(4205)日本ゼオン 増収減益、売上高は高水準維持

2019/05/30

 

 

田中 公章 社長

日本ゼオン株式会社(4205)

 

企業情報

市場

東証1部

業種

化学

代表取締役社長

田中 公章

所在地

東京千代田区丸の内1-6-2

決算月

3月末日

HP

http://www.zeon.co.jp/

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,096円

218,498,496株

239,474百万円

7.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

20.00円

1.8%

100.69

10.9倍

1,172.40円

0.9倍

*株価は5/21終値。発行済株式数は19年3月期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2014年3月

296,427

29,901

32,561

19,650

85.15

13.00

2015年3月

307,524

28,245

31,098

19,080

84.13

14.00

2016年3月

295,647

29,856

32,153

18,079

79.86

15.00

2017年3月

287,624

30,767

31,805

23,152

104.31

16.00

2018年3月

332,682

38,881

40,893

13,056

58.81

17.00

2019年3月

337,499

33,147

36,319

18,458

84.06

19.00

2020年3月(予)

330,000

30,000

32,000

22,000

100.69

20.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

日本ゼオンの2019年3月期決算概要などについてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年3月期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅢの進捗
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
付属:Fact Sheet

 

今回のポイント

  • 19年3月期の売上高は前期比48億円増収の3,375億円。エラストマー素材はゴム、化成品が好調で35億円の増収。高機能材料は13億円の減収。化学品や電池材料は引き続き好調な一方、光学フィルムは顧客における在庫調整で低調だった。営業利益は同57億円減益の331億円。エラストマー素材は原材料価格の上昇で45億円の減益、高機能材料は電池材料の数量増はあったが価格低下、原材料価格上昇などで6億円の減益。当期純利益は同54億円増の185億円。シンガポール連結子会社Zeon Chemicals Singapore Pte. Ltd.において、事業環境の変化に伴い今後の事業計画及び回収可能性を検討した結果、同社が保有する固定資産(生産設備等)について、減損損失86億円を特別損失として計上したが、減損損失は前期より61億円縮小した。ほぼ修正予想通りの着地となった。

     

  • 20年3月期の売上高は前期比2.2%減の3,300億円、営業利益は同9.5%減の300億円を予想。高機能材料は電池材料が引き続き伸長し、光学フィルムも底入れを見込み増収増益予想。エラストマー素材は円高の影響で減収減益を予想。配当は前期比1円増配の20.00円/株の予想。予想配当性向は19.9%。

     

  • 今期は3期ぶりの減収予想ではあるものの、売上高は3,300億円台へとステージを一歩上ったと会社側は考えている。エラストマー素材事業においてはシンガポールで積極的な投資を続けてきたSSBRが、高機能材料においては市場の伸びおよび計画を上回る進捗を続けている電池材料が大きな牽引役となっている。この他、両事業とも有望な製品・材料が芽を出し始めており、「2020年度 連結売上高5,000億円以上達成」に向けどこまで積み上げていけるのかを注目していきたい。

     

1.会社概要

自動車部品やタイヤに使用される合成ゴムや、医療用手袋等に使用される合成ラテックスを始めとして、世界的な高シェア製品を多数保有する石油化学メーカー。独創的な技術開発力とそれを生み出す研究開発体制、高い収益性などが強み。
自動車部品、タイヤ、ゴム手袋、紙おむつ、携帯電話、液晶テレビ、香水など身の回りにある多種多様な製品に同社が製造する製品(素材)が使用されている。
グループは、同社および子会社58社、関連会社8社で構成されており、世界16か国に生産、販売拠点を有している。

 

 

 

 

(同社資料より)

 

【1-1社名と経営ビジョン】

「ゼオ」(Geo)はギリシャ語で大地、「エオン」(Eon)は永遠を意味し、その合成語「ゼオン」には「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味が込められており、世界に誇り得る独創的技術によって、地球環境と人類の繁栄に貢献することを経営理念として掲げている(設立時は資本及び技術提携先であった米国B.F.グッドリッチ社の塩化ビニル樹脂製品の商標「Geon」を取って社名としていたが、1970年の資本関係解消を機に表記を「Zeon」と改めた)。

 

【1-2沿革】

同社は、古河電工、横浜ゴム、日本軽金属の古河系3社の共同出資により、米国B.F.グッドリッチ・ケミカル社との提携による塩化ビニル樹脂製造技術の導入を前提として、1950年4月に設立された。
1951年にB.F.グッドリッチ・ケミカル社が35%の株式を取得し、技術及び資本の全面提携が成立し、翌1952年に日本で初めて塩化ビニル樹脂の量産を開始した。
1959年にはB.F.グッドリッチ・ケミカル社から合成ゴム製造技術を導入し、日本で初めて量産を開始。自動車向け需要の増大に対応し、生産設備を拡大していく。

 

1965年にはC4留分からブタジエン(合成ゴムの主原料)を効率よく製造する同社の独自技術であるGPB(ゼオンプロセスオブブタジエン)法による生産を開始した。
B.F.グッドリッチ・ケミカル社が事業の中核を塩化ビニル樹脂事業にシフトするのに伴い、特殊合成ゴム事業を譲り受け、1970年資本提携も解消へ。これに伴い1971年に英文社名をGeonからZeonに変更した。
同じく1971年にはC5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを抽出する独自技術GPI(ゼオンプロセスオブイソプレン)法を開発し生産を開始。

 

1980年代に入り、合成ゴムに加えて、フォトレジストなどの情報材料、合成香料、メディカル分野など新規事業への展開を積極化させていく。
1984年、現在では世界シェアトップとなった水素化ニトリルゴムZetpolRを高岡工場で生産開始。
1990年、GPI法によって抽出、合成された高機能材料事業の主要製品であるシクロオレフィンポリマーZEONEXR を水島工場で生産開始。
1993年、電子材料事業で中国に進出した。
1999年にはゼオン・ケミカルズ(米国、現 連結子会社)が、グッドイヤーから特殊ゴム事業を買収し、特殊ゴム分野で世界トップメーカーとなる布石を打つ。

 

2000年、水島工場での塩化ビニル樹脂生産を打ち切り、創業事業の塩化ビニル樹脂事業から撤退した。
21世紀に入り、LCD用光学フィルムゼオノアフィルムRの上市、グローバル生産・販売体制の強化、シンガポールにおける溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)の商業運転開始、富山県氷見市のLCD用光学フィルム設備を増強、世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場稼働、住友化学とS-SBR生産販売のための合弁会社設立など、積極的な事業展開を進めている。

 

【1-3事業内容】

同社の主要製品は、原油を蒸留分離して得られるナフサを熱して抽出される炭素数の異なる様々な抽出物を原材料としている。ナフサを熱すると、順次、一酸化炭素ガス(C1)、エチレン(C2)、プロピレン(C3)が抽出される。
同社は、プロピレン(C3)を抽出した後のC4留分から独自開発のGPB法によって抽出したブタジエンや、その後のC5留分からGPI法によって抽出したイソプレン・モノマーピペレリンジシクロペンタジエン、2-ブチン等を原材料に加工を行い、合成ゴム、合成ラテックスを始めとした各種素材を生産している。

(同社資料より)

 

生産した素材そのものを顧客に販売する素材型ビジネスが中心の「エラストマー素材事業」、素材を同社において一次加工し顧客に販売する部材型ビジネスが中心の「高機能材料事業」、「その他の事業」がある。

 

*いずれも2019年3月期実績。消去、全社前の構成比。

 

<エラストマー素材事業> 
「エラストマー」とは、「ゴムのように弾性に富む高分子化合物の総称」(三省堂 大辞林より)で、合成ゴムがその代表例である。沿革にあるように同社は1959年に日本で初めて合成ゴムの量産を開始しており、同事業は会社の基盤を支える事業である。内訳としては大きく、合成ゴム事業、合成ラテックス事業、化成品事業(石油樹脂、熱可朔性エラストマー)に分類される。

 

?合成ゴム事業

<製品例:タイヤ>世界トップクラスの品質を誇るタイヤ用合成ゴムを、世界の主要タイヤメーカーに納入している。製造している合成ゴムの種類には、耐摩耗性・耐老化性・機械的強度特性に優れるスチレンブタジエンゴム(SBR)、弾性・摩耗性・低温特性のバランスに優れるブタジエンゴム(BR)、天然ゴムとほぼ同様の特性をもち品質安定性に優れるイソプレンゴム(IR)等がある。今後はSBRの特性を更に改良した低燃費タイヤ用のS-SBRの需要が急速に拡大すると見込んでおり、これに対応した供給能力増のため、シンガポール工場の第1系列が2013年9月、第2系列も2016年4月に稼働を開始した。シンガポール工場の供給能力は7万トンとなっている。

 

<製品例:自動車用部品>

(同社資料より)

 

自動車エンジンにおいては、ラジエーターホース、フューエルホース、タイミングベルト、オイルシールなどの各部品において耐油性、耐熱老化性に優れた特殊合成ゴムが用いられている。

 

世界No.1の特殊合成ゴムメーカーである同社はその品質の高さを評価されており、自動車用特殊合成ゴムの中で高いシェアを有している。中でも、タイミングベルト用の水素化ニトリルゴムZetpolRは耐熱性、耐油性、機械的強度特性に優れており、世界で高いシェアを占めている。
また従来品の性能を大きく向上させたZetpolRの新製品を開発した。
これは従来製品比で+10℃も耐熱性を改善させたもので、従来のシール・ガスケット部品の長寿命化に対応できるだけでなく、次世代バイオ燃料を用いたエンジン向けにも需要が拡大すると見込んでいる。さらに、押出加工性が良好であることからホース用途にも展開が広がってきた。顧客の評価も上々で、高価なゴムの代替材を中心として、国内、アジア、欧米で採用が進んでいる。

 

?合成ラテックス事業
合成ラテックスとは、合成ゴムを水中に分散させた液状ゴムのことで、ゴム手袋をはじめ、紙加工、繊維処理、接着剤、塗料、化粧パフ等に使用される。化粧用パフ用アクリロニトリルブタジエン(NBR)ラテックスは世界でも高いシェアを有している。

 

?化成品事業
C5留分から製品化を行う同社独自のGPI法により粘着テープ・ホットメルト接着剤用素材、トラフィックペイント用バインダー等、幅広い製品化を行っている。

 

<高機能材料事業>
独創的技術である高分子設計や加工技術によって、高付加価値を有した材料・部材を扱っている。

 

?情報用部材
GPI法によってC5留分から抽出、合成されたシクロオレフィンポリマーは、独自技術で開発した熱可塑性プラスチックで、製品としてZEONEXR とZEONORRがある。
ZEONEXRは高透明性、低吸水性、低吸着性、耐薬品性を活かして、カメラレンズやプロジェクターレンズなどの光学部品、シリンジやバイアルなどの医療用容器に使用されている。
ZEONORRは高透明性や転写性、耐熱性等を活かし、透明汎用エンプラとして、導光板や自動車部品、半導体容器などの幅広い分野で使用されている。

 

シクロオレフィンポリマーから、世界初の溶融押出法で開発された光学フィルムがゼオノアフィルムRで、光学特性、低吸水・低透湿、高耐熱性、低アウトガス、寸法安定性に優れ、液晶テレビやスマートフォン、タブレット端末のディスプレイに使用されているほか、有機ELディスプレイなど幅広い用途での利用が期待されている。

 

(同社資料より)

 

また、同社では世界で初めて「斜め延伸位相差フィルム」を開発し、生産している。
有機ELの光反射防止フィルムとしての採用も進んでおり、今後も中小型用フラットパネルディスプレイ向けの需要拡大が見込まれることから、高岡および氷見の2工場(合計 年間生産 1,500万㎡)に加えて、2013年10月に福井県敦賀市にも工場が完成。

 

他にも、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ用途に代表される、電子デバイス向け塗布型有機絶縁材料ZEOCOATRがある。
ZEOCOATRは、透明性が高く、吸水性が非常に低いほか、膜からガス成分を発生しにくいためディスプレイの画質と信頼性の向上を同時に達成することができる。
今後、液晶に比べ薄く成型できる有機ELディスプレイ向けに拡販を積極的に進めるとともに、新しい半導体を用いた薄膜トランジスタやフレキシブルディスプレイ用の絶縁材料での採用を目指している。

 

?エナジー用部材
リチウムイオン電池用材料として負極及び正極、機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー、シール剤を供給している。
現在、リチウムイオン電池は携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源として広く使用されている。
また、スマートフォンの急速な普及により、その高容量化は強く求められている。
さらに、軽量・小型でありながら、大きなエネルギーを蓄えられることから、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車向け、スマートグリッドなどの産業電源向けの採用も始まっているが、一方で、高温下で使用した場合、寿命が低下しやすいといった課題があった。
同社は、リチウムイオン電池バインダーの高機能化を進め、正極用バインダーとして寿命の低下抑制に大きく貢献する水系機能性バインダーの開発に成功し、また、リチウムイオン電池の蓄電容量を従来比5~15%上げられる負極用バインダーの製品化にも成功した。
正極・負極・機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー及びシール剤はリチウムイオン電池の「安全性」、「寿命」、「電池容量アップ」に寄与し、電気自動車の普及に貢献するものと考えている。
リチウムイオン電池の将来性に注目し、早くから取り組んできた同社では、エナジー用部材事業の2020年のありたい姿として、「リチウムイオン電池バインダー市場でのトップシェアを維持」するとともに、急速充電など自動車用途でのニーズに応えた新しい材料機能の普及拡大や次世代の新しい電池の実現に向けた機能性材料の提案ができることを目指している。

 

(同社資料より)

 

 

?メディカルデバイス
メディカルデバイス市場は、景気の影響が少なく、また日本における高齢化の進行と新興国の市場拡大で成長が見込まれる一方、医療機器の製造・販売会社に対する法的要件が厳格であるほか、薬事承認申請作業が必要で、医療従事者との関係作りが不可欠であること等から参入障壁が高く、魅力的な市場であると同社では考えている。
同社は、1974年に人工腎臓の開発を開始したのを皮切りにメディカルデバイス事業を積極的に推進し、1989年に子会社ゼオンメディカル株式会社を設立し、同社グループ内で開発・製造・販売・薬事のすべての分野における対応が可能な体制を構築している。
消化器系製品では、胆道結石除去用の差別化製品である「オフセットバルーンカテーテル」、国産初の胆管カバードステント「ゼオステントカバード」、また循環器系製品では、急性心筋梗塞時等に心臓の拍動を補助するデバイスとして、世界最細径の「ゼメックス IABPバルーンプラス」など、豊富な開発実績を有している。

 

(同社資料より)

 

現在注力しているのが、胆道結石による痛みからの解放につなげる結石除去デバイスである。
同社の開発製品であるゼメックスクラッシャーカテーテル、ゼメックスバスケットカテーテルNT、エクストラクションバルーンカテーテルなど、巨大結石から胆泥・胆砂まであらゆる胆道結石を除去できるデバイスをラインアップしており、結石除去デバイス全体で50%のシェア獲得を目指す。
また、2016年3月には、ガイドワイヤータイプとしては世界初の光センサー型FFRデバイスを上市した。光ファイバー型センサーであることから血圧測定のズレが起こりにくい。ガイドワイヤーとしての操作性も高い評価を得ており、2020年には日本国内シェア30%を目指すとしている。

 

④化学品事業
C5留分より得られる原料を活用して食品・香粧品用の合成香料や、特徴ある溶剤及び植物調整剤などの特殊化学品を扱っている。
グリーン系の合成香料では世界一のシェアを有している他、医農薬中間体の原料やフロン代替用途などの溶剤・洗浄剤・ウレタン発泡剤及び機能性エーテル溶剤など、幅広い産業分野に特徴ある製品を供給している。

 

【高機能新規素材開発例 ~カーボンナノチューブ(CNT)~】
積極的な研究開発によって様々な新素材を世の中に送り出してきた同社だが、今後大きな成長が期待されるのが「単層CNT」だ。

 

①単層CNTとは?
1993年、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研) ナノチューブ応用研究センター長の飯島 澄夫博士によって世界で初めて蜂の巣上の炭素原子が網目のように結び付いた、筒状分子構造の物質が発見され、「カーボンナノチューブ(CNT)」と命名された。
その構造により、単層CNTと多層CNTに大きく分類できる。多層CNTは比較的生産が容易であることから国内外において実用化への応用開発が推進されている。

 

(同社資料より)

 

一方、単層CNTは、「鋼の20倍の強度」、「銅の10倍の熱伝導性」、「アルミの半分の密度」、「シリコンの10倍の電子移動度」など、「軽量かつ高強度でありながら高い柔軟性を持つ」、「電気や熱伝導性が極めて高い」といった、多層CNTを上回る優れた特性を持つ。
例えば、リチウムイオン電池の導電助剤への展開、高い伸縮性や強度を持つことから、電子ペーパーや超薄型タッチパネル用の透明導電膜のほか、放熱材料への利用なども考えられている。また、広帯域の光を吸収できる特性があるため、電磁波吸収材としての実用化研究も進んでおり、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、構造材料分野、高機能材料分野等、幅広い場面での応用が見込まれている。

 

(単層CNT融合新材料研究開発機構 HPより)

 

しかし、従来の単層CNTは、不純物が多く、且つ生産性が低いために、製造コストが高く1g当たり数万~数十万円もしているのが大きな課題であった。

 

②同社の取組み&位置づけ
このような背景の中、低炭素社会の実現というグローバルな社会的要請に応え、日本で発見された数多くの優れた特性を持つ単層CNTを応用した新製品を世界に先駆けて事業化、工業化するための技術の確立に取り組んでいる。
同社と産総研が、「スーパーグロース法」という2004年に産総研 畠賢治博士らによって開発された合成技術をベースにして、産総研のつくばセンター敷地内に2010年12月に開設した実証プラントで量産化に向けた研究開発および供給(2011年4月から、産総研より量産品のサンプル供給を開始)を担当し、複合材料の用途開発を上記の研究組合が進めている。
産総研 ナノチューブ応用研究センターが量産化のためのパートナーに同社を選定したのは、同社の荒川公平氏(前取締役常務執行役員)がCNT研究開発者として豊富な実績と成果を有していた事が大きな理由だということであり、単層CNT実用化プロジェクトにおける同社の重要性は大変大きなものである。

 

③今後の展開
スーパーグロース法を基にした量産化技術を確立した同社は、2015年11月、山口県周南市の徳山工場内に量産プラントを竣工させ、世界初の量産を開始した。
単層CNTの量産化技術を確立しているのは世界でも同社のみであり、国内外約100社から問い合わせが来ており、順次サンプル出荷を行っており、同社自らも他社に対し用途提案も行っている。
一方、単層CNTは、ナノ材の一種でありそのサイズが極めて小さい事、形状が繊維状であることから化学的な特性以外に、サイズや形状によって生体への侵入などによる影響があるのではないかという懸念も指摘されている。
現在、産総研を中心に評価手法の標準化、OECDのエンドポイント測定等の取組みが進められており、国際標準化、法規制化が順次行われると考えられている。

 

<その他の事業>
反応射出成形法(RIM成形法)で使用されるジシクロペンタジエンを原料としたRIM配合液を取り扱っている。

 

【1-4 ROE分析】

 

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE(%)

11.7

9.8

8.6

10.3

5.3

7.2

 売上高当期純利益率(%)

6.63

6.20

6.12

8.05

3.92

5.47

 総資産回転率(回)

0.82

0.80

0.75

0.72

0.78

0.79

 レバレッジ(倍)

2.15

1.98

1.86

1.77

1.71

1.69

売上高当期純利益率、レバレッジともに低下傾向にあることからROEは日本企業が一般的に実現すべきと言われている8%を下回っている。
高機能材料セグメントの成長を中心とした収益性の向上が期待される。

 

【1-5特長・強み】

1.世界トップクラスの独創的な技術開発力
C4留分からブタジエンを製造するGPB法は戦後の日本化学史上トップクラスの技術開発であり、アメリカ、韓国を始め世界19か国49プラントに技術供与している。
また、C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法も同社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。

 

この2つの技術に代表される独創的な技術開発力が同社の大きな強みであり、世界的に高く評価されており、国内外で数々の賞を受賞している。技術関係では、GPB法、GPI法はもちろんのこと、1960年から現在までに48の賞を、環境・安全関係では1982年から現在までに26の賞を受賞している。

 

2.世界的な高シェア
ZetpolR、ZEONEXR、ZEONORRに代表される同社の独創的技術から生み出された様々な製品は、世界的に高いシェアを獲得している。これ以外にも、化粧品や食品フレーバーに使用されるリーフアルコール、化粧用パフ用NBRラテックスなども「世界No.1」製品となっている。

 

3.独創的な技術を生み出し続ける研究開発体制
「特定の得意分野で独創的技術を開発し、世界一事業を創出して社会に貢献する。」との基本理念に基づき、研究開発に取り組んでいる。
主要研究拠点は神奈川県川崎市にある「総合開発センター」だが、製造現場に近いところで研究開発を行うことが効率的であるとの考えから、高岡工場に精密光学研究所およびメディカル研究所を、米沢工場に化学品研究拠点を、徳山工場にトナー研究所を、水島工場に化成品研究室を設立した。また海外では、アメリカ・ドイツ・シンガポール・中国に技術サポート拠点を有している。

 

研究員は現状に満足することなく、適度な危機感を保ちつつ、研究にあたっているということだ。また会社も加点主義に基づく評価を行い、スピードと独創性を重視している。R&D費について従来は対売上高比を基準としていたが、安定的な研究開発を継続していくため、今後は年間160億円程度を目途にしていく考えだ。

 

2.2019年3月期決算概要

(1)連結経営成績

 

18/3期

構成比

19/3期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

332,682

100.0%

337,499

100.0%

+1.4%

+5.5%

-0.7%

売上総利益

101,272

30.4%

96,742

28.7%

-4.5%

販管費

62,392

18.8%

63,595

18.8%

+1.9%

営業利益

38,881

11.7%

33,147

9.8%

-14.7%

+3.6%

-2.5%

経常利益

40,893

12.3%

36,319

10.8%

-11.2%

+6.8%

-1.8%

当期純利益

13,056

3.9%

18,458

5.5%

+41.4%

-23.1%

+2.5%

*単位:百万円。修正予想は19年1月発表。

 

増収も原材料価格上昇で減益。
売上高は前期比48億円増収の3,375億円。エラストマー素材はゴム、化成品が好調で35億円の増収、高機能材料は13億円の減収。化学品や電池材料は引き続き好調な一方、光学フィルムは顧客における在庫調整で低調。営業利益は同57億円減益の331億円。エラストマー素材は原材料価格の上昇で45億円の減益、高機能材料は電池材料の数量増はあったが価格低下、原材料価格上昇などで6億円の減益。
当期純利益は同54億円増の185億円。シンガポール連結子会社Zeon Chemicals Singapore Pte. Ltd.において、事業環境の変化に伴い今後の事業計画及び回収可能性を検討した結果、同社が保有する固定資産(生産設備等)について、減損損失86億円を特別損失として計上したが、減損損失は前期より61億円縮小した。
ほぼ修正予想通りの着地となった。

 

(2)セグメント別動向

【エラストマー素材】

 

18/3期

19/3期

前期比

売上高

1,946

1,981

+1.8%

 ゴム

1,380

1,388

+0.6%

 ラテックス

192

188

-2.1%

 化成品

347

383

+10.4%

 その他・消去

26

22

-15.4%

営業利益

222

177

-20.3%

販売数量(千トン)

621

616

-1.0%

 ゴム

360

355

-1.4%

 ラテックス

130

123

-5.4%

 化成品

131

138

+5.3%

*単位:億円。

 

増収・減益。
売上高は前期比35億円増収の1,981億円。ゴムは販売価格が上昇し、国内外とも堅調で増収。化成品はSISが伸長。原料価格上昇分の価格転嫁も進み増収となった。一方ラテックスは国内樹脂改質向け、中国向けが低調で数量、売上高ともに減少した。ゴムの販売数量は1%の減少。汎用ゴムの販売数量は国内外共に低調だったが、S-SBRが好調で1%の微減にとどまった。特殊ゴムの販売数量は同4%の減。輸出は低調も、国内外子会社は堅調だった。
営業利益は同45億円減少の177億円。営業利益率は前年同期の11.4%から8.9%へ2.5ポイント低下した。
化成品の海外販売数量増による数量要因+10億円、販売価格上昇による価格要因+42億円があったが、原料価格上昇による原価要因-60億円、ゴム在庫保管料や運賃増による販管費要因‐3億円が影響した。

 

【高機能材料】

 

18/3期

19/3期

前期比

売上高

865

851

-1.6%

 高機能ケミカル

243

276

+13.6%

 高機能樹脂

565

519

-8.1%

 メディカル他

56

57

+1.8%

営業利益

167

161

-3.6%

*単位:億円。

 

減収・減益。
売上高は前期比13億円減収の851億円。合成香料を含む化学品が同1%増、電池材料が同32%増と高機能ケミカルは好調だった一方、光学フィルムは顧客の在庫調整などで同10%減と低調だった。光学フィルムの販売数量は同1%の減少、中小型向け光学フィルムの売上高比率は前期の28%から21%に低下した。
営業利益は同6億円減の161億円。営業利益率は前期の19.4%から18.9%へ0.5ポイント低下した。
電池材料などの数量増による数量要因+18億円はあったものの、価格要因-2億円、原価差-17億円、販管費要因‐4億円などをカバーできなかった。

 

【その他】

 

18/3期

19/3期

前期比

売上高

539

567

+5.2%

営業利益

32

28

-12.5%

*単位:億円。

 

増収・減益。
商社部門の販売が堅調。RIM事業も拡大した。営業利益率は前期の5.9%から4.9%へ1.0ポイント低下した。

 

(3)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要バランスシート

 

18/3月末

19/3月末

増減

 

18/3月末

19/3月末

増減

流動資産

224,859

227,238

+2,379

流動負債

139,264

130,039

-9,225

 現預金

41,666

37,534

-4,132

買入債務

84,003

82,414

-1,589

 売上債権

79,344

78,352

-992

短期有利子負債

26,573

12,125

-14,448

 棚卸資産

63,896

71,125

+7,229

固定負債

41,315

35,742

-5,573

固定資産

215,660

197,700

-17,960

 長期有利子負債

12,000

12,000

0

 有形固定資産

115,559

102,323

-13,236

負債合計

180,579

165,781

-14,798

 無形固定資産

3,355

3,197

-158

純資産

259,940

259,156

-784

投資その他の資産

96,746

92,179

-4,567

 自己資本

257,167

256,168

-999

資産合計

440,519

424,937

-15,582

負債・純資産合計

440,519

424,937

-15,582

*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、買入債務には電子記録債務を含む。

 

社債償還で現金が減少したが棚卸資産増などで流動資産は前期末に比べ23億円増加。有形固定資産、投資有価証券の減少などで固定資産合計は同180億円の減少。資産合計は同156億円減少した。
社債償還で有利子負債が144億円減少したことなどから負債合計は同148億円減少した。
その他有価証券評価差額金の減少などで純資産は同7億円の減少。この結果自己資本比率は60.3%と前期末より1.9ポイント上昇した。D/Eレシオも前期末の0.15から0.09へ0.06ポイント改善した。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18/3期

19/3期

増減

営業CF

54,462

40,393

-14,069

投資CF

-14,951

-21,426

-6,475

フリーCF

39,511

18,967

-20,544

財務CF

-11,625

-23,575

-11,950

CF

39,791

34,846

-4,945

*単位:百万円

 

仕入債務の減少などで営業CFのプラス幅は縮小したが、フリーCFはプラスを維持。
財務CFは社債償還により支出などでマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは低下した。

 

3.2020年3月期業績予想

【通期業績】

 

19/3期実績

構成比

20/3期予想

構成比

前期比

売上高

3,375

100.0%

3,300

100.0%

-2.2%

エラストマー素材

1,981

58.7%

1,900

57.6%

-4.1%

高機能材料

851

25.2%

860

26.1%

+1.1%

その他

567

16.8%

565

17.1%

-0.4%

消去

-25

-25

営業利益

331

9.8%

300

9.1%

-9.5%

エラストマー素材

177

5.2%

144

4.4%

-18.6%

高機能材料

161

4.8%

170

5.2%

+5.6%

その他

-7

-14

営業外収支

32

0.9%

20

0.6%

-37.5%

経常利益

363

10.8%

320

9.7%

-11.9%

当期純利益

185

5.5%

220

6.7%

+19.2%

*単位:億円。セグメント利益の構成比は、売上高営業利益率。

 

【各種前提】

 

19/3期 実績

20/3期 予想

前期比

円/ドル

110.7

105.0

-5.1%

円/ユーロ

128.7

120.0

-6.8%

国産ナフサ(円/kl)

49,500

39,000

-21.2%

アジア・ブタジエン(ドル/t)

1,372

1,250

-8.9%

 

減収減益予想
売上高は前期比2.2%減の3,300億円、営業利益は同9.5%減の3,000億円を予想。
高機能材料は電池材料が引き続き伸長し、光学フィルムも底入れを見込み増収増益予想。エラストマー素材は円高の影響で減収減益を予想。
配当は前期比1円増配の20.00円/株の予想。予想配当性向は19.9%。

 

4.新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅢの進捗

2018年3月期を初年度とする4年間の「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅢ」の進捗状況は以下の通り。

 

<全社戦略>

成長

オールゼオンの強みを組み合わせる『深化』と、 壁を越えて外部と連携する『探索』によって、 世界中にソリューションを提供し、社会に貢献する。

『重点開発領域』での新事業創出、新製品開発を加速する。

重点開発領域として、地球環境、スマート化、健康と生活を挙げている。

風土

多様な考え方を活かし、まずやってみて、前向きに行動することを尊重する組織風土を育成する。

 

重点開発領域としては、成長可能性およびイノベーションの発生確率の高い領域として「地球環境(省エネ、自動車関連、発・蓄電など)」、「健康と生活(自動運転、医療機器・素材、生活関連など)」、「スマート化(IoT関連)」を挙げている。

 

「スピード」、「対話」、「社会貢献」の下、仲間との相互信頼を今以上に醸成し、2020年度のありたい姿として、「化学の力で未来を今日にするZEON」を掲げ、連結売上高5,000億円以上の実現を目指している。

 

<全社業績>
SZ-20 PhaseⅢに入り、18年3月期、19年3月期と2期連続で過去最高の売上高を更新。20年3月期は微減収とはなるが、3,300億円台が定着したと会社側は考えている。
エラストマー素材事業では原材料市況高騰による価格改定の浸透、高機能材料はシクロオレフィンポリマーや電池材料の成長が増収のドライバーである。

 

<セグメント別戦略>

エラストマー素材事業

高機能材料事業

成長市場へのグローバルな対応とコスト競争力強化によって、強みを発揮できる事業を更に深化させる。

蓄積してきた市場からの信頼とお客様との関係を活かして、新たな可能性を探索し、成長に繋げる。

重点的なリソース投入と外部との連携強化によって、市場成長と技術発展のスピードに対応して事業を拡大する。

 

①エラストマー素材事業
◎SSBR (溶液重合スチレンブタジエンゴム)
住友化学と同社のポリマー変性技術及び生産技術を融合させ、自動車軽量化とともにニーズの高いタイヤの「ウェットグリップ性」、「低燃費性」、「耐摩耗性」の向上を実現する新製品を開発中で、世界のリーディングポジションを目指していく。
SSBR販売数量は2020年には2017年の約1.5倍まで拡大する見込み。

 

◎合成ゴム
タイにアクリルゴムの製造・販売新会社「Zeon Chemicals Asia Co., Ltd.」を設立した。
工場は生産能力 5,000 トン/年で、日本、米国に続く3 拠点で4工場目となる。アジアにおける製・販・技のネットワークを強化し、内燃機関搭載車の成長およびターボ搭載比率の高まりが期待されるアジア地域をカバーし需要を取り込んでいく。
完工は2020年春の予定。

 

◎ラテックス
労働安全意識の高まりにより、欧州を中心に作業用手袋市場が成長中で、新製品の開発に取り組んでいる。2019年度中の上市を目指している。
作業用手袋用ラテックスの販売数量は、2020年度には2017年度の約1.8倍まで拡大する見込み。

 

◎SIS (スチレン系熱可塑性エラストマー)
高強度・高伸縮性といった特徴を持つ非対称SISの更なる市場展開によって、エラスティックフィルム、粘着ラベルなどに加え、フレキソ、保護フィルム、粘着テープ、ホットメルト粘着剤など、製品の差別化を進めながらSISの活躍出来るフィールドを更に拡大させる計画である。足元では紙おむつなど衛生材料を中心に採用が拡大している。
紙おむつは年率6%で伸長しており、今後は衛生材料以外の粘着ラベルやフレキソ向けの展開が期待され、2020年度には当初計画を上回る見込みである。
非対称SISの販売量は2020年度までに2017年度比約20倍まで拡大する見通しである。

 

◎PSC(パウダースラッシュコンパウンド)
日本、中国、メキシコの3拠点体制によって市場の拡大に対応する。
パウダースラッシュコンパウンド(PSC)は、PVCを原料とするスラッシュ成型用コンパウンドで、意匠性、成形加工性、低温特性に優れ、自動車の内装材表皮に用いられている。
PVC/PSCは、日本及び海外自動車メーカーでも採用が拡大中で、新規ユーザーでの評価が進んでおり、今後採用車種が拡大していく見込み。

 

?高機能材料事業
◎COP (シクロオレフィンポリマー)等
多様化する医療・バイオ市場の分野において、高品質かつ手軽な分析・検査診断用チップのニーズが高まる中、同社は子会社を通じ2017年より、COPを使用した樹脂製マイクロ流路チップなどの試作品成形の受託事業を展開している。
そうした中、2019年4月、光学・医療・バイオ市場の試作対応力を強化し、国内外の大学・研究機関・ベンチャーにこれまで以上に寄り添い、より積極的かつスピーディーな新製品・新サービスの提供を目指し、ゼオンオプトバイオラボ(株)を設立した。

 

◎ゼオノアフィルムR
今後成長が見込まれる中小型向けOLED(有機ELディスプレイ)市場に対し、位相差フィルム(ZA-Film, 液晶塗布フィルム)、センサー基材(ZC-Film)の新部材で採用拡大を目指している。携帯電話用FPD(フラットパネルディスプレイ)市場においては、液晶からOLEDへのシフトが今後も進むことが見込まれている。

 

◎電池材料
リチウムイオン電池の高容量化や自動車への搭載に伴い、安全性向上のため、機能層を形成したセパレータが急速に拡大している。
同社の電池材料は、シール材料においては電池の液漏れ防止に貢献し長寿命に貢献するほか、機能層用バインダーは2015年の上市以降、自動車用を中心に採用が拡大しており安全性を大幅に向上させている。また、正極用・負極用バインダーにおいては、充放電に伴う膨張収縮を低減することで長寿命・安全性へ貢献しているほか、活物質の表面で起こっている化学反応を補助し高出力を可能にしている。
同社の電池材料売上は、リチウムイオン電池市場全体を大きく上回る伸びを見込んでいる。

 

◎メディカルデバイス
低侵襲医療機器国内市場は、前年比2.2%の成長を続けており、中でもFFR(※)は20%を超える高成長市場である。
同社では、循環器系においては、精度と信頼度の向上により光センサー型FFRで2021年3月期市場シェア30%を目指している。また消化器系においては低侵襲デバイスの提供に注力しており、19年3月期には新型胆石除去バルーンや新型胆管ステントを上市したが、今期20年3月期も消化器系を中心に新型胆管ステント、新型止血鉗子新型クリップ、FFR後継機種など新製品の上市を予定している。
同社メディカルデバイス売上は、2020年度までに2017年度比約2倍まで拡大する見通しである。

 

※FFR(冠血流予備量比)
冠動脈内に狭窄病変があるとき、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測する指標

 

◎高熱伝導放熱シート
垂直方向に高い熱伝導性を持った高性能なシート系熱界面材料(TIM)を開発中で、サーバーやパワーデバイスなどの熱問題解決に期待している。

5.今後の注目点

今期は3期ぶりの減収予想ではあるものの、中期経営計画の進捗でも触れたように、売上高は3,300億円台へとステージを一歩上ったと会社側は考えている。
エラストマー素材事業においてはシンガポールで積極的な投資を続けてきたSSBRが、高機能材料においては市場の伸びおよび計画を上回る進捗を続けている電池材料が大きな牽引役となっている。
この他、両事業とも有望な製品・材料が芽を出し始めており、「2020年度 連結売上高5,000億円以上達成」に向けどこまで積み上げていけるのかを注目していきたい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

11名、うち社外3名

監査役

5名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年11月30日

 

<基本的な考え方>
当社は、株主をはじめとする多様なステークホルダーの利益を尊重し、利害関係を調整しつつ収益を上げ、企業価値を継続的に高めることを目指します。その実現のために、コーポレートガバナンスを通じて効率的かつ健全な企業経営を可能にするシステムを構築する努力を継続します。
また、内部統制システムを整備することにより、各機関・社内組織の機能と役割分担を明確にして迅速な意思決定と執行を行います。その経過および結果については適切な監視と情報公開を行い、経営の透明性の向上に努めます。

 

<実施しない主な原則とその理由>
(すべての原則について、2018年6月改訂前のコードに基づき記載しております)
当社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】

・他社の株式を政策保有するにあたっては、その保有が取引先、地域社会その他のステークホルダーとの関係強化をもたらし、ひいては中長期的視点で当社の企業価値向上に資するものかどうか等を十分に検討します。

・このような検討を経て取得した株式については、毎年個別銘柄ごとに保有目的の適切性や保有に伴う便益およびリスクが資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を検証します。本年は10月31日開催の取締役会において検証を実施し、保有の意義を失ったと認められる銘柄につきましては、縮減の可能性の検討を進めてまいります。

・政策保有株式の議決権については、投資先企業の中長期的な企業価値向上の観点からその行使の判断を行います。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

・当社における株主との対話は広報室が主管し、CSR担当役員が統括します。

・広報室は、経営企画部、経営管理部、総務部、法務部等と適宜情報交換を行い、株主に対する正確かつ偏りのない情報提供を行います。

・当社は、四半期毎の投資家向け説明会の開催、当社WEBサイトにて開示する決算説明資料の充実、個人投資家向け会社説明会への参加など、 個別面談以外の対話の手段の充実にも継続的に取り組みます。

・広報室は、株主との対話にて寄せられた意見について適宜整理・分析を行い、代表取締役に報告します。

・当社は、インサイダー取引・適時開示等管理規程に基づき、未公表の重要事実の管理を徹底し、情報漏洩のないよう株主との対話を行います。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】

当社は事業戦略、取引先との事業上の関係などを総合的に勘案し、また保有する株式数に応じて、取締役会、または代表取締役にて、その株式の政策保有についての保有目的の妥当性、保有に伴う便益やリスクが資 本コストに見合っているか、他に有効な資金活用はないかを検証した上で政策保有を行っております。また、同株式に係る議決権行使は、具体的な基準に基づく形式的な判断は行わず、その議案が当社の保有方針に適合するかどうかに加え、発行会社の健全な経営に役立ち、企業価値の向上を期待できるかどうかなどを総合的に勘案し、各議案の精査を行い、賛否の判断を行っております。

【原則4-8 独立社外取締役の有効な活用】

取締役会は取締役5名、うち社外取締役(監査等委員)3名で構成しており、監査等委員に対し取締役会での議決権を付与することで、独立した客観的な立場から、取締役及び執行役員に対する実効性の高い監督を行うとともに、より公正かつ透明性の高い経営を行ってまいります。

また、社外取締役(監査等委員)3名を独立社外取締役として届け出を行っております。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

株主からの対話の申込みに対して、積極的に対応しております。

また、株主や投資家に対しては、決算説明会を半期に1回開催するとともに、逐次、スモールミーティングを実施しています。

当社では、IR担当として取締役管理部長を選任し、取締役管理部長が管理部門等のIR活動に関連する部署を管掌し、日常的な部署間の連携を図っています。

IR担当にて、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けるとともに、アナリスト・機関投資家向けに半期毎の決算説明会を開催し、社長又はIR担当取締役が説明を行っています。

また、投資家との対話の際は、決算説明会やスモールミーティングを問わず、当社の持続的成長、中長期における企業価値向上に関わる事項を対話のテーマとすることにより、インサイダー情報管理に留意しています。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

Copyright(C) 2019 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

 

 

付属:Fact Sheet

<株主の状況>

氏名または名称

所有株式数

(千株)

発行済株式総数に

対する所有株式数

の割合(%)

横浜ゴム株式会社

22,682

 

10.38

 

株式会社みずほ銀行

9,600

 

4.39

 

日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)

9,481

 

4.34

 

日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)

8,745

 

4.00

 

全国共済農業協同組合連合会

8,200

 

3.75

 

朝日生命保険相互会社

7,679

 

3.51

 

BNY GCM CLIENTACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC)

6,674

 

3.05

 

旭化成株式会社

6,438

 

2.95

 

農林中央金庫

4,000

 

1.83

 

日本ゼオン取引先持株会

3,648

 

1.67

 

 

87,147

 

39.87

 

*期末発行済株式総数 普通株 237,075,556株

(2019年3月31日現在)

 

<主要財務データ>

 

 

15/3月期

16/3月期

17/3月期

18/3月期

19/3月期

売上高

307,524

295,647

287,624

332,682

337,499

売上総利益

82,636

87,187

86,925

101,272

96,742

営業利益

28,245

29,856

30,767

38,881

33,147

経常利益

31,098

32,153

31,805

40,893

36,319

当期純利益

19,080

18,079

23,152

13,056

18,458

EPS(円)

84.1

79.9

104.3

58.8

84.1

DPS(円)

14.00

15.00

16.00

17.00

19.00

総資産

399,512

384,753

411,415

440,519

424,937

純資産

215,631

215,586

244,634

259,940

259,156

有利子負債

58,889

57,064

43,177

38,573

24,125

設備投資

28,516

27,650

22,122

14,568

14,640

減価償却費

19,439

20,904

20,431

20,539

18,780

研究開発費

13,627

14,148

13,233

15,103

16,480

(単位:百万円)

 

 

<主要財務指標>

 

15/3月期

16/3月期

17/3月期

18/3月期

19/3月期

売上高営業利益率

9.2

10.1

10.7

11.7

9.8

売上高当期純利益率

6.2

6.1

8.0

3.9

5.5

総資産回転率(回)

0.80

0.75

0.72

0.78

0.79

自己資本比率

52.9

54.8

58.4

58.4

60.3

ROE

9.8

8.6

10.3

5.3

7.2

売上高R&D比率

4.4

4.8

4.6

4.5

4.9

 

 

<セグメント情報>

 

15/3月期

16/3月期

17/3月期

18/3月期

19/3月期

売上高

 

 

 

 

 

エラストマー素材事業

188,829

178,940

166,243

194,570

198,087

高機能材料事業

70,875

70,979

74,980

86,479

85,142

その他の事業

50,049

47,950

49,038

53,928

56,733

消去又は全社

-2,229

-2,222

-2,637

-2,295

-2,463

連結

307,524

295,647

287,624

332,682

337,499

営業利益

 

 

 

 

 

エラストマー素材事業

16,818

20,725

20,552

22,169

17,691

高機能材料事業

9,446

8,221

9,832

16,742

16,115

その他の事業

2,017

2,503

2,865

3,206

2,786

消去又は全社

-36

-1,592

-2,482

-3,237

-3,446

連結

28,245

29,856

30,767

38,881

33,147

総資産

 

 

 

 

 

エラストマー素材事業

196,115

193,560

201,054

213,137

209,089

高機能材料事業

78,754

80,916

82,673

88,122

89,402

その他の事業

26,919

27,873

29,165

30,907

32,907

消去又は全社

97,723

82,404

98,523

108,353

93,539

連結

399,512

384,753

411,415

440,519

424,937

減価償却費

 

 

 

 

 

エラストマー素材事業

8,902

9,693

9,929

10,208

8,864

高機能材料事業

8,144

8,569

7,845

7,781

6,793

その他の事業

278

316

353

326

302

消去又は全社

2,114

2,326

2,304

2,223

2,822

連結

19,439

20,904

20,431

20,539

18,780

設備投資

 

 

 

 

 

エラストマー素材事業

13,906

15,665

11,166

7,998

5,744

高機能材料事業

9,650

7,521

7,644

3,644

6,234

その他の事業

355

395

342

362

359

消去又は全社

4,605

4,069

2,971

2,564

2,303

連結

28,516

27,650

22,122

14,568

14,640

(単位:百万円)

 

株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

このページのトップへ