(2435:JASDAQ) シダー デイサービス事業苦戦 人材確保やスキルアップに期待

2019/03/28

2435Cedar

今回のポイント
・19/3期3Q累計は2.2%増収、19.3%経常減益。主に前事業年度に開設した施設において、新規利用者の獲得と充実したサービスを提供すること等、施設稼働率の向上に努めた。施設サービス事業は堅調に推移したものの、デイサービス事業では介護報酬改定の影響もあり減収減益となった。・通期予想は減額修正。2.8%増収、54.1%経常減益を見込む。売上はデイサービス事業で計画をやや下回って推移した。利益面では、介護職員に係る人件費の増加や、業容の拡大に伴う管理部門の強化による販管費の増加等、当初の計画より増加したことによるもの。配当も減額修正し、2.0円の期末配当を見込む。

・施設サービス事業が堅調に推移しているものの、デイサービス事業が苦戦している。引き続きデイサービス事業の稼働率向上が課題といえそう。また、人材の確保と人件費上昇への対応も引き続き課題といえそうだ。引き続きスケールメリットを活かした人材確保や社員のスキルアップにも期待したい。

会社概要

デイサービス及び有料老人ホーム「ラ・ナシカ」を中心とした介護サービスを、本社のある福岡県を中心に全国展開。リハビリテーションに重点を置き、より人間らしく生きるための生活支援を行う事を経営方針とする。総勢600名近くに及ぶ職員資格者を有しており、介護サービス事業者の中では出色。

【沿革】

前身は医療機器の販売会社だった(株)福岡メディカル販売。2000年10月に社会医療法人池友会系列の医療機関でリハビリ業務に従事していた山崎嘉忠氏(現会長)等が中心となり(株)シダーに商号を変更し介護事業へ参入。01年1月にデイサービス施設4施設を開設した。デイサービス事業が順調に拡大し、05年3月にジャスダック証券取引所に上場、同年9月には有料老人ホーム事業(現在の、施設サービス事業)に参入した。

06/3期、07/3期と有料老人ホーム事業の先行投資(新施設の立ち上げ費用)が利益を圧迫したものの、08/3期以降は施設の累積効果(ストック効果による事業規模の拡大)で、新規開設負担を吸収して利益を増やせる体制が整った。11/3期は新卒40名の入社による人員の増加や新規開設施設の増加(3事業合計で10/3期:3施設→11/3期:5施設)、更には既存施設のリニューアルもあり利益が減少したものの、12/3期は既存施設の新規利用者獲得が順調に進んだ事に加え、施設オペレーションの効率化で増益に転じた。しかし、13/3期は12年に行われた介護保険法改定の影響を受けた。同社の場合は、デイサービス事業における介護報酬改定の影響が大きく減益となった。14/3期は、その影響を解消する1年であった。尚、16/3期、19/3期にも介護報酬改定の影響を受けている。

【事業戦略 -地域のリハビリセンターを目指して-】

同社はデイサービスセンターや有料老人ホームにおいて近隣の一般・健康な高齢者向け健康教室等を開催し、地域の病院、ケアマネージャー、老人会等とネットワークを構築すると共に地域に溶け込む事で、施設の稼働率や入居率の向上を図っていく考え。また、このネットワークを活用して訪問介護ステーションやリハビリステーション(在宅サービス事業)とのシナジーも高めていく。

その成功例ともいえるのが山梨県甲府市での取組み。09年5月にラ・ナシカ甲府を開設、10年には甲府デイサービスを開設した。好評を得て、13年には甲府南デイサービスを開設することとなった。

尚、06年度の介護保険の改定の際に、「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」との規制が盛り込まれたため、在宅リハビリには大きな逆風が吹いた。この影響で同社も在宅サービス事業の積極的な活動を控えたが、09年度の改定でこの規制が緩和されたため積極的に在宅リハビリのニーズに応える事が可能となった。

また、施設を集積させる事は3事業のシナジーを高めるだけでなく、理学士等の職員が地元で安定して働く事のできる環境作りにもつながる。

同社の介護事業の考え方

リハビリテーションを重視して、永く、元気でその人らしく、健康に暮らすためのお手伝いをしている。

同社におけるリハビリテーションとは、リハビリを頑張れば、将来元気になれる・・・だから頑張るというものではない。今日自分らしく、明日も自分らしく過ごしながら、来月、来年もっと自分自身の力で、自分らしく毎日を過ごす為の準備を行うということを目的としている。

社会参加などを重視しクラブ活動や外出イベントなどを積極的に行っている。

【事業セグメント】

事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設サービス事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活の手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。18/3期の売上構成比は、それぞれ25.1%、66.8%、6.1%。また、16/3期よりその他事業として、要介護要支援認定者などに対し、福祉用具のレンタル及び販売を行っている(18/3期の売上構成比は2.1%)。

2018年9月30日現在、104拠点で展開している。

介護ニーズの高まりに応え、事業所数は伸び続けている。

デイサービス事業

デイサービス施設では60~80人規模の大型デイサービス中心に展開している。トレーニングルーム・カラオケ・シアター・大浴場・マッサージ・喫煙ルームなど各個人にあった活動を楽しめるゆとりある空間造りが可能となる。小規模施設では実現が難しい専門スタッフの配置や、充実した設備の施設を可能にしている。

デイサービスの施設基準は利用者1人当たり3平方メートル以上となっており、リハビリテーションに軸足を置いた施設運営が同社の特色。午前、午後にそれぞれ上級・中級・初心者にコース分けされた80分の個別リハビリテーションを行う。

専門スタッフによるリハビリテーション

同社のデイサービスでは、本格的なリハビリテーションを積極的に取り入れている。様々なトレーニングマシーンを使用し、日常生活では使うことの少ない筋肉を動かすことをはじめ、理学療法士や作業療法士など資格をもった専門家が、利用者ひとりひとりの体調に合わせたプログラムを作成し、様々な角度から元気な体づくりをサポートする。

選択できる多彩なサービス

豊かな毎日を過ごす為に様々なサービスを選べるのもシダーの特徴。カラオケ・シアター等の設備に加え、外出レクリエーションや各種イベントを随時開催している。施設内にある季節に合わせたディスプレイは、心地よく五感を刺激し、アクティブな時間を演出する。利用者が施設に来ることが楽しみになる環境づくりを行っている。

施設サービス事業

有料老人ホーム「ラ・ナシカ」は24時間・365日体制で介護スタッフが常駐している。近隣の医療機関との万全の連携・協力体制に加えて、看護師も8時30分から21時30分(一部施設では異なる場合あり)まで勤務しているため、緊急を要する場合でも安心して任せ預ける体制が整っている。

1階フロアではスタッフがデイサービスと同等のサービスやリハビリテーションを提供、居室では自宅に居るのと同様に訪問リハビリ、訪問看護・ヘルパーのサービスを提供する。

充実のリハビリテーション

「ラ・ナシカ」では全ての施設でリハビリテーションを積極的に取り入れている。充実の施設に加え、専門のリハビリスタッフが、ひとりひとりの体調に合わせた最適なトレーニングメニューをアドバイス。健康な体づくりをサポートする。

自分好みに部屋をコーディネート

「ラ・ナシカ」の居室は、全て個室。プライバシーを考慮し、マンションのような構造になっている。部屋のアレンジはもちろん自由。自分好みの快適な空間で毎日をくつろぐことができる。

仲間との楽しいひと時

フロアへ出て積極的に運動に参加したくなるような環境づくりを行っている。中でも、カラオケルーム・シアタールームは入居者が自由に利用できる大人気の施設。

美味しく栄養豊富な食事

看護師による健康チェック項目に基づいた食事を提供している。また、嗜好やアレルギー、好みのご飯の柔らかさまで個別にオーダーすることが可能。

季節の催し

季節の移ろいを楽しむことも忘れていない。四季を彩るディスプレイは、毎回スタッフの力作。その他にも入居者が楽しめるようたくさんのイベントを企画している。

施設サービス事業は同社の収益を支える屋台骨となっている。入居率は18年9月現在98.0%とほぼ満室。新規開設も重点的に進めている。

在宅サービス事業

「住み慣れた自宅が一番安心できる」そんな声に応える在宅サービス。介護や療養の必要な人が自宅で安心して生活できるよう、理学療法士や作業療法士をはじめとする国家資格者の指導の下、様々なサービスを提供している。

自宅療養を支える訪問看護・リハビリテーション

医師の指示のもと、看護師が自宅で療養している人の世話や診療補助などのケアサービスを行い、在宅療養を続けられるようサポート。ひとりひとりの身体の状態に合わせてリハビリテーション計画を作成。リハビリの専門スタッフが、日常生活訓練や身体機能訓練などを行う。

日常生活を支えるホームヘルプサービス

ホームヘルパーが身体介助サービスや生活援助サービスを提供し、日常生活をお手伝いする。また、全てのヘルパーステーションが訪問看護ステーションと併設されており、緊急時は看護師と連携して対応する。

最適なケアプラン作成

介護サービスを利用するのに必要不可欠となるのがケアプラン。同社では、専門知識はもちろん豊かな人間性を備えたケアマネージャーが、利用者やその家族の意向を伺いながら、最適なケアプランを作成する。

介護報酬改定の影響

18年4月より介護報酬が改定となる。同社ではデイサービス事業で影響を受けた。

効率運営が行われているとして大規模型が大きく引き下げられた。同社のデイサービスでは大規模IIが11事業所、大規模Ⅰが9事業所、通常規模が9事業所、認知症型が3事業所(9月30日現在)あり、大規模のデイサービスが過半を占めており、通所サービス基本報酬の減算にあわせて約3.3~3.8%の減収となる見通し。

同社では要介護登録者を重点的に増加させる方針をとっている。一方、要支援登録者については、時間短縮及び、利用回数の調整を行っている。

介護職員の人材確保

介護業界では現在においても人材不足に悩まされているが、今後はさらに深刻化する見通しである。

20年度末には約216万人、25年度末までに約245万人が必要。16年度の約190万人に加え、20年度までに約26万人、25年度末までに約55万人、年間6万人程度の介護人材を確保する必要がある。

介護事業者が答えた介護職員の採用が困難な主な理由として「賃金が低い」、「仕事がきつい(身体的、精神的)」、「社会的評価が低い」の回答が目立つ結果になっている。

働き方改革関連法では5日以上の有給休暇取得と管理簿を作成し、3年間の保管を義務化、残業時間の上限が設定されたことなどが介護事業所に関連する。

こうしたことを受けて同社ではこれまでにも介護職員処遇の改善を行っていきたが、19年10月の消費税率引き上げに伴い、さらに処遇改善を実施予定。

また、これまでの処遇改善は介護職員しか使えなかったが、他職種(介護助手・リハ職・ソーシャルワーカー・看護職等)にも支給できる様な改善策も審議中。

外国人技能実習生の受入れにも積極的に取り組む。外国人労働者の実態として17年に失踪した実習生が年々増加し17年には7,000人を超えた。失踪動機として低賃金の回答が大半を占めており、年々増加している。

また、入国管理法の改正案では日本で就業できる種類について現行から下のように拡大される。

これら改正案により外国人材は37万人増、介護業界では6~7万人の受け入れが予想されている。

同社では多くの外国人材の受け入れを可能にするためには、①社内規定や規則の見直し、②円滑に業務を遂行できるような職場環境、③職員の教育、④賃金の見直し、を重要項目としている。19年2月より「ラ・ナシカ こぶけ・たかしな・さくら」にて6名受入れ予定。

社内人材の育成

組織を運営していける人材の育成を目的とした研修・試験を実施している。

役職取得に向けて、主任試験、副主任試験、リーダー試験、サブリーダー試験といった社内試験を実施し社内役職者を強化している。役職者数は17年4月1日107名から18年4月1日には190名に増加している。

また、介護職員初任者研修、介護職員実務者研修、介護福祉士試験対策講習、介護支援専門員試験対策講習、健康運動指導士といったスキルアップ研修も実施している。

2019年3月期第3四半期決算
前年同期比2.2%の増収、19.3%の経常減益

売上高は前年同期比2.2%増の107億38百万円。18年4月の介護報酬改定では改定率0.5%のプラスとなっており、「質の高いサービス」や「自立支援・重度化防止に資するサービス」については1.0%相当のプラス改定が行われている。一方で給付の適正化で0.5%のマイナス部分もあり今後どのように事業の運営を行っていくのかが問われる改定となっている。こうした中、主に前事業年度に開設した施設において、新規利用者の獲得と充実したサービスを提供すること等、施設稼働率の向上に努めた。施設サービス事業は堅調に推移したものの、デイサービス事業では介護報酬改定の影響もあり減収となった。営業利益は同12.1%減の4億12百万円。介護職員等に係る人件費の増加や業容拡大に伴う管理部門の強化による販管費の増加等により、費用が増加した。売上総利益は11.4%から12.0%へ0.6p上昇したものの、販管費率が6.9%から8.1%へ1.2p増加し営業利益率が低下した。営業外収益・費用や法人税等には大きな変動はなかった。

デイサービス事業

売上高は前年同期比2.8%減の26億14百万円、セグメント利益は同26.9%減の2億75百万円。7月に「ラ・ナシカ こくら」を開設した。既存デイサービス施設のサービスの質の向上により施設稼働率の向上に努めてきたが、介護報酬改定の影響もあり減益となった。

施設サービス事業

売上高は前年同期比4.6%増の74億40百万円、セグメント利益は同23.8%増の9億35百万円。既存有料老人ホームの入居者獲得に注力し、入居率の向上に努め、増収増益となった。

在宅サービス事業

売上高は前年同期比3.4%減の6億31百万円、セグメント損失は74百万円(前年同期は48百万円の損失)。利益率の改善のため人員配置や業務手順の見直し等、効率的な運営に取り組むことに注力した。

その他事業は、売上高が前年同期比74.5%増の3億74百万円、セグメント利益は同73.0%増の48百万円となった。また、全社経費(表中の連結調整)が1億30百万円増加した。

流動資産は前期末比3億34百万円減の36億75百万円となった。主な要因は、現預金が1億82百万円増加し、売掛金が1億35百万円増加したことによるもの。固定資産は前期末比4億5百万円減少し、142億87百万円となった。主な要因は、有料老人ホーム及びデイサービス施設の建物及び構造物が1億98百万円、リース資産が1億63百万円減少したことによるもの。

流動負債は前期末比4億97百万円増加し54億66百万円となった。主な要因は、短期借入金が6億15百万円増加したことによるもの。固定負債は前期末比6億37百万円減少し113億17百万円となった。主な要因は、長期借入金が5億48百万円減少したことによるもの。純資産は、前期末比68百万円増加し11億79百万円となった。主な要因は、利益剰余金が67百万円増加したことによるもの。これらにより、上期末の総資産は、前期末比71百万円減少し、179億63百万円となった。

自己資本比率は前期末比0.4ポイント上昇し、6.6%となった。

2019年3月期業績予想

通期予想は売上高が前期比2.8%増の142億50百万円、経常利益は同54.1%減の1億15百万円。期初予想比売上高で96百万円、経常利益で2億13百万円の減額修正となった。売上はデイサービス事業で計画をやや下回って推移した。利益面では、介護職員に係る人件費の増加や、業容の拡大に伴う管理部門の強化による販管費の増加等、当初の計画より増加したことによるもの。

19年3月1日に横浜市で有料老人ホーム「鷂・龍拭覆弔襪澆里気函法廖・00室)、5月1日には熊本市で西原デイサービスを開設予定。

期末配当は1株あたり4円から2円に修正した。同社では配当金について、事業拡大による成長のための投資資金及び内部留保の充実と利益配分のバランスを念頭に、配当を実施すべきものと考えている。しかし、当初の計画よりも下振れする見通しとなったことや今後の財務状況や経営環境などを総合的に勘案した結果の修正である。

今後の注目点
施設サービス事業が堅調に推移しているものの、デイサービス事業が苦戦している。今回は通期予想を下方修正したが上期が期初の会社予想に未達となっており、ある程度想定されたものであった。引き続きデイサービス事業の稼働率向上が課題といえそう。また、人材の確保と人件費上昇への対応も引き続き課題といえそうだ。同社では外国人実習生の採用を進めるなど様々な取り組みを行っている。引き続きスケールメリットを活かした人材確保や社員のスキルアップにも期待したい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2018年6月29日

<基本的な考え方>

当社は、社会的ニーズである介護サービスを中心として、リハビリテーションを中心としたサービスを積極的に行い、より人間らしく生きるために積極的な生活支援を行うことにより、社会に貢献することであります。

当社は、これらの企業理念の実現のため、コーポレート・ガバナンスについて、当社の利害関係者と良好な関係を構築するに当たっての重要事項と考えております。当社の意思決定や行動が法令や市場のルールに反していないかという適法性を重視するだけでなく、社会に貢献しているか、社会の要請に反していないかという企業の社会性も重視しています。そして、コーポレート・ガバナンスが適確に機能するためには、徹底した透明性が必要であると考えております。法令等で義務付けられた範囲に限定することなく、株主や投資家をはじめ、従業員、地域社会や顧客に対して積極的に情報開示を行っていく考えです。当社のコーポレート・ガバナンス体制の概要は以下のとおりであります。

取締役会においては、取締役5名のうち社外取締役(非常勤)を1名選任しており、業務執行の迅速な意思決定や透明性を維持する組織を構築しております。

また、当社は、平成30年6月29日現在、会社法第2条第6号に定める大会社には該当しておりませんが、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図ることを目的として、監査役会を設置しております。監査役会においては、監査役の独立性と客観性を確保するため、監査役3名のうち社外監査役(非常勤)を2名選任し、取締役会の業務執行の監督・監視機能を強化しております。

内部監査につきましては、社長の直轄組織として内部監査室(5名)を設置しており、当社各事業部門が関係法令や社内規程を順守し、適切な運営がなされているか監査・指摘・検証を行っております。

<実施しない主な原則とその理由>

「当社は、JASDAQ上場会社としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。

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