(3960)バリューデザイン 増収増益、販管費も吸収

2019/04/18

 

 

尾上 徹 社長

株式会社バリューデザイン(3960)

 

 

会社情報

市場

東証マザーズ

業種

情報・通信

代表取締役社長

尾上 徹

所在地

東京都中央区八丁堀3-3-5 住友不動産八丁堀ビル6F

決算月

6月末日

HP

https://www.valuedesign.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,512円

1,469,500株

3,691百万円

4.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-108.08円

581.79円

4.3倍

*株価は3/29終値。発行済株式数、EPSは19年6月期第2四半期決算短信より。BPSは前期末実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2015年6月(実)

1,243

-176

-187

-550

-515.09

0.00

2016年6月(実)

1,631

188

163

150

131.68

0.00

2017年6月(実)

1,738

-12

-44

-87

-63.43

0.00

2018年6月(実)

2,053

79

64

33

22.83

0.00

2019年6月(予)

2,123

-197

-210

-172

-118.08

0.00

*予想は会社側予想。

 

株式会社バリューデザインの2019年6月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年6月期第2四半期決算概要
3.2019年6月期業績見通し
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2019年6月期第2四半期の売上高は前年同期比5.9%増の10億29百万円。引続きスーパー、ドラッグストア、飲食チェーンの既存案件の利用が好調でシステム利用料売上は同20.9%増収。システム利用増で粗利率は6.1%改善し、売上総利益は同22.2%増加。販管費も同16.2%増加したが増収効果で吸収し、利益は大幅増となった。

     

  • 2019年6月期の通期業績予想に変更は無い。売上高は前期比3.4%増の21億23百万円と予想。システム利用料売上高は前期比13.5%の13億4百万円と、顧客ベースの拡大とともに引き続き堅調。一方、中長期的成長を見据えたアライアンスの構築や超大手顧客への導入に注力するため、直接営業よりも代理店開拓を優先させることから初期売上高は同9.4%減少の8億19百万円と減収を予想している。営業利益は1億97百万円の損失。キャッシュレス化の進展、海外事業の進捗などから現在を大きな成長機会と捉え、向こう3年程度の投資計画を今期前倒しして実行。投資額はシステム投資、人材の確保や教育など約3億円。

     

  • 繰り返し述べているように、同社は今期を今後の大きな成長を確実にするための重要な投資フェーズと位置付けている。人材採用については、人手不足の影響からやや遅れ気味という事だが、システム開発、その他は概ね順調に投資を実行できている。実際の売上・利益として実を結ぶのは今少し先とはなるが、ハウスプリペイドの付加価値を向上させるための様々なサービス・技術との連携がどれだけスピーディーに進んでいくかを注目したい。

     

1.会社概要

交通系電子マネー(Suica等)や流通系電子マネー(WAON、nanaco等)に代表されるプリペイド型電子マネーを自社ブランドで発行可能にする「バリューカードASPサービス」の提供により、企業のブランディングやプロモーションを支援。Suica等と異なり、導入企業の自社店舗でのみ利用可能とする代わりにインセンティブ等で顧客を囲い込む販促ツールである「ハウスプリペイドカード」と、利便性を提供する決済ツールとして導入企業がクレジットカード会社等と連携して発行する「ブランドプリペイドカード」の2種類を展開。2018年12月末時点でのハウスプリペイドの導入企業数、店舗数はそれぞれ668社、66,402店舗と国内最多。No.1の導入実績に基づく成功のノウハウ、強固な営業ネットワーク、「600社を超す導入企業」という顧客資産から生み出される安定したストック型収益が売上の半分強を占めており強み。開拓余地の大きい国内市場で更に高い成長を追求するとともに、海外市場でも国内同様に顧客ストックを一気に積み上げて大きな飛躍を目指す。

 

【1-1 沿革】

クレジットカード会社で新たな決済手段の開発に取り組んでいた尾上社長は、アメリカでサーバー管理型電子マネーである「ハウスプリペイド」、「ブランドプリペイド」が普及・拡大していることを知り、数年後にはその波が日本にも必ず到来することを予想。いち早く導入に動くが、当該クレジットカード会社では既に非接触IC型電子マネーへの取り組みが中心となっていたため、新たにサーバー管理型電子マネーを手掛けるための人員も予算も不足しており、導入を進めることは難しいのが現実であった。
そうした中、尾上社長は、成長が見込まれる「ハウスプリペイドカード」、「ブランドプリペイドカード」を日本で是非とも事業化したいと考えクレジットカード会社を退社し、2006年7月に同社を設立した。
「ハウスプリペイドカード」という文化が無い日本で当初営業活動は苦戦したが、低価格の専用端末を武器に店舗数10店舗程度の小規模事業者を中心に顧客数は着実に増加し、一定のシェアを獲得する。ハウスプリペイドカードマーケットの拡大に伴いシェアは一段と上昇し、顧客規模も中堅、大手へと拡大していった。
2012年からは海外でも事業を展開。2016年9月、東証マザーズに上場した。

 

【1-2 経営理念など】

「アジアNo.1のプロセッシングカンパニーを創る」を経営ビジョンに掲げ、『「バリューカード」を通じ、サービス提供企業と消費者のコミュニケーションの架け橋となることで、双方のメリットを極大化し、社会に貢献します。』と謳っている。

 

(同社におけるプロセッシングとは、自社開発の「バリューカードASPサービス」を使用しての残高管理業務やカード発行ノウハウは無い事業会社に対するカード発行支援業務を指す。)

【1-3 市場環境】

◎市場動向・概要
高い安全性、効率性の向上といった発行者、利用者双方のニーズから、「現金決済比率の低下、電子決済のウェート拡大」が続いている。
中でもプリペイドカードは今後も更なる伸長が見込まれている。

(同社資料より)

 

国内プリペイドカード市場は2021年度に13兆円に拡大すると予想されている。
中でもハウスプリペイドカードは2015年度から2021年度までの年平均成長率は10.5%で市場規模は1.9兆円に拡大。ブランドプリペイドカードは同じく年率35.2%成長で1.7兆円へと、市場平均を大きく上回る高成長が見込まれている。(いずれも矢野経済研究所調べ。)

 

(同社資料より)

 

◎プリペイド決済の種類
プリペイドによる決済には以下のような種類がある。
同社の「バリューカードASPサービス」はサーバー管理型プリペイドカードシステムにあたる。

 

(プリペイド決済の種類)

種類

概要

非接触IC 型電子マネー

非接触IC チップを発行媒体とし、IC チップに記録した残高を加減算できるプリペイド決済サービス

代表例は、Suica、Pasmoなど。

サーバー管理型電子マネー

カード自体には残高価値を持たせずにサーバーでアカウントを管理するプリペイド決済サービス

その他

全国百貨店商品券のような紙型、図書カードなどの磁気型などがある。

 

サーバー管理型電子マネーは非接触IC 型電子マネーに比べ1枚当たりのカード単価など導入コストが安価であることに加え、その特性を活かして、例えば「今日から1週間は付与ポイント倍増!」といったようなインセンティブプログラムを顧客企業のニーズや状況に合わせてサーバー側で柔軟に設定、実施できる点が大きな特長である。

 

一般社団法人日本資金決済業協会の調査によれば、前払式支払手段(プリペイド)の媒体別年間発行額合計は、平成27年度 21.5兆円で、過去5年間の成長率は年率4.2%。媒体別には発行額が最多だったのはIC型だが、磁気型や紙型が減少傾向にあるのに対し、最も伸長したのはサーバー型だった。
上記のようなサーバー管理型電子マネーのメリットを発行者が評価した結果と言えるだろう。
企業が費用対効果を追求する姿勢をますます強める中、顧客囲い込みのための有力な手段としてサーバー管理型電子マネーを用いたプリペイドカード需要は今後も引き続き増大していくものと思われる。

 

 

◎同業他社
ハウスプリペイドカード事業では国内シェア40%超を有しており業界首位である。
豊富な導入事例とノウハウで他社に対して大きなアドバンテージを持っている。(詳細は、「1-5 特長と強み」を参照)

 

(同社資料より)

【1-4 事業内容】

自社の独自ブランドで発行が可能な「ハウスプリペイドカード」と、VISA、MasterCardを始めとする国際ブランドと提携し、従来のハウスプリペイドカードの機能にVISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店での決済機能を搭載した「ブランドプリペイドカード」を展開しており、この2つを事業セグメントとしている。

(1)ハウスプリペイドカード事業

(概要)
自社ブランドによるプリペイドカード発行を希望する企業に対して同社が自社開発したサーバー管理型プリペイドカードシステム「バリューカードASPサービス」を提供している。
「バリューカードASPサービス」導入企業は、専用端末を設置するのみで、ハウスプリペイドカードシステムの導入が可能である。

 

ハウスプリペイドカードの概要、導入企業および消費者のメリットは以下の通り。

 

ハウスプリペイドカードの概要

・導入企業が独自で発行する電子マネー

・「お得感」を提供し顧客を囲い込む「販促ツール」

・キャッシュバックなどの特典による顧客の囲い込みや優良顧客の育成を目的としたリチャージ型のプリペイドカード、自社ブランドの認知度向上を通じた新規顧客獲得を目的とした使い切り型のギフトカード等、導入企業のニーズに合わせてサービスをラインアップしている。

導入企業のメリット

・店舗はその「お得感」を活用し、店舗への来店頻度、購買単価を向上させるための「顧客囲い込み」ツールとして活用することができる。

・専用端末を設置するのみで、プリペイドカードシステムの導入が可能となる。

・入金・利用に対する特典といったインセンティブを活用したリピート率上昇が見込める。

・有効期限切れの残高は導入企業の収益(退蔵益)となる

・消費者の入金時点で自社キャッシュ(前受金)となるためキャッシュ・フローは良化する。

・ギフトカードによる新規顧客の集客が見込める。

・従来の紙商品券と比べ回収処理業務が不要となり、事務処理コストを大幅に改善することが可能。 PCの管理画面上でリアルタイムでカード発行枚数、入金金額、利用金額、未使用残高等の集計が可能。

消費者のメリット

導入企業の店舗での利用に限られる代わりに、入金や利用に対してクレジットカード等より多くの特典(キャッシュバック)を得ることができるケースも。

・入金・利用等に応じたインセンティブを獲得することができる。店舗によっては、還元率はクレジットやポイントを上回る。

・キャッシュレスでレジ待ち時間が短縮化。クレジットより高速。

 

同社はプリペイドカードを単なる決済手段にとどまらせず、企業と消費者(ユーザー)をつなぐマーケティングツールとして位置付け、プロモーション、マーケティング、ブランディングの観点から企業の販売促進活動を支援している。
即ち、バリューカードASPサービスにより提供するプリペイドサービスを効果的に活用し、導入企業の客数・来店頻度・客単価などの指標の上昇、売上向上への貢献を目指す点が同社の大きな特徴である。
もちろん多様化する決済手段を最適化するとともに、店舗、消費者双方の決済に係る利便性向上にも貢献している。

 

~販促支援活動~
バリューカードASPサービス導入店舗から収集される、プリペイドカードの利用状況等のデータを一元的にサーバー管理しており、導入効果を可視化するデータ分析ツールをベースに以下のような支援を行っている。

 

カード発行枚数、アクティブカード枚数、入金・利用単価と頻度、店舗別利用状況等の分析レポートを提示し、サービス導入店舗のプリペイドサービス導入の効果検証・効果分析を定期的に実施。

入金キャンペーン等、プリペイドカードを活用した販促施策を企画段階から支援。企画→実行→分析→改善のPDCAサイクルを回し、ブラッシュアップを提案。

バリューカードASPサービスを導入している他社の販促事例やその効果等の情報を提供し、より効果的なプロモーション施策を提案。

 

(導入事例:いきなりステーキ 「肉マイレージカード」)

(同社HPより)

 

以下、株式会社ペッパーフードサービス担当者へのインタビューを、バリューデザイン社HPから抜粋、引用。
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導入の目的・理由
いきなり!ステーキは、お肉をお客様の前でお好みの量にカットして召し上がっていただくというスタイルです。いきなり!ステーキ第1号店が2013年12月5日に銀座でOPENして以来、リピーターのお客様からご自身が食べてきた記録を残したいという声が多くあがり、かねてから一瀬社長が構想していた飛行機のマイレージのようなものができないか?という案が具体化されました。
導入にあたっては、食べた量を目でみることができるリライト式や通常のポイント仕組み等、複数社が候補にあがりましたが、せっかく持って頂くなら高級感のあるカードが良いということと、将来的にチャージができるということに魅力を感じ、バリューデザインに決めました。

 

導入された結果、どのような変化がありましたか?
肉マネーチャージを定着させるため、肉マネーボーナスの3倍キャンペーンを行いました。この効果は絶大で、社内でもチャージ額の多さに驚きの声があがっていました。キャンペーン後はチャージすることが、お客様の意識で定着してきたようで、キャンペーンを行ってない日でも平均のチャージ額が当初と比べて約2倍にベースアップしました。
また、原価の高騰を受け、ステーキの値上げをせざるを得なくなった時も、肉マネーチャージボーナスキャンペーンに助けられました。2016年3月1日に値上げを実施しましたが、値上げの発表を早めに行い、値上げ前日の2月29日は、「4年に一度の29の日5倍デー」を実施し、駆け込み需要を狙いました。また、3月1日から4月15日まで、3倍キャンペーンを実施しました。この結果、値上げに対する逆風はなく、むしろ値上げ後は、売り上げが10%アップしました。メディアの外的要因も功を奏していますが、マイレージチャージの存在が値上げに対する販売促進施策として、非常に有効でした。

 

成功のポイント
いきなり!ステーキの業態と肉マイレージという制度、ネーミングが本当にぴったりだったことだと思います。 100円払って手に入れた最初の白いカードには何の特典もないのに、これだけ成功したのは、量り売りでステーキを食べたい量だけお召し上がり頂く「いきなり!ステーキ」のコンセプトとランクアップによる特典とカード自体の価値観、ランキング制度により、公開で競い合う心理をうまく刺激できたことだと思います。
(中略)
言うまでもなく、ポイントをあからさまな利用金額ではなく、食べた肉のグラムを付与するという点もここまで浸透した成功要因の一つだと思っています。

 

バリューデザインへの評価・期待
今や、「いきなり!ステーキ」と「肉マイレージカード」は一心同体の状態です。新しい取り組みのため、色々と一緒に苦労をしてきましたが、これからも今まで以上に一緒に頑張ってもらえればと思います。  安定的な稼働と肉マイレージを今以上に発展できる体制を構築いただき、一緒に肉マイレージを盛り上げていっていただきたいです。
===============================================

 

専用端末を設置するのみでプリペイドカードシステムの導入が可能という利便性、データをベースにした販促支援が企業に評価されていることに加え、消費者にとってもお得感が強いことから、導入社数、導入店舗数、取扱高(カード入金額)ともに急成長を遂げている。
取扱高は18年6月期通期では2,000億円を視野に入れていたが、実績は2,188億円と想定を上回った。

国内では飲食店、スーパーマーケットを中心に全国をカバー。直近ではホームセンターなど新たな業態の顧客化に加え、顧客規模の大型化も進んでいる。
海外は韓国、中国、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシアに加え、インドでM&Aを実施し、巨大市場の開拓も始まった。
累計取扱高(プリペイドチャージ額)は今期予測3,000億円程度を合わせ累計で1兆円近くに到達する見込みであり、クオカードと同程度の市場を創造している。

 

(収益構造)
同事業の売上高区分は以下の2つ。

項目

内容

初期売上

プリペイドカード(プラスチックカード)の製造販売、システム登録料、プリペイドカード専用端末販売など

月額システム利用料

バリューカードASPサービスシステムの利用料(カードへの入金額・利用額の一定料率)

 

導入費用は、店舗数が数十店舗、カード枚数が数千~1万枚の場合で50万円程度、年商数千億円、カード枚数数十万枚の大企業で、1,000万円程度など、店舗数など企業規模により大きく異なる。
カード枚数、専用端末数、入金額、利用額が同社売上の主要な変数となる。近年は大規模企業の顧客化に注力している。

 

(2)ブランドプリペイドカード事業
2016年6月期から開始した事業。
ブランドプリペイドカードとは、VISA、MasterCardを始めとする国際ブランドと提携し、従来のハウスプリペイドカードの機能にVISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店での決済機能を搭載したカードのこと。
通常のクレジットカードとは異なり、前払でカードに入金した金額に制限されるために使い過ぎる心配がなく、入会審査は不要なため、誰でもクレジットカード加盟店であればどこでも利用できる簡便性を兼ね備えている。
また、ハウスプリペイドカードは導入店舗及び系列店舗に利用が限定されるが、ブランドプリペイドカードは、VISAブランド、MasterCardブランド等に加盟している世界中の店舗で利用することができる点も大きな違いである。

 

概要

*導入企業がカード発行会社(主にクレジット カード会社)と提携して発行する電子マネー

*「どこでも使える」利便性を提供する「決済ツール」

導入企業のメリット

*導入企業およびカード会社は、自社以外の店舗で入金や利用が行われた際にも手数料収入を見込むことができる

*他社店舗での利用動向も入手でき、より詳細な消費者行動分析が可能になる。

消費者のメリット

*与信審査や銀行口座の確認などの手続きが不要でクレジットカードよりも簡単に作ることができる

*VISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店なら全世界どこでも利用することができる

*海外旅行の際にATMから現地通貨を引出したり、様々なサービスで貯めたポイント等をブランドプリペイドカードの残高に変換したりなど、有効活用できる

 

開始してまだ日の浅い同事業だが、取扱高は順調に拡大している。
19年6月期は700億円程度まで伸長すると会社側は予想している。

 

 

(収益構造)
同事業の売上高区分は以下の2つ。

項目

内容

初期売上

サービス導入に伴うシステムカスタマイズ開発費用など

月額システム利用料

バリューカードASPサービ スシステムの利用料

(カード所持者によるカードへの入金額・利用額の一定料率)

 

バリューデザインは、クレジット業界における国際セキュリティ安全基準(※PCIDSS)の認証取得による高い信頼性を確保したシステムインフラを構築しており、ブランドプリペイドカードで決済されるデータを一元的にサーバー管理している。
(※)PCIDSS:Payment Card Industry Data Security Standard:JCB、American Express、Discover、MasterCard、VISAの国際ペイメントブランド5社が共同で策定したクレジット業界における国際セキュリティ安全基準。

 

【1-5 特長と強み】

①No.1の導入実績に基づく成功のノウハウ
プリペイドカードサービス成功の鍵はシステムではなく利用を促進するノウハウであると同社では考えている。
この点で、10年以上をかけて蓄積した豊富な導入事例は大きなアドバンテージとなっている。
様々な業種からなる600社を超す導入実績から具体的な事例を用いて個社ごとの最適な手法を提案することができる点は他社にはない強力な差別化要因であり、現在までのさらに将来に向けての同社成長の源泉でもある。

 

課題

提案例など

顧客メリット

顧客タイプに応じたメリットのバリエーション

・入金・利用でポイント付与

・年間購買金額に応じたランクでステータスを変更

・プリペイド払いで特典商品を割引

認知度向上

店舗の負荷を抑え、顧客認知を高める手法

・POP、ポスター、リーフレット等の設置・配布方法

・既存メルマガ会員等への告知

推進体制

全社での利用促進体制の構築

・カード推進における役割担当制度の体制構築

・カード推進状況を店長・エリア会議で共有

店舗オペレーション

シンプルなオペレーション設計と、十分な研修の実施

・簡潔にお得感を伝えるおすすめトーク

・店舗説明会での理解促進

・リリース前のカード運用テスト期間の設定

 

②専門のコンサル部門による導入・運用支援
同社では蓄積したノウハウの活用を通じて顧客満足度を最大化させるために専門のコンサル部門を擁している。
同部隊はプリペイドカードによる販促施策成功に向け、同業種・他業種を含めた様々な成功・失敗事例から最適な施策を提案・実行支援し、導入企業を手厚くサポートしている。
営業系スタッフに占める営業部門とコンサルティング部門の人員比率は、おおよそ4:6とコンサルティング部門が上回っていることからも、同部門の重要性がわかる。

 

③有力企業との提携による拡販体制
同社ではプリペイドカード事業は先行者利益の大きいビジネスと捉えており、早急なシェア(=導入企業数)獲得が重要と考えている。そのため、同社ではターゲット先の業態や企業に対して業務上深い関連性を持つ企業(POSベンダーやトップセールスが可能な有力企業等)と販売代理店契約を締結し、全国各地を網羅した営業ネットワークを構築している。

 

代理店例

特徴・ターゲット顧客

POSベンダー

飲食・スーパーマーケットを中心 としたPOSシステム導入済顧客への拡販。

総合印刷会社

販促・マーケティングソリューションとしてOEM提供している。大規模顧客をターゲットに拡販。

クレジットカード会社

クレジットカード導入済企業の紹介や、既存クレジットカードと連携したサービスの企画等で協業

その他代理店

同社ターゲットへのトップセールスが可能なコネクションを持つ企業等

 

現在約80社の代理店を有しているが、超大型顧客および前期から本格的な顧客化が始まったホームセンターの開拓に向けネットワークを更に強化する考えだ。

 

④将来動向にも柔軟に対応可能な技術基盤
拡大が続く電子決済市場においては今後も様々なシステムやデバイスが登場することが予想されるが、同社のシステムは現在の磁気カード・専用端末以外のデバイス・媒体でもシステム改修なく対応が可能である。
さらに、Fintech系サービスとの連携も視野に入れたシステムアーキテクチャを採用しており、将来動向も見据えた柔軟な技術基盤を構築している。
これら①から④に加えて、同社の強さを支える「600社を超す導入企業」という顧客資産も大きな特長・強みである。
豊富な導入事例を生み出すのみでなく、高成長が見込まれるブランドプリペイドカード事業においても重要な役割を果たすことに加え、安定したストック型収益の源泉である点も理解しておくべきだろう。

 

2.2019年6月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

18/6月期2Q

構成比

19/6月期2Q

構成比

前年同期比

売上高

972

100.0%

1,029

100.0%

+5.9%

 初期売上

426

43.8%

370

36.0%

-13.2%

 システム利用料売上

545

56.2%

659

64.0%

+20.9%

売上総利益

390

40.2%

477

46.3%

+22.2%

販管費

384

39.5%

447

43.4%

+16.2%

営業利益

5

0.6%

30

2.9%

経常利益

1

0.2%

22

2.1%

当期純利益

0

0.1%

15

1.5%

*単位:百万円

 

システム利用料増加で増収、大幅増益
売上高は前年同期比5.9%増の10億29百万円。引続きスーパー、ドラッグストア、飲食チェーンの既存案件の利用が好調でシステム利用料売上は同20.9%増収。システム利用増で粗利率は6.1%改善し、売上総利益は同22.2%増加。
販管費も同16.2%増加したが増収効果で吸収し、利益は大幅増となった。

(2)セグメント別動向

 

18/6期 2Q

構成比

19/6期2Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

 ハウスプリペイドカード事業

841

86.5%

934

90.8%

+11.1%

 ブランドプリペイドカード事業

131

13.5%

95

9.2%

-27.4%

 合計

972

100.0%

1,029

100.0%

+5.9%

営業利益

 

 

 

 

 

 ハウスプリペイドカード事業

142

17.0%

215

23.0%

+50.9%

 ブランドプリペイドカード事業

-16

-4

 調整額

-119

-180

 合計

5

0.6%

30

2.9%

*単位:百万円
*営業利益の構成比は売上高営業利益率

 

①ハウスプリペイドカード事業
増収増益。
大手飲食チェーンやスーパーマーケット等での利用が引き続き好調で、取扱高は前年同期比45.2%増の1,525億円。2018年12月には月間取扱高300億円、システム利用料売上1億円を超え、ともに単月の記録を更新した。
通期取扱高3,000億円、累計1兆円が見えてきたと会社側は考えている。
導入社数は着実に増加し前期末比76社増の668社。2018年7月にインドのプリペイドプロセッサー「ValuAccess Service社」の完全子会社化を行ったこともあり、海外が5,000店舗以上増加し、累計導入店舗数は66,000を突破した。
期初計画通り、新規採用人員の教育や、今期以降の収益貢献が見込まれる大型案件獲得へ営業の人的リソースを割いたことにより初期売上は同4.5%減の3億64百万円。一方、システム利用料売上は既存案件の好調、キャンペーン実施などで同24.0%増の5億70百万円。

 

②ブランドプリペイドカード事業
減収・損失額縮小。
前年同期に発生した大型のカスタマイズ開発案件が当期は発生しなかったことなどから、初期売上は減収。一方で既存イシュア(カード発行会社)の提携先における取引高及びそれに伴うシステム利用料売上は堅調に増加した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS

 

18年6月末

18年12月末

 

18年6月末

18年12月末

流動資産

900

824

流動負債

286

279

 現預金

586

519

 仕入債務

66

63

 売上債権

268

266

 未払金

97

101

固定資産

440

506

固定負債

202

181

 有形固定資産

268

273

負債合計

488

460

 無形固定資産

150

124

純資産

852

871

 投資その他の資産

21

108

負債純資産合計

1,340

1,331

資産合計

1,340

1,331

有利子負債残高

190

180

*単位:百万円

 

ValuAccess Service社株式取得に伴う現預金減、投資その他の資産増などで資産合計は前期末とほぼ同水準の13億円。
長短借入金減で負債合計は同27百万円減少の4億円。
純資産は同18百万円増の13億円。自己資本比率は前期末から1.8%上昇し64.9%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18年6月期2Q

19年6月期2Q

増減

営業CF

48

41

-7

投資CF

-74

-90

-15

フリーCF

-26

-49

-23

財務CF

-27

-18

+9

現金同等物残高

463

519

+55

*単位:百万円

3.2019年6月期業績見通し

(1)通期業績予想(連結)

 

18/6月期

構成比

19/6月期(予)

構成比

前期比

売上高

2,053

100.0%

2,123

100.0%

+3.4%

 初期売上

904

44.0%

819

38.6%

-9.4%

 システム利用料売上

1,149

56.0%

1,304

61.4%

+13.5%

営業利益

79

3.8%

-197

経常利益

64

3.1%

-210

当期純利益

33

1.6%

-172

*単位:百万円

 

業績予想に変更無し。増収も積極的な投資の実行で損失へ
業績予想に変更は無い。売上高は前期比3.4%増の21億23百万円と予想。システム利用料売上高は前期比13.5%の13億4百万円と、顧客ベースの拡大とともに引き続き堅調。一方、中長期的成長を見据えたアライアンスの構築や超大手顧客への導入に注力するため、直接営業よりも代理店開拓を優先させることから初期売上高は同9.4%減少の8億19百万円と減収を予想している。
営業利益は1億97百万円の損失。キャッシュレス化の進展、海外事業の進捗などから現在を大きな成長機会と捉え、向こう3年程度の投資計画を今期前倒しして実行。投資額はシステム投資、人材の確保や教育など約3億円。

 

(2)主な進捗
①今期の投資内訳および進捗

項目

投資増加額

概要

進捗状況

システム開発

1.1億円

◎新サービス向け投資

・各種決済サービスとの連携

・チャージチャネルの拡充

・CRM機能の追加

・ハウス専用端末の次世代化

 

◎運用効率向上・コストダウン

・インフラ環境の仮想化

・センターセキュリティの強化

キャッシュレス決済サービスとの連携機能、

セキュリティ強化、運用効率化・省力化等、リスク・コスト低減など、主要な投資案件は計画通り第2四半期以降に計画通り実行中。

人材採用・教育

1.2億円

◎人員増

・営業部隊を中心に例年の2-3倍増の人員を採用

 

◎社員教育

・新サービスの拡販に向けた人員の教育・研修

進捗は計画の40%程度。中途採用市場の市況もありIT系を中心にやや遅れている。

通期では充足できる見込み。

その他

0.9億円

◎その他戦略施策

・海外大型案件の活性化のための販促支援金

・アジア圏でのM&Aの準備と実行

 

◎内部機能の強化

・人員増加に伴うオフィス拡張・移転

計画通り12月にオフィスを移転した。

海外M&Aは各国プロセッサーとの面会等活動を継続中。

 

②キャッシュレス決済対応について
急拡大が見込まれるキャッシュレス決済において同社では独自のポジショニングを活かして既存サービスを通じた新たな収益機会の獲得を目指している。

 

「決済の汎用性」と「決済のタイミング」の2軸で主要キャッシュレス決済サービスを整理すると以下のように位置付けられる。

 

(同社資料より)

 

クレジットカード、汎用電子マネーがどこでも使える決済ツールとしての利便性を提供するのに対して、同社を含めたハウス電子マネーは決済に加えて販促や顧客囲い込みを行う点、マーケティングツールとしての側面を持つのが大きな特色で、決してクレジットカード、汎用電子マネー他の決済手段と競合するものではなく、棲み分けや連携など協業が可能であり、事実、クレジットカードや汎用電子マネー、QR決済などからの入金が増加している。

 

「汎用決済」と「囲い込み」それぞれのメリットを生かした、相互補完的なサービスを提供していく中で、各種ペイメントサービスを筆頭に、同社がミッションとしている店舗の集客や売上貢献に寄与し得るFintech事業と連携したサービスを提供し、ハウスプリペイドの利用者拡大・決済比率増加につなげていく。
ハウス電子マネーの導入企業数及び店舗数No.1というアドバンテージが大きく活きてくると同社では考えている。

(同社資料より)

 

③海外事業戦略
19年6月期第2四半期時点での海外売上は連結売上高の2%程度であるが、タイ、マレーシアなどでは大手クライアントが動き出し、前期の1%未満からは大きく伸張している。
またインド、タイでは早期黒字化も視野に入ってきたことに加え、ベトナムも有望市場として浮上してきた。
引続き既存案件の収益向上を図るほか、関連事業者との提携、新市場のウォッチなど更なる成長に向けた取り組みも進めていく。

(同社資料より)

 

(2)当面の見通し及び今後の成長イメージ
今期は積極的な投資により損失となるが、来期黒字回復、翌々期の営業利益ベースでの過去最高更新を目指している。

 

決算期

業績目標

見通し・事業の状況

19/6期

売上 21億円

営業利益 ‐2億円

投資による必要リソースの確保(商品/システム・人員・パートナー等)を完了

20/6期

売上 23-24億円規模

営業利益 黒字転換(1億円程度を目安)

18/6期後半の受注案件は準備期間が長く、当期に通期寄与の見込み。

その収益を中心に、投資による固定費増分を吸収する。

21/6期

売上 30億円規模

営業利益 過去最高益以上を目標

19/6期の投資効果をフルに寄与させ、導入店舗数8万店舗以上を目指す。

コスト比率を18/6期水準に安定させ、以後継続的な収益成長を図る。

 

今期の積極投資を契機に国内事業、海外事業をそれぞれドライブさせるとともに、国内外で獲得した顧客基盤を活用して新たな決済・販促サービスを将来的に展開し、25年6月期には、国内事業60億円、海外事業30億円、新規事業10億円の合計100億円の売上達成を目指している。

 

4.今後の注目点

繰り返し述べているように、同社は今期を今後の大きな成長を確実にするための重要な投資フェーズと位置付けている。
人材採用については、人手不足の影響からやや遅れ気味という事だが、システム開発、その他は概ね順調に投資を実行できている。
実際の売上・利益として実を結ぶのは今少し先とはなるが、ハウスプリペイドの付加価値を向上させるための様々なサービス・技術との連携がどれだけスピーディーに進んでいくかを注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外0名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年10月10日
<基本的な考え方>
当社は、株主・従業員・取引先、すべてのステークホルダーとの良好な関係を維持し、透明性の高い健全なコーポレートガバナンス体制及び企業倫理の構築に向け、鋭意努力を行っております。また、遵法の精神に基づきコンプライアンスの徹底、経営の透明性と公正性の向上及び環境変化への機敏な対応と競争力の強化を目指して、最適な経営管理体制の構築に努めてゆく方針であります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則について、全て実施いたします。」と記述している。

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