ブリッジレポート:(6033)エクストリーム 売上・利益共に過去最高を更新
佐藤 昌平 社長CEO |
株式会社エクストリーム(6033) |
企業情報
市場 |
東証マザーズ |
業種 |
サービス業 |
代表者 |
佐藤 昌平 |
所在地 |
東京都豊島区西池袋1-11-1 メトロポリタンプラザビル |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(自己株式を控除) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,842円 |
5,429,810株 |
10,002百万円 |
34.5% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
25.00円 |
1.4% |
123.55円 |
14.9倍 |
367.17円 |
5.0倍 |
*株価は07/12終値。
連結業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主帰属利益 |
EPS |
DPS |
2016年3月(実) |
2,403 |
188 |
185 |
120 |
51.00 |
20.00 |
2017年3月(実) |
3,289 |
436 |
433 |
278 |
56.51 |
23.00 |
2018年3月(実) |
3,261 |
295 |
298 |
174 |
34.60 |
14.00 |
2019年3月(実) |
6,286 |
945 |
851 |
560 |
104.48 |
21.00 |
2020年3月(予) |
7,020 |
1,050 |
1,000 |
672 |
123.55 |
25.00 |
* 予想は会社予想。単位は百万円、円。
* 2016年8月、2018年11月、1株を2株に分割(EPSは遡及修正、DPSは分割前の実額)。
株式会社エクストリームの2019年3月期決算の概要と2020年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2019年3月期決算概要
3.2020年3月期業績予想と戦略
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 19/3期は前期比92.8%の増収、同220%の営業増益。(株)EPARKテクノロジーズの連結子会社化で売上が増加する中、『ラングリッサー』効果により営業利益が大きく伸長。売上・利益共に期初予想を上回り、過去最高を更新した。配当は21円(配当性向20.1%)の期末配当を実施。2018年11月に1株を2株に分割しており、実質的には14円の増配。
- 20/3期予想は前期比11.7%の増収、同11.1%の営業増益。WEB系顧客の深耕と積極採用によるプロジェクト数の増加でソリューション事業の売上が同18.2%増加する中、引き続き『ラングリッサー』効果が期待できるコンテンツプロパティ事業の売上が同26.4%増加する見込み。一方、受託開発事業は大型案件の初期開発一巡による売上の減少を新規案件の獲得でカバーして前期並みの売上を確保する。利益面では、受託開発事業での新規案件の獲得強化に伴う一時的な利益率の低下や積極採用に伴う労務費・人件費の増加を吸収する。配当は4円増配の25円を予定(予想配当性向20.2%)。
- 19/3期は(株)EPARKテクノロジーズの寄与と『ラングリッサー』効果で大幅な増収・増益となったが、定量的な面だけでなく、定性的な面からも注目すべき点が多い。ソリューション事業では、WEB系のビジネスが着実に拡大しており、ゲームに限定されないデジタルクリエイティブサービス企業としてポジションを確立しつつあるようだ。受託開発事業では、子会社(株)EPARKテクノロジーズが売上面で大きく貢献した。20/3期以降は運営(保守・追加開発)フェイズに入り、安定した収益が期待できる。『ラングリッサー』の配信が、英語圏、日本(スマホ版)、韓国、へ広がるコンテンツプロパティ事業に期待しつつ、収益基盤であるソリューション事業及び受託開発事業の拡大に注目していきたい。
1.会社概要
クリエイティブな開発スキルを有するデジタルクリエイター(プログラミングやグラフィックの開発スキルを持ったクリエイター&エンジニア)のプロダクションである。法人向けにゲーム・スマートフォンアプリ・Web・IT企業等へソフトウェア開発サービスを派遣契約または請負契約にて提供するソリューション事業、法人向けにスマートフォンアプリ開発案件、クラウドプラットフォーム構築、CRM(Customer Relationship Management)の構築から導入・運用等、案件を持ち帰り形式にて受託・納品する受託開発事業、及び同社が保有するゲーム・キャラクター等の知的財産を活用し、様々な事業を展開するコンテンツプロパティ事業を展開している。
グループは、同社の他、連結子会社(株)EPARKテクノロジーズ(出資比率58.3%)と持分法適用関連会社(株)EPARKペットライフ(同25.3%)。(株)EPARKテクノロジーズは飲食店・病院・美容院・時間貸駐車場・エステサロン等の順番予約サイト「EPARK(イーパーク)」の基幹システム開発・保守を手掛けており、(株)EPARKペットライフはペットサロン・動物病院のポータルサイトを運営(予約・送客サービス)している。
1-1.企業コンセプトと行動指針
企業コンセプトは、「まじめに面白いを創る会社。未来の楽しいを造る会社。」。行動指針を、「スピード×クオリティ×チャレンジ」としている。
スピード。常にフルスピードを意識する。今日できる事は今日やる。今出来る事は今やる。後回しにしない。クオリティ。妥協せず常に最高のクオリティを目指す。量は質に転嫁する。多くのアイデア、多くの成果、多くの挑戦など、多くを生み出すことが、クオリティの高いものに結実する。全ての成果はお客様のためにある。お客様が満足するクオリティを目指す。チャレンジ。失敗を恐れずに前に踏み出す。現状に満足せず、常に改善を心がける。
1-2.(株)EPARKと資本業務提携
2018年5月に順番予約サイト「EPARK(イーパーク)」の運営主体である(株)EPARKと資本業務提携(第三者割り当てにより5.51%の出資を受けた)すると共に、その孫会社で「EPARK」の基幹システムの開発・保守を手掛ける(株)EPARKテクノロジーズに出資し(出資比率58.3%)、子会社化した。(株)エクストリームと(株)EPARKはパートナーシップ体制を構築し、(株)EPARKテクノロジーズが(株)エクストリームの連結子会社として「EPARK」の基幹システムの開発を担っていく。
この資本業務提携により、「EPARK」基幹システムの安定的・継続的な開発業務の受託による収益の安定、同社グループにおける受託開発サービスの高付加価値化、グループ間における技術人材の交流によるスキルアップ、更には知名度の高いサービスの開発を担う事によるグループの技術人材採用マーケットでの知名度向上、等の効果が期待できる。これらの相互作用も顕在化させ、同社グループの成長基盤の確立や企業価値の向上につなげていく考え。
尚、「EPARK」とは、登録会員約2,000万人、提携店舗数約10万店舗の人気施設の予約・順番受付サイト。PC、スマートフォン等から無料で利用でき、飲食・歯科・病院・薬局・リラクゼーションサロン・ヘアサロン・駐車場といった様々なジャンルで、予約・順番受付が可能。三井アウトレット、ららぽーとを中心に各種商業施設での導入も進んでいる。
1-3.事業の概要
事業は、ソリューション事業、受託開発事業、及びコンテンツプロパティ事業に分かれる。各事業の概要は次の通り。
19/3期 セグメント別売上高・利益
売上高 |
構成比 |
営業利益 |
利益率 |
|
ソリューション事業 |
3,131 |
49.8% |
683 |
21.8% |
受託開発事業 |
2,347 |
37.3% |
59 |
2.5% |
コンテンツプロパティ事業 |
807 |
12.8% |
785 |
97.3% |
調整額 |
– |
– |
-583 |
– |
合計 |
6,286 |
100.0% |
945 |
15.0% |
* 単位:百万円
ソリューション事業
ゲーム・スマートフォンアプリ・WEB・IT企業等に対し、ソフトウェア(プログラミングやグラフィック等)開発サービスを派遣契約または請負契約にて提供する。持続的に強化・拡充していく事ができる自社養成システム(研修・教育システム)を有し、登録型派遣会社とは異なり、タレント性や独自スキルを持った人材を柔軟に供給する事ができる事が強みである(⇒ 競合他社が少ない)。充実した研修・教育制度の下、社員はデバイスの流行廃りに左右されない技術を維持し、同社は社員の技術力を企業として担保している。また、クリエイター&エンジニアは営業マンとしての側面も持ち、常駐先での取引拡大にも貢献している。
顧客分布の推移
17/3期 4Q(1-3月) |
18/3期 4Q(1-3月) |
19/3期 4Q(1-3月) |
|
エンタメ系顧客 |
66.2% |
62.6% |
60.0% |
スマーフォンアプリ |
71.0% |
73.9% |
75.6% |
家庭用ゲーム |
12.1% |
13.7% |
11.7% |
オンラインゲーム |
7.4% |
8.0% |
10.3% |
遊戯機器 |
7.4% |
2.7% |
1.0% |
業務用ゲーム他 |
2.1% |
1.7% |
1.5% |
非エンタメ系顧客 |
33.8% |
37.4% |
40.0% |
IT |
58.1% |
65.2% |
59.6% |
Web |
41.9% |
34.8% |
40.4% |
受託開発事業
子会社(株)EPARKテクノロジーズが手掛けるEPARKプラットフォームに関わる各種開発・保守、(株)エクストリーム・テックファンド事業本部とベトナムのオフショア子会社を活用して開発を行う(株)オルトプラスによるナショナルクライアントからのシステム開発・保守・追加案件等の受託開発(持ち帰り型の開発)を手掛けている。ナショナルクライアント向けでは、ビッグデータ分析での分析基盤の設計開発及び分析、AIを活用したシステム開発、リアルタイムコミュニケーションを実現する技術を活用した映像配信プラットフォーム開発、遠隔地にある設備をデバイス上の操作でオペレーション支援システムの開発等を手掛けている。
コンテンツプロパティ事業
ゲーム運営、同社が保有するゲームタイトルまたはキャラクター等の使用許諾を行うライセンス事業が含まれている。
ライセンス許諾による「ラングリッサー」の中国等での配信
同社が商標権を保有するゲーム「ラングリッサー」の海外スマートフォン向けゲームアプリライセンス許諾を受けて、許諾先である中国のゲーム会社である天津紫龍奇点互動娯楽有限公司(中国・北京市)が、2018年8月(8月2日にi-os版、8月16日にAndroid版)に配信を開始し、10月には、台湾、香港、マカオでの配信も開始した。
i-os版は、2018年11月2日現在、AppStoreゲーム部門セールスランキングの5位(株式会社インタースペースが運営する世界各国のAppStoreランキング「AppGraphy」調べ)にランキングされている。同年10月4日に配信を開始した、台湾・香港・マカオにおいても各地域でセールスランキング1位を記録した。
2019年4月2日より、スマートフォンゲーム「ラングリッサー(日本版)」のサービスを開始した。Android版、i-os版共にセルラン高位置をキープしており、著名ゲーム等とのコラボを順次実施していく予定。
詳細情報
http://langrisser.zlongame.co.jp/
2.2019年3月期決算概要
2-1.連結業績
18/3期 |
構成比 |
19/3期 |
構成比 |
前期比 |
期初予想 |
予想比 |
|
売上高 |
3,261 |
100.0% |
6,286 |
100.0% |
+92.7% |
5,690 |
+10.5% |
売上総利益 |
1,122 |
34.4% |
1,972 |
31.4% |
+75.7% |
- |
– |
販管費 |
827 |
25.4% |
1,026 |
16.3% |
+24.2% |
- |
– |
営業利益 |
295 |
9.1% |
945 |
15.0% |
+220.1% |
163 |
+479.9% |
経常利益 |
298 |
9.1% |
851 |
13.5% |
+185.6% |
165 |
+415.9% |
親会社株主帰属利益 |
174 |
5.4% |
560 |
8.9% |
+220.1% |
100 |
+460.1% |
* 単位:百万円
前期比92.7%の増収、同220.1%の営業増益
売上高は前期比92.7%増の62億86百万円。連結子会社化した(株)EPARKテクノロジーズの売上23億47百万円を受託開発事業に計上した他、スマホアプリ『ラングリッサー』が中国を中心に大ヒットした(6ケ月分の収益を計上)事でコンテンツプロパティ事業の売上も、前期の52百万円から8億07百万円に増加した。一方、ソリューション事業はセグメント変更(前期までは受託開発事業もソリューション事業に内包)により売上が2.6%減少したが、技術者派遣事業においては前期比18.3%と順調な伸びを見せた。
営業利益は同220.1%増の9億45百万円。『ラングリッサー』のロイヤリティ収益の寄与等で売上総利益が同75.7%増加し、業容拡大に伴う販管費の増加を吸収した。持分法投資損失90百万円の計上等で営業外費用が増加したものの、税負担率の低下で最終利益は5億60百万円と同220.1%増加した。
セグメント別売上高・利益
18/3期 |
構成比・利益率 |
19/3期 |
構成比・利益率 |
前期比 |
|
ソリューション事業 |
3,213 |
98.4% |
3,131 |
49.8% |
-2.6% |
受託開発事業 |
– |
– |
2,347 |
37.3% |
– |
コンテンツプロパティ事業 |
52 |
1.6% |
807 |
12.8% |
– |
調整額 |
-3 |
– |
– |
– |
– |
連結売上高 |
3,261 |
– |
6,286 |
– |
+92.7% |
ソリューション事業 |
722 |
22.1% |
683 |
10.9% |
-5.4% |
受託開発事業 |
– |
– |
59 |
0.9% |
– |
コンテンツプロパティ事業 |
24 |
0.7% |
785 |
12.5% |
– |
調整額 |
-452 |
– |
-583 |
– |
– |
連結営業利益 |
295 |
9.1% |
945 |
15.0% |
+220.1% |
* 単位:百万円
『ラングリッサー』効果(6ケ月分の収益)で第3四半期(22.3%)、第4四半期(23.2%)は営業利益率が20%を超えた。
2-2.ソリューション事業の動向
ソリューション事業は、EC等のWEB系の増加と好調な採用を背景に売上が拡大基調で推移し、第4四半期に過去最高を更新した。また、非エンタメ顧客の売上比率が前期の40.0%から41.6%に上昇しており、ゲームに限定されないデジタルクリエイティブサービス企業としてのポジションを確立しつつある。WEB系を中心に顧客需要が引き続き旺盛なため、今後、人材派遣だけでなく、受託開発も増やしていく考えだ。一方、ゲーム系顧客は強弱が見え始めていると言う。
採用面では、中途採用で100名を採用した。年間採用者数が100名を下回る期が続いていたが、再び100名を超え、期末のクリエイター&エンジニア在籍者数が過去最高となった。
また、第2四半期以降、収益性が低い「パートナー企業プロジェクト」の見直しと収益性の高い「プロパー(社員)プロジェクト」(社員のみで対応)の取込みに力を入れており、単価見直しを中心にした1プロジェクト当たり利益率向上の営業戦略を展開している。
プロジェクト数(通期累計)は、前期の4,428件から5,262件に18.8%増加した(前期は4.4%増)。プロジェクト単価(年度平均)は、年度平均計画単価591千円を9千円上回る600千円。第4四半期のプロジェクト数は、引き続き「パートナー企業プロジェクト」を縮小し、「プロパー(社員)プロジェクト」に注力した結果、第3四半期比微増にとどまった。期の後半からプロジェクト数の計画と実績の差が広がっているのも、この影響による。今後も、プロジェクト件数を追わず、収益性の高い「プロパー(社員)プロジェクト」の確保に注力していく考え。
* プロジェクト稼働数は、人材ソリューションサービス及び受託開発サービスを合算した期中累計から算出
* 取引先数は、期中において取引(売上)が発生した顧客企業数を1とした通期合算から算出
* クリエイター&エンジニア数は、期末日または四半期末時点における社外常駐プロジェクトに従事したクリエイター&エンジニア数
今期から取組みを開始した採用課の設置が奏功する等で、クリエイター&エンジニア数が順調に増加した。
2-3.財政状態及びキャッシュ・フロー
財政状態
18年3月 |
19年3月 |
18年3月 |
19年3月 |
||
現預金 |
1,009 |
1,257 |
未払金 |
285 |
537 |
売上債権 |
413 |
1,370 |
未払法人税等 |
59 |
264 |
流動資産 |
1,442 |
2,674 |
有利子負債 |
329 |
334 |
無形固定資産 |
169 |
164 |
負債 |
842 |
1,423 |
投資その他 |
433 |
793 |
純資産 |
1,257 |
2,254 |
固定資産 |
657 |
1,002 |
負債・純資産合計 |
2,099 |
3,677 |
キャッシュ・フロー(CF)
18/3期 |
19/3期 |
前年同期比 |
||
営業キャッシュ・フロー(A) |
244 |
228 |
-15 |
-6.5% |
投資キャッシュ・フロー(B) |
-110 |
-503 |
-392 |
– |
フリー・キャッシュ・フロー(A+B) |
133 |
-275 |
-408 |
– |
財務キャッシュ・フロー |
-74 |
423 |
+498 |
– |
現金及び現金同等物期末残高 |
977 |
1,129 |
+152 |
+15.6% |
参考:ROEの推移
15/3期 |
16/3期 |
17/3期 |
18/3期 |
19/3期 |
|
ROE |
21.92% |
15.09% |
27.98% |
14.62% |
34.46% |
売上高当期純利益率 |
6.57% |
5.01% |
8.47% |
5.36% |
8.91% |
総資産回転率 |
2.26回 |
2.61回 |
2.23回 |
1.57回 |
2.18回 |
レバレッジ |
1.48倍 |
1.15倍 |
1.48倍 |
1.74倍 |
1.78倍 |
*ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ。算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残。
3.2020年3月期業績予想と戦略
3-1.連結業績
19/3期 実績 |
構成比 |
20/3期 予想 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
6,286 |
100.0% |
7,020 |
100.0% |
+11.7% |
営業利益 |
945 |
15.0% |
1,050 |
15.0% |
+11.1% |
経常利益 |
851 |
13.5% |
1,000 |
14.2% |
+17.5% |
親会社株主帰属利益 |
560 |
8.9% |
672 |
9.6% |
+20.0% |
* 単位:百万円
前期比11.7%の増収、同11.1%の営業増益予想
売上高は前期比11.7%増の70億20百万円。WEB系顧客の深耕と、クリエイター&エンジニア数の増加によるプロジェクト数の増加でソリューション事業の売上が同18.2%増加する中、『ラングリッサー』効果でコンテンツプロパティ事業の売上が同26.4%増加する見込み。一方、受託開発事業は大型案件の初期開発一巡による売上の減少を新規案件の獲得でカバーして前期並みの売上を確保する。営業利益は同11.1%増の10億50百万円。受託開発事業での新規案件の獲得強化に伴う一時的な利益率の低下や積極的な採用による労務費・人件費の増加を吸収して前期と同水準の営業利益率を確保する。持分法投資損失の減少で経常利益は同17.5%増の10億円が見込まれる。
3-2.セグメント別見通し
19/3期 実績 |
構成比・利益率 |
20/3期 予想 |
構成比・利益率 |
前期比 |
|
ソリューション事業 |
3,131 |
49.8% |
3,700 |
52.7% |
+18.2% |
受託開発事業 |
2,347 |
37.3% |
2,300 |
32.8% |
-2.0% |
コンテンツプロパティ事業 |
807 |
12.8% |
1,020 |
14.5% |
+26.4% |
連結売上高 |
6,286 |
100.0% |
7,020 |
100.0% |
+11.7% |
* 単位:百万円
ソリューション事業
プロジェクト数は月次平均11件の増加を見込んでいる。「数から質」への転換を図る考えで、売上確保を目的とした「パートナー企業プロジェクト」の受注を停止して、「プロパー(正社員)プロジェクト」に絞り込む。単価については、人手不足を背景に派遣単価が上昇傾向にあるものの、WEB系顧客の新規開拓を加速するべく、稼働想定単価を当初投入単価とした。採用は月次10名前後の中途採用を見込んでいる。
IT技術者の不足をビジネスチャンスに
経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、今後10年間でIT人材は最大79万人不足する見通し。不足するIT人材の有効活用や最適配置のために流動化が必要であり、企業によるスキルアップ支援も必要と言う。同社は、IT人材の不足でIT人材の確保が難しくなる事業会社に対して人材派遣や受託開発といったアウトソーシングサービスを提供する事で、IT人材の供給と流動化の一翼を担っていく考え。また、IT技術者に対しては、スキルアップを支援するべく様々なプログラムを社内で用意している。
この他、外国籍IT人材の活用についても、日本の課題として掲げられているが、同社はオフショア開発を担うベトナム子会社を持つ合弁会社を日本に設立した。
受託開発事業
予想売上高23億円の内訳は、EPARK関連20億円、エクストリーム(テックファンド事業本部)による受託開発3億円。EPARK関連は資本業務提携契約に基づき月額1.5億円~2億円の安定した受注が見込まれる。この他、株式会社オルトプラス(東京都豊島区、代表取締役CEO 石井 武)との合弁で、ベトナムのオフショア拠点を活用して受託開発を行う(株)エクスラボを6月に設立したが、業績予想には織り込まれていない。
同社の受託開発事業では、受託開発を行い、納品後は運営フェイズに入る案件に絞って受注活動を行っている。例えば、ゲーム分野での運用フェイズであれば、サーバーのメンテナンスはもちろん、カードのイラストの追加や新しいイベント等に付随する開発等が発生する。このため、新規受注案件、既存保守案件(運用フェイズ)、既存追加開発案件(同)という形で継続的に収益を計上できる(EPARK事業は既に運用フェイズに入っている)。前期末で子会社を含めて350人体制を確立している。
20/3期は、EPARK事業が新規開発の一巡で一服するものの、エクストリーム(テックファンド事業本部)、(株)エクスラボ、(株)EPARKテクノロジーズ(非EPARK事業)で、新規受注案件、既存保守案件、既存追加開発案件、のいずれも増加する。既存保守案件と既存追加開発案件は売上総利益率が高いが、先ずは先行投資の意味合いも強い新規受注案件を積極的に取りにいき、その後、運用フェイズに入り、継続的に利益率を改善させていく考え。
株式会社オルトプラスと合弁会社(株)エクスラボを設立
同社は(株)オルトプラスと共同で、その子会社ALTPLUS VIETNAM Co.,Ltd.(APV)を活用したオフショア開発事業を行う事を目的に合弁会社(株)エクスラボを設立した。(株)エクスラボは、日本国内のクライアントを中心とする受託開発等の分野で両社が積み上げてきた開発・運営のノウハウと営業網を利用すると共に、管理コストや採用育成コストを最適化する事で同業他社に対する競争優位性を確保し、ソリューションを提供していく。
(株)オルトプラスは、2019年8月を目途に、オフショア開発拠点であるAPVの持分全てを(株)エクスラボに譲渡する。(株)エクスラボはAPVを最大限に活用して事業を拡大させていく。
(株)エクスラボの概要
所在地 | 東京都豊島区西池袋 一丁目11番1号 |
代表者の役職・氏名 | 代表取締役 三ヶ尻 卓(オルトプラス執行役員) |
事業内容 | オフショア開発拠点を活用したITサービスの開発、及び関連事業(企画・運営等) |
資本金 | 10,000千円 |
設立年月日 | 2019年6月 |
出資比率 | 株式会社エクストリーム:51%、株式会社オルトプラス:49% |
コンテンツプロパティ事業
『ラングリッサー』のロイヤルティについては、2019年2月~2020年1月発生分のロイヤルティを20/3期に売上計上する予定。リリースから9ケ月が経過した中国、7ケ月が経過した台湾・香港・マカオについては、セルラン状況が落ち着いている事から保守的な予測にとどめた。1月に配信を開始した英語版及び6月に配信を開始した韓国については、ライセンシーの独自予測をベースに業績予想に織り込み。日本版については、4月度の速報値を参考データとして業績予想に織り込んだ。
日本版は、足元、Android版、i-os版共にセルラン高位置をキープしているようだ。今後、著名ゲーム等とのコラボを実施していく予定。また、韓国版は、現地の大手ゲーム会社X.D. Global Limited(韓国)と提携しており、現地におけるマーケティングは同社の協力の下で行っていく。
4.今後の注目点
19/3期は(株)EPARKテクノロジーズの寄与と『ラングリッサー』効果で大幅な増収・増益となったが、定量的な面だけでなく、定性的な面からも注目すべき点が多い。例えば、ソリューション事業では、WEB系のビジネスが着実に拡大しており、非エンタメ顧客売上比率が前期末40.0%から当期末41.6%へ上昇した。同社はゲームのイメージが強いが、ゲームに限定されないデジタルクリエイティブサービス企業としてポジションを確立しつつあるようだ。また、ここ数年の業績伸び悩みの原因だった採用難・人材不足にも光が見えてきた。具体的には、中途採用者実績が100名を超え、在籍技術者数が過去最高となった。『ラングリッサー』効果で同社の知名度が更に向上し、応募者が増加傾向にあると言う。受託開発事業では、(株)EPARKとの資本業務提携により子会社化した(株)EPARKテクノロジーズが売上面で大きく貢献した。20/3期以降は安定した収益が期待できる運営(保守・追加開発)フェイズに入り、新規案件の獲得強化に伴う一時的な収益の低下を吸収する。ゲーム開発で培ったユーザーインターフェース周りの技術が高く評価されており、営業面での大きな武器になっているようだ。開発が一巡して運営フェイズに入れば、一段の収益性向上が期待できる。コンテンツプロパティ事業では、英語圏、日本(スマホ版)、韓国、と配信エリアが広がっている。短期間で人気が終息する事の多い中国でも、『ラングリッサー』は安定稼働していると言う。同事業に期待しつつ、収益基盤であるソリューション事業及び受託開発事業の拡大に注目していきたい。
参考:コーポレート・ガバナンスについて
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役会設置会社 |
取締役 | 4名、うち社外1名 |
監査役 | 3名、うち社外2名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年06月26日)
基本的な考え方
当社は、企業活動を支えるあらゆるステークホルダーの利益を重要視しており、長期的、継続的また効率的な株主価値の最大化を実現する上でも、コーポレート・ガバナンスの確立を重要な経営課題であると認識しております。企業の社会的責任については、株主のみならず、多くのステークホルダー、また直接的な利害関係者でない社会全般に対してもコーポレート・ガバナンスを基盤として会社全体で使命を共有し、事業の根幹たる「お客様を幸せにする」においてたゆまぬ付加価値創造に注力すべく、従業員に対し基本的な心構え・指針となるよう「社内規程」の整備・徹底を図っております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則を実施しております。