株式会社キャンバス(4575 Mothers)
キャンバスに再び日が巡る

2018/08/16

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

がん治療のパラダイムシフト下、独自のアプローチが光る
キャンパス社は、細胞の挙動に着目した独自のアプローチで新規の抗がん剤候補を創出している研究開発創薬企業である。特定の分子や抗原を標的とする「ハイスループットスクリーニング」ではなく、細胞全体をブラックボックスと捉え、細胞の挙動を標的とした独自の「細胞の表現型によるスクリーニング」というアプローチで創薬活動を行っている。近年、がん治療の分野では、大きなパラダイムシフトが発生している。がんを取り巻く微小環境の解明が進展し、腫瘍と免疫の関係が明らかとなることで、オプジーボなどの免疫チェックポイント抗体が流行し、さらに免疫チェックポイント抗体が効きにくいがん種や環境での新しい抗がん剤候補の研究開発が行われている。キャンバス社の独自のアプローチは、その新領域での抗がん剤候補の開発にとって有力な選択肢となっている。

CBP501は、オプジーボの有効性の低いがんでの奏効を狙っている
主要な開発品は2つ。もっとも重要な開発品であるCBP501(カルモジュリン・モジュレーター)は、3つの作用が期待されている。①がん微小環境下で免疫抑制作用を惹起するサイトカインの産生を抑制し、がん幹細胞を減少させる。②がん細胞の遊走・上皮間葉移行等を阻害する。③免疫原性細胞死を増加させ、がんに対する免疫反応が生じやすい環境をもたらして、オプジーボのような免疫チェックポイント阻害剤の薬効を向上させる。もう一つは、XPO1(エクスポーティン・ワン)阻害剤という新規の機序の抗がん剤候補品CBS9106である。米国ステムライン社にライセンスアウトしており、同社が米国で臨床第1相試験を実施中。両候補品とも、開発は順調に進展している模様である。

キャンバス社のパイプライン価値を試算すると69-431億円
キャンバス社は7月に総額最大8億1千万円となるファイナンスを発表したが、このファイナンスで向こう1年半程度の開発費は、ほぼカバーされよう。まだ開発段階が臨床第1相のため、あくまで参考値に過ぎないが、キャンバス社の2つのパイプライン価値合計(69億-431億円)は、キャンバス社の時価総額とファイナンス額の合計値(42億円)を大きく上回る。また、新規機序の抗がん剤開発プラットフォームとして評価されれば、ペプチドリーム社のようなプラットフォーム企業として評価されることも可能であろう。開発の進捗とラインセンスアウトの実現が、評価を変えていく契機となることを期待する。

 

>>続きはこちら(1MB)

TIW/ANALYST NET
証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクトです。
本レポートは、株式会社ティー・アイ・ダヴリュが「ANALYST NET」の名称で発行するレポートであり、外部の提携会社及びアナリストを主な執筆者として作成されたものです。
  • 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
  • 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
  • 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
  • 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
  • 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
  • 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
  • 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
  • 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。