(3921)ネオジャパン 8期連続増収増益で更なる成長か

2019/05/23

 

 

齋藤 晶議 社長

株式会社ネオジャパン(3921)

 

会社情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

齋藤 晶議

所在地

横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー

決算月

1月末日

HP

https://www.neo.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

915円

14,815,200株

13,555百万円

11.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

6.50円

0.7%

27.02円

33.9倍

231.48円

4.0倍

*株価は3/22終値。発行済株式数、ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2015年1月(実)

1,724

251

265

172

14.33

1.42

2016年1月(実)

1,904

366

386

246

19.95

2.00

2017年1月(実)

2,116

391

428

296

20.64

2.13

2018年1月(実)

2,312

432

451

324

22.05

5.50

2019年1月(実)

2,661

528

547

382

25.81

6.00

2020年1月(予)

2,939

561

576

400

27.02

6.50

*予想は会社側予想。15年9月8日付で1:200、16年2月1日付で1:3、17年7月1日付で1:2、17年11月16日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して計算。18年1月期の配当には記念配当1.00円を含む。

 

株式会社ネオジャパンの2019年1月期決算概要等をお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年1月期決算概要
3.2020年1月期業績見通し
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 2019年1月期の売上高は前期比15.1%増の26億61百万円。クラウドサービス中心に全分野増収。desknet’s NEO V5.0リリースに伴うソフトウェア償却費増、クラウドサービス増加に伴うデータセンターやライセンス料等の利用料増および運用面での人員増により粗利率は低下したが売上総利益は同6.9%増の17億85百万円。人件費、採用費、業務委託費が増加したが広告宣伝費及び研究開発費の減少により販管費は小幅増にとどまり、営業利益は同22.1%増の5億28百万円。期初計画に対して売上、利益とも上回り、配当予想を期初の5.00円/株から6.00円/株に上方修正した。

     

  • 2020年1月期の売上高は前期比10.4%増の29億円の予想。クラウドサービスが引き続き牽引する。営業利益は同6.2%増の5億61百万円の予想。8期連続の増収増益で、売上、利益ともに過去最高更新を見込んでいる。配当は前期比0.50円/株増配の6.50円/株を予定。予想配当性向は24.1%。

     

  • 今期もクラウドサービスが牽引し、8期連続の増収増益で売上、利益ともに過去最高更新と会社側は予想している。ストック型ビジネスをベースとした堅調な業績推移は同社の大きな特徴として改めて注目される。一方、同社の四半期ベースの利益率推移を見ると、粗利率、営業利益率ともに横這いとなっている。成長戦略において、第1に「グループウェア市場での一層のシェア拡大」を掲げており、まずはシェアアップを通じたトップラインの拡大を目指しているようだが、収益性向上についても、その具体的な取り組み、進捗についてウォッチしていきたい。

1.会社概要

「リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献する。」を経営理念に、ウェブ技術をベースとしたビジネスコミュニケーションツールである「グループウェア(※)」の開発と販売、クラウドサービスの提供により企業の業務効率向上、コスト削減を支援している。主力製品「desknet’s」の販売累計ユーザー数は390万人(2019/1月末時点)。価格、機能、信頼性、サポート体制等が高く評価され、顧客満足度は4年連続No,1でパートナー満足度もトップ(日経コンピュータ誌 グループウェア部門)。海外市場の開拓にも乗り出し、更なる成長を目指している。

 

(グループウェアとは?)
企業のネットワークを活用した情報共有のためのソフトウェア。
管理者が設定したネットワークのサーバー上でグループのメンバーは情報共有や,スケジュール管理,文書情報のデータベースなどを共有することができる。
たとえば会議の予定を決める場合,ひと目で自分やメンバーの予定を把握でき、予定表に都合のよい日時を簡単に登録できたり、連絡や決定事項を電子メールで伝えたりするほか、文書の共有などもできる。
業務効率の向上、コストの削減、意思決定の迅速化、組織横断の情報共有等を図ることが出来ることから、近年導入を進める企業や団体が増加している。

 

【1-1 沿革】

日本電信電話公社(現NTT)で光通信方式の研究に携わり、通信技術の高いノウハウを評価されていた齋藤 晶議(さいとう あきのり)氏(現 同社代表取締役社長)は、国内中堅ソフト会社に転籍後、東京電力の通信・インフラプロジェクトに参画し技術責任者を務めていた。
当時、世の中での理解も浅く未知のものであったインターネットにいち早く関心を持っていた同氏は、インターネットを使えば自分達で世の中を大きく変えることが出来るのではないかという可能性に魅了され、プロジェクトが終了した1992年、29歳で株式会社ネオジャパンを設立した。

 

当初は東京電力や他電力会社からの受託開発を行っていたが、外注先のスケジュール管理のために、グループウェアの一機能であるカレンダーを自分で開発したところ大変便利で、外部からも使わせてほしいという要望も届くほどであった。
当時既にグループウェアはあったものの、大企業向けのものしかなく価格も高かったが、10分の1のコストでも開発可能であることに加え、何より便利であるため多くの中小・中堅企業は喜んで使ってくれるだろうと考え、1999年、グループウェア「iOffice2000」の販売を開始、2002年には後継の「desknet’s」をリリースした。
販売方法も、インターネットを通じてライセンスを発行、ダウンロードしてもらうというもので、現在は当たり前ではあるが当時としては画期的なものであった。

 

想定通り導入を躊躇していた企業のニーズを確実に取り込み、業容は急速に拡大。2012年には現在の主力製品「desknet’s NEO」の提供を開始し、翌2013年にはクラウド版をリリースした。
累計販売ユーザー数が300万人を超え、多数のユーザーに対する社会的責任を果たすためには今まで以上にしっかりとした企業経営を目指す必要があると考え、2015年、東証マザーズに上場した。

 

【1-2 企業理念・経営理念】

経営理念

リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献する。

 

ウェブ技術をベースとしたビジネスコミュニケーションツールの開発と販売により、働く人すべてを支え、社会の発展に貢献することを目的に事業を展開している。
従来の概念を覆す発想と、日本企業ならではの心配りで、品質の高い製品やサービスを社会に提供し続けることを目指している。

 

(社名の由来)
一部の先進企業だけでなく、すべての企業に優れたITのメリットを提供し、コンピュータの力で日本企業と社会のコミュニケーションを変えていく。そのような願いを込めて社名を「ネオジャパン(新しい日本)」とした。

 

【1-3 市場環境】

◎グループウェア市場動向
2017年度の国内ソフトウェア市場は約1.3兆円で、うちグループウェア市場は1,547億円と約1割を占め、相対的に大きな市場を構成している。
2022年度には2,081億円まで、年率6.1%で成長すると見込まれている。
提供形態としては自社によるサーバーの設置が必要なプロダクト版が減少する一方、初期費用が不要で導入が容易なクラウド版は年率7.0%で成長すると予想されている。

 

(同社資料を基にインベストメントブリッジ作成)

 

【1-4 事業内容】

主力のグループウェア「desknet's NEO」を中心に、ビジネスチャット、Webデータベース、企業向けWebメールシステム、大容量ファイル送受信システム、営業マネジメントシステム、顧客情報管理システムなどを開発・販売している。
売上は、グループウェアや関連製品をインターネット経由で提供する「クラウドサービス」、グループウェアや関連製品のライセンス販売を行う「プロダクト」、ソフトウェアの受託開発を行う「技術開発」の3分野に区分される。

 

 

(1)主力製品「desknet's NEO」
沿革でも触れたように、同社はグループウェアの開発・販売で成長を遂げてきたが、今後の更なる成長を牽引するのがグループウェア「desknet's NEO」である。

「desknet's NEO」は徹底した「現場主義」を貫く同社自社開発のグループウェアで、日本のワークスタイルや商習慣に合わせた設計で日々の業務効率を向上させるとともに、社内の活性化に貢献することを目指しており、以下のような特徴を持っている。

 

(特徴)
*使いやすさ
シンプルかつ統一された画面デザインで、初めて使う人でも見やすく使いやすいインターフェースを構築。
「やさしさ」と「わかりやすさ」で現場に寄り添い、仕事を支えている。
マルチデバイスに対応しており、スマートフォン、タブレットからもストレスなく利用できる。

 

*高機能
スケジュール、インフォメーション、ウェブメールといった基本的な機能に加え、本格的なワークフローや社内SNS、グローバル設計に対応した25のアプリケーションを標準で提供している。アプリケーション間の連携もスムーズに行える。
スケジュールや会議室予約、メールにとどまらず、現場がいま抱えている課題をグループウェアの枠にとらわれず解決する。

 

*25のアプリケーションを標準装備
また、カスタムメイド型業務アプリ作成ツール「AppSuite(アップスイート)」を用いれば、現場のさまざまな業務を4ステップでアプリ化することができる。作成したアプリは「desknet's NEO」の一機能として利用出来るため、各企業ごとの現場の状況に応じて、より一層現場の業務処理を効率化することが出来る。

 

(同社資料より)

 

*導入実績
47都道府県の920以上の官庁や自治体を含め、業種、業態、規模を問わず、多くの企業や団体が導入。販売累計ユーザー数(アカウント数)は約390万人(2019/1月末時点)にのぼる。

 

(提供形態)
クラウド版とパッケージ版の2形態で提供しているが、近年は、「グループウェアの導入に手間をかけたくない。」、「ITの知識や経験が少ないスタッフが多く、専任管理者が置けない。」、「安心できるセキュリティ環境で運用したい。」、「初期費用も運用コストもなるべく抑えたい。」といった企業ニーズに対応して、クラウド版の成長が著しい。

 

(販売体制)
自社販売も行っているが、同社は原則開発に特化し、主としてパートナーと呼ぶトータル約600社に上る販売代理店やASP事業者(※)経由の販売が中心である。

 

(※)ASP事業者
アプリケーションソフトの機能をネットワーク経由で顧客にサービスとして提供することを事業として営んでいる事業者。

 

(2)売上区分
①クラウドサービス
「desknet's NEO」を主力製品とする自社開発のグループウェア及びその関連製品を低価格かつ信頼性の高いクラウド環境においてオンデマンドで提供している。
ユーザーはインターネット環境さえあれば、サービスを利用することができ、サーバーなど特別なシステム投資やシステムに関する知識なしで利用できる。
顧客は利用するユーザー数分の月額または年額料金のみを支払えばよく、初期費用は不要。最低5ユーザーから契約可能で上限はない。
1ユーザー当り月額利用料400円はクラウドサービスでは業界最安値である。

 

②プロダクト
「desknet's NEO」を主力製品とする自社開発のグループウェア及びその関連製品をライセンス販売。それに伴うカスタマイズ、役務、サポートサービスの提供も行っている。

 

顧客はライセンスを購入し、社内サーバーや仮想環境、レンタルサーバー、クラウド環境などにインストールして利用する。
ユーザー数が5~300ユーザーの中規模・小規模ユーザーに対しては「スモールライセンス」を、ユーザー数が300~数万ユーザーの大規模ユーザーに対しては、「エンタープライズライセンス」を販売している。

 

 

スモールライセンス

エンタープライズライセンス

概要

低価格で導入できる中小規模顧客向けライセンス

大規模な構成や高可用性構成に対応できる大規模向けライセンス

価格

5ユーザー 39,800円

300ユーザー 998,000円

100ユーザー 410,000円

無制限ユーザー 13,000,000円

利用可能ユーザー数

5~300ユーザー

100~数万ユーザー

年間サポートサービス

初年度無償

2年目から任意で別途購入

5ユーザー 10,000円

300ユーザー 150,000円

初年度から別途購入(必須)

100ユーザー 90,000円

無制限ユーザー 2,340,000円 

 

③技術開発
インターネット・イントラネット関連の業務アプリケーションを個別に受託開発している。コンサルティングからアプリケーション・システムの企画・設計・開発・ネットワークインフラ構築等、システムにかかわるあらゆるサービスを統合的に提供。
技術を自社に蓄積することを目的としており、「クラウドサービス」、「プロダクト」における製品・サービスの開発につながるような開発案件の受託が中心である。

 

【1-5 今後の成長戦略】

今後の成長戦略として以下の3点を挙げている。

 

(1)グループウェア市場での一層のシェア拡大
営業力の強化と一層の高機能化による付加価値アップでシェア拡大を目指す。

 

(今後の市場環境)
中規模以上の事業所では、今後、国内大手ベンダーはグループウェアサービスに力を入れないことが予想され、外資系のグループウェアも含め、他社シェアを積極的に獲得する。
また、今後、導入が予想される中・小規模事業所においては、コストが安く導入の障壁が低いクラウドベースのシステム導入が見込まれているため、ローカル化対応、セキュリティ面での対応、コストパフォーマンス等の面で、自社製品の優位性を訴求し、シェアを確保する。

 

(具体的な施策)
「認知度向上」
従来、技術開発に経営資源を集中していたため、「desknet’s」製品は相対的に市場での認知度が低い。マザーズ市場から東証1部へ上場が実現したことにより、企業信用力の増大に加え、ブランド認知度の向上を図る。

 

「営業体制強化・地方拠点の整備」上場による資金調達を活用し、営業体制を強化する。主要各都市に営業所を開設し、地場パートナーの囲い込みを図る。

 

「サービスのシステム化」サービスのシステム化を進め、効率化を図るとともに、導入・運用の簡素化を図る。

 

「人材の確保」強い製品創りと新しい取り組みへチャレンジできる「人財」の確保、育成を新たな中核テーマとして取り組む。

 

(2)製品ラインアップの拡大による付加価値向上
既存の25のアプリケーションに加えて、最新のコミュニケーションツール、ミドルウェアの投入等で機能をアップし、他社製品との差別化を図る。

 

ビジネスのコミュニケーション手段は、従来のeメール主体から、SNSを始め、リアルタイムコミュニケーションであるチャット等へと、急速に進化・変化している。同社は、WebRTC(Web Real-Time Communication)技術をベースにしたリアルタイムコミュニケーション分野に本格参入し、時宜に適した機能を強化して、ユーザーニーズを先取りした製品・サービスを提供する。

 

高い技術開発力を背景に、引き続き競合他社に先駆けて新たなサービスを提案、提供することにより、業界内でのリーディングカンパニーの立場を盤石のものとする。

 

既存の25機能および付加機能のアップデートに加えて、ビジネスチャット機能「「ChatLuck」を追加した。また、26番目の機能として、顧客自身が必要な業務アプリを簡単に作成できる業務アプリ作成ツール「AppSuite」を提供したことに加え、さらに種々の機能の追加を検討している。

 

システム管理者に、カスタマイズ可能なポータル機能を提供。既存の社内システムへのポータル機能を持たせることにより、一層のシステムの統合と使い勝手の向上の実現を目指す。「desknet’s NEO」の導入実績を元に、周辺機能のサービスの囲い込みを図る。

 

(3)海外展開
マレーシアを手始めに、東南アジアのグループウェア市場への進出を計画している。

 

東南アジア諸国の実質GDPは、今後2020年に向けて3~6%の成長率が見込まれ、ICT関連市場も高成長が予想される。
東南アジアのビジネス慣習は、日本のビジネス慣習に似ており(社内稟議、情報共有の仕方等)、グループウェアの参入の余地があると認識している。
すでに現地語対応の開発を進めており、マレーシアを手始めに現地での販売を開始する予定。

(同社資料)
更により中長期の視点では、既存のグループウェアを核に、ビジネスに不可欠なコミュニケーションツールを開発し、常に業界をリードする製品・サービスを提供し続ける事を目指している。

 

グループウェア販売強化と海外展開

既存のグループウェアのバージョンアップと機能強化を継続するとともに、クラウド分野では高技術力をベースとしたセキュリティ面で差別化を図る。

営業力・マーケティング力の強化により、一層のシェア拡大を図り、業界内での地位を盤石のものとする。

マルチ言語への対応、海外パートナーの発掘により、日本とビジネス慣習が近似する東南アジア市場への進出を開始する。

企業にとって戦略的なコミュニケーションツールを開発・提供、一層の差別化を図る

既存のグループウェアを核として、今後の社会、企業形態、ビジネス動向を見据えた、より高付加価値のツールへと進化させる。

企業にとって効率化を実現するだけでなく、事業戦略上不可欠なITコミュニケーションツールを提供し、他社との差別化を一層進める。

海外展開を加速し、未成熟な東南アジアのグループウェア市場でのデファクトスタンダードを狙う。

 

(同社資料より)

【1-6 特長と強み】

①顧客及び販売パートナーの高い満足度
2018年に発表された日経コンピュータの調査によれば、グループウェア部門において「コスト」で最高評価。また「信頼性」、「運用性」でも高い評価を得て総合満足度4年連続でNo.1の評価を受けた。
加えて「日経BPガバメントテクノロジー 自治体ITシステム満足度調査 2018-2019」グループウェア部門で第1位を獲得した。

 

また、販売パートナーからの評価において、「価格競争力」、「収益性」、「技術支援」、「担当窓口」、「柔軟さ」、「納期対応」の6項目でトップのスコアとなり、パートナー満足度もNo.1となった。
顧客、販売パートナー双方から高く評価されている点は同社製品の強力な競争優位性となっている。

 

社員の約6割が開発関連部署に属するという高い技術力に加えて、使いやすさ、サポート体制なども含めた総合力で、他を大きくリードしている。

 

②サービスおよびコスト面で優位性
グループウェア市場でのメインプレーヤーを見ると、外資系を含めた大手ベンダーが高いシェアを有しているが、サービス面、コスト面では同社製品が優位にあり、この点が上記の満足度にも繋がっている。

 

機能面では、外資系企業は、ローカライゼーション(日本語対応、日本の商習慣、ビジネス習慣など)への対応が不充分なこともあり、国内ベンダー製品に対する評価が外資系を上回っている。
同社のシステムは25の基本機能数を備え、日系ベンダー他社のサービスよりも機能数で上回っている。
コスト面では、外資系ベンダーは大企業向けのサービスが中心で、導入コスト、単位当たりコストとも高くなる傾向にある。
同社システムの導入・運営コストは日系他社と比較しても、クラウドサービスの場合、月額で約1/2、プロダクト(現地でのハードウェアを含んだインストールベース)でも、約1/2となっており、業界最安値となっている。

 

(同社資料より)

 

③安定収益を実現するビジネスモデル
同社製品の販売は主としてパートナー経由であり、固定費が低水準である。
また、一旦導入されれば使いやすさ、低コストといった点で継続して利用する顧客が多数であることに加え、月額課金が中心で売上が毎月積み上がるストック型ビジネスであり、安定した収益を実現するビジネスモデルである点も同社の特徴である。
2019年1月期のストック型ビジネス比率は77%。

 

④健康経営への取り組みを強化
業務効率化や生産性向上など導入先の「働き方改革」に資するグループウェアを主力商品として提供するネオジャパンは、同社自身も「健康経営」に対する意識を強めている。

 

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される。(経済産業省ウェブサイトより)

 

スポーツの好きな斎藤社長はスタッフに対しても「運動や食事の大切さ」、「仕事と夢(プライベート)のバランス」などを以前より常日頃から語りかけてきたが、ウェブサイトの株主・投資家へ向けたトップメッセージにあるように、今後の健康経営の実践・推進をコミットしている。

 

「経営理念の実践とグローバル展開も視野に入れた挑戦を実現するために、ひとりひとりが心身ともに健康で思う存分に能力を発揮できる職場環境を整備し、健康経営を推進してまいります。」(同社ウェブサイトより。一部筆者修正。)

 

具体的には、経済産業省が制度設計を行い、日本健康会議が認定する「健康経営優良法人」の認定取得や、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定・公表する「健康経営銘柄」への採用を目指していくということだ。

 

【1-7 株主還元】

株主還元を重要な経営課題と認識している。
配当性向の目安は20%以上。
また、株主優待も実施しており、中間期末及び通期末の株主に対し、100株以上200株未満保有者には500円のクオカード1枚を、200株以上保有者には1,000円のクオカード1枚を贈呈している。

 

【1-8 ROE分析】

 

 

16/1期

17/1期

18/1期

19/1期

ROE(%)

11.2

11.1

10.9

11.7

 売上高当期純利益率(%)

12.93

14.01

14.02

14.36

 総資産回転率(回)

0.63

0.59

0.59

0.62

 レバレッジ(倍)

1.38

1.33

1.31

1.32

 

ROEは2桁で推移している。資産効率の改善が進めば更なる向上が期待できよう。

 

2.2019年1月期決算概要

(1) 損益概要

 

18/1月期

構成比

19/1月期

構成比

前期比

期初計画比

売上高

2,312

100.0%

2,661

100.0%

+15.1%

+2.4%

売上総利益

1,669

72.2%

1,785

67.1%

+6.9%

販管費

1,237

53.5%

1,256

47.2%

+1.6%

営業利益

432

18.7%

528

19.8%

+22.1%

+7.6%

経常利益

451

19.5%

547

20.6%

+21.3%

+8.0%

当期純利益

324

14.0%

382

14.4%

+17.9%

+12.4%

*単位:百万円

 

2桁の増収増益。計画も上回る。
売上高は前期比15.1%増の26億61百万円。全分野増収。クラウドサービスは好調、技術開発も大幅な伸長。
desknet’s NEO V5.0リリースに伴うソフトウェア償却費増、クラウドサービス増加に伴うデータセンターやライセンス料等の利用料増および運用面での人員増により粗利率は低下したが売上総利益は同6.9%増の17億85百万円。人件費、採用費、業務委託費が増加したが広告宣伝費及び研究開発費の減少により販管費は小幅増にとどまり、営業利益は同22.1%増の5億28百万円。
期初計画に対して売上、利益とも上回り、配当予想を期初の5.00円/株から6.00円/株に上方修正した。

 

(2)区分別売上動向

 

18/1月期

19/1月期

前期比

期初予想比

クラウドサービス

1,259

1,497

+19.0%

+0.4%

プロダクト

991

1,054

+6.3%

+4.6%

技術開発

61

109

+78.4%

+9.7%

売上高合計

2,312

2,661

+15.1%

+2.4%

*単位:百万円

 

*クラウドサービス
前期比19.0%増の14億97百万円。ほぼ計画通り。
「desknet’s NEOクラウド版」の利用ユーザー数は順調に増加。2019年1月末のユーザー数は24万人超となった。
同サービス売上高は同25.6%増の11億69百万円。15年1月期以降年平均成長率16.5%で増加している。
ASP事業者向けユーザー数は15万人超で売上高は同1.3%減の1億23百万円。

 

*プロダクト
前期比6.3%増の10億54百万円。計画を上回る。
中小規模ユーザー向けのスモールライセンス売上高は、クラウドでの利用が増加している影響で同3.4%減収の75百万円。
大規模ユーザー向けのエンタープライズライセンス売上高は同4.3%増の1億95百万円で、ほぼ当初計画どおりに推移した。
2017年10月にリリースしたAppSuite売上は39百万円。
カスタマイズ売上は、前期に比較的規模が大きい金融機関向けのカスタマイズ案件があった影響もあり、同29.3%減の62百万円。
desknet's NEO(旧製品を含む)のサポートサービスは同5.4%増の5億40百万円と堅調に推移した。

 

*技術開発
前期比78.4%増の1億9百万円。計画を上回る。
ECサイト関連等の受託開発、過年度に受託したシステムの保守により大幅な増収となった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

18年1月末

19年1月末

 

18年1月末

19年1月末

流動資産

2,909

2,954

流動負債

719

846

 現預金

2,551

2,599

仕入債務

20

23

 売上債権

289

285

前受収益

401

469

固定資産

1,183

1,587

固定負債

251

265

 有形固定資産

53

51

負債合計

971

1,112

 無形固定資産

105

91

純資産

3,121

3,429

 投資その他の資産

1,024

1,443

利益剰余金

2,492

2,792

資産合計

4,092

4,541

負債純資産合計

4,092

4,541

*単位:百万円

 

現預金の増加等で流動資産は前期末に比べ45百万円増加。投資有価証券の増加(社債や非上場株式の取得)等で固定資産は同4億3百万円増加し、資産合計は同4億48百万円増加の45億41百万円となった。
前受収益の増加などで負債合計は同1億40百万円増加の11億12百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同3億7百万円増加し34億29百万円。
この結果自己資本比率は前期末の76.3%から0.8%低下し75.5%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18年1期

19年1期

増減

営業CF

423

696

+272

投資CF

-227

-566

-339

フリーCF

196

129

-66

財務CF

-16

-79

-62

現金同等物残高

2,557

2,606

+49

*単位:百万円

 

利益増で営業CFのプラス幅は拡大。
投資有価証券の取得による支出の増加等で投資CFのマイナス幅は拡大したが、フリーCFはプラスを維持。
配当金の支払額増加で、財務CFのマイナス幅は拡大。キャッシュポジションはほぼ前期末同水準。

 

(4)トピックス

①取締役会の実効性に関する評価結果を公表
2019年1月、コーポレートガバナンス報告書における開示に従い、全取締役に対するアンケートの回答を評価分析し、結果の概要を公表した。

 

質問の大項目は①取締役会の役割・責務、②取締役会の構成、③取締役会の運営・審議状況、 ④社外役員とのコミュニケーションの4つ。
評価分析の結果、同社の取締役会は全体として適切に機能・運営しており、取締役会全体の実効性は確保されていると判断した。
同時に、「持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するような報酬制度の構築」、「中長期的な後継者育成計画についての取締役会での議論の充実」、「社内役員と社外役員のコミュニケーションの更なる充実」、「役員に対する継続的な研修・トレーニング機会の確保」が今後の課題であるとの認識を取締役で共有した。

 

同社では、今回の取締役会の実効性に関する評価・分析結果を踏まえて、取締役会の実効性をさらに高めていくために、取り組むべき課題を継続して抽出。その対応策を検討・実施して、取締役会の機能を向上させ、監督機能の向上及びコーポレートガバナンスの一層の強化に努めていく考えである。

 

②「働き方改革」をテーマとしたトークセッションを開催
業務効率化や生産性向上など日本企業の課題である「働き方改革」に資するグループウェアを主力商品とする同社は、2018年11月、昨年に続き「働き方改革」をテーマとしたトークセッション「desknet’sWORK SHIFT SESSION 2018」を開催し、約700名が来場した。

 

東京と大阪で開催された同セッションでは「働き方」のスペシャリストを迎えての日本人の働き方に関するディスカッションの他、ITツールを使って業務改善に成功した企業による働き方改革への考え方、具体的な取り組み、ITツール活用法の紹介などを行い、desknet's NEO、AppSuite、ChatLuckを実際に体験できるブースも設営した。
「働き方改革」実現に貢献するとともに、成長戦略に掲げている「認知度向上」のためにこうしたイベントを今後も実施していく考えだ。

 

3.2020年1月期業績予想

(1)業績概要

 

19/1月期

構成比

20/1月期(予)

構成比

前期比

売上高

2,661

100.0%

2,939

100.0%

+10.4%

営業利益

528

19.8%

561

19.1%

+6.3%

経常利益

547

20.6%

576

19.6%

+5.2%

当期純利益

382

14.4%

400

13.6%

+4.7%

予想は会社側予想。単位:百万円

 

8期連続の増収増益予想。売上、利益ともに過去最高を更新へ。
売上高は前期比10.4%増の29億円の予想。クラウドサービスが引き続き牽引する。
営業利益は同6.3%増の5億61百万円の予想。
8期連続の増収増益で、売上、利益ともに過去最高更新を見込んでいる。
配当は前期比0.50円/株増配の6.50円/株を予定。予想配当性向は24.1%。

 

(2)区分別売上動向

 

19/1月期

20/1月期(予)

前期比

クラウドサービス

1,497

1,679

+12.2%

プロダクト

1,054

1,178

+11.7%

技術開発

109

81

-25.6%

売上高合計

2,661

2,939

+10.4%

*単位:百万円
*クラウドサービス
「desknet’s NEO」の拡販と合わせて、クロスセルで、AppSuite、ChatLuckの売上増を見込む。大型案件の受注も見込んでいる。

 

*プロダクト
官公庁・自治体向けに堅調に推移。AppSuiteのクロスセルも見込んでいる。

 

*技術開発
受注済みの受託案件、及び既存の保守案件を見込んでいる。

 

(3)経営方針・経営施策

*既存製品の機能拡充を継続するとともに、注力製品「AppSuite」、「ChatLuck」も引続き開発を強化する。

 

*クラウドサービス、サポートサービスのストック型ビジネスと、自社が得意とするエンタープライズ向け製品のシェアを伸ばすことで、安定的な収益モデルを堅実に成長させる。特にクラウドサービスの成長に伴い、安定したサービスの提供ができる運用体制の整備・強化を図る。

 

*インテグレーション力を強化し、自社製品を軸としたシステムインテグレーション、さらに自社製品とのシナジーが見込める製品やアライアンスへの戦略投資を行い、新しい収益モデルとしての立ち上げを図る。

 

*強い製品創りと新しい収益モデルへチャレンジできる「人財」の確保、育成を新たな中核テーマとして取り組む。特に技術者の育成と営業力の強化に注力する。

 

4.今後の注目点

今期もクラウドサービスが牽引し、8期連続の増収増益で売上、利益ともに過去最高更新と会社側は予想している。ストック型ビジネスをベースとした堅調な業績推移は同社の大きな特徴として改めて注目される。
一方、同社の四半期ベースの利益率推移を見ると、粗利率、営業利益率ともに横這いとなっている。
成長戦略において、第1に「グループウェア市場での一層のシェア拡大」を掲げており、まずはシェアアップを通じたトップラインの拡大を目指しているようだが、収益性向上についても、その具体的な取り組み、進捗についてウォッチしていきたい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

7名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月21日

 

<基本的な考え方>
当社の経営理念は、「リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献する」であります。
この経営理念のもと、取締役及び全従業員が法令・定款を遵守し、健全な社会規範のもとにその職務を遂行し、企業活動を行ってまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則3-1-2 英語での情報開示・提供】

 

現状では、外国人株主比率が2%程度と低いため、コスト等を勘案した結果、英語による情報開示は行っておりません。 

今後につきましては、外国人株主の持株比率の増加状況に応じて開示を検討してまいります。

【補充原則4-1-2 中期経営計画の開示】

当社では毎期中期経営計画を策定してはおりますが、当社が事業展開するICT関連、グループウェア市場は経営環境・技術変化が速く、計画が大きく乖離する可能性があるため、開示はしておりません。ただし、毎月の取締役会にて今年度予算数値と実績の乖離分析を行い、今年度予算が目標未達となる場合にもその原因や対応の内容を十分に分析し議論しております。次年度以降の計画と実績の乖離分析は現在行っておりませんが、今後経営企画室を中心に数値を取りまとめ、取締役会での報告を含め検討してまいります。

また、上記の今年度予算の分析結果を勘案して、毎期中期経営計画をローリングして作成しております。現状では、策定した中期経営計画を開示する予定はありませんが、株主の皆様からの要望等により、開示の検討を行ってまいりたいと考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4 政策保有株式の保有目的の説明、議決権行使基準の策定】

当社は、現時点では政策保有株式を保有しておりませんが、経営戦略、取引先との関係構築や関係性強化につながり、中長期的に企業価値の向上に資すると取締役会で判断した場合においては、今後他社 の株式を政策的に保有する可能性があります。

政策的に保有することとなった上場株式については、その中長期的なリスク・リターンを勘案し、保有目的に照らした継続保有の合理性について取締役会にて毎年検討を行うこととします。

また、議決権の行使については、個々の株式の発行企業との関係性に応じた定性的かつ総合的な判断が必要であるため、現時点では統一した基準を策定することはしておりません。

【補充原則4-11-3 取締役会・監査役会の実効性確保】

 

当社では、2018年1月期より取締役会全体の実効性について、各取締役に対するアンケートを配布し回答結果を集計し、その結果を評価分析しております。また、当該結果の概要につきましては適時適切に開示してまいります。

【原則5-1株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主からの対話の申し込みに対しては、前向きに対応しております。株主との建設的な対話促進のために、株主からの対話(面談)の対応部署を経営企画室と定め、経理財務担当やマーケティング担当等と有機的な連携をとることとしております。

主要な機関投資家及び対話の申し込みのあった機関投資家に対しては、主に経営企画室にて業績開示後の個別ミーティングを実施しております。

また、現在は株主構成を鑑み、海外機関投資家に対して定期的な個別ミーティングは実施しておりませんが、対話の申し込みのあった海外の機関投資家に対しては、経営企画室にてテレフォンカンファレンスを実施し当社および製品の理解に努めております。

また、株主との対話の際には、開示済みの内容をもとに対話することによってインサイダー情報管理に留意しております。

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