ブリッジレポート:(9275)ナルミヤ・インターナショナル 販管費増加も吸収し増益へ

2019/09/12

 

 

 

石井 稔晃 社長

株式会社ナルミヤ・インターナショナル(9275)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表取締役 執行役員社長

石井 稔晃

所在地

東京都港区芝公園2-4-1

決算月

2月

HP

http://www.narumiya-net.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,200円

10,070,630株

12,084百万円

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

31.00円

2.5%

101.65円

11.8倍

358.86円

3.3倍

*株価は9/6終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年2月期第1四半期決算短信より。BPSは19年2月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年2月(実)

23,474

1,157

892

708

74.99

2018年2月(実)

26,954

1,404

1,280

760

80.43

2019年2月(実)

29,700

1,625

1,505

926

94.94

31.00

2020年2月(予)

33,007

1,712

1,646

1,007

101.65

31.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。17年2月期及び18年2月期は連結、19年2月期は非連結、当期純利益及びEPSは抱合せ
株式消滅差益875百万円を調整後。20年2月期は連結見込。配当は上場後の配当のみ記載。

 

 

株式会社ナルミヤ・インターナショナルの会社概要、今後の成長戦略、石井社長へのインタビューなどをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.業績動向
3.今後の成長戦略
4.石井社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • ベビー・トドラーおよびジュニア向け(※)子供服を企画・製造し、百貨店、ショッピングセンター(SC)およびEコマースで販売。販売チャネルごと、幅広いブランドをラインアップしている点に加え、トップクラスのブランド力、マーチャンダイジング能力、優良な顧客資産などが特長・強み。SCチャネル及びEコマースの拡大、中国市場の開拓、コト・サービスへの展開などで更なる成長を目指している。(※ベビー・トドラー:0歳~7歳向け、ジュニア:8歳~15歳向け) 
  • 2020年2月期の売上高は前期比11.1%増の330億円の予想。引き続きSCチャネル、Eコマースが牽引する。営業利益は同5.3%増の17億円を見込む。SCにおけるポイントサービス導入により初年度の今期はポイント引当金を計上するため販管費も増加するが吸収して増益へ。配当は31円/株を予定。予想配当性向は30.5%。 
  • SCチャネルをNo.1の成長トリガーと位置付けている。出店余地の大きいSCはより精緻に出店先を選別し、成長が続く優良SCへの出店を推進する。また、収益力を向上させるために、事業規模の拡大によりボリュームディスカウントを実現するほか、各種原価低減施策により高い粗利を確保する。 
  • No.2の成長トリガーであるECにおいては、スマホ向けサイトの利便性向上、ECと店舗の在庫一元管理化及び顧客IDの統合、オムニチャネル化によるリアル店舗とネットの双方による強固な顧客接点の実現、購買履歴などから最適な商品の提案、ポイント特典など顧客サービスの充実などに取り組む。 
  • 百貨店チャネルの売上高を大きく成長させることは難しいが、着実な伸長、顧客基盤の強化、収益性の改善を図る。 
  • この他、成長する中国・アジア市場の開拓、提供すべき価値をモノ(洋服)からコト(サービス)へ拡大したキッズライフスタイル企業への進化などを目指す。M&Aやアライアンスも積極的に展開する。 
  • 石井社長に今後の成長戦略、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「当社のアドバンテージや目指す姿をご理解いただいたうえで、是非とも短期ではなく中長期の視点で当社を応援していただきたい」とのことだ。 
  • 「少子化・人口減少」は、子供服を取り扱う同社にとっては強烈なアゲインストの風と連想しがちであるが、石井社長はシェアを拡大させる大きなチャンスと認識している。また、「リアルとECのカニバリズムは当面は起こらない。後発は後発の良さを活かしつつ成長を続けることが可能」と考えており、この2点は苦戦する企業の多いアパレル業界で同社の今後を見ていくうえで最も重要なポイントである。 
  • 折しも先月、首都圏を中心に子供服店を展開するマザウェイズ・ジャパンが自己破産したとのニュースがあった。全国の約100店舗は閉店するという。石井社長によればある程度の規模で子供服に絞って事業を行っている企業はナルミヤを含めて10社程度とのことであり、今回の破綻はまさにナルミヤに残存者利益をもたらすものとなろう。 
  • 既存事業を着実に伸張させながら中長期スタンスで他に類を見ない「キッズライフスタイル企業」への進化を目指す同社の施策、取り組みに注目していきたい。 

1.会社概要

ベビー・トドラーおよびジュニア向け子供服を企画・製造し、百貨店、SCの直営店で販売。Eコマースも急拡大中。2019年現在のブランド数は約20。販売チャネルごと、幅広いブランドをラインアップしている点に加え、トップクラスのブランド力、2チャネルの両立が可能なマーチャンダイジング能力、優良な顧客資産などが特長・強み。
SCチャネル及びEコマースの拡大に加え、中国市場の開拓、コト・サービスへの展開などで更なる成長を目指している。

 

【1-1 沿革】

1904年、広島で創業した呉服問屋・成宮織物が前身。1952年に成宮織物株式会社設立。1979年、本社を東京・青山に開設し、株式会社ナルミヤに改称。全国に事業拡大するとともに、分社独立及び事業譲渡を経て、1995年8月、株式会社ナルミヤ・インターナショナルに商号変更した。「mezzo piano」(メゾピアノ)や「ANGEL BLUE」(エンジェルブルー)等、カラフルなファッションアイテムとオリジナルキャラクターを特徴とした商品を中心に、百貨店における直営店舗販売と専門店への卸売りを軸に、業容を拡大。全国各地の百貨店やファッションビルに積極的に出店し、2005年3月、ジャスダック証券取引所に株式を上場した。

 

しかし、百貨店依存体質からの脱却の遅れや、ブランドコンセプト転換の遅れなどにより、株式上場を果たした事業年度より、業績は減収減益が続く。新たな株主の主導の下、新チャネルの開拓、新会社の設立、M&A、中国への進出に加え、不採算ブランドからの撤退、本社移転や人件費をはじめとした固定費の削減に努めたが業績は回復せず、スピーディーな構造改革推進のため2010年3月、上場を廃止した。

 

上場廃止後、業績回復を目指すために招聘されたのが(株)アダストリア(東証1部、2685)の元社長 石井 稔晃(としあき)氏である。
2010年6月に代表取締役執行役員社長に就任した石井氏は、2011年3月にショッピングセンター向けトドラーサイズのブランド「petit main」(プティマイン)の店頭販売を開始させるほか、ECシステムの刷新を行うなど、これまでの百貨店中心の出店から、ショッピングセンターへの出店およびeコマースの強化へと経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの転換を図る。
加えて、仕入れ体制の見直し、効果的な経費削減なども進め企業体質の変革に成功し、業績は順調に回復。

 

2018年9月、東京証券取引所市場第2部に上場し、2019年9月には市場第1部に指定された。
なお、上場廃止後、株主の交代に伴う株式譲渡・吸収合併・商号変更などを経て、2018年3月に現在の株式会社ナルミヤ・インターナショナルが誕生しており、上場廃止前の株式会社ナルミヤ・インターナショナルとは形式上は同一会社ではない。

 

【1-2 経営理念】

以下のようなビジョン、ミッション、バリューを掲げている。

 

ビジョン 世代を超えて愛される企業へ
ミッション 創造的な事業活動を通して「一瞬を」「ライフスタイルを」「未来を」創る
バリュー 一人ひとりがプロフェッショナルとして、今、行動する

 

【1-3 市場環境】

経済産業省の商業動態統計:百貨店・スーパー商品別販売額によれば、百貨店における衣料品販売額は1990年代前半をピークに減少が続いており、2018年の販売額は衣料品合計、婦人・子供服・洋品ともにピーク比45%の水準。
デフレ経済の進行、消費者マインドの変化など百貨店を取り巻く環境は厳しく、今後も大きく良化することは期待しにくいであろう。

 

 

ただ、同じく商業動態統計の業種別商業販売額(小売業)を見ると、2018年の「織物・衣服・身の回り品」販売額はピークであった1991年の約7割まで減少しているものの、下げ止まり横這いとなっている。
単純な比較はできないものの、百貨店以外の販売チャネルは堅調な推移を示していると推測することができる。

 

 

一方、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2018年の「衣類、服装雑貨等」のBtoC-EC市場規模は1兆7,728億円で前年比7.7%の増加。2013年からのCAGRは8.8%と成長を続けている。
またEC化率(電話、FAX、Eメール、対面等も含めた全ての商取引市場規模に対するEC市場規模の割合)も着実に上昇しており、アパレル市場におけるECのウェイト・重要性は今後ますます高まることとなろう。

 

 

【1-4 事業内容】

ベビー・子供服をSPA(製造小売)形態で展開している。

 

(1)取扱ブランド
各販売チャネルごとに、以下のようなベビー・トドラー、ジュニア向けブランドをラインアップ。
2019年8月現在のブランド数は、ベビー・トドラー14、ジュニア7の合計21。

 

①ベビー・トドラー(0歳~7歳)向け主要ブランド
◎百貨店

 

 

女の子が誰よりも可愛くなれる、ロマンティック&スウィートなテイストのブランド。カジュアルウェアからフォーマルドレスまで幅広く展開。
 

 

スウェーデン語で「洋服ダンス」を意味する「クレードスコープ」。衣服を通して心を育てる「服育」がテーマのブランド。
 

 

自然や生命の不思議に目を見はる、その感性へのオマージュとして生まれたブランド。ナチュラルカラーをベースに、季節の花や果実など、身近な自然界をモチーフにしたデザイン。 愛らしく、でも甘すぎず、細部にこだわったディテールが特徴です。しなやかな風合いと心地よい肌触りのために、厳しいアメリカ認定のオーガニックコットンを使用しています。

 

◎SCブランド

 

 

トレンドファッションに子どもらしさをプラスした、デイリープライスで楽しめるガールズ&ボーイズブランド。ママをはじめ、活動的な女性に向けたレディースライン「リアン」とリンクコーディネートを楽しめます。
 

 

着心地よくリラックスしたデイリーウェアを提供するユニセックスブランド
 

 

「つながり」が語源である「LIEN」(リアン)はさりげなくトレンドをプラスしたシンプルでクリアなアイテムをあそび心のあるスタイリングで提案。ママをはじめとした活動的な女性のライフスタイルシーンに溶け込み、大人と子どもはもとより大切な人とのつながりを彩ります。

 

◎ライセンスブランド

 

 

「ドリーミー」・「クラシック エレガンス」・「スウィート グランジ」がキーワードの、ANNA SUIの子ども服ブランド。
 

 

1993年にニューヨークで誕生したケイト・スペード ニューヨークは、ハンドバッグ・アパレル・ジュエリー・シューズ・チルドレンズウェア・ギフトなどを展開するライフスタイルブランドです。楽観的で女性らしいアプローチで毎日のパーソナルスタイルを称賛し、若々しいスピリットと自信に溢れた女性たちを応援しています。

(同社ウェブサイトより)

 

②ジュニア(8歳~15歳)向け主要ブランド
◎百貨店

 

 

華やかでロマンティックな女の子のためのブランド。上品なスタイルから、トレンド感のあるカジュアルスタイルまで展開。
 

 

フレンチテイストのカジュアルブランド。モノトーンやパステルのカラーリングにトレンドをプラスした、上品なデイリー&スクールウェアを提案。
 

 

アメリカンカジュアルをベースに、トレンドMIXしたスタイルを、明るく元気にカッコ良く着こなす男の子のブランド。

 

◎SCブランド

 

 

アメカジ・ロック・ガーリッシュなど、トレンドをテイストMIXして着こなす元気な女の子のためのブランド。

(同社ウェブサイトより)

 

(2)販売チャネル
沿革で触れたように、従来は百貨店チャネル販売を中心としていたが、ショッピングセンターとの強いパイプと実績を有する石井社長のリードによりSCチャネル開拓を積極的に進めている。19年2月期には初めてSCチャネル売上が百貨店チャネル売上を上回った。また、Eコマースチャネル強化も積極的に推進している。

 

 

 

 

①百貨店
主に都市部の大手百貨店に展開している。1985年にベビー・トドラーを主要顧客とするブランド「MINI-K」(ミニケー)により子供服業界へ進出し、1988年には現在も主力ブランドの一つである「mezzo piano」(メゾピアノ)がデビュー。1991年には、ジュニアブランド第1号の「ANGEL BLUE」(エンジェルブルー)を発表した。「ジュニア服」という新市場を開拓し、その後も次々と新ブランドを発表してきた。ただ、百貨店市場が今後大きく成長する可能性は低いため、現状を維持しつつ収益性の向上を図る考えだ。

 

 

②ショッピングセンター
2005年、ショッピングセンター1号店を出店。イオンモールやららぽーと等、都市近郊及び郊外のショッピングセンターに直営店舗を展開している。
2009年には百貨店系アパレルブランドよりも低価格帯で商品を展開するジュニアブランド「Lovetoxic」(ラブトキシック)を発表。2011年には、「Lovetoxic」同様、ショッピングセンター向け低・中価格帯ブランド「petit main」(プティマイン)をデビューさせた。ユニセックスブランドである「petit main」は0歳から7歳の男女を主要顧客層としている。

 

 

 

③アウトレットモール
2006年、アウトレット1号店として「りんくうプレミアム・アウトレット」へ出店した。三井アウトレットパークやプレミアム・アウトレットを中心とする郊外のアウトレットに直営店舗を展開している。

 

④Eコマース
2008年、Eコマース事業に本格的に注力し始め、直営のオンラインショップである「NARUMIYA ONLINE」をオープンした。
自社サイトに加え、ZOZOTOWN、楽天、Amazon等の他社通販サイトにも出店し、顧客の利便性および自社ブランドの認知度向上を図っている。
2019年2月期のEC化率は14%、今20年2月期は20%に上昇する見込み。
自社ECサイト比率は19年2月期43%で今期は50%を見込む。2022年2月期60%を目指している。
ECサイト購入者数は2018年約23万人。毎年大幅に増加している。

 

2018年8月より中国アリババグループが運営する世界最大のBtoC-ECサイト「天猫(Tmall)」へ、中国企業へのライセンスアウトによる出店を開始した。
同社の主力ブランド「petit main」は2018年11月11日(独身の日)に約3,000万円を売り上げ、初参加ながら子供服カテゴリーで全体の上位10%に入ることができた。ちなみに日本における「petit main」の平均日販は約100万円。

 

また、2019年3月に男児向けカジュアルウエアを中心に企画販売を行う株式会社ハートフィールの全株式を取得し子会社した。ハートフィール社はEコマース比率が90%以上と、Eコマースに特化した事業を展開している。
女児ブランド中心のナルミヤ・インターナショナルにとってはブランドポートフォリオ拡充およびEC強化に繋がるものである。

 

 

⑤その他
地方百貨店やアパレル専門店への卸売販売及び自社ブランド商標のライセンス販売を行っている。

 

(3)新事業への取り組み:ハウススタジオ事業
子供服の製造・販売を手掛けてきた同社だが、今後は提供すべき価値をモノ(洋服)からコト(サービス)へ拡大することで、キッズライフスタイル企業へ進化することを目指している。
その第一歩として、写真館「LOVST」と業務提携し、2018年9月にマリン アンド ウォーク横浜にフォトスタジオ「LOVST BY NARUMIYA」をオープンした。このサービスは、同社の子供服300着から衣装を選び、日常の風景やライフイベントを思い出として写真撮影するというもの。フォトスタジオでレンタルした同社の洋服を写真撮影後の購入に繋げるなど、既存事業とのシナジーも見込んでいる。事業開始から半年で利用者は1,000名を突破。客数・客単価ともに順調に拡大している。

 

(同社資料より)

 

【1-4 特長と強み】

(1)マルチチャネル・マルチブランド戦略
百貨店、SC、ECとバランスの良い販売チャネル展開に加えて、それぞれのチャネルにあった数多くのブランドをラインアップしている点は他社には見られない同社の大きな特長・強みである。
ベビーからジュニア(0歳から15歳)までの幅広い年齢層や価格帯をカバーしており、ロングセラーのブランドだけでなく、その時々の市場の動きを捉えたブランドを、タイミングよく最適なチャネルに配置していくことが可能である
今後も、ハートフィール社のケースの様にM&Aも活用しながら、差別化された複数のブランドを構築し、各チャネルにおける空白領域を埋めていく考えだ。

 

(同社資料より)

 

(2)2チャネルの両立が可能なマーチャンダイジング能力
百貨店とSCでは顧客層及びニーズが異なるため、それぞれ適切なブランドを展開する必要があり、加えてサプライチェーンが下記のように全く異なるため百貨店からSCへ、逆にSCから百貨店へとチャネルを広げるのはいずれも容易ではない。

 

(チャネルごとのサプライチェーンの特長)

販売チャネル

サプライチェーンの特長

リードタイム

百貨店 高価格帯の商品を提供するため、価格以上のクオリティの商品を小ロットで生産可能とするサプライチェーン 長い
SC 中価格帯の商品を提供するため、ファッション性とコストパフォーマンスを両立させるサプライチェーン 短い

 

これに対し、同社は百貨店、SC両チャネルにおけるサプライチェーンマネジメントの仕組みを既に構築済み。
2チャネルを両立できるマーチャンダイジング能力を有していることから、収益源を分散することができており、この点も特筆すべき強みである。

 

特に今後のNo.1成長ドライバーと位置付けているSCチェーンにおける、同社の競争優位性に注目したい。
同社は、強力な企画力と国内外のトレンドおよびブランド情報に関する収集ネットワークを活かし、子供服のトレンドを逐次把握しており、この情報を元に、多様な商社との強固な製品調達ネットワークにより、シーズン中でも売れ筋商品を追加投入することができる
この短期間での商品投入が可能な柔軟な企画・製造・販売システムによって同社は機会損失を減少させ、売上最大化を追求することが可能である。

 

(3)トップクラスのブランド力
同社ブランドはラインアップの幅広さのみでなく、クオリティの高さも大きな特長である。
大手業界紙「繊研新聞」が実施した「2017年度 繊研キッズファッション賞」においては、「petit main」がSC部門第1位を獲得したほか、「ANNA SUI mini」が百貨店トドラー部門第1位、「mezzo piano junior」が百貨店ジュニア部門第1位、「SENSE OF WONDER」が百貨店ベビー部門第2位となるなど、トップクラスの評価を受けている。

 

(4)優良な顧客資産
長い年月をかけて子供服のトップブランドを築き上げてきた同社顧客層の顧客ロイヤルティ(※)は極めて高い。
この顧客資産は安定した販売基盤であると同時に、新たなブランド開発や事業展開に繋がるニーズを吸い上げることもできるなど、同社の企業価値を構成する重要な見えない資産となっている。

 

※顧客ロイヤルティ:顧客があるブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のこと

 

2.業績動向

【2-1 2020年2月期第1四半期決算概要】

(1)損益概要

 

19/2月期1Q

対売上比

20/2月期1Q

対売上比

対前年同期比

売上高

6,613

100.0%

7,725

100.0%

+16.8%

売上総利益

3,835

58.0%

4,492

58.1%

+17.2%

販管費

3,411

51.6%

3,938

51.0%

+15.5%

営業利益

424

6.4%

554

7.2%

+30.7%

経常利益

385

5.8%

540

7.0%

+40.1%

四半期純利益

225

3.4%

332

4.3%

+47.8%

*単位:百万円。19年2月期第1四半期は単体実績。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

引き続きSC、Eコマースともに好調で増収増益。
売上高は前年同期比16.8%増の77億25百万円。引き続きSCルート、Eコマースともに2桁増収で好調。
営業利益は同30.7%増の5億54百万円。販売手数料、地代家賃などに加え、(株)ハートフィール結合によるのれん償却があり、販管費も同15.5%増加したが増収及び粗利率改善で吸収した。

 

(2)販売チャネル別動向

 

19/2期1Q

構成比

20/2期1Q

構成比

前年同期比

売上高

         

百貨店

2,189

33.1%

2,082

27.9%

-4.9%

SC

2,686

40.6%

3,322

44.5%

+23.7%

Eコマース

761

11.5%

946

12.7%

+24.4%

売上総利益

         

百貨店

1,265

57.8%

1,166

56.0%

-7.8%

SC

1,657

61.7%

2,118

63.8%

+27.8%

Eコマース

440

57.9%

564

59.7%

+28.2%

*単位:百万円。単体。利益の構成比は利益率。

 

①百貨店
減収減益。
ベビー・トドラー向けブランドの「ANNA SUI mini」や「X-girl STAGES」が好調だったが、ジュニア世代の百貨店離れ等によりジュニアブランドは引き続き苦戦した。

 

②SC
増収増益。
ベビー・トドラー向けブランド「petit main」及びジュニア向けブランド「Lovetoxic」がともに大幅に伸張した。

 

③Eコマース
増収増益。
2018年8月に行ったサイトリニューアルにより、新規顧客獲得数が増加し、引き続き好調を維持している。

 

④その他
アウトレットも前年同期比13.4%増と好調だった。

 

(3)トピックス
①ボーイズ中心のアパレル企業「ハートフィール」をM&A
2019年3月、ボーイズ中心のアパレル企業、株式会社ハートフィール(本社:東京)を完全子会社化した。

 

(ハートフィール社概要)
2010年設立。小学生高学年から中学生の男児向けアパレルブランド「GLAZOS(グラソス)」を展開している。
競合度が比較的低いジュニア向けボーイズブランドを取り扱っていること、EC化率90%以上とEC チャネル特化型である点などが特長・強みである。2018年12月期 売上高9億98百万円、営業利益49百万円、純資産1億85百万円。

 

(M&Aの目的)
ボーイズアパレルでは競合となるファッションブランドが不在で、現在のボーイズアパレル需要はスポーツブランド中心である。また、女児ブランドを取り扱うナルミヤ・インターナショナルは中期戦略として、男児向けブランドの育成が必要と考えていた。
そうした状況下、上記ハートフィール社の強みと、「ブランド育成・経営の確固たるノウハウと実績」「SC チャネルにおける拡大展開力」というナルミヤ・インターナショナルの強みを掛け合わせることで更なる事業拡大が可能と考え、子会社化することとした。取得額はデューデリ費用含め約6億30百万円。

 

(今後の成長戦略)
既存ECチャネルに加え、ナルミヤ・インターナショナルが得意とするSCチャネルでの展開を通じて収益拡大を目指すほか、
「GLAZOS(グラソス)」とナルミヤブランドのシナジー効果により、男児の受け皿となるブランド育成に取り組む。

 

*基本的な考え方
「GLAZOS(グラソス)」は、ナルミヤ・インターナショナルのSC ブランド「LOVETOXIC」と同様のポジションにあるが、ボーイズがターゲットの「GLAZOS (グラソス)」のポジションにはジュニア向けボーイズブランドの競合は不在である。
ナルミヤ・インターナショナルではSCにおける展開力を活かして、「LOVETOXIC」と同様の成長を目指す考えだ。

 

*具体的な取り組み
具体的には、以下3段階での事業拡大を図る。

STEP1

*グラソスブランド単独での成長

*子会社としての運営

*EC サイトの運営ノウハウのシナジーを創出

(サイト運営・ web マーケティング のノウハウ)

・ナルミヤオンラインへの出店による売上拡大

・ナルミヤオンラインからの送客による売上拡大

 

*企画生産フローをナルミヤと共通化( コスト・納期・品質の目標)

・共通仕入れ先との連携によってコスト低減・短納期を実現

STEP2

ナルミヤEC 事業との更なるシナジー創出

*EC サイトの統合を目指す

*物流の統合を目指す

*顧客データベースの統合を目指す

・クロスセリングの促進

・ナルミヤのトドラーブランド顧客からの送客

STEP3

SCチャネルへグラソスブランドの出店拡大

*リアル店舗の出店拡大に向けたテストマーケティング実施

*ナルミヤ主導での店舗運営による出店加速

 

②株式会社ワールドと資本業務提携
2019年3月、これまでも株主であった総合アパレル大手の株式会社ワールド(3612、東証1部)の持株比率が10.22%から25.55%へと上昇し筆頭株主となった。

 

今回の資本関係強化を機に、以下のような、シナジー効果創出を見込んでいる。

1.基幹システムの改修

 

ナルミヤでは、現在、基幹システムリプレイスのタイミングであり、効率的なシステムへの改修に関するサポートを期待している。
2.物流の共同配送を含めた協力 高騰が続く物流費対策のため、共同配送・倉庫の共有化などを検討していく。
3.E コマースのシナジー F1層が主力のワールド社との協業によって、ママ顧客の早期獲得とナルミヤのサイトへの誘導を図る。
4.ジュニア市場におけるシナジー 「LOVETOXIC」(ナルミヤ)・「ピンクラテ」(ワールド社)というジュニア女児2強ブランドによる市場および顧客拡大の施策を実施する。

 

(4)財務状態
◎主要BS

 

19年2月末

19年5月末

 

19年2月末

19年5月末

流動資産

8,233

7,809

流動負債

5,263

4,953

 現預金

1,847

934

 仕入債務

2,698

1,987

 売上債権

2,309

2,467

 短期借入金

450

880

 たな卸資産

3,694

4,291

固定負債

5,362

6,135

固定資産

5,948

6,890

 長期借入金

4,325

5,036

 有形固定資産

1,100

1,235

負債合計

10,626

11,088

 無形固定資産

3,321

3,800

純資産

3,556

3,611

  のれん

3,129

3,531

 利益剰余金

1,515

1,541

 投資その他の資産

1,527

1,855

負債純資産合計

14,182

14,700

資産合計

14,182

14,700

借入金残高

4,775

5,916

     

自己資本比率

25.1%

24.6%

*単位:百万円。19年2月末は非連結、19年5月末は連結。文中増減は参考数値。

 

(株)ハートフィール買収により現預金が減少した一方、のれん、投資その他の資産の増加で総資産は前期末比5億18百万円増加の147億円。長短借入金の増加で負債は同4億62百万円増加の110億88百万円。純資産は同55百万円増加の36億11百万円。
自己資本比率は前期末より0.5ポイント低下の24.6%。

 

【2-2 2020年2月期業績見通し】

(1)損益見通し

 

19/2月期

対売上比

20/2月期(予)

対売上比

対前期比

売上高

29,700

100.0%

33,007

100.0%

+11.1%

売上総利益

15,937

53.7%

17,898

54.2%

+12.3%

販管費

14,312

48.2%

16,186

49.0%

+13.1%

営業利益

1,625

5.5%

1,712

5.2%

+5.3%

経常利益

1,505

5.1%

1,646

5.0%

+9.4%

当期期純利益

926

3.1%

1,007

3.1%

+8.7%

*単位:百万円。19年2月期は単体実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

増収増益を予想
売上高は前期比11.1%増の330億円の予想。引き続きSCチャネル、Eコマースが牽引する。
営業利益は同5.3%増の17億円を見込む。SCにおけるポイントサービス導入により初年度の今期はポイント引当金を計上するため販管費も増加するが吸収して増益へ。
配当は31円/株を予定。予想配当性向は30.5%。

 

(2)販売チャネル別売上動向

 

19/2期

構成比

20/2期(予)

構成比

前期比

百貨店

98

33.0%

97

29.4%

-1.0%

SC

118

39.7%

131

39.7%

+11.0%

Eコマース

43

14.5%

63

19.1%

+46.5%

*単位:億円

 

①百貨店
微減収。
外資ブランドの獲得による新規ブランドの投入を検討しているほか、ジュニアブランドの売場縮小、ベビー・トドラーの強化によるブランドの集約、人材配置による労働生産性の向上に取り組む。

 

②SC
2桁増収。
今年度も約20店舗の新規出店を継続する。
既存店に関しては、ポイントシステムの導入によるCRMの強化、ECとの連携による相互送客の実施など収益力強化を図る。
また、事業の効率化を目指して、RFIDの導入による倉庫作業の効率化を進めるほか、セルフレジ導入等による省人化を試行する。

 

③Eコマース
大幅増収。
2020年2月期にEC化率20%を目指している。ハートフィール社買収によりさらなる拡大を見込んでいる。
利益率が高く、顧客データ獲得が可能な自社ECサイトの強化を更に進め、自社サイト売上高比率を、2019年2月期43%から、2020年2月期50%へと引き上げる。
また、デジタルマーケティングの促進にも取り組む。
具体的には、SCとの顧客ID統合を実施し、店舗顧客のEC利用・EC顧客の店舗来店など、売場の最適化を図る。
2021年2月期には自社アプリの導入を検討している。
また、経営効率化のためにSCとECの物流統合について検討を開始する。

 

3.今後の成長戦略

【3-1 各チャネルの取り組み】

百貨店中心の販売形態から、石井社長就任後、SC、Eコマースを強化してきた同社は各チャネルにおいて以下のような取り組みを進めていく。

 

 

 

(1)SCチャネル
引き続き同社成長を牽引するNo.1のトリガーである。
成長を続けてきた国内のSC総数は現在約3,200で、ここ数年はほぼ横這いの推移となっている。同社ではこのうち約1,200のSCを出店ターゲットと想定しているが、2019年5月末のSC直営店舗数は170店。出店余地は依然として大きい。

 

そうした中、SCチャネルにおける販売力を更に強化するためにショッピングセンターブランド専門の「SC事業部」を組成し、経営資源の集中とブランド運営の更なる効率化を進めている。
SC間の優勝劣敗が明らかになりつつあることから、より精緻に出店先を選別し、成長が続く優良SCへの出店を推進する。また、収益力を向上させるために、事業規模の拡大によりボリュームディスカウントを実現するほか、各種原価低減施策により高い粗利を確保する。

 

また、ファッショントレンドをいち早く捉え、企画・製造・販売のビジネスサイクルを更に短縮化する。
【1-4 特長・強み】でも触れたように、企画力、情報収集力、製品調達力に優れた同社はシーズン中でも売れ筋商品の追加投入が可能であり、この優位性を活かしてSCチャネルにおける売上高を一段と拡大させていく。

 

(2)Eコマース
急成長するEコマースチャネルについては第2の成長トリガーと位置付け、以下のような取り組みによって更に成長させる。

取組み

具体的な施策

消費者が選びやすく購入しやすい自社ECサイトの構築 *購入者が増えるスマホ向けサイトの利便性向上
顧客データ活用の強化 *ECと店舗の在庫一元管理化及び顧客IDの統合

*オムニチャネル化を進め、リアル店舗とネットの双方による強固な顧客接点の実現を目指す。

優良顧客の囲い込み *購買履歴などから最適な商品を提案

*ポイント特典など顧客サービスの充実(ロイヤルティの向上)

 

(3)百貨店チャネル
百貨店チャネルの売上高を大きく成長することは難しいが、以下のような取り組みによって着実な伸長、顧客基盤の強化、収益性の改善を図る。

 

*多ブランド展開の強みを活かし残存者利益を享受
競合が撤退した売場スペースに自社の他ブランドを追加し、売場シェアを拡大させる。
また、適宜必要に応じて新規ブランドを投入できる体制を構築する。

 

*ロングセラーブランドの顧客維持
子供服に特化したアパレルとして歴史のある同社は場合によっては3世代にわたる関係性の濃密な顧客層を有している。
こうした顧客との付き合いの長いスタッフによる関係の維持・深化、顧客のライフステージに適した施策を実施することで顧客基盤の更なる強化を図り、LTV(※)の最大化を目指す。

 

※LTV: Life Time Value。一人の顧客が生涯で、商品またはサービス購入に使用した金額を指す。LTVが高いということは、その顧客が自社商品やサービスを何度もリピートして購入、使用してくれていることを意味する。

 

*人件費抑制による事業の効率化
異なるブランドの売場を近接させるなどして販売効率を引き上げる。

 

この他、通常、百貨店チャネルでは従来の商習慣などからシーズン中の商品追加投入は難しいが、SCチャネル同様に短期間での商品調達・投入ができるようなシステム構築を目指し、百貨店側への働きかけを進めていく。

 

【3-2 中国市場への進出】

中国のアパレル市場は2020年までに約54兆円と世界最大の市場となると予測されている。また、子供服に関しても「一人っ子政策」の影響により出生数自体はほぼ横這いとなっているが、年間出生数は約1,700万人と、100万人に満たない日本と比較してそのボリュームは圧倒的である。
前述のように、同社は2018年8月、中国のビジネスパートナーへのライセンスアウトにより、Tmallへ出店した。
これを足掛かりとし、様々な形態によって本格的に巨大な中国市場を開拓していく。
また、他アジア近隣諸国へのリサーチも開始する。

 

【3-3 コト・サービスへの展開】

これも前述のように、子供服の製造・販売を手掛けてきた同社は、今後は提供すべき価値をモノ(洋服)からコト(サービス)へ拡大することで、キッズライフスタイル企業へ進化することを目指している。
その第一歩として立ち上げた、ハウススタジオ事業は順調な立ち上がりを見せている。
今後も強みである、トップクラスのブランド力や優良な顧客資産を活かして新たなフィールドでの事業展開に取り組んでいく。

 

【3-4 M&Aやアライアンスの推進】

ハートフィール社のケースに見られるように、子供服の中でもまだ手付かずのポジションをM&Aやアライアンスによってカバーしマルチブランド戦略を更に強化する。

 

4.石井社長に聞く

2010年6月に社長に就任し、同社を成長軌道に回帰させ、更なる成長をリードする石井稔晃氏に今後の成長戦略、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「社長就任後、最初に取り組んだことは何ですか?」
A:「まず販売チャネルの変革とブランド開発に着手しました」
「SCチャネルとECチャネルを2トップとして業績を拡大させることができました」

 

一定の社内コスト削減は終了していたものの、これからどうやって上向きにさせていくかがポイントでした。
そこでまず着手したのが、販売チャネルの変革です。
カジュアル化がどんどん進む中でほぼ百貨店のみという現状を変えていかなければなりませんでした。前職ではイオンのショッピングセンターと密接なビジネスを展開していましたので、「子供服」というカテゴリーは大きく競合もなかったため、順調に店舗数を増やしていくことができました。
百貨店にはその良さもあるし、一定のボリュームもあるので一気に縮小という訳にはいきませんが、今後も事業環境は厳しいと考えざるを得ません。SC、ECを伸ばすと同時に百貨店改革も当社の企業価値向上のために取り組んでいかなければならない課題と考えています。

 

もう一つ手を付けたのが、仕入とブランド開発でした。
売上低迷の中、仕方ないのですが、当時の業務の進め方として、展示会にて新商品を展示し、問屋・百貨店様の要望から発注数を決めていました。その結果、子供が一番楽しみにしているはずの夏休みには、魅力ある製品が売り切れることになり、売場には商品が並んでいないということになっていました。
しかし、このような状況では大きな変化が生じることもないため、売れる商品の追加発注を行うことで、売上を突き上げることに成功しました。
その後も、既存ブランドの見直し、新規ブランドの開発に取り組んでいく中で結果も出るようになり、社内の雰囲気も明るく、前向きになっていきました。

 

加えて、既に手掛けていたECも、百貨店ブランドに加え新ブランドを投入したことで順調に拡大させることができ、SCチャネルとECチャネルを2トップとして再度上場することができるくらいまで業績を拡大させることができました。

 

Q:「現在の市場環境をどのように認識されていますか? また、そうした下で今後どのような取り組みに注力されていくお考えですか?」
A:「少子化・人口減少は避けられない現実ですが、我々にとってはシェアを上昇させることができるチャンスと考えています」
「SCは出店余地が大きく、ECとのカニバリズムも当面は心配ありません」
「ECは専用オリジナル商品の開発も進め、日本ナンバーワンの子供服ECプラットフォームを目指します」
「国内におけるマーケットシェアの拡大と成長する中国、アジア市場の開拓により大きく成長していきます」

 

国内では少子化・人口減少は避けられない現実であり、一般的には厳しい事業環境であると言われていますが、我々にとってはシェアを上昇させることができる、チャンスではないかと考えています。
つまりこういう市場であるからこそ、的確なマーケティングで他社が撤退したフィールドに参入したり、、M&Aによって新たなブランドを獲得したりすることで成長を追求できると考えています。
そのためには、まずこれまでに培ってきたノウハウを集約していくことで当社の強みを更に磨き上げ、SC、ECを中心に基本的な事業をしっかりと成長させることが必要だと思います。

 

SCチャネルについては、今後も年間20店舗程度出店していく計画ですが、当社が出店対象と捉えているSCは約1,200ありますから、まだまだ出店余地は大きい。
また、アパレル各社は今後の成長のためにはECの拡大が必須となっていますが、既にかなりのボリュームのリアル店舗を構えている企業にとってはECの成長は逆にリアル店舗の売上減、つまりカニバリズムを引き起こしてしまっています。
SC店舗を順調に増やし始めたのがここ5年程度という当社にはまだそうした問題が起きることはないので、後発は後発の強みを活かしながら着実に拡大していきたいと思います。

 

ECについても私が来た頃は10億程度の売上でしたが、この2年程度で急速にブラッシュアップを進めて、前期は43億円、今期は60億円を超す計画です。SCおよび百貨店チャネルのブランドの他、今後はEC専用のオリジナル商品の開発も進めます。バイイング機能を強化して日本ナンバーワンの子供服ECプラットフォームを構築したいと考えています。

 

一方、子供の人口が日本とは桁違いの中国や、子供が増加中のアジア諸国は有望市場です。
特に、日本製の子供服に対する信頼性が非常に高い点は当社にとって大きなアドバンテージです。
2018年8月に世界最大のECモール「Tmall」に出店し、立ち上がりから大きな成果を出すことができましたが、一方で改善すべき点も見えてきました。
先般、アリババの担当者とミーティングを行ったところ、どういうものが求められているかなど課題が明快となりましたので、早速課題解決に向けた検討を開始しています。現状はライセンスアウトのスタイルですが、状況を見ながらより本格的に取り組んでいきます。
国内におけるマーケットシェアの拡大と海外市場の開拓、この2つによって大きく成長していくことができると考えています。

 

Q:「御社の目指す姿、またそのための課題は何でしょうか?」
A:「子供服をベースに成長してきた当社の基盤の上に、お客様やノウハウといった目に見えない資産を活かし、柔軟な発想で新しい市場を開発してキッズライフスタイル企業へと進化します。」
「より多様で優秀な人材の獲得と育成が課題です」

 

「子供服」を長年手掛けてきた当社ですが、中長期的には活躍するフィールドを子供向け洋服の販売に限定する必要はないと思っています。
キーワードに「子供」を据えて、洋服に加え、教育、遊び、スポーツなど幅広く、子供と親御さんの笑顔が広がるシーンを我々が創り出すことができれば、楽しいなと思っています。
「モノ」ではなく「コト」を提供するハウススタジオ事業はそのためのまず一歩です。
「子供服」をベースに成長してきた当社の基盤の上に、お客様やノウハウといった目に見えない資産を活かし、柔軟な発想で新しい市場を開発して「キッズライフスタイル企業」へと進化していきたいと考えています。

 

そのためには、より多様で優秀な人材の獲得と育成が欠かせません。
昨年の株式上場もそうですが、「子供服」でまだまだ成長していくが、それと同時に大変ユニークで他には類を見ない「キッズライフスタイル企業」を目指しているのが「ナルミヤ・インターナショナル」だということを、様々な機会を通じて、投資家の方だけではなく、学生の方も含め、より多くのみなさんに知って頂きたいと思っています。

 

Q:「では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」
A:「当社のアドバンテージや目指す姿をご理解いただいたうえで、是非とも短期ではなく中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います」

 

0歳から15歳までの子供服を取り扱う当社では、2つ、3つの時に子供に着せていたブランドが15歳になったら無くなってしまいます。それに対し「お姉ちゃん版を出して欲しい」という親御さんから多くのリクエストを頂いたため、新たなブランドを立ち上げることとしました。
このように、非常に長い時間軸で、場合によっては三世代にわたってお付き合いさせて頂いているお客様は当社にとってかけがえのない資産であり、他社にはない大きな優位性です。
また、先程申し上げたように、当社は「子供」をキーワードに様々なフィールドで活躍する「キッズライフスタイル企業」へと成長していくことを目指しています。
こうした当社のアドバンテージや目指す姿をご理解いただいたうえで、是非とも短期ではなく中長期の視点で当社を応援していただきたいと思っています。

 

5.今後の注目点

「少子化・人口減少」は、子供服を取り扱う同社にとっては強烈なアゲインストの風と連想しがちであるが、石井社長はシェアを拡大させる大きなチャンスと認識している。また、「リアルとECのカニバリズムは当面は起こらない。後発は後発の良さを活かしつつ成長を続けることが可能」と考えており、この2点は苦戦する企業の多いアパレル業界で同社の今後を見ていくうえで最も重要なポイントである。
折しも先月、首都圏を中心に子供服店を展開するマザウェイズ・ジャパンが自己破産したとのニュースがあった。全国の約100店舗は閉店するという。石井社長によればある程度の規模で子供服に絞って事業を行っている企業はナルミヤを含めて10社程度とのことであり、今回の破綻はまさにナルミヤに残存者利益をもたらすものとなろう。
既存事業を着実に伸張させながら中長期スタンスで他に類を見ない「キッズライフスタイル企業」への進化を目指す同社の施策、取り組みに注目していきたい。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 6名、うち社外4名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日: 2019年5月30日

 

<基本的な考え方>
当社は企業行動憲章の中で、世界の子供たちの夢を育み、子供たちに充実した豊かな暮らしを提供する企業として、子供たち、お客様、株主・投資家のみなさま、取引先のみなさま、地域社会のみなさまとの信頼関係を築き、私たちに対する期待に誠実にお応えし、社会的責任を果たすために、次の10の行動原則を掲げております。

 

(1)社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮し開発、提供し、常にお客様の満足と信頼を獲得するよう行動します。
(2)公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行います。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保ちます。
(3)株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示します。
(4)従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現します。
(5)環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動します。
(6)「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行います。
(7)市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決します。
(8)国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法律の遵守はもとより、現地の文化や習慣を尊重し、その発展に貢献する経営を行います。
(9)経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内に徹底するとともに、取引先に周知します。また、社内外の声を常時把握し、実効性のある社内体制の整備を行うと共に、企業倫理の徹底を図ります。
(10)本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2.(4)議決権の電子行使、招集通知の英訳】 当社は、招集通知の英訳を行っておりますが、議決権の電子行使ができる環境づくりを構築しておりません。今後において、議決権の電子行使を可能とする環境づくりを検討してまいります。
【原則1-4 政策保有株式】 (1)政策保有株式に関する方針

 

当社は、取引関係強化等の中長期的な視点も踏まえた上で、取引先の株式を保有しておりますが、当社の資産効率に極めて影響の少ない範囲での保有であります。そのため、当社では定期的に政策保有株式の保有の適否に関する検証を実施することまでは考えておりません。ただし、経営判断により随時保有の意義が失われたと認められる場合には、売却等による処分を検討します。

 

(2)政策保有株式に係る議決権行使について適切な対応を確保するための考え方について

 

政策保有株式の議決権行使に関する基本的な考え方は以下のとおりであります。

当社は、政策保有株式に係る議決権の行使については、投資先企業が適切なガバナンス体制を構築し中長期的な企業価値の増大につながる適切な意思決定を行っているかという観点を踏まえ、議案毎に賛否を総合的に判断します。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則3-1 情報開示の充実】 (1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画

企業理念や中期経営計画については、当社ウェブサイト、決算説明資料等にて開示してまいります。

 

(2)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針については、本報告書「Ⅰ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報 1.基本的な考え方」をご参照下さい。

 

(3)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

当社は、コーポレート・ガバナンスの強化の一環として、取締役・執行役員の人事及び報酬制度に関する審議ならびに取締役会に対する答申を行うことにより経営の客観性と合理性を高め、企業価値の最大化を図ることを目的とする指名報酬委員会を設けております。なお、当委員会は、代表取締役社長及び全ての非業務執行取締役から構成され、委員長は、非業務執行取締役の中から委員の互選によって選定されます。

 

(4)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補者の指名を行うに当たっての方針と手続

取締役会は、取締役・監査役としてその役割・責務を適切に果たし、豊富な経験・高い見識・優れた人格を有する者を候補者に選定いたします。取締役・執行役員の選解任については、客観性や透明性を確保するため、取締役会または代表取締役社長が会社の業績等の評価を基に指名報酬委員会に諮問し、同委員会の答申を踏まえ取締役会が決定しております。なお、監査役候補者の指名については、監査役監査基準に基づきこれを行い、指名手続きは、監査役会規程に基づき監査役会の同意を得ております。

(5)取締役・監査役候補者の個々の選解任・指名理由

取締役・監査役候補者の個々の選任・指名理由については、株主総会招集通知に記載してまいります。解任が行われる場合には、方針と手続に則り適宜適切に開示いたします。

【原則5-1 株主等の建設的な対話に関する方針】 当社の株主等との建設的な対話を促進するための体制整備及び取組等に関する方針は、以下のとおりであります。

(1)企業価値向上に資するIR活動を推進するため、情報開示担当役員をIRの統括責任者として、経理部及び経営企画室が連携を図ってまいります。

 

(2)株主等との対話は、経営企画室が窓口となり、合理的な範囲で代表取締役社長または情報開示担当役員が対応してまいります。

 

(3)定期的に株主調査を行うことで株主構成の把握に努め、より効果的なIR活動の実施を目指してまいります。

 

(4)機関投資家・アナリストに対し、定期的に決算説明会を開催するほか、事業の進捗に応じて個別にミーティングや説明会を実施してまいります。また、個人投資家に対しては、迅速性・利便性を重視した情報提供に努めていく予定であります。

 

(5)開示資料作成にあたっては、決算短信・有価証券報告書・計算書類等の決算情報は経理部が中心となり、その他の開示資料は経営企画室が中心となり、経理部・経営企画室・人事総務部が連携を図り、適切な情報収集とともに開示情報の正確性を期してまいります。さらに、開示資料等は当社ウェブサイト上に英語版も併せて開示してまいります。

 

(6)株主・投資家等の対話の中で把握された意見・懸念については、適宜経営企画室から取締役会へ報告をしてまいります。

 

(7)株主との対話にあたっては、法令および関連規則等を遵守し、インサイダー情報を適切に管理しております。

株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。