿児島県鹿児島市)に出資した。

 

(ファームフェス社概要)
2015年10月設立。全国200以上の農家とネットワークを構築し、企業と農地をマッチングする農地シェアリング事業等を手掛け、事業を通して耕作放棄地の解消や農業の再生に取り組んでいる。
代表を務める小平勘太氏は、「地域に根ざし、世界で勝負する」をスローガンに農業ビジネスや国際貿易等を多角的に経営する総合商社、小平株式会社(鹿児島県鹿児島市)の代表取締役社長。

 

(資本参加の目的)
NECキャピタルソリューションは、ファームフェス社や小平社の有するノウハウ、ネットワークおよび農家の経営改善に関わる周辺サービスと連携することで、農業ビジネスの機会を創出し農業が抱える社会課題解決に向けた取り組みを加速していく。

 

◎宮古島における再エネサービスプロバイダ事業拡大に向け資本参加
2019年10月、三菱UFJリース株式会社、株式会社日新システムズとともに、株式会社ネクステムズ(沖縄県宜野湾市)の子会社である株式会社宮古島未来エネルギー(沖縄県宮古島市)の株式の一部を取得し、「再エネサービスプロバイダ事業(※)」の拡大に向けて共同で取り組んでいくことに合意した。
株式会社宮古島未来エネルギーは、沖縄県宮古島において、第三者保有の形態で太陽光由来電気を自家消費、温水熱を供給するほか、余剰電力を売電する再エネサービスプロバイダ事業を展開している。
また、親会社である株式会社ネクステムズによる制御を受けて、太陽光発電やヒートポンプ給湯機などを通じた電力需給調整を行うエリアアグリゲーション(※)により、再生可能エネルギーの主力電源化ならびにエネルギー自給率向上に貢献する取り組みを行っている。

 

NECキャピタルソリューション株式会社は、これまで地域課題の解決と持続可能なエネルギー社会の実現に向け、再生可能エネルギープロジェクトに対する投融資や地域新電力会社の設立・運営等に取り組んできたが、そこで蓄積してきた知見やノウハウを活かして、再エネサービスプロバイダ事業の推進に向け、地元事業者等と協力しながら、金融面のみならず総合的に支援していく。

 

※再エネサービスプロバイダ事業(RESEP事業)
顧客敷地内に、事業者が所有する太陽光発電やヒートポンプ給湯機等を設置し、電気、熱等の再生可能エネルギーと、設備の運転管理・保守メンテナンスなどの設備運用を一括のサービスで提供し、顧客からはエネルギーサービス料金を対価として得る事業。

 

※エリアアグリゲーション
地域ごとに需要家の需要量を制御して電力の需要と供給のバランスを保つために、電力会社と需要家の間に立ってうまくバランスをコントロールすること。

 

3.2020年3月期業績予想

◎通期業績予想

 

19/3月期

対売上比

20/3月期(予)

対売上比

前期比

売上高

204,131

100.0%

210,000

100.0%

+2.9%

営業利益

8,929

4.4%

10,000

4.8%

+12.0%

経常利益

8,900

4.4%

10,000

4.8%

+12.3%

当期純利益

6,391

3.1%

6,500

3.1%

+1.7%

*単位:百万円。予想は会社側予想

 

業績予想に変更無し。増収増益。当期純利益は3期連続で過去最高更新へ
業績予想に変更は無い。売上高は前期比2.9%増の2,100億円、経常利益は同12.3%増の100億円の予想。前期2期連続で過去最高を更新した当期純利益は同1.7%増の65億円で連続して最高を更新する見込み。
主力の賃貸・割賦事業では、リース需要は下期も堅調で、営業資産の積み上げが進む。減少が続いていた売上総利益は前期に下げ止まり、今期に反転を実現している。他セグメントも堅調な推移を見込んでいる。
配当は前期比5円/株増配の60円/株の予定。予想配当性向は19.9%。

 

4.中期計画2017の進捗状況

(1)中期計画 2017概要

同社は「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」をグループビジョンに掲げ、その実現に向けた10年間のロードマップを三段階に分割しており、2018年3月期から第二段階にあたる「中期計画 2017」を推進中である。
「中期計画2017」ではこの3年間を「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」で持続しうる事業基盤を構築する期間と位置付けている。
最終年度である今期の現時点までの取り組みは以下のとおりである。
(※ 「中期計画2017」の詳細は、後述の「参考」を参照)

 

(2)取り組み状況

<コア領域の完成>
各種付随収益が期待できるリースにこだわった事業を展開すると共に、様々な商材を組み合わせるアレンジ力や社内外とのシナジー創出に注力しながら、強みを活かした同社らしい「サービス」の確立に取り組む。

テーマ

 

取り組み状況

NECとの戦略的なパートナーシップの確立と深耕

NECとの連携強化による取扱高の増加

官公庁を中心とした良質な賃貸割賦アセットの積み上げ

協業パートナーとの連携による新たなサービスモデルの企画

独自商流における顧客基盤の拡充

 

外資系ICTベンダーとの更なる連携強化による大型案件の獲得

大口販社との取り組み強化による小口リースの積み上げ伸長

一般民需における基盤顧客の深耕

高い利益成長の源泉を確保

リサ事業の企業投資、不動産ビジネスでの収益拡大

OS Windows10更新需要の着実な取り込みによる当社独自のレンタル事業拡大

PFI事業の継続的な取り組み拡大

 

NECとの連携強化は一段と進んでおり、ICT関連のリースのボリュームが大きく伸張している。
官公庁・自治体向けアセットも増大しているほか、NECのグループ各社との協業も進んでいる。

 

外資系ベンダーとの案件が着実に増加し数字としても寄与し始めている。
5年ほど前から再開した小口リースはアセットが増加している。
一般民需案件も増加している。

 

リサ事業は確実に伸長。レンタル事業も拡大している。
PFIは、上期に一定程度のコンソーシアムを組成したので、下期以降の落札に注力する。

 

<新事業の立ち上げ>
非金融を含め同社らしく持続可能な新事業を確立する。

テーマ

 

取り組み状況

新事業(エネルギー・ヘルスケア・農業・観光)における新ビジネスモデルの確立

宮古島再エネサービスプロバイダ事業へ出資参画

ヘルスケア施設のリート向けウェアハウジング事業継続

国産無農薬バナナ生産等実証事業の立ち上げ、農業再生に取り組むファームフェス社への出資参画

白馬岩岳街並み活性化による観光資源活性化を通した事業創出、街づくり継続

 

<経営基盤強化戦略>
事業戦略を支える経営基盤を強化する。
「営業サポート体制の強化」、「業務品質向上への取り組み推進」、「コンプライアンス態勢の更なる強化」などに積極的に取り組んでいる。

 

(3)利益計画の進捗

中期計画2017の利益計画の進捗は良好だ。
18年3月期、19年3月期ともに経常利益、当期純利益は計画値を上回り、今期20年3月期も計画を上回る予想。
3年間累計額の計画と実績(20年3月期は予想)の差額は、経常利益、当期純利益でそれぞれ84億円、69億円と大幅に超過する見込みである。
20年3月期1.0%と計画していたROAについても、18年3月期 1.6%、19年3月期 1.1%という実績に続き、今期20年3月期も1.2%と0.2%の超過予想である。

 

 

5.今後の注目点

上期実績の通期予想に対する進捗率は売上高で5割強、利益は8割を超えているが、例年上期偏重の傾向にあるため通期予想は据え置いている。
中期計画2017策定時の計画値「経常利益 85億円、当期純利益 45億円」を上回る今期予想「経常利益 100億円、当期純利益 65億円」に対し、第3四半期、第4四半期でどれだけ積み上げを行っていくことができるかを注目したい。
また、「コア領域の拡充と新事業の収益化」を目指す次の3ヵ年計画における具体的な取り組みにも期待したい。

 

<参考1:中期計画2017について>

同社は事業活動そのものが社会的価値を創造すると同時に、企業として求めるべき経済的価値を創出し、企業と社会双方に共通の価値を生み出すCSV経営を目指し、グループビジョンに掲げている。
このビジョンに基づき、CSV経営実現に向けた10年間のロードマップを三段階に分割しており、第一段階である「中期計画 2014」が終了したことに伴い、「中期計画 2017」を策定した。

 

(1)新中期計画2017概要

この3年間を『ビジョン実現に向けた「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」の期間と位置付けている。

 

① 事業戦略
<コア領域の完成>
各種付随収益が期待できるリースにこだわった事業を展開すると共に、様々な商材を組み合わせるアレンジ力や社内外とのシナジー創出に注力しながら、強みを活かした同社らしい「サービス」の確立に取り組む。

NECとの戦略的なパートナーシップの確立と深耕

ビジネスのサービス化・クラウド化を背景に、NECグループビジネスにおける官公庁および民間企業領域について、ベンダーファイナンスや高度な提案活動等、高付加価値なリース、ファイナンスの提供を推進すると共に、PFI/PPP(※)事業の拡大を進める。

加えて、同社が取り組む新事業におけるNEC関連ビジネスの機会創出を推進する。

独自商流における顧客基盤の拡充

 

既存の顧客基盤を深耕しながら、ベンダーファイナンスや提案型営業を通して、中堅・中小企業向け営業を強化させ、独自の顧客基盤の拡充を図ると共に、収益性向上に取り組む。

高い利益成長の源泉を確保

 

海外におけるNECとの協奏プロジェクトを推進すると共に、独自の事業ノウハウやパートナー構築力を高めることでグローバル事業を加速させる。

また、専門性が高く成長が期待できる分野において、競争優位なサービスを提供するほか、株式会社リサ・パートナーズの持つ地域金融機関とのネットワークを活かした金融法人営業を強化する。

(※)PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携):公民が連携して公共サービスの提供を行うスキーム。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ。

 

<新事業の立ち上げ>
地域活性化や高齢社会等の社会課題解決に対する事業への取り組みを推進する。

 

新事業における新ビジネスモデルの確立、及び投融資に留まらない新事業の立ち上げ

「エネルギー」、「ヘルスケア」、「農業」、「観光」の4領域を新事業と位置付け、NECグループのICT技術・ノウハウを活用しながら、同社ならではの新事業を立ち上げ、将来の収入源を確保する。

ICT/IoT、非ICT商材を対象とするレンタル事業の展開

 

既存のICT機器に関するLCM(Life Cycle Management)サービスに加え、IoTやビッグデータ活用に関連する機器等のレンタル事業に取り組む。

 

以下の5領域で事業戦略を展開する。

NECグループ領域

PFIをはじめ、官民領域における高付加価値な当社独自サービスの提供

新事業において協奏し得る新たな事業機会創出

グローバル領域

大型プロジェクトファイナンスへの取り組み、海外現法によるNECベンダーファイナンスの拡大

独自の事業ノウハウ、パートナー構築力の向上による収益機会の拡大

事業法人領域

既存顧客基盤の深耕、及び提携先拡大によるベンダーファイナンス強化

中堅・中小企業を中心とする提案営業・独自商材の提供の本格化

専門領域

新事業への取り組みと新ビジネスの拡充

環境・エネルギー関連や戦略アセットへのさらなる取り組み

ベンチャーファンド機能の強化

金融法人領域

リサ・パートナーズによる投融資&アドバイザリービジネス拡大

地域金融機関連携による地域活性化ソリューションの展開

 

<経営基盤強化戦略>
事業戦略を支える経営基盤を強化する。

経営、営業現場双方に対する強力なサポート体制の構築

コンプライアンス体制のさらなる強化、業務品質・効率の向上、及び事業戦略の実行に伴う各種リスク管理レベルの向上

管理会計の高度化をはじめとした、適切な意思決定に資する経営管理機能の強化

従業員満足度向上に向けた人事諸制度の改革

 

②数値目標

 

2017/3期

実績

2020/3期

計画

増減

経常利益

65

100

+35

当期純利益

35

65

+30

ROA

0.8%

1.2%

+0.4%

*単位:億円

 

収益性向上を図りつつ成果を刈り取り、着実に増益を達成する。

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

7名、うち社外3名

監査役

4名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年9月4日

 

(1)基本的な考え方
<コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方>
当社は、「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」というグループビジョンを制定し、事業を通して社会課題を解決する「CSV経営(Creating Shared Value=共通価値の創造)」の実現に向けて取り組んでおります。
CSV経営を実現することがすなわち、当社の持続的成長を可能ならしめ、企業価値の最大化につなげるものと位置付けております。
CSV経営実現に向け、株主をはじめ、地域社会、取引先、従業員といった各種のステークホルダーの視点に立ち、対話を重ねながら、中長期的観点で経営を監視・監督し、経営の機構改革に取り組んでおります。

 

<NECグループにおける当社の位置づけ>
当社グループは、NECグループの金融サービス会社であります。金融業としてのビジネスリスクを負っていることから、それに応じたリスク管理インフラを整備し、優秀な金融分野の人材を確保、金融ビジネスにふさわしい企業文化を育成することで独自性を高めてまいります。

 

②実施しない主な原則とその理由

原則

開示内容

【原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

当社は、取締役会を構成するメンバーには、当社グループの事業に関する高い見識を有し、人格に優れ、かつ、当社グループビジョンに共感する人物が就任すべきとの考えから、国際性があるか否かという点も踏まえて選任候補者を検討しておりますが、現時点において、取締役会を構成するメンバーに女性はおりません。もっとも、女性役員の重要性については、十分に認識しており、引き続き当社のグループビジョンに共感する適任の候補者を選任することができるよう努めてまいります。

監査役には、財務・会計・法務に関する知識を有し、特に財務・会計に関しては十分な知見を有する者を選任しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4.政策保有株式】

当社は、当社グループの営業取引の拡大に貢献でき、当社グループに対する利益創出が期待できると判断した場合には、政策保有株式として上場会社株式を保有することがありますが、これら政策保有株式の保有目的に沿わないと判断した場合には、株価や市場動向を踏まえ、当該政策保有株式を売却することで縮減することとしております。

取締役会は、政策保有株式の個別銘柄ごとに、保有目的の適切性、当社グループに対する利益創出への期待を踏まえた便益やリスクが資本コストに見合っているかなどという点を含めた継続保有基準を定め、1年に1回、同基準への適合性を検証しております。この基準に適合しない政策保有株式については、適切な時期に売却することとしております。

政策保有株式に係る議決権の行使にあたっては、当社グループに対する利益創出が期待できるか、保有目的を毀損することとならないかという観点から、個別議案に対する賛否を決することとしております。

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】

(ⅰ)株主との建設的な対話に関する方針

当社では、IR担当役員を選任した上で、IR担当部署をコミュニケーション部と定め、各種IR活動の実行及び取りまとめや改善を行っております。

(ⅱ)IR担当と他部門の有機的連携

コミュニケーション部では、IRに関連する経営企画部、経理部、財務部及び法務部等との情報共有を適宜実施することで、有機的な連携を図っております。

(ⅲ)対話の手段の充実

コミュニケーション部にて株主・投資家からの個別面談やお問い合わせ対応を行うとともに、株主、投資家、アナリスト向け決算説明会等で代表取締役が直接その内容を説明しております。

(ⅳ)経営陣へのフィードバック

IR活動及びそのフィードバック等の情報については、毎月開催する経営陣が構成員となる会議で報告を行うと共に、四半期毎に取締役会で報告を行い、情報共有を図っております。

(ⅴ)インサイダー情報管理

株主、投資家、アナリストとの対話の際には、インサイダー情報の提供は行いません。また、インサイダー取引防止規程を定め遵守管理する等情報管理を徹底しております。

 

 

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